この記事の目次 CONTENTS
ラジエーターの役割
ラジエーターの交換時期と費用の目安
ラジエーター周りの部品交換について
ラジエーター故障の原因と対策
ラジエーターのメンテナンスについて
ラジエーター交換は車の買い替えも視野に

ライター紹介

2級整備士

ヒロ 現役整備士 氏

国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。 整備士ヒロのtwitter

ラジエーターは車のエンジンに関わる部品のひとつで、重要な役割を担っています。
また、付随する部品も様々あり、定期的なメンテナンスが必要となる場合があります。
この記事ではラジエーターについて知っておいてほしい知識について、現役の整備士が解説します。

ラジエーターの役割

ラジエーターはエンジンを冷やす冷却水をクールダウンさせる役割があります。
エンジンが掛かっているとき、エンジンは熱を持ちます。
エンジンを適温に保つために、エンジン内部には冷却水の通路が通っています。
熱くなったエンジンに触れた冷却水は水温が上がってしまいます。
循環のなかでエンジンを冷ますためには、上がった水温を下げる必要があるのです。
そのため、ラジエーターはエンジンにとって、必要不可欠なものです。

冷却水の通路の途中にあるラジエーターは、一般的に車のフロントに位置しています。
走行風と、クーリングファンが回転することでラジエーターに風が当たり、ラジエーターの中を通る冷却水が冷まされます。

ラジエーターの交換時期と費用の目安

ラジエーターは、昔と比べると部品の耐久性が上がっており、交換を気にする頻度は減ったかもしれません。
ラジエーターの交換はすでに冷却水が漏れている場合、もしくは漏れる恐れがある場合に必要とされます。
具体的な例は以下の場合があげられます。

  • タンク部分の破裂または劣化
  • タンクとコアの接合部分の不良または劣化
  • コア部分の損傷

交換時期

ラジエーターの交換時期は使用年数10年または走行距離10万kmを目処に、ラジエーターの劣化を気に掛けるようにしておけば良いでしょう。
ただし、車の使用環境や、車種などにより一概には言えないため、あくまで目安としてください。
ラジエーターの交換が必要となるのは、冷却水の漏れや滲みなど、不具合が発生したときです。

車の平均所有年数がおよそ7年と言われているなか、車を所有している間に交換することがないユーザーが大半です。
もちろん長年いまの車に乗っている場合、トラブルを避けるためにも、予防整備として上記のタイミングを目処にラジエーターを交換できればベストですね。

費用の目安

ラジエーター交換の費用目安について、国産車の場合は工賃+部品代で「3万円〜10万円」で想定しておくと良いでしょう。工賃も部品代も軽自動車が安く、車格が上がるにつれて高くなる傾向にあります。

ラジエーター本体の部品代は幅が広いです。
価格に幅がある理由は、ラジエーターにさまざまなタイプがあるからです。また、ラジエーターの交換は、フロントバンパーの取り外しなどが必要な場合が多く、ある程度の作業時間と交換工賃がかかってきます。

ひとえにラジエーターと言ってもさまざまなタイプのものや、車種による違いがあります。ラジエータのタイプは以下のように細かく分かれます。

  • 材質(アルミ・真鍮・銅など)
  • 容量(サイズ、何層式かなど)
  • 単体か、ラジエーターファンなどの付随部品もセットか

ラジエーター周りの部品交換について

エンジンの冷却システムは、ラジエーター以外にも複数の部品で構成されています。
大きく分けて以下の5つの部品の役割と交換時期について解説します。

  • 冷却水(LLC)
  • ウォーターホース
  • ラジエーターキャップ
  • サーモスタット
  • ウォーターポンプ

冷却水の役割と交換時期

ラジエーターの冷却水

冷却水には主に以下のような効果があります。

  • 防錆、防腐効果
  • 氷点下になっても凍らない不凍効果

エンジン内部の材質はアルミや鋳物です。
ここを冷却水が通るのですが、ただの水だとすぐに錆や腐食が発生し、冷却系統の詰まりや早期劣化につながります。
そのために防錆・防腐効果のある冷却水が用いられます。

また、水は0℃を下回ると凍りますが、冷却水は不凍効果により凍りません。
もし冷却水が凍ってしまうと、エンジンルームに巡らされた通路が塞がり、冷却水が正常に循環せずにオーバーヒートにつながるおそれがあります。

不凍効果は、冷却水の濃度により変わります。
濃度30%だと-20℃前後、濃度50%だと-30℃〜-40℃まで不凍効果があります。
交換時期は従来は車検ごと(2年に一度)が目安でしたが、ここ最近は大きく寿命の延びたLLCを採用していることが多いです。

冷却水の交換時期は、おおよその目安で使用年数だと7年〜、走行距離だと15万km〜のいずれか早い方で初回の交換を迎えます。ただし、自動車メーカーによって細かく異なります。詳しくは以下の記事も参考にしてください。

ウォーターホースの役割と交換時期

ホースは冷却水が通る車の部品と部品をつなぐ冷却水の通路です。
この通路はパイプである場合と、ゴムホースである場合があります。

ゴムホースの場合、劣化によりホースに穴が開いたり、パイプや部品との繋ぎ目から冷却水が滲んだり漏れが発生すると、交換する必要があります。
もし、そうでなくても年数が経過しゴムが硬化してる場合は、予防整備として交換するのがベストです。

交換時期は使い方や車種、エンジン、ホースの種類や場所などによって一概には言えませんし、一度も交換しないまま乗り切る場合もあります。
しかし、おおむね新車から3回目の車検以降から交換する可能性が出てくると考えておくとよいでしょう。

ラジエーターキャップの役割と交換時期

ラジエーターキャップ

ラジエーターキャップには以下の役割があります。

  • 冷却水の沸点を上げる
  • 水温変化による冷却水の体積の増減を調節

冷却水はエンジンが温まった状態になると、100℃を超えることも珍しくありません。
大気圧では100℃を超えると水は沸騰してしまいますが、エンジンの冷却システム内で冷却水が沸騰してしまうと、部品の損傷やオーバーヒートにつながります。
水は加圧すると沸点が上がる性質があります。
ラジエーターキャップはエンジン冷却システム内を加圧して、水温が100℃を超えても沸騰しないようにしています。

また、水は熱くなると膨張する性質があります。
膨張して行き場のなくなった冷却水は、ラジエーターキャップの加圧弁作用により、リザーバータンク(サブタンク)に逃がします。
逆に冷えると負圧弁作用により、リザーバータンクから冷却システム側に吸い出します。

ラジエーターキャップの交換時期は5〜7年が目安です。
ラジエーターキャップがテスターで圧を保持できない、または加圧できないことが確認できれば交換推奨です。
また、長年ラジエーターキャップが未交換で年数が経過した古い車の場合は、ラジエーターキャップを交換したことで、これまで掛かっていなかった圧力が急に掛かります。
すると冷却システムに負荷がかかり、弱った箇所から漏れが発生するリスクもあるので注意しましょう。

サーモスタットの役割と交換時期

サーモスタットは、ラジエーターに冷却水を循環させるかさせないかを、水温によって弁を開けたり閉めたりすることで切り替えている部品です。
冷間時は冷却水をラジエーターに循環させないことで、早くエンジンが温まるようにします。
逆に水温が上がり冷やす必要が出てくると、弁を開き冷却水をラジエーターに循環させます。
この双方の働きにより、エンジンが効率の良い温度(環境)で働くことができるように調整しています。

交換時期は以下のとおりです。

  • 部品がついているところから、冷却水の漏れが見受けられるとき
  • オーバーヒートを起こしたとき

当然ながら予防的に交換するのかベストですが、基本的には定期交換部品ではなく、悪くなれば交換という認識でOKです。

ウォーターポンプの役割と交換時期

ウォーターポンプは、エンジン冷却システム内の冷却水を循環させるための、羽根がついた水車のような部品です。
一般的には以下のような駆動方式です。

  • タイミングベルト式の車は、タイミングベルトにより駆動されています。
  • タイミングチェーン式の車は、ドライブベルトまたは電動で駆動されています。

ウォーターポンプの交換時期は、タイミングベルト式の車だとタイミングベルトと同時に交換を提案される場合が多く、日本車の場合は10万km前後です。

また、タイミングチェーン式の車やタイミングベルト式の車の場合でも、冷却水が漏れたり回転軸の劣化や異常による異音の発生がない限りは、交換しないパターンがほとんどです。

近年ではマイカーで交換したこともなければ、存在を知らない人も多いです。
よって、交換時期は無交換〜10万km前後と捉えておきましょう。

ラジエーター故障の原因と対策

ラジエーターが故障するとどのような症状が出るのでしょうか。
また、そうならないために対策できることはあるのか解説します。

症状のパターンは大きく2つある

ラジエーターの故障は大きく分けて以下の2つのパターンです。

  • 冷却水漏れ
  • 詰まりによるオーバーヒート

いずれも最終的には、オーバーヒートにつながります。
オーバーヒートすると、メーター内の水温計がH側・赤いゲージに振り切ります。
最近の車はゲージがなく、メーター内に赤い高水温警告灯が点灯します。

また、症状では前兆としてエアコン(冷房)の効きが悪くなることがあります。
冷却水漏れの場合は、車のエンジン下部付近にピンクや緑、青といった色のついた冷却水が滴下した跡がある場合があります。
ひどくなると、地面に冷却水の水たまりができるほどです。
冷却水漏れを見つけた場合は、整備工場で漏れ箇所の診断をしてもいましょう。

ちなみにオーバーヒートした場合は、ただちに安全な場所に車を停車させ、A/Cオフでヒーターを最大風量&MAX HOTにします。

故障の原因

ラジエーターの故障原因の多くは経年劣化です。
車の年式が古くなり、走行距離が増えるほど故障のリスクが高まります。新車保証が適用されるほどの新しい車であれば、部品の初期不良の可能性が考えられます。

冷却水漏れが起こる原因はラジエーターの樹脂タンクが硬化し割れたり、タンクとラジエーターコアの接合部分のカシメ不良・劣化があげられます。
稀に、飛び石によりラジエーター本体が損傷して冷却水が漏れることもあります。

ラジエーターの詰まりは、とくに年式の古い車において、冷却水のメンテナンス不良による冷却水系統内の腐食や錆が原因で発生します。
また、添加剤や漏れ止め剤などが原因でラジエーターが詰まることもあります。
どうしても添加剤を使用する場合には、適切な使い方や効果を把握・理解したうえで使用しましょう。

故障の対策

ラジエーターの故障を予防する対策はあるのでしょうか。
もっとも大切なことは、適切なタイミングで定期的に冷却水を交換することです。
交換時期は車の取扱説明書に記載されてることが多いです。
また、過剰な添加剤の投入や、不要な漏れ止め剤の使用を控えるようにしましょう。

ラジエーターのメンテナンスについて

基本的にはラジエーターに関して、日頃からユーザー自身でメンテナンスすることはありません。
日常点検として、エンジンが冷えている状態でエンジンルーム内にあるリザーブタンク内の冷却水の量が、LOWレベルとFULL(MAX)レベルの間にあるか確認する程度でOKです。
ある程度の増減はあるので、極端に量がおかしくない限りは心配の必要はありません。

ラジエーター交換は車の買い替えも視野に

ラジエーターの交換が必要となる場合は、年式が古くなり走行距離も延びていることが多いです。
また、付随する冷却システムの部品の交換が必要であったり、オーバーヒートを起こしてエンジンがダメージを受けている可能性もあります。

場合により高額な修理となるときには、年式や走行距離も踏まえて買い替えを検討するよい機会かもしれませんね。
また、ラジエーターは電気自動車においてもモーターやインバーターの冷却のために必要不可欠なものです。
ぜひこれを機に、車にとって重要な「ラジエーター」の存在を知っていただけたらと思います。