この記事の目次 CONTENTS
車検に通らない14個の原因
車検に通らなかった場合の対処法
車検に通すための準備
まとめ

ライター紹介

現役整備士車専門Webライター

太田 りく 氏

所有資格は整備士3級。得意な記事は車の構造やメンテナンス関連。趣味はドライブ。車が好きだったため、車とは関係のない職場から整備工場へ転職。現在は働きながら2級を目指して奮闘中。現場でのリアルな情報を読者の方にお伝えできるよう心がけていきます。

車検とは、家庭用乗用車で2年に1回、レンタカーなどは毎年行わる検査です。
この検査には多くの基準あり、基準から外れていると落とされてしまいます。
クルマ好きの方は自分でカスタムを行うことも多いと思いますが、基準をきちんとおさえて行いましょう。
この記事では、よくある車検に通らない原因とその対処法、罰則などについてご紹介していきます。

車検に通らない14個の原因

クルマには、「保安基準」が存在します。
車検は、この基準に沿っているかを検査しているのです。

そしてこの基準から外れていれば、車検には通りません。
ではどのようなケースに注意すればよいのでしょうか?

タイヤがすり減っている

車検でのタイヤについての基準は、溝の深さが1.6㎜以上であることです。
定規などを使用すれば、溝の深さは簡単に測ることができます。
また、「スリップサイン」という突起が溝の中にあるので、その部分が表面に出ているかどうかで判断することも可能です。

フロントガラスの可視光線透過率が低い

フロントガラスにも保安基準があり、主に可視光線透過率が基準となります。
可視光線透過率とは、フロントガラスにはられているフィルムが光をどれだけ通すのかを表すもの。
70%以上の可視光線透過率がなければ、車検には通りません。

フロントガラスはフィルムなどを貼り付けず、視界を良好にする必要があります。

フロントガラスにステッカーなどを貼っている

フロントガラスには、ステッカーを貼り付けることはできません。
ただし、フロントガラスの上部20%であれば、一定基準を満たせは貼り付けられます。
透けていて、なおかつステッカー越しに信号機の色が確認できるものであれば、貼り付け可能です。

ただ、できればステッカーなどは、貼り付けない方がよいでしょう。

マフラーやフレームが破損している

車のフレームや、マフラーの損傷が激しい場合、車検に通りません。
損傷具合の判断は人によって違うものの、錆びによって穴が開いているのはNGです。
特にフレーム部分は、クルマの剛性にもかかわるもの。
錆びないよう、メンテナンスが必要です。

ライトに割れがある、明るさが足りない

ヘッドライトやフォグランプなどのランプ類に大きなひび割れがあったり、水が入っていたりする場合は車検に通りません。
またライトが黄ばむことで光量が足りない場合も、ひび割れ同様、車検に落ちてしまいます。

黄ばみであれば磨けば修復できますが、割れは交換が必要です。

クラクションが鳴らない

クラクションが鳴らない場合も、注意しましょう。
また通常の音でなく、メロディに変更したり、音が必要以上に長かったりしてもNGです。
年式の古いクルマであれば、配線部分が錆びて鳴らなくなってしまう場合もあるので、しっかりと確認しておきましょう。

オイル漏れしている

各装置のオイル漏れも、車検では確認されます。
水滴が垂れるほどの漏れであれば、車検にはまず通りません。
またにじみ程度でも、放置しすぎて下回りがオイルだらけになっていれば、状態が悪いと判断されて再検査となります

もしオイル漏れしているようであれば、早めに修理しておきましょう。

排気音が大きい

乗用車の排気音の基準は、96dB(デシベル)以下となっています。
ただしこれは一例。
リアエンジンの場合や、年式が古いクルマの場合はこの限りではありません。
純正のマフラーを使用していれば、マフラーが破れていない限り、車検には通ります。

ただし、マフラーを変更している場合には、その他の条件が加わってとても複雑な基準となります。
事前に、しっかりと調べておきましょう。

車高が低い

車両の最低地上高は、地面から9㎝です。
それ以下に車高を下げてしまうと、保安基準不適合となります。

測定する部分は、クルマの下に取り付けてあるマフラーやデファレンシャル部分から地面までの距離。
これらは車の中でも最も低い部分に取り付けてあることが多い装置です。
その他の装置が、いくら高い部分にあっても、これらが低ければ車検には通りません。

ワイパーゴムが劣化している

ワイパーゴムが劣化している場合も、車検に通らなくなる可能性があります。
車検では拭き取り状態が悪くないか、ヤブレがないかなどを、ゴムの状態を見て確認します。
もし劣化していれば、交換しておくとよいでしょう。

ウォッシャー液ノズルに詰まりがある

ウォッシャー液がしっかりと出ているかどうかも、車検では確認されます。
古いクルマの場合、ウォッシャーノズルに汚れが詰まり、液が出てこない場合があります。
そのため車検を受ける前に、液がきちんと出ているかどうかを確認しておきましょう。

発煙筒を搭載していない

発煙筒の搭載は、法律で義務づけられています。
もし、使用してなくなった場合は、新しい発煙筒を購入しておきましょう。
発煙筒には使用期限もあり、期限が切れていれば車検に通らないので注意しましょう。

車検証の紛失

車検証を紛失した場合は、そもそも車検を受けることができません。
紛失が判明したら、すぐに再発行をしましょう。

自動車税や反則金の未払い

自動車税や反則金の未払いも、車検時のチェックポイントです。
もし未払いがあれば、車検を受けることができないため、まずは支払いをする必要があります。

保安基準を満たさない改造やカスタム

クルマ好きの人であれば、自分でカスタムをすることもあるでしょう。
しかし、無意識のうちに保安基準不適合の車両にしてしまうこともあります。

例えばヘッドライトの色を青にしたり、ウインカーを白にしたりすれば違法。
当然、車検には通りません。
また、フロントガラスにお守りを貼り付けたり、吸盤タイプのカーナビやモニターを取り付けたりするのもNGです。

なお、よく行われているのが、マフラーの改造です。
消音器を外して保安基準以上の排気音を出す人もいますが、車検には通りません。
マフラーやホイールなどは使用できるものが決まっており、表示しなければならないマークも存在します。
自分で作ったり、検査を行っていない汎用品を使用したりすることは認められていません。

そもそも、保安基準は安全に走行するために存在しています。
例えば、シートベルトの着用に関しても、以前は現在ほど厳しく取締まられていませんでした。
しかし現在では、取締りが厳しくなり、多くの方がシートベルトを付けています。
これは、シートベルトを着用しなかったため、事故によって亡くなった方が大勢いるから。
保安基準もこれと同じで、事故を起こさないために、基準が設けられているのです。
事故を起こせば自分だけでなく、相手の命も危険にさらしてしまいます。

車検に通らなかった場合の対処法

では車検に落ちてしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
対処法は2種類あります。

15日以内に改善して車検を受け直す

もし、すぐに修正できない箇所が原因で車検に通らなかった場合、「限定自動車検査証」を発行してもらいましょう。
これは一時的な車検証で、15日を上限として使用できます。
車検が切れていても公道を走れるため、その間にクルマを直し、再度車検が受けられます。

なお、限定自動車検査証を提出した場合、再度車検を受ける際には1,300円が必要になります。
期限を過ぎて車検を受ける場合や検査証がない場合は、普通車で1,800円、小型車で1,700円が必要です。

当日車検を受け直す

すぐに直せる箇所が原因の場合は、当日車検を受けなおすという選択肢もあります。
当日の再検査は2回まで可能。最初の検査回数と合わせ1日に3回まで再検査が可能です。
また再検査にかかる料金は無料です。

限定自動車検査証を発行した場合も、当日再検査を受ける場合も、不合格箇所だけの検査となり、初めから受けなおす必要はありません。

売却を検討する

車検で基準に満たない箇所が多いと、修理費用も高額になります。
特にオイル漏れなどの修理は、高額になりがち。
いっそのこと売却し、新しくクルマを購入するのも1つの方法です。

ディーラーなどに下取りに出してもよいですが、中古車販売店で売却した方が高く売れることもあります。

廃車を検討する

古すぎるクルマや故障が多いクルマであれば、売値がつかないこともあります。
その場合、廃車にすることになりますが、数万円の費用が発生します。
ただ、廃車の前に中古車販売店に相談すると、買取してもらえるケースがあります。

もし、廃車予定であれば、一度相談してみてはいかがでしょうか。
数万円の出費が抑えられるだけでなく、中古車として買取となれば、思わぬ値段がつくこともあるかもしれません。

車検に通すための準備

車検を通すためには、あらかじめ準備が必要です。

税金や反則金の未払いがあれば支払う

税金や反則金の未払いがあれば、しっかりと支払いを済ませておきましょう。
未払いでは、車検が受けられません。
また、未払いを放置していると延滞料もかかります。
支払うべき期間内に、しっかりと支払うことをおすすめします。

安全な改造だと証明する

もし社外品のマフラーに変更しているのであれば、証明書が必要になることがあります。
特に2010年4月以降に製造されたクルマの場合、マフラーに取り付けられたプレートもしくは証明書が必須です。
基本的にはプレートで判断しますが、劣化により確認できなければ証明書が必要となります。
購入した際は、捨てずに保管しておきましょう。

証明書が必要なパーツはマフラーだけではなく、シートなども対象となることがあります。
事前に調べておき、車検を受けましょう。

構造変更をする

車検に通すために、構造変更を申請する必要があることがあります。

例えばカスタムにより排気量を増やした場合、税金の金額が変更になることがあるため、申請が必要です。
その他にも、下記の場合などに、構造変更が必要です。

  • 乗車定員を変えた(8人乗り→5人乗りなど)
  • オーバーフェンダーを取り付けた
  • 大幅にクルマの大きさが変わってしまった

なお、あまり知られていませんが、足回りに使用されているアーム類を社外品に変更する場合も、構造変更が必要となります。
ロアアームだけでなく、リーフスプリングやトーションバーなども対象。
もし変更しているのであれば、早めに構造変更を行いましょう。

構造変更の方法は、普通の車検と同様。
構造変更をしたという証明も、必要となってきます。
つまり「通常の車検時に必要な書類+構造変更の申請書」となるのです。
またパーツによっては部品の証明書も必要となってくるので、保管しておきましょう。
車検自体は継続検査と同様です。
そして構造変更を行うのであれば、車検期間が残っていたとしても、車検を受けなおす必要があります。
もし車検を受けなければ違法です。
ディーラーなどのような不正改造車を取り扱わない店舗での修理は、できなくなります。

古くなった部品の交換や装備を取り外す

よく車検で落とされてしまう要因となるのが、車の各ジョイント部にあるゴム部品であるブーツ類の破れです。
これらのパーツが破れ、グリスが飛び出ると車検に通りません。
破れてしまった場合は、交換しましょう。

ハンドル操作の軸となる、ロアーアームブーツが破れてしまっていると、写真のようになります。

また、車検に通らないパーツを取り付けている場合は、取り外す必要があります。
例えばダブルフォグランプなどがこれにあたり、「前部霧灯」の欄に記載があります。
フォグランプは同時に3個以上点灯するのはNG。
取り外すか、同時につかないようにする必要があります。

またフェンダーからはみ出しているホイールを装着している場合もNG。
保安基準に適合するホイールを購入しましょう。

まとめ

車検に落ちてしまう理由は、たくさんあります。
自分で改造した場合でも、内容によっては保安基準から外れることもあります。
また、劣化によるオイル漏れなども修理が必要です。

保安基準は、クルマが安全に走行するために作られた基準。
愛車をカスタムすることがダメだ、というわけではありません。
愛着のあるクルマをカスタムや修理するのは、クルマの状態や構造を把握するために大切なこと。
保安基準を守り、安全で楽しいドライブを楽しみましょう。