ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

2019年の軽自動車販売台数ランキングが発表された。
2019年10月の消費税増税の影響で、軽自動車の販売台数は前年割れしたものの、前年比で販売台数を大きく伸ばしたクルマもある。

特に健闘したのが、スーパーハイト系カテゴリーだ。

この記事ではランキング結果をもとに、今売れている人気のクルマを紹介していく。

新型車効果で、増税分をカバーした2019年の軽自動車

2019年の軽自動車販売台数ランキングが、全国軽自動車協会連合会から発表された。
1~12月軽乗用車の販売台数は1,479,205台、前年比98.9%となった。

前年比割れの要因は、やはり消費税率アップのようだ。
ただ、一部メーカーでは新型車の投入により、販売台数の落ち込みをカバーする動きがみられた。

メーカー別では、基幹車種であるタントをフルモデルチェンジしたダイハツは前年比100.8%。
デイズをフルモデルチェンジした日産は前年比111.0%と、前年を上回る販売台数を記録した。
ダイハツと日産の2社のみが、前年比越えとなっている。

一方、残念な結果となったが、スズキとホンダだ。
スズキは、前年比98.3%と僅かなマイナスとなった。
ただ、スズキは1月後半に、人気モデルであるハスラーをフルモデルチェンジして発売する。
2019年度(4~3月)という期間で見ると、まだまだ前年を超える可能性を残している。

そして、今年フルモデルチェンジしたばかりのN-WGNが、部品のトラブルで一時生産中止となっていたホンダ。
前年比98.7%という数値であったが、ようやく1月からN-WGNの生産が再開され、2〜3月の繁忙期に間に合った。
こちらも2019年度(4~3月)で見れば、一気に息を吹き返えすだろう。

登録車も含み、新車販売台数ナンバー1の座に輝いたホンダN-BOX

2019年通称名別販売台数ランキングは、下表の通り。

メーカー 通称名 本年累計 前年累計 前年累計比
1 ホンダ N-BOX 25,3500 24,1870 104.8%
2 ダイハツ タント 175,292 136,558 128.4%
3 スズキ スペーシア 166,389 152,104 109.4%
4 日産 デイズ 157,439 141,495 111.3%
5 ダイハツ ムーヴ 122,835 135,896 90.4%
6 ダイハツ ミラ 94,527 107,283 88.1%
7 スズキ ワゴンR 90,046 108,013 83.4%
8 スズキ アルト 72,033 77,241 93.3%
9 スズキ ハスラー 57<840 65,291 88.6%
10 三菱 eK 44,883 45,062 99.6%
11 ダイハツ キャスト 40,341 42,495 94.9%
12 ホンダ N-WGN 32,382 63,009 51.4%
13 スズキ ジムニー 30,281 20,942 144.6%
14 トヨタ ピクシス 24,103 25,627 94.1%
15 ダイハツ ウェイク 22,382 28,637 78.2%

N-BOXが約25万台もの販売台数で、ナンバー1の座に輝いた。
2位のダイハツ タントに対して、約1.5倍という圧倒的な大差をつける結果だ。

登録車のナンバー1となったトヨタ プリウスの販売台数が約12.5万台。
N-BOXはその約2倍の販売台数となっている。
しかも、前年比104.8%という伸び率。N-BOX人気は衰える気配なし、といった状況だ。

N-BOX

ダイハツ タント、1~3月の繁忙期に実力が発揮できるか?

タントは、フルモデルチェンジ直後ということもあり、前年比128.4%という高い伸び率となった。

11月には、N-BOXを抜き販売台数ナンバー1に輝いたものの、翌12月には早くも息切れ。わずか1ヶ月でナンバー1の座から陥落している。
本当の実力が試される繁忙期の1~3月での時期の結果が、タントの本当の実力といえるだろう。

タント

徐々に売れはじめてきたスズキ スペーシア

健闘したのがスペーシアだ。
先代モデルは完敗状態だったが、初代の売れなかった理由を払拭して登場した現行の2代目スペーシアは、徐々に販売台数を伸ばしてきている。
前年比109.4%という数値は立派なものだ。

タントは新型車ということもあり、今後しばらくは販売台数を伸ばしていくと思われるが、スペーシアも着実に販売台数を重ねており、タントとの差は約1万台に迫ってきている。

スペーシア

2020年には待望のルークス登場、さらに販売台数を伸ばす勢いの日産 デイズ系

4位にランキングされたデイズも、2019年にフルモデルチェンジした。
この効果もあり、前年比111.3%というかなり好調な滑り出しをみせている。

ただデイズの場合、人気のスーパーハイト系であるデイズ ルークスも含まれるため、ハイト系のデイズ単体の販売台数はそれほど多くない。

そのルークスは、2020年にフルモデルチェンジ予定。デイズ系の販売台数は、今後さらに伸びていくと予想できる。

デイズ

フルモデルチェンジ直後にも関わらず、前年比割れしてしまった三菱 eKワゴン

人気が落ちているハイト系のなかであと一歩だったのが三菱 eKシリーズだ。

デイズと姉妹車関係にあるものの、全く異なるユニークなデザインをもつ。なかなか迫力のあるデザインが魅力だ。

しかし、フルモデルチェンジ直後にも関わらず前年割れの99.6%となった。
この結果は、色々な大人の事情があるにせよ、少々物足りない状況といえるだろう。

eKワゴン

売れている人気のスーパーハイト系、メリットとデメリットとは

1位から3位までは、背高のスーパーハイト系が占めた。
最近の軽乗用車マーケットは、このスーパーハイト系一色といった印象だ。

背高にしたことによる広大な室内スペースと、両側スライドドアが人気のポイント。
小さな子供がいる家族や、高齢者の送迎などが頻繁にある家庭などに向く。

ただ、いいことばかりではない。
スライドドアを持ち、背が高いため、車重が重くなる。
車重の重さは燃費にも影響するため、ハイト系と比べると燃費が悪い。

また背が高くて重心高が高く、一方で全幅が狭いため、カーブや急ハンドルなどでは横転の可能性が高くなる。
これを回避するため、サスペンションを硬めにするので、乗り心地がやや悪くなる傾向だ。
そして、スライドドアは高価な装備。価格も高くなり、ひとクラス上のコンパクトカー(ガソリン車)以上の価格になるケースが多い。

ハイト系とロールーフ系は、残念な結果に…

5位となったダイハツ ムーヴ系以下は、特殊なジムニーを除き、すべて前年比割れとなった。
完全にマーケットのトレンドが、スーパーハイト系に移っていることを感じさせる。
残念な結果となったハイト系とロールーフ系は、よいクルマが多いものの、今後もあまり成長が期待できないカテゴリーとなりそうだ。

人気薄だが、総合バランスに優れるハイト系カテゴリー

一昔前には軽自動車の代名詞とも呼ばれた、人気モデルであるスズキ ワゴンRも前年比83.4%、7位に沈んでいる。
ワゴンRをもってしても、大幅前年比割れしてしまうほどハイト系の人気は低迷している。

ワゴンR

人気が無くなっているとはいえ、ハイト系はバランスが良く、多くの人におすすめできるカテゴリーだ。
スーパーハイト系ほど背は高くないが、十分な広さを誇り、燃費性能も良好。
スライドドアではなく、一般的なヒンジドアなので、価格もスーパーハイト系より安価で乗り心地も良い。

小さい子供や高齢者を乗せる機会があまりない人は、コストパフォーマンスも優れているのでおすすめだ。

健闘もむなしく大幅減となったロールーフ系

通勤や通学、買い物・送迎など、生活の足としてピッタリなのが、ロールーフ系軽自動車だ。
ダイハツ ミラシリーズが6位、スズキ アルトシリーズが8位と健闘している。
とくに、ミラシリーズは、ワゴンRより売れている。

ミラ

アルト