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BMW渾身の4WDシステム「xDrive」
FR専業メーカーが作る4WD

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

BMW渾身の4WDシステム「xDrive」

近年、悪路の走破性だけを求めるのではなく、車本来の走行性能や安定性を向上する目的で採用されるようになった4WDシステム。各社ともさまざまな最新式の4WDシステムを開発し、今ではおよそ悪路を走行することが無いような車種にまで4WDが採用されている。

そんな最新式の4WDシステムが次々と世の中に発表されているなか、走りにこだわるBMWのxDriveは、どういった特徴があり、何が優れているのか、徹底的に解説していこう。

FR専業メーカーが作る4WD

BMWの4WDシステム「xDrive」は、BMWがFRにこだわってきたメーカーだからこそ作り出すことのできた、最新の電子制御システムである。BMWが作り出す4WDの歴史は、1985年当時発売されていた3シリーズ(E30型)にBMW初の4WDである325iXを追加したときとなり以外に浅い。

当時のBMWの技術からすれば、4WDを作り上げることなどそう難しいことではないはずだが、あえて採用してこなかったと思われる。当時の4WDは、悪路でのトラクション性能には優れるものの、舗装路ではアンダーステアが強く、軽快にコーナーを駆け抜けるBMWには無用の長物だったのだろう。

しかし、現代のxDriveは重く曲がらない4WDシステムではない。詳しくは後述するが、もともと、前後50:50という優れた重量バランスを誇るFRレイアウトをベースにしているため、オンロードでの俊敏性を損なうことなく、優れたハンドリングを実現している。

最新の4輪制御システム

BMW 外観

従来の機械式4WDシステムの場合、車輪が空転し始めてからトルク配分を行うため、どうしても若干のタイムラグが発生する。最新のxDriveは、路面の状況を事前に察知し、状況に応じて4輪すべてに最適な駆動力を配分するため、従来の機械式4WDよりも素早い制御が可能。

ハンドルの切れ角、各ホイールの回転速度、加速度、アクセルの踏み込み具合といった各部で測定したデータを、専用システムで瞬時に処理し、常に走行状況をモニター。例えば、一定速度で走行中に、フロントタイヤの空転を察知した場合、フロントタイヤの通過している路面は滑り易いとシステムが判断し、後輪に駆動力を分配。さらに、フロントタイヤが通過した後にはリヤタイヤが通過することになるため、フロントタイヤがグリップする路面に出たと判断するや否や、瞬時にフロントよりの駆動配分にすることでスリップを予防する。

さらに、ドライバーがハンドルを切っているタイミングであるならば、コーナー内側のタイヤに軽くブレーキをかけ、意図的にヨーモーメントを発生させ、状況によっては、前後のトルク配分を調整することで、アンダーステアやオーバーステアも防いでくれる。

走りと燃費性能の向上

BMW 外観

次に、xDriveの大きな特徴に「効率の追求」が挙げられる。先述したように、本来4WDは、大きなトラクション性能を発揮する代償として、重く曲がらないというネガティブな特性を併せ持っている。

車重が重く4輪すべてに駆動力を伝えるということは、その分燃費には悪影響になる。さらに、重量が増えた影響だけではなく、フロントタイヤは、ただ方向転換だけを行えばよいFRと違い、駆動力を路面に伝えなければならず、おのずと旋回能力は低下する。

しかし、xDriveでは、電子制御された多板クラッチを用いることにより、走行状況に応じて、フロント50:リヤ50から、フロント0:リヤ100までトルク配分を可変することができる。

そのため、安定した走行をしている時には、フロントへの駆動力を最小限にし、燃費の向上を実現する。また、コーナーリング時にも、状況に応じてフロントタイヤに駆動力を配分するため、FRのBMWらしい軽快なハンドリングを損なうことが無い。

このように、最新のコンピューター技術などを駆使し、綿密で素早く4輪の駆動力を制御することで、従来の4WDに見られたネガティブな特性を打ち消しているのである。

DSCなどと組み合わせてより安全に

BMW 外観

E30型3シリーズに初の4WDが登場したのち、2000年に発売されたX5の登場によって、BMWの4WDは大きな変革期を迎える。初代X5に搭載された4WDシステムは、後輪がスリップした際に、積極的に前輪がけん引することで姿勢を安定させるというもの。

最新のxDriveでは、進化したDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)と組み合わせることで、より安定したコーナーリングを実現している。

DSCとは、速度やアクセル開度、ハンドルの切れ角、横Gなどのあらゆるデータを収集し、ブレーキやエンジン出力などを自動調整することで車両を安定させる。

そして、xDriveが各車輪へのトルク配分を行うことにより、オーバーステアが発生しやすい高速コーナーでは、フロントタイヤへのトルク配分を増やすことでスピンし辛い状況を作る。

反対にフロントタイヤが外に膨らむアンダーステアになると判断した場合には、リヤタイヤへの駆動力を増加させ、フロントタイヤのグリップ力を確保する。本来こういった制御は、プロのレーシングドライバーのような高度なテクニックが必要。

しかし、特別なドライビングテクニックが無くとも、車が自動的に、さらに先回りして制御してくれるお陰で、ドライバーは安全に、且つ不自然な電子制御の介入に気が付くこと無く、BMW本来の走りの魅力を感じながら、安全にドライブすることができるのである。

幅広いモデルにxDriveを採用

BMW ロゴ

BMWでは、この最新の4輪制御システムであるxDriveを、X3やX5というSUVだけでなく、3シリーズ、5シリーズ、7シリーズ、2シリーズアクティブツアラー/グランツアラーなど、幅広いモデルに採用している。

今回の記事でご紹介したxDriveは、雪の降る地域に住んでいる方には必須の装備となるかもしれないが、普段雪の降らないという地域であっても、決して無駄な装備ではない。当然これらの電子制御技術は、最新式であるのに越したことはないが、直近でモデルチェンジを果たしたX3などは、まだまだ価格は割高である。

予算を抑えたいという場合には、高年式の中古車を視野にすることで、グッとお買い得な価格で、xDriveを装備したBMWに乗ることができるため、ぜひ新車と中古車両方の見積もりを取り、検討してみてはいかがだろうか。