この記事の目次 CONTENTS
【事前知識】ハイブリッド車のバッテリーは2種類ある
ハイブリッド車のバッテリーが上がる要因
ハイブリッド車のバッテリー寿命と交換時期
ハイブリッド車のバッテリー交換費用
ハイブリッド車のバッテリーについて整備士のコメント

ライター紹介

2級整備士

ヒロ 現役整備士 氏

国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。 整備士ヒロのtwitter

ハイブリッド車は普通のガソリンエンジン車とは違う…
それは分かっていても具体的に何が違うのかまでは多くの人が理解していません。
この記事では、ハイブリッド車に搭載されているバッテリーについて、種類やはたらき、寿命、交換費用について解説します。

【事前知識】ハイブリッド車のバッテリーは2種類ある

ハイブリッド車に搭載されているバッテリーは2種類あります。ハイブリッド車のバッテリー上がりの要因や寿命について説明するうえで、2つのバッテリ―について言及をするため事前補足として解説します。

駆動用バッテリーと補機バッテリーについて

1つはハイブリッド車にしか搭載されていない、走るために必要な電気を蓄える「駆動用バッテリー」です。
ハイブリッドバッテリーと呼ばれることもあります。
大型のリチウムイオンやニッケル水素バッテリーで、車のフロア下やトランク内部に配置されることが多いです。
車種によって異なりますが、バッテリーには非常に高い電圧が掛かっています。
(例:プリウスの駆動用バッテリー システム電圧200v以上など)

もう1つは、駆動用バッテリーと判別するために「補機バッテリー」と呼ばれます。
従来の車と変わらず搭載されているバッテリーです。ライトやワイパー、ナビオーディオといった電装品は、およそ12Vの電源電圧を使用しています。
これらの装備品に電力を供給するために、従来と同じ12V電源の補機バッテリーが必要不可欠です。

タイプによってバッテリー容量もさまざま

これら2つのバッテリーは車種によって、サイズや容量はさまざまです。
バッテリーの内部は、セルと呼ばれる小部屋がたくさん繋がった作りになっています。
いくつか主な車種で駆動用バッテリーの具体例を紹介します。

4代目プリウスは「3.7V×96個のセルで351.5Vの容量」です。
一方でノートe-powerは「3.7V×80個のセルで280Vの容量」です。
ノートの駆動バッテリーの重量は43.9kgで、バッテリー本体のサイズはブラケットやハーネス部分を含まずで876×368×206(幅×奥行×高さ)mmです。

補機バッテリーは通常のガソリンエンジン車と同様のラインナップから選択します。
補機バッテリーの搭載場所によるバッテリーの種類の違いがあるので、気を付けなければいけません。
車室内に補機バッテリーがある場合には、バッテリーのサイズ表記の頭に「S」がつく専用のものを選びます。
(※最近のトヨタ車はLN1やLN2といった、本来欧州車で採用されてきた規格のものが搭載されている車種もあります。)
充放電にともなって発生する水素ガスを、車外に逃すためにバッテリー構造が異なるためです。

ハイブリッド車のバッテリーが上がる要因

ハイブリッド車でも、ガソリン車と同じようにバッテリーが上がってしまうことがあります。
その要因を解説します。

補機バッテリーの寿命

ハイブリッド車の補機バッテリーは、従来のガソリン車と同じように寿命があります。
くわしくは後ほど解説しますが、交換せずに使い続けていると、最終的には寿命を迎えた結果、バッテリーが上がってしまいます。

灯火類の消し忘れなどIG-OFF時の電装品の消費電力が大きい

最近の車は灯火類の消し忘れを検知して、一定時間経過後は自動的にOFFにするものもあります。
しかし、灯火類の消し忘れはバッテリー上がりの要因としてメジャーです。
また、アクセサリソケットに接続している電装品に問題があったり、駐車監視モード付きのドラレコの普及などにより、停車中の消費電力が大きくなってしまうことがバッテリー上がりにつながることもあります。

【補足】バッテリーが上がった時の応急処置

バッテリーが上がったときは、救援用ブースターパックを使うか、救援用車両を用意して、ブースターケーブルを接続したうえで始動します。
ハイブリッド車はシステム上、救援用車両として使用できないので注意しましょう。
また、救援用車両はバッテリーが上がった車と同等以上の車格であることが好ましいです。

救援用車両を使用して応急処置する場合は、以下の手順でおこないます。
基本的には、バッテリーが上がった車に接続するプラス側端子の位置の場所さえ判断できれば、従来のガソリン車の救援と大きな差はありません。

  1. 救援用車両のエンジン始動
  2. バッテリー上がりの車の救援用プラス端子に+(赤)ケーブル接続
  3. 救援用車両のバッテリープラス端子に、2で接続した+(赤)ケーブルの反対側を接続
  4. 救援用車両のバッテリーマイナス端子に−(黒)ケーブルを接続
  5. バッテリー上がりの車のエンジンルーム内にある救援用マイナス端子または、ボデーアース(金属部分)に4で接続した−(黒)ケーブルの反対側を接続
  6. バッテリーが上がった車のエンジンを始動
  7. 反対の手順ですべてのケーブルを外す

こうして救援できたハイブリッド車は、エンジンがかかった状態のままオフせずに、整備工場へ入庫するなどして対応してもらいましょう。

ご自身で上記の応急措置をすることが不安である、準備ができない場合は、JAFや保険のレッカーサービスに連絡して、プロに救援してもらうことをおすすめします。

ハイブリッド車のバッテリー寿命と交換時期

メンテナンスにはお金のかかるイメージのあるバッテリー交換ですが、駆動用バッテリーと補機バッテリーそれぞれ、どれくらい寿命があるのでしょうか。

駆動用バッテリーの寿命は長い

駆動用バッテリーの寿命は、走行距離15万km前後または、10年以上の経過がひとつの目安になります。
あくまで目安なので、これより早いタイミングで寿命を迎えることもありますが、20万km以上走行しても未交換という例もあります。

補機バッテリーの寿命は4〜5年

一方で補機バッテリーは定期的に交換が必要です。
同じ使い方をするガソリン車よりは、すこし寿命が長いイメージですが、5年以内には劣化による寿命で交換時期を迎えます。

【補足】バッテリー寿命の予兆について

駆動用バッテリーの寿命の予兆は、燃費の悪化が上げられます。
ただし、急激に変わるわけではないので実際には気付きづらいと思われます。
交換の目安は、警告灯点灯による劣化判定で判断します。

一方で補機バッテリーであれば、定期的に整備工場などにあるバッテリーテスターで診断してもらい、その良否判定で交換時期を判断します。
ハイブリッド車の場合、一般的にドライバーが寿命を判断できる予兆を捉えるのは困難です。

ハイブリッド車のバッテリー交換費用

ハイブリッド車のバッテリー交換に際して、工賃とバッテリー費用を含めた金額の目安を具体的にいくつか紹介します。

  • プリウス、アクアクラスのバッテリー交換費用の目安
  • 補機バッテリー:2〜4万円
  • ハイブリッドバッテリー:10〜20万円
  • アルファード、クラウンクラスのバッテリー交換費用の目安
  • 補機バッテリー:2〜4万円
  • ハイブリッドバッテリー:20〜30万円

ハイブリッドバッテリーは、使用するバッテリー(リビルト品、新品など)や、整備工場によって金額幅があることをご理解ください。

参考までに、プリウスクラスのハイブリッドバッテリーは純正品の定価でおよそ15万円ほどなので、費用の多くは部品代が占めていることが分かります。
補機バッテリーの交換も、バッテリーメーカーや購入方法により金額が大きく異なります。
車のサイズや価格帯が高くなると、いずれの交換費用も高くなりがちです。

ハイブリッド車のバッテリーについて整備士のコメント

ハイブリッド車の駆動バッテリーの交換は決して安い整備ではありません。
寿命を迎え交換時期を迎えたということは、ある程度の年数と走行距離が経過しているはずです。
そうなってくると、その他の箇所の消耗品なども交換の必要が出てきて、今後さらに整備費用がかかってくる可能性が高くなります。
ハイブリッド車の駆動バッテリーの劣化を機に、乗り換えを検討されてみるのもよいかもしれませんね。