この記事の目次 CONTENTS
タイヤをローテーション(位置交換)するメリット
タイヤローテーションの目安はいつ?
駆動式やタイヤのタイプによって異なる、ローテーションの4つのやり方
自分でタイヤローテーションを行う方法
タイヤを保管する場合に知っておいた方がよい豆知識
タイヤローテーションの費用は?
まとめ

ライター紹介

現役整備士車専門Webライター

太田 りく 氏

所有資格は整備士3級。得意な記事は車の構造やメンテナンス関連。趣味はドライブ。車が好きだったため、車とは関係のない職場から整備工場へ転職。現在は働きながら2級を目指して奮闘中。現場でのリアルな情報を読者の方にお伝えできるよう心がけていきます。

タイヤはゴムでできています。
そして、ゴムなので当然、摩擦により摩耗が起こります。
どのくらい摩耗するかは、取り付けられている場所やクルマの駆動方式によってさまざま。
しかし、偏摩耗と呼ばれる偏りの多い摩耗を起こしてしまうと、走行中の異音や振動の原因となります。
そこで、定期的にタイヤローテーションを行う必要があるのです。

タイヤローテーションの方法はいくつかあり、クルマの駆動方式によってやり方が異なります。
また、お店でお願いすることもできますし、自分で行うことも可能です。

今回はタイヤローテーションを自分で行う方法と、実施する際の注意点、店にお願いした場合の費用などについてご紹介していきます。

タイヤをローテーション(位置交換)するメリット

タイヤローテーションとは、取り付けられているタイヤの場所を入れ替える作業のこと。
定期的に行う必要がありますが、ローテーションを行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか?

タイヤの摩耗を均等にすることで、振動や異音を防ぐ

適切なタイミングでローテーションを行うことで、タイヤの摩耗を均等にできます。
クルマのタイヤは、一般的にフロントタイヤの方が減りやすい傾向にあります。
また、摩耗する場所も取り付け位置によって異なり、フロントタイヤは角が減りやすく、リヤタイヤは中央の溝が減りやすい傾向にあります。
これは、フロントタイヤはハンドルをきる際に向きが変わるため、リヤタイヤは車の向きが変わってもタイヤの向きが変わらないためです。

ローテーションを行い、ゴムの減り具合を均一にできれば、異常な振動や異音の発生を抑えることができます。
結果的に、トラブルを減らすことにつながるといえるでしょう。

タイヤゴムの減り具合の確認

ローテーションを行わなければ、当然、タイヤの摩耗に偏りが生じて振動や異音の原因になります。
平坦な道でもガタガタという振動が発生したり、ひどくなれば異音の原因になったりもします。

タイヤを長く使用することができる

適切なローテーションを行えば、タイヤは長く使用できます。

タイヤが偏摩耗するということは、特定部分の溝が少なくなってしまうということです。
クルマのタイヤ溝は1.6㎜以上ないと車検では、通りません。
そして、車検ではタイヤの中で最も溝が浅い場所の溝の深さを測定します。
つまりいくら他の部分の溝が深くても、過剰に摩耗している部分の溝が1.6㎜以下であればタイヤを交換しなければならないのです。

もちろん、車検に通らないだけでなく、そもそも溝が少ないタイヤは、スリップしやすく大変危険です。
ぜひ定期的にローテーションをして、溝の減り具合を均一にしましょう。

タイヤローテーションの目安はいつ?

タイヤローテーションは、どのタイミングで行えばいいのでしょうか?
ここでは、ローテーションを行うタイミングの目安についてご紹介していきます。

5000~1万キロごとにローテーション

最も簡単なのは、走行距離を目安にする方法です。
5000キロから1万キロごとにローテーションを行えば、タイヤの摩耗を均等にすることができます。
この方法を行う場合、いつローテーションを行ったのか覚えておく必要があります。
なお、普段あまりクルマに乗らない方の場合は数年に1回になってしまうため、ある程度走行距離が多い方にオススメです。

スタッドレスタイヤからノーマルタイヤに履き替える際にローテーション

スタッドレスタイヤをお持ちの方は、12月前後にノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへ交換をすると思います。
このタイミングでローテーションもあわせて行う、という方法もあります。
もちろん、スタッドレスタイヤからノーマルタイヤに交換する際でも問題はありません。

お店でタイヤ交換を行っている場合は、勝手にローテーションをしてくれている可能性もあります。
そのため「ローテーションした覚えがない」という方も、実は店が気を利かせてやってくれていたという場合もあるのです。

フロントタイヤの溝が半分以下になったらローテーション

フロントタイヤの溝が半分以下になった場合にローテーションする、という方法もあります。
なぜフロントタイヤを目安にするのかというと、最近のクルマはリヤよりもフロントの方が重い傾向にあるためフロントタイヤの方が減りやすいからです。
フロントタイヤの溝が減ったタイミングでローテーションを行い、溝の多いリヤタイヤをフロントに取り付け、溝の減り具合を均等にするのです。
もし、愛車のフロントタイヤの溝が大幅に減っているなら、早めにローテーションしたほうがよいでしょう。

フロントタイヤの溝

1年ごとにローテーション

ディーラーで12カ月点検を行う場合は、そのタイミングでローテーションを行うのが一般的です。

12カ月点検ではタイヤを外し、ブレーキパッドの残量や清掃を行います。
この時についでにローテーションを行えば、工賃を節約することもできます。
12カ月点検の際についでにローテーションを行なうことのメリットは、整備士の判断によってローテーションの有無を決めてもらえること。
クルマにほとんど乗っていなかったり、フロントの方が極端に溝が深かったりすれば、ローテーションを行わないなど、プロに判断を任せることができるのです。

駆動式やタイヤのタイプによって異なる、ローテーションの4つのやり方

タイヤローテーションの方法も、いくつか種類があります。
これは、駆動方式によって摩耗の仕方が違ったり、タイヤのタイプによってもやり方が違ったりするからです。

まずは、駆動方式の違いを簡単に説明していきます。
駆動方式には、FF車とFR車、4WDの3種類があります。
FF車とは「フロントエンジンフロントドライブ」の略。
フロントにエンジンが積まれており、駆動輪(エンジンから動力を受けるタイヤ)がフロント側にあるクルマです。
一方、FR車とは、「フロントエンジンリヤドライブ」の略です。
エンジンがフロントにあることは一緒ですが、駆動輪がリヤタイヤになります。
4WDは、4つのタイヤすべてが駆動輪であるクルマです。

さらに、タイヤローテーション時にはタイヤのタイプにも注意が必要です。
タイヤには、回転指示のあるタイヤとないタイヤがあります。
回転指示とは、回転の方向性が決まっているタイヤのこと。
タイヤの撥水性や運動性能を上げるため、トレッドパターンや左右非対称の溝の向きに方向性を持たせているのです。
このため、右用と左用、とそれぞれ決まっています。
そのため、左右を入れ替えずにローテーションをする必要があるのです。

タイヤタイプの確認

また、なかにはスペアタイヤが4本と同じサイズの車種もあるので、その場合はスペアタイヤも含め、5本でのローテーションを行いましょう。

愛車のタイプがどれか把握できたら、ローテーション方法は、下図で確認しましょう。

タイヤローテーションやり方の図

FF車の場合は、よく摩耗するフロントタイヤをリヤへ持って行き、リヤタイヤを左右入れ替えてフロントへ持っていきます。
FR車や4WDの場合は逆で、よく摩耗するリヤタイヤをフロントへ持って行き、フロントタイヤを左右入れ替えてリヤへ持っていきます。

回転指示のあるタイヤの場合は左右が交換できないので、左右それぞれでフロント・リヤを入れ替えましょう。
スペアタイヤを入れて5本でローテーションする場合は、図の通り、少し複雑になります。

タイヤローテーションを行う場合の注意点

タイヤローテーションを行う場合には、いくつか注意が必要です。

具体的には、

  • FF車のタイヤローテーションは早めに行う
  • タイヤに回転方向指示がある場合は、左右の入れ替えを行わない
  • 前後でタイヤサイズが異なる場合は、ローテーションしない

この3つが挙げられます。

FF車の場合、フロントにエンジンが積まれているため重くて摩耗しやすく、また駆動輪もフロント側にあるため、早く摩耗しやすくなります。
一方、リヤタイヤはクルマの動きにあわせて回っているだけ、しかもリヤ部分は極端に軽いため、フロントタイヤと比べて減りが遅いのです。
つまり、フロントとリヤで差がつきやすく、バランスが悪くなりやすいのです。
よって、早めにローテーションを行い、摩耗を均等にしてあげる必要があります。

また、タイヤの回転方向指示や前後のタイヤサイズにも注意が必要です。
回転方向が決まっている場合には、右側だけ、左側だけのローテーションにとどめましょう。
前後でタイヤサイズが異なる場合には、ローテーションは行ってはいけません。

タイヤサイズの確認

自分でタイヤローテーションを行う方法

では、自分でローテーションを行う方法をご紹介していきます。

  1. タイヤのホイールナットを緩める
  2. クルマをジャッキアップする
  3. タイヤを外す
  4. タイヤを入れ替える
  5. タイヤを取り付ける
  6. ホイールナットを締める
  7. トルクレンチを使用し、ホイールナットを増し締めする

初めて行う方は動画などを見て、流れをつかんでおくとよいでしょう。

タイヤローテーションの際に必要な工具

タイヤローテーションに必要な工具は下記4つになります。

  • 十字レンチ
  • トルクレンチ
  • リジットラック(ウマ)
  • 油圧ジャッキ(パンダグラフジャッキでも可能)

これらの工具は必ず用意しましょう。
特にトルクレンチとリジットラックは必須です。

自分で行う場合の注意点

タイヤローテーションの際には、1トン以上あるクルマを持ち上げる必要があります。
これは、下手をすればケガをすることもある作業。
やり方をよく知らないままで行うと、とても危険です。
ケガや失敗をしないためには、下記3点に注意しましょう。

  • 平らな場所で行う
  • ジャッキ後は必ずリジットラックを使用する
  • 最後は必ずトルクレンチを使用する

駐車場のなかには地面がアスファルトではなく、砂利の場合もあるかと思います。
しかし、砂利の駐車場での作業は避けましょう。
地面が砂利では、安定せず、ジャッキがずれてクルマが落ちてくることがあるからです。

またジャッキでクルマを持ち上げた後は、リジットラックで必ず固定しましょう。
ジャッキだけで作業すると、いつ落ちてきてもおかしくありません。
車載工具であるパンダグラフジャッキは安定性もかなり悪く、少しの揺れで倒れる可能性があります。
安全を確保するためにも、平らな地面でリジットラックを使用しながら作業を行いましょう。

そして、必ず最後はトルクレンチで増し締めを行うことも忘れてはいけません。
増し締めのトルクは車種によって異なります。
クルマの取り扱い説明書に記載されている数値を参考にしましょう。
整備士であっても、ホイールナットの増し締めは必ずトルクレンチで行うほど大切な作業です。
「トルクレンチを買うのはもったいない」などと思わず、必要な工具をしっかりと揃えて安全に作業を行いましょう。

タイヤを保管する場合に知っておいた方がよい豆知識

直射日光が当たらない場所を選ぶ

タイヤは紫外線に弱いため、直射日光の当たる場所に保管していると、たとえ使用していなくても劣化します。
また湿度にも弱いので、ビニール袋に入れたまま保管するのもオススメできません。
できれば日陰で風通りのよい涼しい場所に、保管するようにしましょう。

どこに取り付けてあったタイヤかを書いておく

ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへ交換を行う場合、取り外したタイヤにはマスキングテープなどでどこに取り付けていたタイヤか、場所をメモしておきましょう。
マスキングテープであれば、すぐ外すことができますしテープの跡が残りません。

メモの方法は、「F左」などや「FL」、「フロント左」などのように書いておけば、誰が見ても分かります。
次回取り付け時にローテーションを考えて取り付ければ、スムーズに交換でき、オススメです。

ホイール付なら寝かせて段積み、タイヤのみなら立てておく

タイヤは置き方によっても劣化や変形が起こるため、注意が必要です。
ホイール付のタイヤの場合、寝かせて段積みにしましょう。
タイヤのみなら、立てておき、定期的に回転させましょう。
定期的に回転させないと、1箇所だけへこんだタイヤになってしまい、使用できなくなります。
保管場所同様、置き方も大切なのです。

タイヤローテーションの費用は?

タイヤローテーションの費用はクルマの大きさによって異なります。

ディーラーでは、軽自動車で3000円前後、ミニバンなど大きな車種になると5000円前後の費用が発生します。

またカーショップやガソリンスタンドなどは少し安く、2000円前後からローテーションを行っている店舗もあります。
カーショップなどの方が、少しお得です。

ローテーションごとにホイールバランス調整をする人もいる!

ホイールバランス調整とは、タイヤの重さを均等にするための作業です。
タイヤは円状でどの部分でも同じように見えますが、継ぎ目の部分などはどうしても重くなってしまいますし、ホイールも使用していく中で汚れや劣化によって重量バランスが狂います。
そのためバランスを調整し、安全に回転できるようにするのが、ホイールバランス調整です。

通常ホイールバランスの調整はタイヤ交換の際に行う作業。
タイヤ専門店などではローテーションごとにホイールバランス調整を行ってくれる店舗もあります。
バランス調整の費用は、1本1000円~1500円程度。
興味があれば、タイヤ専門店でローテーションを行ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

タイヤローテーションはタイヤの摩耗を均等にし、長く使用するために必要なメンテナンスです。ローテーションのタイミングはさまざまですが、5000キロごとのローテーションが一般的。
自分で行うこともできますし、自信がなければお店にお願いすることもできます。

もし、自分でローテーションを行う際は、今回ご紹介した注意点をしっかりと守り安全に作業しましょう。

タイヤローテーションの注意まとめ

タイヤは決して安くなく、気軽に交換できるものではありません。
適切な時期にローテーションを行い、偏摩耗を予防しながら、長く使用できるようにメンテナンスしていきましょう。