マツダMX-30 vs マツダCX-30徹底比較!CセグメントSUV対決

国内外問わず人気のSUVマーケットの中で、マツダは早くからSUVのラインナップを強化してきた。
国内向けでは最も小さなCX-3から始まり、CX-30、CX-5 、CX-8と順次ボディサイズが大きくなり、計4車種ものラインアップを誇る。
そして2020年10月、CX-30と同じクラスに新型MX-30を投入した。
MX-30はCX-30と、基本骨格などは共用だ。
今回は両車を、燃費性能、価格、デザイン、車内空間、安全装備、走行性能などさまざまな角度から比較・評価した。

この記事の目次 CONTENTS
マツダMX-30の特徴
マツダCX-30の特徴
1.燃費比較
2.価格比較
3.購入時の値引き術
4.デザイン比較
5.室内空間と使い勝手
6.安全装備の比較
7.走行性能の比較
8.リセールバリュー比較
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

マツダMX-30の特徴

2020年10月に発売された、MX-30。
同じCセグメントですでに発売済みのコンパクトSUVである、CX-30と基本骨格などを共用するモデルだ。
ただ、デザインやパワーユニットなどは、大きく異なる。

MX-30

発売直後のMX-30には、2.0Lガソリンのマイルドハイブリッドシステムを搭載。
このマイルドハイブリッドシステムを、マツダはe-SKYACTIV Gと呼ぶ。

また、MX-30にはEV(電気自動車)も用意されている。
すでに欧州では発売済みだが、日本では2020年1月に発売予定だ。

MX-30最大の特徴は、観音扉となるBピラーレスのフリースタイルドア。
使い勝手面ではやや不便な面もあるが、独自の世界観をアピールしている。

MX-30の観音開きのフリースタイルドア

マツダCX-30の特徴

CX-30は都会派SUV として、2019年10月に発売された。
日本マーケットでの使い勝手をとくに重視し、ボディサイズは全幅1,800mm以下、全高は1,550mm以下。
これは、都市部に多い立体駐車場の入庫制限内のサイズだ。
こうしたボディサイズにしたのは、全幅&全高制限のある立体駐車場を使っていることから、車庫証明が取れず購入を見送っていた人でもSUVに乗れるようにするための配慮だ。
もちろん、立体駐車場が使えると、都市部での駐車場探しも大幅に楽になる。

なお、都会派SUVとはいえ、最低地上高は175mmを確保しており、ラフロード程度ならFFでも十分だ。
悪路走破性を向上させるオフロード・トラクション・アシストが採用されている4WD車なら、片輪が浮くようなオフロードでも、十分な走破性能を誇る。

CX-30

そして、CX-30の大きな特徴といえるのが、パワーユニットだ。
世界初となるマツダ独自の燃焼方式「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を採用した、ガソリンエンジンSKYACTIV-Xを搭載。
さらに、マイルドハイブリッド機能もプラス。
力強さと低燃費を両立したエンジンに仕上がっている。
ただし、高価なのが難点だ。

1.燃費比較

MX-30の評価は3.0点
CX-30の評価は3.5点

両車ともに、ディーゼルを除いて微妙な燃費性能

MX-30に搭載されたエンジンは、2.0Lのマイルドハイブリッドシステムe-SKYACTIV Gのみの設定。
燃費は15.6㎞/L(FF、WLTCモード)となっている。
この燃費値は、やや物足りない。
CX-30の燃費が2.0Lのガソリン車(FF、AT)で、15.4km/L(FF、WLTCモード)となっていて、0.2㎞/L程度しか差がないからだ。
MX-30の方が少し車重が重いとはいえ、マイルドハイブリッドシステムのメリットを十分に得られているとは言い難い。

同様に、SPCCIを採用したCX-30の2.0LスカイアクティブXの燃費も、16.8km/L(FF、WLTCモード)で、ストロングハイブリッド車並みとはいえない燃費値だ。
車両価格が高いので、コストパフォーマンスという面では物足りないものとなっている。

燃費値だけで見れば、やはりCX-30の1.8Lディーゼルがよい。
燃費値は19.2km/L(FF、WLTCモード)だ。

2.価格比較

MX-30の評価は3.0点
CX-30の評価は3.5点

両車ともに同程度の価格。エントリーグレードでは物足りない印象

MX-30の価格は、1グレードで2,420,000円〜となる。
対するCX-30(20S)の価格は2,392,500円と、わずかにMX-30が高価な設定だ。
観音扉のフリースタイルドアなど、かなり特殊な装備分を含めれば、MX-30の価格は安く感じる。

ただ、どちらもエントリーグレードなので、装備面ではやや物足りない。
MX-30はセットパッケージの選択が必要だ。
セットパッケージの選択にもよるが、MX-30とCX-30は同等の価格、といった印象となる。

3.購入時の値引き術

MX-30の評価は2.5点
CX-30の評価は3.0点

値引きは厳しい状況だが、交渉次第で大幅値引きも

MX-30はデビューしたばかりの新型車なので、しばらくの間は値引きゼロベースとなる。
ただしゼロベースとはいえ、交渉次第で少額の値引きは引き出せるので、しっかりと商談したい。

値引きを引き出すために大切なのは、ライバル車との競合だ。
MX-30のライバル車は、トヨタC-HRやスバルXVなど。
価格ベースで見ると、トヨタ ヤリスクロスハイブリッドやホンダ ヴェゼルハイブリッドなどと競合させるとよい。

まずは、先にライバル車の見積りを取ってから、MX-30の商談に向かおう。
あくまで、本命はライバル車であると思わせることが重要。
商談時にも、「ちょっとついでに見に来た」というようなトークを入れてみるとよい。
当然「いかにMX-30が良いか」ということをプッシュしてくるだろうが、そこは軽く流して「あくまで予算が重要」という姿勢を前面に出すとよいだろう。
商談期間も長めに取り、ジワジワと値引き額を引き上げていきたい。

一方、CX-30はデビューから1年が経過したことから、徐々に値引き額がアップしている。
ライバル車はMX-30と同様。
ライバル車としっかりと競合させよう。

MX-30、CX-30ともに2020年度の大幅値引きのチャンスは、2~3月だ。
コロナ禍で世界的に新車販売台数が激減している中、決算期ということもあり、各社少ない顧客の奪い合いが発生する。
こうなると買い手が有利で、大幅値引きも乱発傾向になる。
MX-30も新型車とはいえ、値引き対応するしかない状態になるだろう。

値引き同様に注視したいのが、下取り車の処理だ。
大幅値引きを得ても、下取り車で損をしてしまっては意味がない。
ディーラーの中には、値引きした分、下取り車の価格を下げる店もある。
そうさせないためにも、下取り車の適正価格を知ることが重要だ。

まずは、2店舗くらいの買取専門店で査定したい。
こうすることで、下取り車の本当の価値が分かる。
店舗に行って査定するほうが確実だが、忙しい人には中古車大手のガリバーが開発したスマートフォン査定アプリ「ガリバーオート」がよい。
ナンバーが写った画像を送信し、簡単な質問事項に答えるだけで、査定価格が提示される。
こうしたツールも賢く使えば、下取り車で損をすることはないだろう。

4.デザイン比較

MX-30の評価は4.5点
CX-30の評価は4.5点

目指す方向性が異なるが、ともに卓越したデザイン

MX-30は従来の魂動デザインモデルとは、大きく異なるスタイルとなっている。
これは、従来のマツダ車ファンとは異なる顧客を取り入れるためだ。
睨みの効いた精悍なデザインのCX-30とはまったく異なり、ややゆるキャラ的で愛嬌のあるデザインとなっている。

mx-30の外観

デザインコンセプトは「Human Modern」。
魂動デザインの拡がりにチャレンジし、クルマに対する価値観の変化や、新しいライフスタイルに寄り添うことを目指した。
親しみやすさや温かみを感じるデザインに仕上がっている。

MX-30のインパネデザイン

対するCX-30のデザインは、「魂動デザイン」を継承。
睨みの効いた精悍なデザインとなっている。

CX-30のフロントフェイス

キャラクターラインなどで個性を主張するのではなく、柔らかな面の表情でデザインされている点が特徴だ。

フロントフェンダーからリアタイヤへと弧を描いたショルダー部は、ひと筆書きの強い光で動きを表現。
書道の筆づかいの動きに着想をえている。
CX-30は光の加減により、色々な表情を見せてくれる。

CX-30の外観
CX-30のインパネデザイン

5.室内空間と使い勝手

MX-30の評価は3.0点
CX-30の評価は3.5点

やや頭上スペースがタイトに感じるMX-30

MX-30のボディサイズは、全長4,395mm×全幅1,795mm×全高1,550mm、ホイールベースは2,655mmとなっている。
全高が10mm、CX-30より高いだけで、全長・全幅は同じだ。
基本骨格などは同じということもあり、前席や後席の広さはほぼ互角。
しかし、MX-30はクーペルックのデザインのため、後席の頭上スペースは少ないようで、やや圧迫感がある。

MX-30の後席
CX-30の後席

荷室容量も若干異なる。
MX-30の荷室容量は400Lに対して、CX-30は430Lと少し広い。

MX-30の荷室
CX-30の荷室

狭い道や駐車場などで扱いやすさの指標となる最小回転半径は、両車ともに5.3m。
このクラスの平均的な数値に収まっている。

6.安全装備の比較

MX-30の評価は4.0点
CX-30の評価は3.5点

両車ともに、全グレードで安心できる予防安全装備。MX-30は右直事故対応機能も

CX-30の予防安全装備は、CセグメントのコンパクトSUVクラスでトップレベルだ。
メイン機能となる自動ブレーキの性能は、歩行者(昼間/夜間)と自転車(昼間)に対応。
さらに、車線変更時に後側方から接近してくる車両を検知して警報を発する、ブラインドスポットモニタリングなどが標準装備化されている。
一部のメーカーでは、こうした予防安全装備をエントリーグレードでは外して安価に見せたりしている。
安全を軽視する姿勢が垣間見える行為だ。
しかし、CX-30はこれらの装備が全車標準装備化されている。
どのグレードを買っても安心だ。

これらの機能に加え、MX-30では右直事故回避アシスト機能もプラス。
さらに予防安全性能をアップしている。
ただし残念なのは、右直事故回避アシスト機能がパッケージオプション設定となっている点だ。交通事故の低減は、自動車メーカーに課せられた社会的責任でもある。
右直事故回避アシスト機能も、標準装備化を望みたい。

なお、MX-30とCX-30は基本骨格が同じなので、CX-30にも右直事故回避アシスト機能が近い将来装備されるだろう。

7.走行性能の比較

MX-30の評価は3.5点
CX-30の評価は3.5点

走行フィーリングやハンドリング性能などは、両車で大きく異なる

MX-30とCX-30は、基本骨格などを共用している。
一般的に、こうしたモデルは似たような走行性能になるケースが多い。
しかし、MX-30とCX-30はパワーユニットが違うだけでなく、走行フィーリングも大きく異なる。

まず、MX-30には、156ps&199Nmの2.0Lガソリンエンジンに、6.9ps&49Nmのモーターがプラスされたマイルドハイブリッドシステムのe-SKYACTIV Gが搭載されている。
小さなモーターなのだが、CX-30のガソリン車と比べるとフィーリングが違う。
アクセルを全開にしてしまうと分かりにくいが、50%以下程度のアクセル開度で軽く加速させる際、フィーリングが良好だ。
モータートルクがエンジン出力に加わっていることもあり、アクセルレスポンスに優れ、気持ちよく加速してくれる。
これは、CX-30の2.0Lガソリン車には無いフィーリングだ。
通常走行時でも、気持ちよさを感じられるパワーユニットといえる。

ただし、エンジンの設定が1種類しかないのは残念だ。
やや遅れてEVも出るが、ディーゼルという選択肢もあってもよいだろう。

MX-30のエンジン

次に、ハンドリング性能だ。
CX-30のようにキビキビ感のあるハンドリングも魅力的だが、MX-30はある意味ダルなハンドリングだ。
これが自然で、スポーティに走ってもゆっくり走っても、意外なほど心地よい。

さらに、乗り心地面もCX-30とは異なる。
サスペンションのストロークを十分に使い、路面の凹凸を吸収するため、乗り心地はソフトで快適。
一方、CX-30は、リヤサスペンションが路面の凹凸をゴツゴツと少々伝える。
乗り心地もMX-30が勝る印象だ。

MX-30の運転席

CX-30の出力は180ps&224Nm。
とくに目を見張る数値ではない。
世界初となるマツダ独自の燃焼方式「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を実用化した2.0LガソリンのスカイアクティブXが搭載されており、「ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取り」と言われているにもかかわらず、だ。
燃費も16.8km/Lと、ガソリン車より少し良い程度に止まる。
ただ、このエンジンはハイオク仕様なので、多少燃費が良くても燃料費面ではあまりメリットはない。
燃費や出力面では、あまり注目するポイントはないスカイアクティブXだが、エンジンのフィーリングはなかなか魅力的だ。
ガソリン車より、トルク感が全域で上回る。
マイルドハイブリッドシステムが搭載されていることもあり、アクセルレスポンスも良好で好印象だ。

CX-30でバランスが良いのが、1.8Lディーゼルだ。
最大トルクは270Nm。
十分なトルクなので、街中から高速道路まで不満はない。

CX-30のエンジン

なお、MX-30とCX-30の4WDには、オフロード・トラクション・アシストと呼ばれる制御が入っている。
この制御をオンにすると、片輪が浮くような悪路でも、タイヤの空転を抑制し悪路から脱出できる。
都会派4WDながら、オフロード性能も高い。

CX-30の運転席

8.リセールバリュー比較

MX-30の評価は3.5点
CX-30の評価は3.5点

しばらく高値維持だが、MX-30のEVが不安要素あり

リセールバリューは、中古車マーケットでの人気で決まる。
SUVは中古車マーケットでも人気が高いため、高いリセールバリューが期待できるだろう。
さらに、MX-30とCX-30ともに値引き抑制戦略が続けられていて、残価設定ローンもやや高値で設定されている。
こうした要素も、高いリセールバリューを維持できる要因だ。
しばらくの間は、MX-30とCX-30は高いリセールバリューを維持できると予想できる。

もちろん、グレードや装備によって査定価格は異なる。
MX-30は各種パッケージオプションがフル装備で、ボーズサウンドシステムがあれば、高査定が期待できる。

ただし、MX-30 EVのリセールバリューは、あまり期待できないだろう。
なぜなら、日本マーケットでは中古EVを好んで買う顧客が少ないからだ。
実際に、日産リーフのリセールバリューは低めで推移しており、輸入EVとなるBMW i3もやや低めのリセールバリューとなっている。

CX-30のリセールバリューも、MX-30と基本的に同じ傾向になる。
高査定が期待できるグレードは、エンジン問わず豪華な装備と内装をもつLパッケージ系だ。
360°セーフティパッケージやボーズサウンドシステム、電動サンルーフなどのオプションが付いていれば、プラス査定になる。

9.まとめ・総合評価

MX-30の総合点は27点/40点
CX-30の総合点は28.5点/40点

ユルさが好きならMX-30。マツダ車らしさ重視ならCX-30

MX-30は、マツダ車らしくないマツダ車だ。
ゆったりとした乗り味や、オシャレで落ち着いた雰囲気のインテリアは居心地もよい。
観音扉のフリースタイルドアは、使い勝手面では少々物足りない部分があるが、個性的だ。
ガンガン走るだけでなく、ゆったり流している時の気持ちよさが好きならMX-30が向く。
ただ、パワーユニットの選択肢が少なく、現状ではマイルドハイブリッドかEVしか選択肢が無い。
1.8Lディーゼルがあれば、顧客へのメリットをより提示できるはずだ。

CX-30はいかにもマツダ車的で、SUVながら、背の高さを感じさせないキビキビした走りは秀逸だ。
後席の居住性や荷室の広さなど、使い勝手面ではMX-30をわずかだが上回る。
多くの人に、不満なくマッチするのはCX-30だ。

  MX-30 CX-30
総合得点(40点満点) 27点 28.5点
1.燃費 3点 3.5点
2.価格 3点 3.5点
3.購入時の値引きしやすさ 2.5点 3点
4.デザイン 4.5点 4.5点
5.室内空間と使い勝手 3点 3.5点
6.安全装備 4点 3.5点
7.走行性能 3.5点 3.5点
8.リセールバリュー 3.5点 3.5点