この記事の目次 CONTENTS
ステーションワゴンの魅力
ステーションワゴンの難点
総評:セダンの良さを受け継ぐステーションワゴン。ニーズが明確な人には物足りない?
選び方のポイントは?【ステーションワゴン・ミニバン・SUVを比較】
中古ステーションワゴンお勧め5選
ステーションワゴンもボディタイプの選択肢にしてみよう

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

ステーションワゴンは人気がないという声もあるが、1990年代の大流行と比較したらそう思うだろう。実際は、現在でも販売台数は意外なほど堅調に推移している。輸入車も一定のファン層に支えられ好調だ。
今回はステーションワゴンの魅力と難点をまとめた。購入候補をミニバンやSUVに絞る前に押さえておきたい内容が満載だ。

ステーションワゴンの魅力

ミニバンやSUVと比較した際、ステーションワゴンに優位性がある点を2つ紹介する。

  ステーションワゴン ミニバン SUV
1.走行性能
2.燃費

1.走行性能がよい

ステーションワゴンは、セダンがベースだ。ミニバンやSUVより重心が低いため、カーブや高速道路などでの安定感は抜群だ。気持ちよく走ることができる。

 

2.燃費がよい

ミニバンとSUVは背が高く、車重は重い。
ステーションワゴンは、セダンよりは若干車重は重くなるものの、ミニバンやSUVよりはかなり軽い。同等のパワーアップを搭載しているのであれば、ステーションワゴンの方が軽い分、燃費が良い。
また車重が軽い分、動力性能面でも一歩上回る。

ステーションワゴンの難点

ステーションワゴンよりも、ミニバンやSUVに軍配が上がる点を2つ紹介する。

  ステーションワゴン ミニバン SUV
1.荷物の積載性
2.悪路走破性

1.荷物の積載性はミニバンが勝る

ステーションワゴンはセダンをベースとしてトランク部分と後席部分を一体化している。ルーフを伸ばし、荷室を広くしているのが特徴だ。
ステーションワゴンの荷室はセダンと比べると広いが、ミニバンの3列目シートを収納した荷室スペースと比べると大きな差がつく。よりたくさんの荷物を積みたいならミニバンがお勧めだ。両側スライドドアも使い勝手に優れる。
なお、ステーションワゴンとSUVの荷室の広さは、同等レベルだ。

ちなみにステーションワゴンは荷室と居住スペースが一体化しているため、セダンより静粛性に劣り、リヤ部分のボディ剛性も下がる傾向がある。

2.SUVのように悪路を走れない

ステーションワゴンは荷室が広く、SUVと同等レベルの多くの荷物が積める。
しかし、キャンプ場など悪路を走る場所には入れない。最低地上高がセダンと同等なので、凸凹道は苦手なのだ。無理に走ると、動けなくなるケースもある。
積載スペースはSUV並みだが、悪路は苦手だ。
それでもステーションワゴンが欲しい人は、最低地上高を高くし、悪路走破性を高めたクロスオーバーモデルを検討すると良いだろう。

なお、ミニバンは多くの荷物を積めるものの、三菱デリカD:5を除き悪路は走れない。

総評:セダンの良さを受け継ぐステーションワゴン。ニーズが明確な人には物足りない?

ステーションワゴンは、ベースであるセダンの以下の特徴を受け継いでいる。

  • 車高が低い
  • 走行性能に優れる
  • フォーマルなデザイン性

SUVやミニバンに比べて車高が低い。そのためカーブでのふらつきは軽減され、高速道路の走行も安定する。また立体駐車場を使用できるモデルが多いのもメリットのひとつだ。

積載性は、セダンには勝るもののミニバンと比べると物足りない。シートアレンジが出来ないことも踏まえると、ステーションワゴンの使い方は一辺倒になるかもしれない。
悪路走破性はSUVに軍配が上がる。

ステーションワゴンは、全体的なバランスに優れている。だからこそ、クルマを使うシーンが明確な人ほどニーズを満たしにくい側面もある。
クルマ選びは指標を明確にしてから挑みたいところだが、具体的にどのように選べばいいのだろうか。

選び方のポイントは?【ステーションワゴン・ミニバン・SUVを比較】

昨今、「子育て層はミニバン、流行りはSUV」というイメージが強い。
だがクルマ選びでは、普段の使い方が重要だ。

  • 子どもが1人→ステーションワゴン/セダン
  • 子どもが複数人、高齢者の送迎→ミニバン

子育て層にミニバンは人気がある。両側スライドドアは便利だが、毎日の乗車では使わないスペースを運んでいるようなものだ。車体が大きく重いので、燃費も悪く燃料費も高めになる上に、車両価格も高い。子どもが1人程度であれば、ステーションワゴンやセダンで十分だ。
ミニバンは、頻繁に5人以上乗せる人や、子どもが2人以上、もしくは高齢者の送迎が日課になっているような人に向く。

 

  • ほぼオンロードで走行→ステーションワゴン
  • 雪国やキャンプで悪路走破性を求める→SUV(4WD)

SUVは、2WDが多く占めるようになり、もはやセダンに代わるカテゴリーになってきた。流行っているからSUVに乗るという人は多いが、SUVには無駄も多い。

SUVはミニバン同様、車体が大きく車重も重いので燃費が悪い。2WDで悪路を走ることを想定していないなら、車重が軽く燃費もよく、オンロードでの走行性能に優れるステーションワゴンで十分だ。
SUVの4WD車が必要な人は、雪深い地域に住んでいるか、趣味のキャンプなどで悪路を走る必要がある人だ。こうしたシーンでは、高い最低地上高がメリットになる。

中古ステーションワゴンお勧め5選

ステーションワゴンのクロスオーバーモデル

5代目スバル レガシィアウトバック

legacyoutback

5代目スバル レガシィアウトバックは、2014~2021年に発売されたモデルだ。
アウトバックは、レガシィ ツーリングワゴンをベースにクロスオーバーした、オフローダーテイストのモデルだ。最低地上高を200mmとし、ボディ下部にはプロテクタパネルを装備している。
最低地上高の200mmは、SUVと比べても大きい数値だ。アウトバックがいかに高い悪路走破性をもっているかが分かる。

ステーションワゴンのクロスオーバー車は、国産モデルには無い。
輸入車ではアウディのオールロードクワトロ系や、メルセデス・ベンツのオールテレイン系などがある。かなりマニアックなモデルなのだ。

アウトバックに搭載されたエンジンは、2.5LのFB25型水平対向4気筒である。出力は175ps&235Nmだ。

乗り心地はやや硬い。最低地上高を上げたことでラフロードでの走行性能を高めているからだ。しなやかな乗り心地や軽快感ではセダンのB4が上回る。

アウトバックの運動性能は、SUVやミニバンと比べると高い。より気持ちよく走ることが可能だ。

アウトバックでお勧めの年式は、大幅改良後の2017年式モデルだ。アイサイトの機能もバージョンアップした上に、エンジンやサスペンションなども改良され、より洗練された乗り味になった。
2018年式の中古車相場は、230~300万円だ。中古車流通量が少ないため、やや幅の広い価格帯になっている。新車価格が約330~360万円なので、リセールバリューが高いモデルといえる。

お勧めグレードは、Xブレイクだ。専用シートは、撥水ファブリックと合成皮革を組み合わせ、機能性を高めている。濡れたものを気にせずガンガンと使える機能的なグレードで、アウトドアシーンによく似合う。
高級感重視ならリミテッドがよい。

ミニバンとワゴンのクロスオーバーモデル?

ホンダ ジェイド

ジェイド

ジェイドは、いかにもホンダらしいユニークさを持つ。というのも、ステーションワゴンとミニバンのクロスオーバーモデルなのだ。
ロールーフで、ステーションワゴンのようなルックスながら、グレードにより3列目シートを備える。3列目シートを備えたグレードは、2列目のキャプテンシートに2人、3列目に2人。計6人の乗車が可能だ。ただし3列目シートはとてもタイトなので、小さな子ども用か短距離用として使う前提が良いだろう。
ジェイドの2列目シートを再後端までスライドさせると、ゆったりとした空間が生まれ、3列目を床下収納すれば、ステーションワゴン並みの荷室になる。
尚、3列目シートが無く、2列目シートに3人、計5人乗りの設定もある。

搭載エンジンは、1.5Lターボと1.5Lハイブリッドだ。1.5Lターボの出力は150ps&203Nm、1.5Lハイブリッドのシステム出力は152psだ。どちらも十分な動力性能をもつ。燃費は、1.5Lターボが17.6~18.0km/L(JC08モード)、ハイブリッドが24.2km/L(JC08モード)となっている。

ジェイドの乗り心地は、やや硬めだ。速度が上がるとしなやかさを増す。キビキビとした走りも魅力的だ。静粛性もまずまずである。

ジェイドの中古車相場は、2015年式で120~160万円程度だ。新車価格が約250~290万円だったので、買い得感が出てきている。お勧めは、2列目がキャプテンシートとなる6人乗りのハイブリッドXだ。必須の純正ナビに加えて、本革シートが装備されているとさらによい。2015年式だと、5人乗りモデルの設定はない。
1.5Lターボを搭載したスポーティ仕様のRSの装備では、自動ブレーキなどの予防安全装備であるホンダセンシングと純正ナビが必須だ。

 

荷室は広くないが、超低燃費

トヨタ カローラツーリング

トヨタ カローラツーリング

カローラツーリングと、ベース車であるカローラセダン、姉妹車のカローラスポーツの全幅は以下の通りだ。

カローラツーリング 1,745mm
カローラセダン 1,745mm
カローラスポーツ 1,790mm

カローラスポーツの全幅はワイドだ。しかしカローラセダンは、日本での使い勝手を重視し、全幅を抑えている。

カローラセダンをベースとするカローラツーリングの全幅も同じだ。狭い道が多い日本でも扱いやすいサイズとなっている。

カローラツーリングの荷室容量は392Lだ。このクラスのステーションワゴンとしては、やや小さい荷室になっている。そのため、とにかく多く荷物を積みたいというニーズをもつ人には向かない。カローラツーリングは、「カローラセダンのやや地味なデザインはNG。スタイリッシュでスポーティなカローラツーリングならOK」という人にお勧めのモデルだ。

搭載される1.8Lハイブリッドの燃費は、25.6~29.0km/L(FF、WLTCモード)だ。このクラスのステーションワゴンでは世界トップレベルの超低燃費性能を誇る。

カローラツーリングの走りは、なかなかスポーティだ。低重心化されたGA-Cプラットフォーム(車台)の恩恵もあり、安定した姿勢でカーブを駆け抜ける。乗り心地も良好だ。

カローラツーリングは、2019年に出たばかりのモデルなので、中古車はまだ高値だ。中古車相場は、約180~250万円となっている。新車価格が200~300万円なので、ほとんど価格が下がっていない。これはコロナ禍による半導体不足や部品不足による、新車納期の長期化が影響していると思われる。高年式を中心に中古車の販売が好調で、中古車価格が高値を維持している状態と予想できる。買い得感が出てくるには、もう少し時間が必要だろう。

お勧めグレードは、ハイブリッドのダブルバイビーだ。カローラツーリングの人気グレードで、合成皮革のシート表皮や17インチホイール、オプティトロンメーターなどが標準装備されている。このグレードで以下などが装備されていれば、売却時に高値が付く可能性がある。

  • 9インチのディスプレイオーディオ
  • シートヒーター
  • 100V・1500kWコンセント
  • パーキングサポートブレーキ

とにかく広い荷室と優れた走行性能が魅力

7代目フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント

7代目ゴルフヴァリアントは、2014年に登場した。
このモデルには、最新世代のプラットフォーム(車台)であるMQBが採用された。最新の8代目ゴルフにも、7代目と同じプラットフォームを使っている。

ゴルフヴァリアントの特徴は、ゴルフの優れた走行性能に加え、クラスを超えた広大な荷室にあり、容量は605Lもある。この広大なスペースは、1クラスもしくは2クラス以上上のモデル並みだ。前述のカローラツーリングの荷室392Lと比べると、いかに荷室が大きいか分かるだろう。

搭載されたエンジンには、1.2Lターボと1.4Lターボ、2.0Lディーゼルターボがある(年式によって異なる)。

走行性能のレベルは非常に高い。高速道路や山道でもドライバーの操作通り忠実に動き、乗り心地はとてもしなやかだ。どの速度域でも快適な乗り心地を提供してくれる。

7代目ゴルフヴァリアントのお勧めは、2019年10月に投入された2.0Lディーゼルターボを搭載したTDIだ。340Nmという大トルクを持ち、余裕のある走りと低燃費を両立している。
ゴルフヴァリアントTDIの中古車価格は、まだ高年式であるものの順調に下がっている。中古車相場は、約280~340万円だ。新車価格は340~410万円である。あと1~2年年式が古くなれば、さらに買い得感が出てくるだろう。
お勧めグレードはTDIハイラインマイスターだ。レザーシートや運転支援機能、シートヒーターなど装備が充実している。

2015年式の場合、中古車相場は約80~150万円となる。かなり買い得感が出てきており、初めての輸入車としても選びやすい。
お勧めグレードは、1.4Lターボのハイラインかスポーティ仕様のRラインだ。とくに、Rラインは、専用エアロや専用内装などでスポーティに仕上げられている。最上級グレードらしく、装備も充実しており満足感も高いだろう。
人気グレードは中古車価格も高めだ。中古車相場は約160~180万円となっている。

 

スポーティな走りを得意とする爽快ワゴン

F31型BMW3シリーズツーリング

F31型BMW3シリーズツーリング

F31型BMW3シリーズツーリングは、2012~2019年に発売された。6代目3シリーズセダンをベースにしたステーションワゴンだ。
このモデルは全幅を1,800mmとし、立体駐車場に入庫できるようにした。そのためドアハンドルなどは日本専用品に変更されている。

搭載されたエンジンは、種類が豊富だ。最も人気の高い2.0Lディーゼルターボのほか、1.5L、2.0L、3.0Lガソリンエンジンなどが用意された。

F31型3シリーズツーリングの荷室容量は495Lと、やや小さい。リヤシートは4:2:4の3分割タイプで使い勝手はよい。

このモデルの魅力は、走りの良さにある。セダン同様、キレのあるハンドリングと高い操縦安定性を誇る。長距離移動も苦にならない、しなやかなフットワークも美点だ。高速道路から山道まで運転が楽しく感じる、数少ないスポーツワゴンといえる。

F31型3シリーズツーリングの中古車価格は、新型モデルの登場によって順調に下落している。2015年式の中古車相場は130~220万円位だ。新車価格が約450~800万円なので、かなり買い得感が出ている。

新車で人気が高かったのが2.0Lディーゼルターボ車の320dツーリングだ。このモデルの新車価格は、およそ500~610万円だった。2015年式の中古車相場は、約170~230万円だ。人気の320dツーリングも、かなり買い得感がある。

320dツーリングの中でもお勧めなのが320d Mスポーツだ。専用エアロやサスペンションなどが装備されたスポーツグレードであり、最も人気が高かったグレードだ。
人気グレードなので他のグレードよりやや高めの価格となっているが、3シリーズツーリングの走行性能をより楽しみたいならMスポーツがよい。

 

ステーションワゴンもボディタイプの選択肢にしてみよう

様々なステーションワゴンタイプのおすすめ中古車を紹介した。
子育てならミニバン、カッコよさやレジャーを楽しむならSUVというイメージを持っていた方にも、気になった車があったのではないだろうか。街乗り中心なら、ステーションワゴンも念頭に入れて検討してみると、より自身の好みに合った車に出会えるかもしれない。
輸入車が好きな人も、中古車なら買い得感がある車種もあるので是非調べてみて欲しい。