ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

N-BOXなどを筆頭に、現在、軽自動車の主流となっているスーパーハイト系の魅力は、スライドドアや全高の高さだ。
しかし、スーパーハイト系は高額車。用途や予算によってはハイト系のほうが合う人もいる。
この記事では、スーパーハイト系・ハイト系はそれぞれどんな人におすすめなのかを解説していく。

ボディタイプを知る

乗用の軽自動車には、大きく分けて3つのボディタイプがある。
アルトやミライースといったロールーフ系、ワゴンRやデイズといったハイト系、タントやN-BOXといったスーパーハイト系に分けられる。

ハイト系は、1993年に登場した初代ワゴンRがパイオニアだ。
その後しばらくの間、超人気カテゴリーとなった。

ワゴンR

風向きが変わったのは、2011年に登場したスーパーハイト系のN-BOXが登場してからだ。
スーパーハイト系のモデルは、すでにマーケットに存在していたが、N-BOXが大ヒットしたことから、一気にスーパーハイト系の人気が高まった。
現在、軽自動車の主流はスーパーハイト系になっている。

N-BOX

スーパーハイト系は高額車。予算面でもじっくりと検討する必要あり!

人気があるからといって、スーパーハイト系の軽自動車はすべての人にピッタリ合うわけではない。
スーパーハイト系は人気グレードにオプションを選択すると、車両価格が200万円に達することもある非常に高価なモデルだ。

200万円というと、ひとクラス上の1.5Lクラスで上級グレードのコンパクトカーやエントリーグレードのハイブリッドカーまでターゲットに入るほど。高額車なので、予算面でもじっくり検討する必要がある。
人気があるからと言って単純に選んでしまうと、使わない機能へ無駄にお金をかけることになってしまうからだ。

スーパーハイト系は、小さな子供がいる家族に合う

まず、スーパーハイト系が合うのは小学生以下くらいの小さな子供がいる家族だ。

スーパーハイト系の大きなメリットは、全高の高さとスライドア。
この組み合わせによる使い勝手の良さは最強といえるものだ。

小さな子供がいる家族にとって、一般的なヒンジ式ドアのクルマは、駐車場での乗り降り時に隣のクルマにドアをぶつけないか非常に気を使う。

しかし、スライドドアならその心配は必要ない。オートクロージャー付きのモデルなら、半ドアの心配もない。
さらに、キーレスエントリー付きのキーでスライドドアの開閉ができるモデルなら、子供を抱いたままでもスイッチひとつでドアが開くので、寝ている子供を車内に連れていくのも簡単だ。

また、荷室ではなく後席足元にベビーカーを容易に積載することもできる。
チャイルドシートを使うような小さな子供なら、車内で着替えも可能。
多くのモデルが前席・後席のスライド量が大きいため、高い全高を生かし、車内での人の移動も楽々できる。

高齢者の送迎にも合う!

スーパーハイト系モデルは、高齢化時代に合ったモデルともいえる。

ここでも高い全高とスライドドアが大きな役割を果たす。
足腰が弱った高齢者にとって、乗り降りのしやすさは非常に重要。
ヒンジ式ドアのクルマだと、ドアを全開にしないと乗り降りしにくい。
狭い駐車場ではさらに難しい行為だ。

しかし、スライドドアなら狭い場所でも乗り降りしやすい。
全高も高いので体を屈める角度が少なくて済み、乗り降りしやすい。

また、多くのモデルにアシストグリップなどが付いていることが多く、こうしたグリップを使えばさらに乗り降りは楽になる。
ステップが低いこともメリットで、高く足を上げる必要が無く、これも乗り降りが楽になる要因のひとつだ。

小さな子供がいない、高齢者の送迎がないならハイト系が合う

小さな子供がいたり、高齢者の送迎が多かったりするようであれば、スーパーハイト系が合う。
その他、頻繁に自転車を後席に積むという人もスーパーハイト系がよいだろう。

しかし、逆にそれ以外の人はハイト系で十分ということになる。
つまり、高い全高とスライドドアのメリットを生かせていなければ宝の持ち腐れとなり、メリットのない機能に高額な費用を支払っていることにもなるのだ。

ハイト系のメリット1「燃費」

ハイト系は、スーパーハイト系に比べ少し背が低い。そしてスライドドアもないため、車重が軽い。
軽さは直接燃費性能に大きな影響を与える。

たとえば、燃費に優れたスーパーハイト系であるスペーシアの燃費は30.0㎞/L(JC08モード)。
しかし、ハイト系のワゴンRは33.4㎞/Lと10%以上燃費値がよい。

クルマを毎日のように使い、休日は買い物やレジャーなどで荷物を積みたいという程度ならハイト系ワゴンの方が経済的で実用的だ。
さらに、生活の足としての実用性を重視するのであれば、ロールーフ系となる。

アルトの燃費は37.0㎞/L。積載性や使い勝手面では、ハイト系には及ばないものの、移動の足としての経済性は非常に優れている。

ハイト系のメリット2「価格」

スーパーハイト系モデルの価格が高価になる要因は、やはりスライドドアにある。
一般的なヒンジ系ドアをもつハイト系の価格が安いのは、これが大きな理由のひとつだ。

たとえば、スーパーハイト系のN-BOX、最上級グレードG・EXターボホンダセンシングの価格は1,996,500円。N-WGNカスタムの最上級グレードL・ターボホンダセンシングは1,694,000円となる。
多少装備差はあるとはいえ、価格差は約30万円にもなるのだ。

N−WGN

背の高さとスライドドアの恩恵をあまり享受できないユーザーには、この差はかなり大きい。しかも、燃費はハイト系の方がよい。
コストパフォーマンス面でもハイト系は優れているといえる。居住性も大差はない。

ハイト系のメリット3「走行性能と乗り心地」

スーパーハイト系は、ハイト系と同じ全幅1,475mmでありながら全高が高くなっている。
これはクルマにとって重要な、重心高が高くなることを意味している。
重心が高いと、クルマはデメリットばかりが目立ってくる。

まず、カーブで安定感がない。
重心が高ければ高いほど、横転の危険性が高まる。
それを回避するために、スーパーハイト系のサスペンションは硬めにセッティングされ、クルマがあまり大きく傾かないようなっている。
当然、サスペンションを硬くすれば乗り心地は悪化する傾向になる。
そのため、ハイト系の方がやや乗り心地がよいモデルが多い。

そして背の高いスーパーハイト系は、とくに横風に弱い。
背が高く幅が狭いため、横風が強いとハイト系以上にフラフラする傾向が強なる。高速道路などではその傾向が強くなる。

スーパーハイト系とハイト系、それぞれメリット・デメリットをしっかり検討したうえで、用途やライフスタイル、予算に応じて賢く選びたい。