ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

DNGAを採用し、すべてが新しくなった新型タント

ダイハツは、両側スライドドアを持つスーパーハイト系軽自動車「タント」と「タントカスタム」にお買い得な価格設定とした新グレード「セレクション」シリーズを設定し発売を開始した。

タントは、新車販売台数ナンバー1をホンダN-BOXと争ってきたが、敗北し続けた歴史がある。当然、4代目となったタントは、N-BOXを超えてナンバー1奪取するという役割を担っている。

ナンバー1となるために、4代目はゼロベースで開発され、多くの新技術が投入された。
ダイハツの新世代のクルマづくりである「DNGA(ダイハツ ニュー グローバル アーキテクチャ)」に基づいて新開発のプラットフォームが採用されている。

同様に、ほぼすべての部分が刷新されていて、サスペンションも新開発。ボディも曲げ剛性を従来比約30%アップとしながら、約40㎏の軽量化を実現している。

さらに、エンジンは燃焼効率を向上。
ミッションは、世界初のスプリットギヤを用いたCVTである「D-CVT」が新開発された。このD-CVTは、伝達効率の良さとワイドな変速比幅が特徴。こうして技術で得られた燃費は、自然吸気エンジンで27.2㎞/L(JC08モード)。ターボ車は25.2㎞/Lとなった。

そして、従来からのアピールポイントでもある左側をセンターピラーレス構造としたミラクルオープンドアも使い勝手の良さを向上させている。

新型タントは、打倒N-BOXを目指し、このような万全の仕上がりでマーケットに挑んでいる。

2019年11月、新車販売台数ナンバー1になったタントだったが…

打倒N-BOXを目指して、気合タップリのフルモデルチェンジをしたタント。ダイハツの熱い想いは実を結んだ。2019年11月、N-BOXを上回る21,096台を売りナンバー1に輝いたのだ。この結果は、ついにタントの時代がやってきたのか? と話題になるほどだった。

しかし、どうやら11月の販売台数は、かなり戦略的に無理をしたもので、単発花火のようになった。
翌月は大きく順位を落とし、スズキ スペーシア、日産 デイズにも負け4位となった。販売台数は8081台。新型車なのに、前年比82.4%。
N-BOXは16865台を販売し、倍以上の販売台数差を付けられてしまった。

さらに、タントは新型車だがすでに数百台規模の未使用車が流通している。未使用車は、メーカーやディーラーの都合で買い手がいないのに届出(登録)してしまった車両。一度届出(登録)してしまうと、新車コンディションながら中古車扱いになる。

これだけ多くの未使用車が流通しているということは、かなり無理をして販売台数を積み上げてきたのでは?と予想できる。
場合によっては、タントは売れていないから、一時的にナンバー1を無理やり取ることで話題を作り出そうとしたのか? と、勘ぐられてしまう。

お買い得新グレード「セレクション」シリーズ新設定の理由は?

このような厳しい状況を見越していたのか、ダイハツはお買い得な新グレード「セレクション」シリーズを投入した。

一般的に、モデル末期になって販売台数を少しでも上乗せしたいときなどに行う手法。デビュー直後の新型車に、お買い得なグレードを設定するのは珍しい。
この手法を行うということは、タントの販売台数的に厳しい状況にあるか、よほどN-BOXを意識しているのかという推測ができる。

ただ、顧客側にとっては、良いクルマがより安くなることはありがたいことだ。

装着率が高いオプションが標準装備化しながら、価格アップを抑えた新グレード

新設定されたお買い得なグレード「セレクション」シリーズは、タントXとXターボ、カスタムX、カスタムRSをベースとしている。この新グレードのポイントは、既存のパックオプションであるコンフォータブルパック、スマートクルーズパック、スタイルパックの3種をグレードに応じて標準装備していることだ。

当然、オプションがプラスされているので、価格はアップするのだが、新グレードでは、価格アップを抑えている。

例えば、タントXセレクションの価格は、1,490,500円。ベースとなったXグレードの価格は、Xセレクションと同じ1,490,500円。つまり、コンフォータブルパック分の38,500円がお買い得ということになる。

ダイハツ タントの選び方

従来のタントには多くのパッケージオプションが存在した。しかし、新グレードであるセレクションシリーズの追加で、タントのグレード選びは容易になった。

これまではこうしたオプションを装着しないと、物足りない仕様となっていた。セレクションシリーズは、オプション装着率の高い機能が標準装備化されており、満足できるようになった。

その上でさらに装備を豪華にしたい場合、タントXセレクションなら、右側パワースライドドア、前後&サイドカメラを備えたパノラマモニター対応純正ナビ装着用アップグレードパックなどのオプションを選択すればいい。他のセレクションシリーズも同様だ。

ターボ系モデルであるXターボとカスタムRSのセレクションシリーズでは、全車速追従機能付クルーズコントロールが標準装備されている。高速道路などを使いロングドライブする頻度の高いユーザーにおすすめだ。

タントのグレード選びで、選択してはいけないグレードがある。
それは、エントリーグレードのLでスマートアシスト非装着グレードだ。装備が簡素化されていて満足度が低いだけでなく、歩行者検知式自動ブレーキなどの予防安全装備がない。自動ブレーキが義務化される傾向にあるのにもかかわらずこうした仕様を設定しているのは、扱い方を間違えば人を殺めることがある商品を売るメーカーとして、交通安全という社会的責任を果たしていない。

ダイハツ タント/タントカスタム セレクションシリーズ価格

■タント
・Xセレクション 2WD:1,490,500円/4WD:1,617,000円
・Xターボセレクション 2WD:1,644,500円/4WD:1,765,500円

■タントカスタム
・カスタムXセレクション 2WD:1,721,500円/4WD:1,842,500円
・カスタムRSセレクション 2WD:1,853,500円/4WD:1,974,500円