ヴォクシーvsセレナ

5ナンバーのミニバンは、爆発的なSUVブームに押されていたものの、モデル後期でも相変わらず安定した販売台数を維持している。中でもトヨタ ヴォクシー&ノアは、いち早くフルモデルチェンジした、最も売れているモデルである。続く人気モデルは日産セレナだ。
今回はミニバンナンバー1を争うヴォクシー&ノアとセレナの燃費や室内、安全装備などを徹底的に比較評価した。

この記事の目次 CONTENTS
トヨタ ヴォクシー&ノアの特徴
日産セレナの特徴
燃費性能は最新のヴォクシー&ノアが圧倒
意外とコスパに優れたヴォクシー&ノア
セール中のセレナ、大幅値引きに期待
迫力重視のデザインなら、ヴォクシー&ノア
広さをアピールするセレナ。使い勝手に優れるヴォクシー&ノア
国産車トップレベルの予防安全性能を得たヴォクシー&ノア
走行性能でトップレベルの実力をもつヴォクシー&ノア
両車手堅い人気で、高いリセールバリューを維持
セレナはフルモデルチェンジ待ちがベスト
新型トヨタ ヴォクシー、ノア 価格・スペック
日産セレナ価格・スペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

トヨタ ヴォクシー&ノアの特徴

ヴォクシー ヴォクシー
ノア ノア

2022年1月、トヨタ ヴォクシー&ノアは7年振りにフルモデルチェンジし4代目となった。今回のフルモデルチェンジでは、ミニバンにしか実現できないうれしさを一層進化させている。テーマは「より快適に」「より便利に」「より安心な」みんなのミニバンだ。

今回のフルモデルチェンジは、かなり力の入ったものとなった。
デザインは、3代目ヴォクシー&ノアのイメージを少し残しつつ、とにかく迫力・インパクトを重視した。ひと目でヴォクシー&ノアと分かる、話題のデザインとなっている。

1.8Lハイブリッドシステムも刷新された。よりパワフルで使いやすく、さらに燃費も向上している。燃費値は、クラストップだ。
また、従来モデルの弱点だった予防安全装備も飛躍的に進化した。たくさんの機能がプラスされ、より多くの事故パターンに対応可能になった。予防安全装備の機能は、国産車トップレベルだ。
その他、新開発の4WDに使い勝手面の向上など、もはやライバル車に付け入る隙を与えないほどの高い完成度を誇っている。

【補足】ヴォクシーとノアの違いは?

ヴォクシーとノアは、トヨタのミニバンで兄弟車として位置付けられている。ヴォクシーとノアの違いは外観・内装のデザインや重量だ。プラットフォームと基本構造が同一のため、ボディサイズや室内サイズは同じである。
また、ノアはヴォクシーに比べてグレード数が多い。そのため、ノアの方が価格帯の幅も広い。

 

日産セレナの特徴

セレナ セレナ

2016年に登場した現行の日産セレナには、プロパイロットをいち早く用意した。高速道路などで同一車線内を維持しながら、全車速で前走車に追従する機能だ。

2018年には1.2Lシリーズハイブリッドシステムのe-POWERを設定し、優れた燃費値を実現している。e-POWER搭載モデルは、2018年度(2018年4月~2019年3月)、5ナンバーミニバン国内販売台数ナンバー1を獲得している。
セレナは、非常に大きいバックドアを持つ。そのため、後方に十分なスペースが無いとバックドアが開けられない。だがセレナは、上部のガラス部分だけが開くので、狭い場所でも荷物の出し入れが容易だ。使い勝手にも優れている。

燃費性能は最新のヴォクシー&ノアが圧倒

1.燃費比較

ヴォクシー&ノアの評価は 4.5
セレナの評価は 3.0

燃費性能は以下の通りだ。(すべてFF、WLTCモード)

  ハイブリッド車 ガソリン車
ヴォクシー&ノア 23.0km/L(1.8L) 15.0km/L(2.0L)
セレナ 17.2~18.0km/L(1.2L) 13.2km/L(2.0L)

ハイブリッド車、ガソリン車共に、ひと目でヴォクシー&ノアがセレナに圧勝していることが分かる。セレナは、設計が古いので仕方のない部分が大きいが、それでもヴォクシー&ノアの燃費性能は凄い。
ハイブリッド車の燃費を比較すると、約20%以上も差がついた。ヴォクシー&ノアの1.8Lハイブリッドシステムはより効率が上がり、さらに軽量・小型化されている。そのため、セレナの車重が1,760~1,780kgなのに対して、ヴォクシー&ノアは1,640~1,670kgだ。セレナは110~120kgも重い。
また、セレナの1.2L e-POWERは、2代目ノートのシステムをパワーアップし流用したものだ。やはり、多少無理がある。

ガソリン車の燃費差は、12%程度にとどまっている。車重はヴォクシー&ノアが1,610~1,640kgで、セレナは1,650~1,720kgだ。セレナの方が40~80kg重い。
実は車重以上に燃費に影響が大きいのが、エンジン効率である。ヴォクシー&ノアには、燃費アップ効果が大きいアイドリングストップ機能が装備されていない。アイドリングストップ機能を付けなくてもセレナに勝てたのは、この優れたエンジンが主要因だ。

出力でも大きな差がついている。ヴォクシー&ノアの2.0Lエンジンの出力は170ps&202Nmで、セレナの2.0Lエンジンは、150ps&200Nmだ。ヴォクシー&ノアの2.0Lエンジンは低燃費でパワフルということになる。
ただし、環境が重視される時代に、アイドリングストップ機能が無いのはマイナス評価だ。

意外とコスパに優れたヴォクシー&ノア

2.価格比較

ヴォクシー&ノアの評価は 4.0
セレナの評価は 2.5

トヨタ ヴォクシー&ノアの価格は、3,090,000円(2.0LガソリンS-Gグレード、FF)~3,960,000円(1.8LハイブリッドS-Z E-Fourグレード、4WD)だ。
先代モデルより、ざっくり40万円位高価になっている。最上級グレードにオプションをプラスすれば、軽く400万円を超える高級ミニバンになった。

日産セレナの価格は、2,576,200円(2.0LガソリンXグレード、FF)~3,809,300円(1.2L e-POWER ハイウェイスターGグレード、FF)だ。

ガソリン車のエントリーグレードを比較してみよう。
セレナのXグレードは、かなり安価でシンプルな仕様だ。対するヴォクシー&ノアのS-Gグレードは、なかなか装備が充実している。
多少の装備差はあるものの、優れた燃費値と力強いエンジン、世界トップレベルの予防安全性能を含めると、ヴォクシー&ノアのコストパフォーマンスは優れている。

意外だったのが、最上級グレード比較だ。
セレナe-POWERには、FF(前輪駆動)しかなく価格は3,809,300円(1.2L e-POWER ハイウェイスターGグレード、FF)だ。対するヴォクシー&ノアの最上級グレードは、同じFFだと3,740,000円(1.8LハイブリッドS-Zグレード、FF)である。
なんと、最新ヴォクシー&ノアの方が7万円ほど安価な設定だ。国内トップレベルの予防安全性能や優れた燃費性能などを含め、トータルで考えるとヴォクシー&ノアの方がコストパフォーマンスに優れるといえる。

 

セール中のセレナ、大幅値引きに期待

3.購入時の値引き術

ヴォクシー&ノアの評価は 3.5
セレナの評価は 4.5

トヨタ ヴォクシー&ノアは2022年1月にフルモデルチェンジしたばかりだ。デビュー直後かつ超人気モデルなので、本来なら値引きゼロが基本だ。しかし現状は半導体・部品不足などで、いつ納車できるかわからない。トヨタサイトによると、ヴォクシー&ノアのハイブリッド車の納期は、4月1日現在で6ヶ月以上となっている。納車遅延による顧客対応の一環として、10万円程度の値引きが提示されているようだ。
加えて2022年春にライバル車であるホンダ ステップワゴンがフルモデルチェンジする。そのため、今のうちに1台でも多く受注したいという営業面の戦略もあり、値引きしてでも需要を先取りしたい傾向もあるようだ。

ただし、何の準備もせずに商談に臨めば、値引きはゼロになる可能性が高くなる。
ポイントは、ライバル車である日産 セレナやホンダ ステップワゴンとの競合だ。競合車の見積りを先に取ってからヴォクシー&ノアの商談に向かいたい。
あくまでは、本命は競合車だと思わせることが重要だ。商談中、「競合車はかなり値引きしてくれた」という情報を営業マンに入れるのも忘れずに。支払いはなるべく安いほうがよいという姿勢で商談するとよい。

対するセレナは、2016年にデビューしているため、モデル後期に入っている。いつフルモデルチェンジしてもおかしくない状態だ。こうなると、売り手側は大幅値引きしてでも売りたいと考えるだろう。
ヴォクシー&ノアやステップワゴンなどの、競合車の見積りを先に取り商談に向かえば、大幅値引きは容易に引き出させるだろう。すぐに注文書にサインせず、じっくりジリジリとさらなる値引きを目指したい。
「クルマの性能はヴォクシー&ノアの方が優れているので、セレナを買うならその分、安くしてもらえないと」という姿勢で商談してみるとよい。

迫力重視のデザインなら、ヴォクシー&ノア

4.デザイン比較

ヴォクシー&ノアの評価は 4.0
セレナの評価は 3.5

ヴォクシーの外観 ヴォクシーの外観

トヨタ ヴォクシー&ノアのデザインテーマは「堂々・躍動的な力強いハコ」スタイルを追求した。ヴォクシーは、ラウンディッシュな薄型アッパー部と分厚くスクエアなロア部を組み合わせ、睨みの効いた迫力あるデザインとなった。

ヴォクシーのフロントフェイス ヴォクシーのフロントフェイス

視覚的ボリュームが下部に集まっているため、どっしりとした安定感のあるフェイスになっている。もはや、フェイスの3分の2くらいがグリル化しているのが特徴だ。

ヴォクシーのリヤエンド ヴォクシーのリヤエンド

ノアのラウンディッシュな薄型アッパー部は、ヴォクシーと共通している。3代目ノアのイメージをやや継承し、水平基調の極太バー形状のグリルが採用されている。とくに押し出し感をアピールしているのが、エアロモデルのS-Zグレードだ。3代目ノアよりやや前方に張り出すようなデザインにすることで、押出し感を強調している。ダークメッキ調のグリルも、かなり迫力がある。
リヤビューは、ほぼヴォクシー&ノア共通のデザインだ。やや太めのL字型のコンビネーションランプは、サイド部分まで回り込みワイド感と力強さを演出した。夜間でもひと目でヴォクシー&ノアと分かるユニークなデザインだ。

セレナの外観 セレナの外観

対する日産セレナは、2019年のマイナーチェンジでより迫力重視系へ変化した。

セレナのフロントフェイス セレナのフロントフェイス

フロントフェイスは、「ダブルVモーショングリル」で迫力をアップした。人気のハイウェイスター系は、細かいクローム長のブロックを水平に並べ、高級感と押し出し感あるフロントマスクに仕上げている。アーバンクロムというグレードはブラッククローム塗装を施し、スポーティさもプラスされている。

セレナのリヤエンド セレナのリヤエンド

リヤビューは、ハイウェイスターには縦長のリヤコンビランプを装備した。標準グレードと差別化しつつ、安定感のあるシルエットになった。標準グレードも縦だが、視覚的ボリュームが上部に集中しているため、やや腰高感がある。

両車共に迫力を重視したデザインになっているのは、迫力系デザインが売れる条件になっているからだ。ただ、セレナはデビュー時、スポーティさを意識したデザインだったので、ボンネットが前方に向けてやや傾斜している。そのため、ヴォクシー&ノアと比べるとやや顔が小さく見える。迫力重視ならヴォクシー&ノア。スポーティな方が好みならセレナという選択になる。

 

広さをアピールするセレナ。使い勝手に優れるヴォクシー&ノア

5.室内空間と使い勝手

ヴォクシー&ノアの評価は 4.0
セレナの評価は 4.0

トヨタ ヴォクシー&ノアと日産セレナのボディサイズとホイールベースは以下の通りだ。

車種 モデル 全長×全幅×全高 ホイールベース
ヴォクシー ハイブリッドS-Z FF 4,695mm×1,730mm×1,895mm 2,850mm
セレナ e-POWERハイウェイスターG FF 4,770mm×1,740mm×1,865mm 2,860mm
  • ヴォクシー&ノア…全車3ナンバー
  • セレナ…ハイウェイスター以外5ナンバー(1,695mm)
ヴォクシーのフロントシート ヴォクシーのフロントシート
ヴォクシーの2列目シート ヴォクシーの2列目シート
ヴォクシーの3列目シート ヴォクシーの3列目シート

ヴォクシー&ノアはフルモデルチェンジを経たが、先代に比べ室内はそれほど広くなっていない。

セレナのフロントシート セレナのフロントシート
セレナの2列目シート セレナの2列目シート
セレナの3列目シート セレナの3列目シート

対する日産セレナは、2016年のデビュー時にはクラストップの室内空間をアピールしていた。全長もヴォクシー&ノアより長いので、セレナの室内はヴォクシー&ノアより若干広く感じる。大差はないが、少しでも広いほうが良いのであればセレナという選択になる。

ヴォクシーの荷室 ヴォクシーの荷室

使い勝手面では、ヴォクシー&ノアもかなり便利になった。大きなバックドアは、後方に十分なスペースが無いと開けることができない。だが「フリーストップバックドア」を世界で初めて採用し、かなり使いやすくなった。バックドアを軽く押すことで任意の角度で保持することができる機能だ。
また、パワースライドドア装着車ならオプションで「ユニバーサルステップ」(助手席側)を設定できる。パワースライドドア開閉と合わせてドア下部からステップを展開・格納してくれる。簡単なカラクリ機能とすることで、オプション価格33,000円という安価な設定を実現した。子供や高齢者の乗降が非常に便利になる。

セレナの荷室 セレナの荷室

対するセレナは、荷室でもミニバンクラスナンバー1レベルを維持している。3列目シートは、ヴォクシー&ノアと同じく左右跳ね上げ式だ。跳ね上げた状態でロックする手間は、フックにかけるだけでOKなヴォクシー&ノアの方が利便性は高い。
セレナはデュアルバックドアを採用している。大きなバックドアの開閉時に、上部の約上半分くらいのガラス部分を分割して開くことが出来るのだ。この機能もなかなか利便性が高い。

国産車トップレベルの予防安全性能を得たヴォクシー&ノア

6.安全装備の比較

ヴォクシー&ノアの評価は 4.5
セレナの評価は 3.0

ヴォクシーのインパネ ヴォクシーのインパネ
ヴォクシーのメーター ヴォクシーのメーター

トヨタ ヴォクシー&ノアの予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」は、クラスを超え国産車トップレベルの実力をもつモデルへと飛躍的に進化している。
メインの自動ブレーキ関連機能は多岐にわたる。検知対象は、昼夜の歩行者と自転車、昼間の自動二輪車だ。ここまで広く網羅している自動ブレーキは、国産車では今のところ最新のトヨタセーフティセンスのみとなる。
加えて、交差点などで右左折時の歩行者、右折時の対向車なども検知する。
事故の多い交差点内など、実際の交通事故パターンに合致させリスクを軽減する機能もプラスされた。

一般道で活用できる機能が、プロアクティブドライビングアシストだ。「歩行者の横断」「飛び出してくるかもしれない」など、運転の状況に応じたリスクを先読みし、歩行者や自転車、駐車車両に近づきすぎないように操舵や減速操作をサポートする。慣れるとリスク軽減をしつつ、ドライバーの疲労軽減に役立ってくれるだろう。
例えばこんなアシストをしてくれる。

  • 前方に横断中の歩行者などを検知→自動で早めの減速
  • 側方歩行者や自転車、駐車車両との距離が近い→減速しながら距離を取るよう、ステアリング操舵の支援
  • 現在の速度では目の前のカーブが曲がれないと判断→減速

前方に信号待ちに停車中車両がある場合、アクセル操作がオフの状態であれば、ドライバーより早く減速制御が入る。そのままアクセルを踏まなければ、ゆるやかに前方停止車両近くまで減速する。(停止はドライバーが自らブレーキを踏む必要がある。)
ある程度クルマに任せていれば、アクセルとブレーキを踏みかえる回数も大幅に減り、疲労軽減にもつながるだろう。

高速道路での渋滞時、レーダークルーズコントロールはドライバーの疲労とリスク軽減に大きく貢献するだろう。高速道路で使用する車線を維持しながら、前走車に全車速追従走行してくれる。さらに、アドバンストドライブも用意された。約40km/h以下の渋滞時にハンズオフが可能になる。

ヴォクシー&ノアは、国産車世界トップレベルの実力をもつトヨタセーフティセンスを装備した。
対するセレナの予防安全装備は、やや物足りなく感じてしまう。

セレナのインパネ セレナのインパネ
セレナのメーター セレナのメーター

セレナの自動ブレーキは、車両と歩行者のみの設定だ。日産の予防安全装備は、360°セーフティアシストという。自動ブレーキの他、以下のような機能が用意されている。

  • 踏み間違い防止アシスト
  • インテリジェントBSI(車線変更時などに後側方から接近する車両がある場合、警報または接触を避けるためステアリング操作をアシストする)
  • アラウンドビューモニター(車両周辺に装備されたカメラ映像を加工し、自車を俯瞰から見た映像に変換して死角を無くす)

ミニバンは死角が多いので、うっかり接触のリスクを軽減している機能は重宝するだろう。さらにアラウンドビューモニターには、移動物検知機能がある。カメラが映す範囲外から接近する移動物を検知してくれるので、より安全で便利だ。

セレナの予防安全・運転支援機能は、ローテクな装備が多いものの、ほとんどのグレードに標準装備されている。ただし、サイド&カーテンエアバッグがオプションなのはマイナス要因だ。必ずオプション選択したい。

予防安全装備は、日進月歩である。2016年デビューのセレナでは、先進予防安全装備面は、少々厳しい状況下にある。

 

走行性能でトップレベルの実力をもつヴォクシー&ノア

7.走行性能の比較

ヴォクシー&ノアの評価は 4.0
セレナの評価は 3.0

ヴォクシーのエンジンルーム ヴォクシーのエンジンルーム

トヨタ ヴォクシー&ノアのプラットフォーム(車台)は、Cセグメント用のGA-Cを改良して使用している。運動性能を高めるために重心を低くしているので、背の高いミニバンとの相性がよい。走りだすと、明確に重心の低さを感じる。カーブでは、先代モデルよりグラグラと頭が振られることもなく、車体はピタッと落ち着いている。

ボディの高剛性化も図られ、サスペンションもしっかりと動くようになった。乗り心地はさらなる快適さを実現している。速度高めで大きな凸凹だと、リヤサスペンションが多少ドタバタする。だが先代モデルと比べるとかなり乗り心地はよい。

静粛性は先代ヴォクシー&ノアでも十分高いレベルにあった。だが新型はさらに上をいく。ハイブリッド車は、まるで高級車のような静粛性となった。
ガソリン車も基本的に静粛性は高いのだが、高回転域ではエンジン音が車室内に入り賑やかになる。また、アイドリングストップ機能が付いていないので、エンジン音は常に車内に入ってくる。

1.8Lハイブリッドシステムは、ほぼ全てを刷新した。モーターとバッテリーが高出力化されている。
先代の1.8Lハイブリッドシステムは、とにかく非力だった。車重が重かったのが要因だ。
しかし、刷新されたハイブリッドシステムは、かなり力強くなった。とくに低・中速域に大きな差がある。街中でのパワー不足を感じることはなく、むしろ力強さを感じる。先代ユーザーが新型に乗れば、走り出した瞬間にパワフルさを感じるほどだ。しかも、アクセルレスポンスもよい。パワーアップした結果、モーターのみで走行する時間が長くなり、車内の静粛性も高くなった。
パワーアップしながら、燃費もアップ、さらにコンパクトになっているのだから、非常に完成度の高いハイブリッドシステムといえる。

2.0Lガソリンエンジンも非常に高い仕上がりを見せた。セレナを圧倒する出力である170ps&202Nmを発生させる。このクラスのガソリンエンジンでは、トップレベルの高出力だ。
このエンジンは、やや高回転型である。エンジンが高回転域に入ると、かなりパワフルだ。パンチの効いた加速が味わえる。
エンジン音は低回転時では気にならなかったが、高回転時にかなり賑やかになるところが少々残念だ。

セレナのエンジンルーム セレナのエンジンルーム

5代目日産セレナは、2016年にデビューしたモデルで、すでにモデル後期に入っている。しかも、プラットフォーム(車台)は4代目セレナの改良版だ。そのため、どうしても走行性能面では、古さを感じてしまう。
カーブでは重心の高さを感じ、ボディ上部が揺さぶられる印象が強い。高速道路などでも、大きな路面の凹凸ではクルマが暴れるよう動きになってしまう。デビュー当時は、それでもまずまずな操縦安定性だった。だが、ライバル車がより力を付けているので、少々差が開いてしまった。これは、設計が古いので仕方のない部分だ。

セレナのハイブリッド車であるe-POWERは、先代となる2代目ノートe-POWERのパワーアップバージョンだ。136ps&320Nmの出力をもつ。
セレナe-POWERはモーターで走行するため、低・中速域ではなかなか力強い走りをみせる。ただし、高速域に入るとややパンチ不足になる。そもそもミニバンで飛ばす人は少ないので、十分な動力性能といえる。

ただ、最新のヴォクシー&ノアと比べると、若干力不足な印象を受ける。これも、設計が古いので仕方がない。やや非力だった先代ヴォクシー&ノアと比べると、セレナe-POWERは力強さで勝る。

静粛性でも新型ヴォクシー&ノアが圧倒する。セレナe-POWERは、容量の小さい駆動用バッテリーを搭載しているため、とにかく頻繁にエンジンが始動する。信号待ちでも「ブーン」とアイドリング状態より高めの回転数で発電をするので、かなり賑やかだ。走行中であれば、それほど気にならないレベルになる。

セレナの2.0Lマイルドハイブリッド車の出力は150ps&200Nmのエンジンに小さな2.6ps&48Nmのモーターが組み合わされている。モーターの出力が小さいので、エンジンをアシストしていることも分かりにくい。それに加え、当時、燃費を意識し過ぎたためか、とにかく低速トルクが細い。街中から高速まで、全域でレスポンスが物足りなく非力感もある。デビュー当時は競争力のある燃費だったが、最新のヴォクシー&ノアには敵わない。

セレナにも、新型ヴォクシー&ノアのガソリン車よりも優れている点がある。アイドリングストップ時の静粛性と、エンジン再始動時の快適さだ。
新型ヴォクシー&ノアには、アイドリストップ機能が無いので、常にエンジン音が聞こえる。だがセレナにはアイドリングストップ機能が装備されているので、停止時はとても静かである。エンジンの再始動はマイルドハイブリッドシステムのモーターが行うため、キュルキュルブォーンという音も振動も無く静かだ。これは、セレナの美点といえる。

両車手堅い人気で、高いリセールバリューを維持

8.リセールバリュー比較

ヴォクシー&ノアの評価は 4.0
セレナの評価は 4.0

トヨタ ヴォクシー&ノア、日産セレナは共に高リセールバリューで有名なモデルだ。5ナンバーミニバンは、安定した手堅い人気がある。SUV人気の現在もリセールバリューは非常に高い。

ヴォクシー&ノアは新型が登場したので、今後下取りに入った先代モデルがどんどん中古車マーケットに流れてくる。新型が出た影響による人気の下落や、需要を超える中古車流通量になりそうなので、先代ヴォクシー&ノアの中古車価格は徐々に下がると予想できる。そうなれば先代モデルのリセールバリューも下がるので、売却を考えているなら、なるべく早めに手放したい。

新型ヴォクシー&ノアは出たばかりの新型車なので、リセールバリューは不透明だ。しかし、新車販売も絶好調なので、従来通り高いリセールバリューとなるのは確実だろう。
新型ヴォクシー&ノアで、より高いリセールバリューが期待できるのは、より人気があるハイブリッド車だ。以下のオプションが付いていると、より高値が付くだろう。

  • ハンズフリーデュアルパワースライドドア
  • パワーバックドア
  • 10.5インチディスプレイ

日産セレナも高いリセールバリューを維持している。
2018年式e-POWER車の中古車相場は、おおよそ250~320万円だ。新車価格が300~380万円だったので、新車価格の83~84%と非常に高値を維持し続けている。
セレナも、そろそろフルモデルチェンジ時期が近い。売却や乗換えを考えているのであれば、新型が出る前がおすすめだ。新型が登場すれば、リセールバリューが少し下がる可能性が高い。
セレナでより高いリセールバリューとなることが予想できるのは、専用エアロなどを装備した非常に人気の高いハイウェイスター系のe-POWERモデルだ。オプションでは、純正ナビとなるだろう。

両車共に、より高いリセールバリューとなることが期待できるボディカラーは、白・黒系だ。ヴォクシー&ノアは、ほとんどモノトーンばかりなのでリスクは低いが、セレナにはオレンジや赤系がある。よい色だが、リセールバリューは人気が大きな要因を占めるため、こうしたカラーを選択すると大きくリセールバリューを下げるケースがあるので注意が必要である。

セレナはフルモデルチェンジ待ちがベスト

まとめ・総合評価

日産セレナは2016年登場のモデルなので設計が古い。最新のトヨタ ヴォクシー&ノアと比べると、ほぼすべての面において、大きな差がついている。そのため、クルマの性能で評価すれば、間違いなくヴォクシー&ノアを選んだほうがよい。

ただし、まだクルマを買うまで少々時間があるというのであれば、そろそろフルモデルチェンジが予定されているという新型セレナの登場を待つというのもありだ。

気を付けなければならないのが、下取車の車検だ。2022年4月現在、トヨタHPには、新型ヴォクシー&ノアの納期は、ハイブリッド車で6ヵ月以上と記載されていた。
つまり車検が切れる1年前くらいから商談しないと、新車の納車前に下取車の車検が切れる可能性がある。これだけ納期が長くなると、下取車の価格もかなり曖昧になるのは間違いない。注文書に下取り車の価格が記載される前に、必ず買取店などで査定し、下取車の価格が妥当かチェックしておくとよい。

  ヴォクシー&ノア セレナ
総合得点(40点満点) 32.5 27.5
1.燃費 4.5 3.0
2.価格 4.0 2.5
3.購入時の値引きしやすさ 3.5 4.5
4.デザイン 4.0 3.5
5.室内空間と使い勝手 4.0 4.0
6.安全装備 4.5 3.0
7.走行性能 4.0 3.0
8.リセールバリュー 4.0 4.0

新型トヨタ ヴォクシー、ノア 価格・スペック

新型トヨタ ヴォクシー、ノア価格

■ヴォクシー 2.0Lガソリン車

  FF 4WD
S-G 7/8人乗り 3,090,000円 3,288,000円
S-Z 7人乗り 3,390,000円 3,588,000円

■ヴォクシー 1.8Lハイブリッド車

  FF 4WD
S-G  7/8人乗り 3,440,000円 3,660,000円(7人乗り)
S-Z  7人乗り 3,740,000円 3,960,000円

■ノア 2.0Lガソリン車

  FF 4WD
X 7/8人乗り 2,670,000円 2,868,000円
G 7/8人乗り 2,970,000円 3,168,000円
Z 7人乗り 3,240,000円 3,438,000円
S-G 7/8人乗り 3,040,000円 3,238,000円
S-Z 7人乗り 3,320,000円 3,518,000円

■ノア 1.8Lハイブリッド車

  FF 4WD
X 7/8人乗り 3,050,000円 3,270,000円(7人乗り)
G 7/8人乗り 3,320,000円 3,540,000円(7人乗り)
Z 7人乗り 3,590,000円 3,810,000円
S-G 7/8人乗り 3,390,000円 3,610,000円(7人乗り)
S-Z 7人乗り 3,670,000円 3,890,000円

トヨタ ヴォクシー燃費、ボディサイズなどスペック

 
代表グレード トヨタ ヴォクシー ハイブリッドS-Z(FF)
ボディサイズ 全長4,695mm×全幅1,730mm×全高1,895mm
ホイールベース 2,850mm
車両重量 1,670kg
総排気量 1.797cc
サスペンション前/後 マクファーソンストラット/トーションビーム
エンジン最高出力 72kw(98ps)/5,200rpm
エンジン最大トルク 142N・m(14.5kg-m)/3,600rpm
モーター最高出力 70kw(95ps)
モーター最大トルク 185N・m(18.9kg-m)
システム全体 103kw(140ps)
ミッション 電気式無段変速機
WLTCモード燃費 23.0km/l

日産セレナ価格・スペック

日産セレナ価格

■セレナ 1.2L e-POWER 7人乗り FF

e-POWER X 2,997,500円
e-POWER XV 3,226,300円
e-POWER G 3,473,800円
e-POWER ハイウェイスター 3,293,400円
e-POWER ハイウェイスター V 3,582,700円
e-POWER ハイウェイスター G 3,809,300円

■セレナ 2.0Lマイルドハイブリッド車 8人乗り

  FF 4WD
X 2,576,200円 2,824,800円
XV 2,736,800円 2,985,400円
G 3,061,300円 3,353,900円
ハイウェイスター 2,758,800円 3,051,400円
ハイウェイスター V 3,070,100円 3,335,200円
ハイウェイスター G 3,311,000円 -

日産セレナ 燃費、ボディサイズなどスペック

 
代表グレード セレナe-POWERハイウェイスターG
ボディサイズ 全長4,770mm×1,740mm×1,865mm
ホイールベース 2,860mm
車両重量 1,780kg
総排気量 1,198cc
エンジン最高出力 62kw(84ps)/6,000rpm
エンジン最大トルク 103N・m(10.5kg-m)/3,200rpm
モーター最高出力 100kw(136ps)
モーター最大トルク 320N・m(32.6kg-m)