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次世代EV向けバッテリーの開発へ
BMWは、i1~i9まで商標登録済み

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

次世代EV向けバッテリーの開発へ

BMWグループは、2017年12月18日にアメリカのソリッドパワー社と提携し、次世代EVへの採用が期待される全固体電池(ソリッドステートバッテリー)を共同で開発すると発表。

地球温暖化をはじめとした環境問題は、現代を生きる私たちにとって避けては通れない。そんな、次世代EVへの期待と需要が高まる中、今回の提携は、BMWのEV戦略を推し量る意味でも、大きな意味を持ってくるだろう。

脱化石燃料へ加速する自動車業界

脱化石燃料へ加速する自動車業界

前述しているように、現代社会における大きな課題の一つが、地球温暖化であり、その主な
原因とされているのが二酸化炭素であることはご存知の通り。

1769年にフランスのニコラ・ジョゼフ・キュニョーが、蒸気で動く三輪自動車を発明し、1885年にカール・ベンツが、ガソリンエンジンを載せた自動車を世に送り出して以降、自動車は常にガソリンや軽油といった化石燃料を燃やし続けてきた。

だが、今後地球環境を守るためには、これまでのように、好き放題化石燃料を使うことは避けなければならず、先進国を中心に排気ガス規制や燃費規制が年々強化され続けているのは仕方がないことだろう。

自動車業界では、ハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)が当たり前のように市販されるようになったものの、コストや耐久性、さらに実用性など、まだまだ進化する余地を残している。BMWをはじめ、ワーゲンやトヨタなど、自動車業界をけん引するメーカーでは、さらなる電気自動車の進化に向けた研究開発が行われている。

全固体電池(ソリッドステートバッテリー)って?

全固体電池(ソリッドステートバッテリー)って?

現在、電気自動車やハイブリッドカーにもっとも多く使用されているバッテリーはリチウムイオンバッテリーである。リチウムイオンバッテリーは自動車だけでなく、携帯電話やパソコンなどにも使用され、今の私たちの生活には無くてはならない存在。

それまでのニッケル水素電池などに比べ、寿命が長く小型化できることが特徴で、現代のあらゆる製品が小型化された一番の要因は、リチウムイオンバッテリーの存在が有ったからと言っても過言ではない。

しかし、今回BMWがソリッドパワー社と提携して共同開発を行うというソリッドステートバッテリー(全固体電池)は、そんなリチウムイオンバッテリーを遥かにしのぐ性能を持つと言われ、多くの企業が開発に乗り出している。

これまで、リチウムイオンバッテリーには、液状もしくはゲル状の電解質が使われてきたが、ソリッドステートバッテリーは、ソリッドという言葉通り、電解質を個体化。液体ベースのバッテリーと比べて安全性が高く寿命も長い。

さらに、エネルギー密度が高くすることで、短時間での充電が可能になるなど、電気自動車(EV)にとっては大きなメリットをもたらす。

EVの課題は航続距離と使い勝手

EVの課題は航続距離と使い勝手

今ではハイブリッドだけでなく、多くのメーカーから100%電気で走行するEVが発売されているが、環境にやさしく高性能であることがわかっていても、なかなか購入までには至らないというユーザーがまだまだ多い。

2018年1月の段階でBMWが展開している100%EVであるi3で充電時間や航続距離を見てみると、充電時間は、自宅に設置する200Vの普通充電器で、12~13時間で満充電にできるとなっている。また、ショッピングセンターなど、公共の充電スポットに設置されている急速充電器の場合は、80%までの充電でおよそ45分。

EVの課題は航続距離と使い勝手

そして、カタログ値での航続可能距離は、JC08モードで390kmとなっているが、エアコンの使用頻度や外気温などにより違いはあれど、実際に走れる距離は150km程度と言われている。

毎日決まった経路を走行する通勤や、近所の買い物という使い方であれば問題は無いかもしれないが、必要な時にすぐ給油できる便利さと比較すると使い勝手がいいとは言えないのが現実である。

ソリッドステートバッテリーが実用化されれば、従来よりも小型軽量で大容量、さらに数分で満充電にできるようになることが見込まれている。そうなれば、通常のガソリン自動車のように、充電量をあまり気にすること無く、EVを使用することができるだろう。

BMWにおける今後のEV戦略

BMWにおける今後のEV戦略

実用化が実現し、ソリッドステートバッテリーを搭載するEVやハイブリッドカーが増えていくことに大いに期待したいところだが、現実問題として、まだまだ開発途上にある技術である。

その証拠に、ポルシェやトヨタなどの自動車メーカー、さらに、パナソニックやTDK、村田製作所などの日本企業も、ソリッドステートバッテリーの開発を行うと表明。まさに、ソリッドステートバッテリー(全固体電池)は、これからの自動車業界を大きく変える可能性を持った最新技術と言えるだろ。

BMWにおける今後のEV戦略

そして今回、BMWが共同開発をするために提携した、アメリカのソリッドパワー社は、コロラド大学ボルダー校から生まれたスタートアップ企業。2012年から全固体電池の研究を開始した企業で、いわばアメリカらしい若手ベンチャーとも言える存在。

もちろんBMWにも、長年EVやそれに伴うバッテリーの研究実績があるが、今回若手企業と提携したことで、商用化へのスピードは間違いなく加速されるだろう。そして、BMWがソリッドステートバッテリーの開発を加速させるのには理由がある。

2017年には、イギリスやフランスをはじめとした欧州で、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表され話題となった。この計画が本当に実現されるかどうかについては、さまざまなメディアや評論家の間で議論されているが、今後、化石燃料を使用する自動車の台数が減っていくことは間違いないだろう。

日本でも2030年までにはEVやPHV(プラグインハイブリッド)の占める販売比率を5割~7割にするという目標を掲げており、EVと相性がいいとされる自動運転と合わせて、国産車メーカーの開発競争は激化している。

BMWは、i1~i9まで商標登録済み

BMWは、i1~i9まで商標登録済み

BMWはそんな世界情勢の流れを受けて、既存のi3とi8に加え、i1~i9までの商標登録を行った。当然これからの数年間で、一気に7車種が追加されることは考えられないが、確実に世の中は「脱化石燃料」の方向に進んでいることは間違いない。

世界中の名だたる自動車メーカーがEVの開発に力を入れる中、BMWは、あらゆるジャンルでベンチマークにされてきたメーカーだけに、EVでも世界を引っ張る存在であり続けていくことだろう。

EV(電気自動車)やPEV(プラグインハイブリッド)は、まだまだ発展途上ではあるが、すでに発売されているBMWのEVやPHVには、かなり魅力的な車種がラインナップされるが、EVやPHVは、通常のエンジンモデルに比べ、若干割高になるため、どうしても購入を躊躇ってしまうというユーザーも多いはずだ。

しかし、BMWがラインナップするEVやPHVは、比較的新しいモデルが多いため、電池の劣化がほとんどない高年式も十分に狙える。費用を抑えたいという場合は、お買い得感の強い中古車も検討してみてほしい。