スズキは、ジムニーとジムニーシエラをフルモデルチェンジし発売を開始した。ジムニーは、20年振りのフルモデルチェンジとなり、このモデルで4代目となった。ジムニーとジムニーシエラは、クロスカントリー4WD。ジムニーは軽自動車、ジムニーシエラは小型車となる。

この記事の目次 CONTENTS
4代目新型スズキ ジムニー誕生! 20年振りのフルモデルチェンジ
エンジンは軽量化されたが、燃費性能に物足りなさあり
悪路に強いリジッドアクスル式サスを採用しながら、快適性も向上
洗練された武骨系デザイン
荷室の容量、使い勝手も大幅進化
新型ジムニーの安全装備
スズキ ジムニーの選び方:おすすめはXC
スズキ ジムニーシエラの選び方:おすすめはJC
スズキ ジムニー/ジムニーシエラ価格
スズキ ジムニー/ジムニーシエラ スペックなど

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

4代目新型スズキ ジムニー誕生! 20年振りのフルモデルチェンジ

歴代スズキ ジムニーは、プロユースからレジャーユースまで、多くのユーザーが圧倒的な走破性の高さで選ばれてきたデルだ。こうした歴史を継承し、新型ジムニーも徹底して悪路走破性にこだわった。

悪路走破性にこだわり続ける本格派

フルモデルチェンジでは、より悪路走破性を向上させるために、ラダーフレーム構造を継承。ラダーフレーム構造をもつ乗用車は、今時非常に珍しい。そのラダーフレームも大幅に進化。新設計となったラダーフレームは、X(エックス)メンバーと前後にクロスメンバーを加え、ねじり剛性を約1.5倍(先代モデル比)も向上させている。よりタフネスさをアップした。

乗り心地を改善

そして、車体とラダーフレームをつなぐボディーマウントゴムを新設計。乗り心地が悪くなりがちなラダーフレーム構造だが、こうした改善により乗り心地が向上している。

このラダーフレームに搭載されるエンジンは、もちろん縦置きのFR(後輪駆動)レイアウト。エンジンをフロントタイヤより後方に配置し、厳しい悪路走行に有効な対障害角度を確保している。

エンジンは軽量化されたが、燃費性能に物足りなさあり

新型ジムニーに搭載されるエンジンは、660㏄の専用チューニングされたターボエンジンのみの設定。搭載されたのは、R06A型ターボエンジンで、出力は64ps&96Nm。WLTCモード燃費はATが13.2㎞/L、MTで16.2㎞/Lとなった。
このR06A型ターボエンジンは、先代K6A型と比較すると重量で-4.8㎏、全幅で-60㎜と小型で軽量になっている。

新型ジムニーシエラには、新開発K15B型エンジンを搭載。出力は102ps&130Nmをアウトプット。WLTCモード燃費はMTが15.0㎞/L、ATが13.6㎞/L。先代のM13A型に比べると、重量で-14.3㎏、全高23㎜、全幅26㎜、全長21㎜と大幅に軽量でコンパクト化が図られた。

新型ジムニーやジムニーシエラは、非常に過酷な環境で使われることが多い。信頼性や修理の利便性を考えると、なるべくシンプルなエンジンであるほうが望ましいの理解できる。

ただ、そうしたプロユースだけでなく新型ジムニーにはレジャーや趣味で使う多くの顧客がいる。さすがに、こうした顧客に対して、この燃費性能では非常に物足りなさを感じる。とくに、日本を含む先進国向けとしては、燃費性能をもっと引き上げなければ、CO2排出量などの問題から、売ることさえ難しくなる。

こうした先進国用には、マイルドハイブリッド機能をプラスするなど、造り分けが必要だ。とくに、国内マーケットでは、潜在的なジムニーファンを取り込むことが難しくなる。本格派クロスカントリー4WDなので、燃費が悪くてもいいというのは、これからの環境重視時代には通じない。

悪路に強いリジッドアクスル式サスを採用しながら、快適性も向上

新型ジムニーには、伝統の3リンクリジッドアクスル式が採用された。このサスペンションの特徴は、凹凸路で優れた接地性と大きな対地クリアランスを確保できることだ。さらに、堅牢な構造により、高い信頼性も得ている。

また、確実なトラクション性能を得るため、電子制御のブレーキLSDトラクションコントロールを全車に標準装備。4L(低速)モード走行時、エンジントルクを落とすことなく、空転した車輪にだけブレーキをかけ、もう一方の車輪の駆動力を確保。高い走破性能を実現した。さらに、イージーに下りの悪路を走れるヒルディセントコントロールも標準装備した。

悪路走行時の静粛性も改善

悪路走破性の向上だけでなく、快適性も向上している。悪路走行時のステアリングへのキックバックを低減し、高速走行時の振動を減少させるステアリングダンパーを新採用。吸遮音材の適正配置され、大幅に静粛性が引き上げられている。

パートタイム4WDを継続採用

ミッションは、機械式副変速機付きパートタイム4WDを継続採用した。最近の4WDには、オート機能があり、車両情報をコンピュータが自動で最適な駆動トルクを配分する。新型ジムニーには、オートという機能は無い。路面状況に合わせて2WDと4WDをドライバーが任意で選択する。4WDは4H(高速)、4L(低速)の2モードの切替え式。4Lは、通常の約2倍の駆動力を発揮。急な登坂路や悪路の走破性を高める。

洗練された武骨系デザイン

新型ジムニーのデザインは、先代モデルと比べると、かなり洗練された印象が強い。専門家が愛用する「プロの道具」をデザインコンセプトとした。ただ、歴代ジムニーのデザインアイコンは、しっかりと継承。デザインアイコンである丸型ヘッドランプ、5スロットグリル、クラムシェルボンネットフードなどが生かされている。

新型ジムニーシエラのデザイン

新型ジムニーシエラは、基本的なデザインはジムニーと同じ。ボディサイズがやや大きいことがあり、力強く張り出したオーバーフェンダーとサイドアンダーガーニッシュがジムニーとの違いをアピール。ジムニーより迫力のあるスタイリングになった。ボディサイズは、先代モデルに対し車体全長を50mm短く、全幅を45mm拡げ、取り回しの良さと高速走行時の安定性を実現している。

インテリアデザインは操作性を重視

インテリアデザインも、オフロードなど過酷な環境下での、運転のしやすさや、各部の操作性にこだわり機能性を重視した。水平基調のインパネデザインは、広さ感をアピールするだけでなく、視界の広さや車両の周囲が見やすいデザインになっている。

また、シートも見直されている。高剛性化、高強度化したフロントシートフレームを採用し、シートフレームの幅を70mm(先代モデル比)拡大した。上下クッション性能の向上などにより、先代モデルと比べると、より乗り心地がよくなり、ゆったりと座れるシートになった。

荷室の容量、使い勝手も大幅進化

新型ジムニーの荷室と使い勝手も大幅に進化した。大きな開口部と大容量の荷室となった。荷室フロアは、フラットとなりスペースを無駄なく活用できるようになっている。荷室スペースは352Lを確保した。

汚れ防止など使い勝手の機能が充実

使い勝手面では、汚れた荷物などを積むことが多いため、リヤシートバック背面と荷室を樹脂化。防汚タイプラゲッジフロアを設定。さらに、荷室のの使い勝手を高めるユーティリティーナットと荷室フック用ナットを用意。ユーザーが自分が使いやすいように荷室をアレンジすることが可能だ。

新型ジムニーの安全装備

新型ジムニーには、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備スズキ セーフティ サポートが用意された。追加された機能は以下の通り。

  • 歩行者検知式自動ブレーキ
  • 誤発進抑制機能
  • 車線逸脱警報機能
  • ふらつき警報機能
  • ハイビームアシスト
  • 先行車発進お知らせ機能
  • 標識認識機能

新機能として“車両進入禁止”に加え“はみ出し通行禁止”“最高速度”の各標識をメーター内に表示させドライバーに通知する「標識認識機能」を追加されている。

歩行者検知式自動ブレーキの標準装備化は見送り

優れた安全性能を誇る装備だが、残念なことに標準装備化は見送られている。ホンダは、こうした先進予防安全装備であるホンダセンシングをN-BOXに標準装備化した。いずれ、自動ブレーキの標準装備化が義務化されるのは時間の問題。こうした安全装備への対応は、スズキの安全への姿勢が問われ、ブランドイメージも悪くなる。

クルマは扱い方を間違えれば、人を殺めることがある危険な商品。スズキは、こうした商品を売り利益を上げている企業だ。歩行者事故はドライバーの責任とばかりにオプション設定にするのは感心しない。もはや自動ブレーキなどは、安価な装備になっている。人を殺すかもしれない商品を売る以上、メーカーとして歩行者事故を減らすために、自ら積極的に標準装備化を進める責任がある。
なお、新型ジムニーは、保安基準の変更を受け、サイド&カーテンエアバッグが標準装備化されている。

スズキ ジムニーの選び方:おすすめはXC

新型ジムニーの選び方は、それほど難しくない。エンジンが1種類、ボディ形状も3ドアのみとなっていて選択肢がないからだ。端的に言えば、予算次第となる。

スズキ セーフティ サポートはオプション選択すべし

新型ジムニーは、最上級グレードのXC、中間グレードがXL、エントリーグレードがXGという設定になった。注意したいのは、XLとXGは、歩行者検知式自動ブレーキなどを含む先進予防安全装備であるスズキ セーフティ サポートがオプション。この装備は、必ず選択したい。

エントリーグレードのXGは選択から外すこと

まず、エントリーグレードであるXGは、かなり装備が簡素化されている。仕事などで使うのであればよいが、レジャーなどで使う一般ユーザーは選びにくい。そのため、XGを選択肢から外すと、XCかXLから選ぶことになる。

おすすめはXC

大きな装備差は、LEDヘッドランプ、ヘッドランプウォッシャー、クルーズコントロール、LEDサイドターンランプ付きドアミラー、16インチホイールなど。価格差は約12万円。この価格差なら、積極的にXCを選んだ方が満足度は高いだろう。

購入時期はしばらく待つこと

新型ジムニーの購入時期だが、とにかく今すぐ欲しいという人以外は、少々待った方がよい。こうしたマニアックな顧客層向けのモデルは、初期に一定のファンに売り切ってしまえば、その後、販売台数はドンドンと少なくなる。そうなると、値引き額も大きくなるし、お買い得な特別仕様車なども投入されるからだ。

登録済み未使用車を狙うのも手

さらに、スズキは大量の登録済み未使用車を生み出すメーカー。未使用車は、メーカーやディーラーの都合で、買い手がいないのに自社登録してしまったクルマ。登録しただけで、ほとんど新車コンディションだ。一度登録したので、中古車扱いになり、中古車店の店頭に並ぶ。中古車なので、価格もかなり安くなっているので、こうした未使用車を狙うのもおすすめだ。

スズキ ジムニーシエラの選び方:おすすめはJC

新型ジムニーシエラ、ジムニー同様選択肢がないので簡単だ。新型ジムニーシエラは、1.5Lエンジンのみの設定。グレードは最上級グレードであるJCとエントリーグレードのJLのみとなっている。JCには歩行者検知式自動ブレーキなどを含む先進予防安全装備であるスズキ セーフティ サポートがオプションなので、このオプションは必ず選択したい。

JCとJL(スズキ セーフティ サポート付)との価格差は12万円。装備差は、LEDヘッドランプ、ヘッドランプウォッシャー、クルーズコントロール、LEDサイドターンランプ付きドアミラー、15インチホイールなど。この差なら、最上級グレードのJCを選んだほうが満足度が高いだろう。

スズキ ジムニー/ジムニーシエラ価格

価格は以下の通り。

スズキ ジムニー

XG 5MT  1,458,000円
XG 4AT 1,555,200円
XL 5MT 1,582,200円
XL 4AT 1,679,400円
XC 5MT 1,744,200円
XC 4AT 1,841,400円

スズキ ジムニーシエラ

JL 5MT 1,760,400円
JL 4AT  1,857,600円
JC 5MT 1,922,400円
JC 4AT 2,019,600円

スズキ ジムニー/ジムニーシエラ スペックなど

スズキ ジムニーXG 4AT車

ボディサイズ 全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,725mm
ホイールベース 2,250mm
車両重量 1,040kg
燃料消費率(WLTCモード ) 13.2km/L
総排気量 0.658L
最高出力(ネット 47)<64PS> 6,000kW/rpm
最大トルク(ネット 96)<9.8kg・m> 3,500N・m/rpm

スズキ ジムニーシエラJC 4AT

ボディサイズ 全長3,550mm×全幅1,645mm×全高1,730mm
ホイールベース 2,250mm
車両重量 1,090kg
燃料消費率(WLTCモード ) 13.6km/L
総排気量 1,460L
最高出力(ネット 75)<102PS> 6,000kW/rpm
最大トルク(ネット 130)<13.3kg・m> 4,000N・m/rpm