- この記事の目次 CONTENTS
- タイミングベルトの役割
- タイミングベルトの交換時期
- タイミングベルト交換費用の目安
- 【補足】タイミングベルトとチェーンの見分け方
- タイミングベルト交換に関する整備士まとめ
エンジンを駆動するのに必要不可欠なタイミングベルト。
定期的な交換が必要な部品で、なおかつ整備には費用も時間も掛かる部品のひとつです。
この記事ではタイミングベルト交換の費用・時期について現役の整備士が解説するとともに、タイミングチェーン式との見分け方についても解説します。
タイミングベルトの役割
タイミングベルトはエンジンの回転運動に必要な部品同士の回転を同じタイミングにあわせる役割があります。
もしなんらかの理由により、このタイミングがズレると、エンジンの不調やチェックランプの点灯、最悪の場合はエンジンの損傷にもつながります。
そのため、タイミングベルトはとても重要な部品です。
【補足】タイミングベルトの仕組み
エンジンの内部は、シリンダーという筒の中をピストンが上下に運動することで、駆動しています。
シリンダー上部には、空気(混合気)を吸うバルブと、燃焼後の排気ガスが出ていくバルブが付いています。
そしてバルブはカムシャフトと呼ばれる部品の回転運動で駆動され、ピストンはクランクシャフトと呼ばれる回転する部品の軸に取り付けられ、上下運動します。
このカムシャフトとクランクシャフトには、先端のプーリー(歯車)にタイミングベルトが取り付けられています。
これにより常に同じタイミングで回転するようになっています。
タイミングベルトの交換時期
タイミングベルトは消耗品として交換時期が定められています。交換時期は長めですが、エンジンに関わる重要な部品ですのでしっかりと交換時期をおさえておきましょう。
走行距離10万kmが交換の目安
国産車では一般的に10万kmがタイミングベルトの交換目安時期とされます。
ただし、タイミングベルトはゴム製品なので、ひび割れといった年数経過による劣化も生じます。そのため、新車から10年以降を目安に、点検のうえ交換を検討するのをおすすめします。
また、輸入車では日本車ほど耐久性が高くないことも多く、5年または4万kmほどで交換時期を迎えるものもあります。
タイミングベルトが切れる前兆
ドライバーが運転をしていて感じる、タイミングベルトが切れる前兆はありません。
切れてしまう前に、早期交換が必要か否かの判断は、タイミングベルトのひび割れの状態で、ある程度判断することができます。
ただし、タイミングベルトはカバーで覆われているのでユーザーが目視確認をすることは簡単ではありません。
整備工場で点検してもらうようにしましょう。
タイミングベルト交換費用の目安
タイミングベルトの交換費用は一般的な整備のなかでも、高額な部類です。また、車種やエンジンによって、必要な部品点数や整備にかかる時間(工賃)は異なります。そのため、金額に幅が生じやすいです。
部品代と工賃を合わせて5万円前後〜15万円ほどの出費となります。
費用の内訳は部品代と工賃に分けられます。
- 工賃のおおよその目安は、25,000円〜70,000円
- 部品代のおおよその目安は、15,000円〜80,000円
一般的な交換費用
タイミングベルトを交換する際、最低限の交換部品は以下のとおりです。
- タイミングベルト
- タイミングベルトテンショナー一式
- (アイドラプーリー)
あわせて交換することの多い部品、または車種によっては交換の必要がある部品は以下のとおりです。
- ウォーターポンプ
- ヘッドカバーガスケット(タペットカバーパッキンなど呼称が複数あり)
- クランクシャフトオイルシール
- カムシャフトオイルシール
- 補機類ベルト
- 補機類ベルトのテンショナー・プーリー
- スパークプラグ
これらの交換理由は以下のとおりです。
- タイミングベルト交換時に交換インターバルが重なるため
- タイミングベルト交換時に取り外すので、再使用不可であったり、工賃節約のためについでとして交換を推奨されるから
- タイミングベルト交換後に、該当箇所に不具合発生した場合、部品の脱着が被る部分があるために、同時にしておかないともったいないから
費用が高いと感じる理由
タイミングベルトの交換費用が高い理由は大きく3つあります。
- 整備工場によって見積りの内訳に幅がる
- 交換の部品数が多くなりやすい
- 手間がかかる整備のため工賃が高い
1つ目の理由は整備工場によって見積りに幅があるからです。
タイミングベルト交換の工賃は、単にタイミングベルト交換のみを指す場合や、あらかじめ他の推奨交換部品の交換工賃を含んだものまで、整備工場によって様々です。
2つ目の理由は交換部品点数も多くなりやすいからです。
タイミングベルト交換時には、現在不具合が出ていなくても付随で交換を推奨、または必須とされるものが多いです。
3つ目の理由は、タイミングベルトの交換は重整備のひとつで、手間も時間もかかることから、工賃も高く設定されているからです。
【補足】タイミングベルトとチェーンの見分け方
タイミングベルトと違い、タイミングチェーンであれば交換の必要性が限りなく少ないため、愛車がタイミングベルトなのかタイミングチェーンなのか気になる人もいるでしょう。
ご自身の愛車がタイミングベルトかタイミングチェーンなのかを見分ける方法について解説します。
見分ける方法

例外を除いて、一般的に多くのエンジンで簡易的に見分ける方法を解説します。
タイミングチェーンのものはエンジンのフロント側(縦置きエンジンなら車両前方、横置きエンジンならトランスミッションと逆側)がアルミ製のカバーであることが多いです。
一方でタイミングベルトの車は、樹脂製のカバーのものが多く、タイミングベルト交換時に簡単に取り外せるようになっています。
例外としてはタイミングベルトの車でもアルミ製のカバーで、プロの整備士でも一見タイミングチェーン式と見間違うようなエンジンもあります。
タイミングチェーンは交換不要?
タイミングチェーンは基本的に、交換不要の部品として設定されています。
ただし、車の部品のひとつである以上、不具合や壊れる可能性がゼロではありません。
たとえば、エンジンオイル交換を疎かにするメンテ不良車で、チェーンが十分に潤滑・保護されずに伸びてしまい、チェックランプ点灯やエンジン不調につながる恐れもあります。
本来、交換不要のタイミングチェーンを交換せずに済むよう、普段からのメンテナンスはとても大切です。
タイミングベルト交換に関する整備士まとめ
タイミングベルトの交換を怠ると、最悪のケースはタイミングベルトが切れます。
切れる時は突然で、切れてしまうとエンジンは急に止まってしまうので、走行中であればとても危険です。
また、その場合エンジン内部が損傷する可能性が限りなく高く、エンジン載せ替えやエンジンオーバーホールという、タイミングベルト交換とは比にならないような高額修理が待っています。かならず、交換目安時期を守って整備していただきたいです。
一方で、タイミングベルトの交換は、高額な車両メンテナンスのひとつであり、またその多くが10万kmごとが目安という、大きな区切りでもあります。
一度目ならば10万km前後、二度目なら20万km前後は、車の乗り換えを検討するにはとても良いタイミングです。
大きなメンテナンス費用がかかる前のタイミングで、次の愛車を探すのもひとつのカーライフ術とも言えるでしょう。