三菱アウトランダー初代vs二代目

約8年ぶりのフルモデルチェンジとなった三菱アウトランダーPHEV。2021年12月16日の全国販売前の予約受注台数も多く、話題を集めているSUVだ。
本記事では三菱アウトランダーのフルモデルチェンジ前後の新旧比較とともに、価格面での購入ポイントについても解説をする。

この記事の目次 CONTENTS
新型三菱アウトランダーPHEVはここに注目!
走り、乗り心地などすべてが大幅深化!
コンセプト&エクステリアデザイン
インテリア&安全装備
走り、メカニズム
おすすめは2代目?それとも初代アウトランダーPHEV?
新車値引き交渉のポイント
三菱アウトランダーPHEVの価格とスペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

新型三菱アウトランダーPHEVはここに注目!

  • 2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーでテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞
  • 7人乗りで上級仕様のSUVグレード「P」もラインナップ
  • クリーンエネルギー車として補助金が見込まれる※

※実際の制度実施には、国会での補正予算案の可決・成立が必要となることに御留意ください。

本記事では三菱アウトランダーのフルモデルチェンジ前後の新旧比較とともに、価格面での購入ポイントについても解説をする。是非購入検討の参考にしてくれると嬉しい。

走り、乗り心地などすべてが大幅深化!

三菱アウトランダーPHEVの歴史・概要

PHEVとは、「プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ヴィークル」の頭文字をとった略語。ハイブリッド車との違いは、家庭など外部電源から車両の大容量バッテリーを充電する点だ。その電力を使い、通常時は一定距離をEV(電気自動車)として走行する。バッテリーの電力を使い切ると、ハイブリッド車として走行することが可能だ。
PHEVなら、送迎や通勤、買い物などの短距離移動では、ほとんどガソリンを使うことが無い。EVでは航続距離の心配があるが、PHEVなら、手に入りやすいガソリンを使いハイブリッド車として走行するので、その心配も無用だ。そのため、現実的な次世代環境車と呼ばれている。
燃料は家庭で充電出来るので、ガソリン車よりも大幅に安価だ。PHEVは、ガソリン価格高騰時代にピッタリなモデルといえる。

初代アウトランダーPHEV 初代アウトランダーPHEV

初代三菱アウトランダーPHEVは、2013年にデビューした。現在ではPHEVも珍しくなくなったが、2013年当時では世界でもまだ数少ないPHEVだった。
世界でも例を見ない、前後にモーターを設置したツインモーター4WDを採用していた。
このメカニズムが世界を驚かせた。現在でこそ、こうした機能をもつEVが出ているが、2013年当時こうした優れた機能を搭載したPHEVは三菱だけだった。
先進技術が高く評価され、初代アウトランダーPHEVは2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤーでイノベーション部門賞を受賞した。

二代目アウトランダーPHEV 二代目アウトランダーPHEV

2代目三菱アウトランダーPHEVは、2021年12月にデビューした。このモデルから、三菱・日産・ルノーのアライアンスで開発された、新プラットフォーム(車台)CMF-C/ Dが採用されている。この新プラットフォームを得たことで、2代目アウトランダーPHEVは、大幅に運動性能を高めている。
PHEVシステムは基本的に初代アウトランダーPHEVと共通だが、中身は一新されている。後輪側のモーター出力は70kWから100kWへと大幅にアップされ、後輪駆動のようなドリフト走行も可能となっている。
こうした最新プラットフォームや、走りを楽しめるPHEVシステムなどが高く評価され、2代目アウトランダーPHEVは2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー、テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

コンセプト&エクステリアデザイン

「ダイナミックシールド」の使い方が上手くなった2代目

初代アウトランダーPHEVの外観 初代アウトランダーPHEVの外観

初代三菱アウトランダーPHEVは、2015年にマイナーチェンジし、外観デザインを大幅に変更している。デビュー時の柔和で柔らかいラインで構成されたユニークなフェイスから、三菱の新デザインコンセプトである「ダイナミックシールド」が採用された。力強さとプロテクションのような安心感あるデザインだ。

初代アウトランダーPHEVのフロントフェイス 初代アウトランダーPHEVのフロントフェイス
初代アウトランダーPHEVのリヤエンド 初代アウトランダーPHEVのリヤエンド

大きく開いた台形のロアグリルデザインは、視覚的重心を下げ安定感あるフロントフェイスを生み出した。流行りの押出し感ある迫力系にまとめられている。

二代目アウトランダーPHEVの外観 二代目アウトランダーPHEVの外観

2代目アウトランダーPHEVのコンセプトは「威風堂々」だ。デザインテーマは、「BOLD STRIDE」を掲げた。

二代目アウトランダーPHEVのフロントフェイス 二代目アウトランダーPHEVのフロントフェイス

2代目アウトランダーPHEVも、三菱のデザインアイコンである「ダイナミックシールド」を採用した。多くの車種に採用した経験値からか、徐々に洗練さを増している。初代アウトランダーPHEVに感じた違和感もない。その堂々とした存在感と大きな顔は、まさにSUVの王道デザインといえる。奥行き感のある彫りの深さも加わり、ひと目でアウトランダーPHEVと分かる顔になった。

二代目アウトランダーPHEVのリヤエンド 二代目アウトランダーPHEVのリヤエンド

サイドビューでは、路面と平行に見える長いルーフが特徴だ。伸びやかで、優雅さもある。ボディサイドの面も張りが強く、逞しく見える。

インテリア&安全装備

すべての面において、2代目が圧倒!

初代アウトランダーPHEVのインパネ 初代アウトランダーPHEVのインパネ
初代アウトランダーPHEVのメーター 初代アウトランダーPHEVのメーター

初代三菱アウトランダーPHEVのインパネデザインは、いかにもSUV的でボリューム感がある。センターコンソール上部にナビやエアコン操作系を集中させ、使い勝手も良い。
ただ、2013年にデビューしたモデルであるため、今見ると先進感もあまりない。全体的に古さを感じるようになってしまった。質感もあまり高いとはいえない。

2015年のマイナーチェンジでは、質感のアップなどが行われ。しかし基本デザインは同じなので、新鮮さはない。初代アウトランダーPHEVは、ラグジュアリーSUVとしての価値を追求しているが、豪華さもあまり感じない。

二代目アウトランダーPHEVのインパネ 二代目アウトランダーPHEVのインパネ

2代目アウトランダーPHEVは、デザイン面も一新された。水平基調でスッキリしたインパネデザインは、シンプルで視界もよく好感度は高い。質感も高く、まさにラグジュアリーSUVになった。三菱のデザインは少々野暮ったくなる傾向があったが、2代目アウトランダーPHEVは、なかなかクリーンでよいデザインだ。デジタルメーターも先進性を感じる。

二代目アウトランダーPHEVのメーター 二代目アウトランダーPHEVのメーター

センターコンソールのシフトノブ部分は、いかにもSUVなタフネスさがある。4WD制御のセレクターも液晶パネルでの操作ではなく、大型のダイヤル式。極寒地などで、手袋などをしていて運転していても操作性しやすい。

初代アウトランダーPHEVのフロントシート 初代アウトランダーPHEVのフロントシート
初代アウトランダーPHEVのリヤシート 初代アウトランダーPHEVのリヤシート
初代アウトランダーPHEVの荷室 初代アウトランダーPHEVの荷室

初代アウトランダーPHEVの安全装備は、2013年デビューのため少々物足りない。初期モデルの自動ブレーキは対車両のみで、車線維持機能も警報のみだ。
歩行者検知式自動ブレーキが用意されたのは、2017年の改良後モデルからである。車線維持機能はないものの、中古車の購入を考えているのであれば、改良後モデルがおすすめだ。

二代目アウトランダーPHEVのフロントシート 二代目アウトランダーPHEVのフロントシート
二代目アウトランダーPHEVのリヤシート 二代目アウトランダーPHEVのリヤシート
二代目アウトランダーPHEVの荷室 二代目アウトランダーPHEVの荷室

2代目アウトランダーPHEVの安全装備は、初代の物足りなさを完全払拭した。自動ブレーキは、歩行者と自転車の検知が可能になった。車線維持機能もプラスされ、高速道路などでは、より安全でストレスの少ない走行が可能となっている。
その他、以下の機能も標準装備化された。

  • 後側方車両接近警報(車線変更時に頼りになる)
  • 後退時車両接近警報(駐車場をバックで出る時に後方から接近する車両を検知し警報を発する)
  • 踏み間違え防止アシスト など

トップレベルとはいかないまでも、どのグレードでも安心して乗れる予防安全装備が全車標準装備化されているのは高く評価したいポイントだ。

走り、メカニズム

三菱の電動4WDは、どちらも楽しい!

初代アウトランダーPHEVのエンジンルーム 初代アウトランダーPHEVのエンジンルーム

三菱アウトランダーPHEVの駆動用バッテリーの容量は、初代の13.8kWhから、2代目の20kWhへアップした。その結果、初代後期モデルのEV航続距離である65.0km(WLTCモード)から87.0km(WLTCモード)へ大幅に伸ばした。
車重は初代から100kg以上重くなっているにも関わらず、ハイブリッドの燃費は16.6km/L(WLTCモード)と同等レベルと維持している。
そして、PHEVシステムは前後にモーターを配置したツインモーター4WDを継承した。中身も大幅に深化している。
モーターの出力は以下の通りだ。

  フロント リヤ
初代 60kW 70kWh
二代目 85kWh 100kWh

出力は大幅にアップされている。ポイントは、リヤのモーター出力が強大なことだ。

二代目アウトランダーPHEVのエンジンルーム 二代目アウトランダーPHEVのエンジンルーム

さらに、2代目三菱アウトランダーPHEVは、プラットフォーム(車台)を刷新した。三菱・日産・ルノー3社のアライアンスにより開発されたCMF-C/Dが採用されている。このプラットフォームは、2022年登場予定のエクストレイルにも採用される予定だ。

最新のプラットフォームと、より後輪のモーター出力をアップしたPHEVシステム、そして三菱独自の4WD制御S-AWC(Super All Wheel Control)を搭載したことで、2代目アウトランダーPHEVは、SUVとは思えないほど楽しい走りを得た。
4WD制御を含むドライブモードは、初代の全5モードだったのが、2代目は全7モードへ増えた。路面状況により、最適なトラクション性能を得ることができる。
初代の4WD制御は、前後の駆動配分、前輪左右のトルク配分だったが、2代目では後輪左右のトルク配分も制御するようになった。

こうした4WD制御によって、2代目アウトランダーPHEVは、滑りやすい道でも初代以上の操縦安定性を誇る。基本的に、どのモードでも安定傾向にある。試しに滑りやすい道をややオーバースピードで進入してみたところ、瞬時に「グゥゴゴゴォ」というような作動音がした。曲がり切らないと思っていたカーブでも、何事もなかったように曲がる。この安心感は格別だ。特別なテクニックは必要なく、クルマ側がしっかりと車両を安定させている。
「自分で2代目アウトランダーPHEVをコントロールしたい」という人には、乾燥舗装路用のターマックモードが楽しい。ステアリング操作をすると、大きく重い2代目アウトランダーPHEVが瞬時に向きを変えだす。

想像以上にノーズがイン側を向くので、スピンモードに入ったような気になったが、車両は安定したままカーブを抜けた。さらにステアリングを切り込むと、リヤタイヤが穏やかに流れ出した。軽くカウンターステアをあて、アクセルを踏み続けると、大きく重いアウトランダーPHEVがドリフトしながらカーブを抜けていった。
もはや、FRのスポーツカーのような挙動だ。パワフルな100kWhのリヤモーターが良い仕事をしている。初代アウトランダーPHEVも似たような挙動で楽しかったが、さらに深化している。コントロールもしやすく、扱いやすいのも魅力だ。こうした走りができるSUVは、2代目アウトランダーPHEVだけだ。

高い操縦安定性を誇っている理由のひとつは、低重心化されていることだ。大きく重いリチウムイオン電池を床下に設置しているため、一般的なガソリン車よりも重心が低い。前後の重量バランスもよい。
初代アウトランダーPHEVはクルマの傾きが大きく、急カーブが続く道ではあまり楽しくなかった。2代目は、クルマの傾きを上手く抑え込み、フラットな姿勢で走り抜けた。乗り心地も良好で、ラグジュアリーSUVに相応しいものだ。
初代アウトランダーPHEVも静粛性は高いレベルにあった。しかし、2代目はそれ以上だ。エンジンは、かなり遠くにあるように感じる。

おすすめは2代目?それとも初代アウトランダーPHEV?

完全に初代を上回る2代目! ただし、予算次第では初代もあり?

走行性能やインテリアの質感、外観デザインなど、ほぼすべての面で2代目アウトランダーPHEVが初代を上回っている。技術の進歩とはそういうもので、仕方がない。

しかしクルマを買うとなると、予算も重要になる。そこが大きな分かれ目だ。
2代目アウトランダーPHEVの最上級グレードであるPの新車価格は約532万円だ。対する初代アウトランダーPHEVの最上級グレードGプレミアムパッケージの中古車相場は、2018年のマイナーチェンジ後である2019年式だと340~380万円程度になる。
2代目アウトランダーPHEVは補助金が約30万円出るので、車両価格は実質500万円位になる。これで計算すると、2年落ちの初代アウトランダーPHEVの中古車は2代目より120~160万円も安価になるのだ。初代アウトランダーPHEV中古車相場の予算では、2代目のエントリーグレード(約462万円)も買えない。
この価格差と、2代目アウトランダーPHEVの深化幅をどう判断するかは人それぞれだ。

新車値引き交渉のポイント

デビューから半年後位からが、値引きガードが緩む?

2代目三菱アウトランダーPHEVは、デビュー直後なのでしばらくの間は値引きゼロベースだ。コロナ禍で半導体や部品不足が長期化していることもあり、生産も不安定な状態なので、値引きに関しても不透明感が強い。
アウトランダーPHEVは三菱の看板車であるものの、価格が高い。そう簡単に売れる車種ではない、ともいえる。こうなると、一度でも来店した顧客は逃がしたくないのが本音だろう。そうすると、早めに値引き対応が行われる可能性が高い。
一般的に新車効果が下がってくるのは、発売から半年から1年後だ。大量のCMなどを打ち続けることは難しいと考えると、半年も経過すれば値引きガードも下がりそうだ。

ただし、何もせずに商談すれば値引きゼロベースなのは確実だ。値引きを引き出すためには、ライバル車と競合させることが重要である。直接的なライバル車は、トヨタRAV PHVだ。他にもハリアーハイブリッドなどはよい。直接的なライバル車関係にあるモデルが少ないので、500万円前後の輸入SUVとも競合させるのもおすすめだ。メルセデス・ベンツGLBやBMW X1、プジョー5008などがある。
ただし、輸入車はPHEVモデルがないので「本当は輸入車が欲しいと思っているが、PHEVという電動車にも興味があるのでちょっと見に来た」程度で、商談を始めるといい。

重要なのは、アウトランダーPHEVが本命と悟られないことだ。本命と悟られた瞬間から値引き額がアップする可能性はグッと低くなる。「値引きしなくても買ってくれる客」と思われないようにしよう。
なるべく1ヶ月以上かけて商談するのもいい。「いつ買ってくれるのか?」と、営業マンが痺れを切らせてくればチャンスだ。「もう少し安くなれば買う」と話し、値引きを拡大させていくといいだろう。
下取り車があるときは、下取り価格にも注意したい。新車値引きした分を取り返そうと、下取り価格を下げてくる可能性もあるからだ。2店舗くらい買取店を回り、査定してもらえば下取り車のおおよその価格が分かる。その上で、一番高値を付けたところに売却すればいい。

三菱アウトランダーPHEVの価格とスペック

三菱アウトランダーPHEV 価格

 
  5人乗り 7人乗り
M 4,621,100円 -
G 4,904,900円 4,996,200円
P - 5,320,700円

三菱アウトランダーPHEV スペック

 
代表グレード 三菱アウトランダーPHEV
全長×全幅×全高(最低地上高) 4,710mm×1,860mm×1,745mm(200mm)
ホイールベース/最小回転半径 2,705mm/5.5m
タイヤサイズ 255/45R20
車両重量 2,110kg
駆動方式 4WD
モーター最高出力 フロント:85kW、リヤ:100kW
モーター最大トルク フロント:255N・m、リヤ:195N・m
バッテリー種類/総電力量 リチウムイオン電池/20kWh
エンジン 4B12型 2.4L 4気筒
最高出力 98kw/5000rpm
最大トルク 195N・m/4300rpm
ハイブリッド燃料消費率(WLTCモード) 16.2km/L
充電電力使用時走行距離 85.0km/L
サスペンション形式(前/後) マクファーソンストラット/マルチリンク