この記事の目次 CONTENTS
BMW7シリーズとレクサスLS
伝統を残しつつも「今らしい」7シリーズのスタイル
パワートレインが豊富な7シリーズ
BMWらしい「駆け抜ける歓び」
安全性能はどちらも充実
新車なら1000万円からと高額なので幅広く検討を

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

BMW7シリーズとレクサスLS

高級車の中にも、自身がハンドルを握ることを想定した「オーナードブリンカー」と、運転手に運転させることを念頭に置いた「ショーファードリブンカー」という2つのコンセプトがある。例えば、メルセデス・ベンツのSクラスなどは後者への意識が強い。

その点、BMWの7シリーズとレクサスLSは、どちらもオーナードリブンカーという色が濃い。近しいコンセプトを持つ2台にスポットライトを当てて、比較していきたい。

 

長きにわたって進化を続ける7シリーズ

BMW7シリーズ

BMWのフラッグシップモデルである7シリーズの歴史は長い。誕生は1977年で、現行モデルは2015年の第6世代である。実に約40年の年月をかけて進化を続けている高級車のひとつで、長きにわたってベンツEクラスやジャガーXJといった強豪としのぎを削ってきた。

ボディタイプはセダンのみ、パワートレインはガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3種類。スポーツグレードのMスポーツ、豪華グレードのエクセレンスといったグレードを用意している。

大きなポテンシャルをもつ対抗馬のレクサスLS

レクサスLS

レクサスを象徴するLSは1989年に誕生。日本国内ではセルシオとして販売されていたが、この初代セルシオのデビューは世界中にセンセーショナルな衝撃を与えた。BMW最大のライバルであるベンツが翻刻へ持ち帰って分解したという逸話が残されているほどである。

現行モデルは2017年から発売されている5代目。ボディタイプはセダンのみ、パワートレインはガソリン、ハイブリッドの2種類、グレードには標準仕様、IPackage、F SPORT、varsion L、EXECULIVEの5種類のラインナップを展開している。

伝統を残しつつも「今らしい」7シリーズのスタイル

7シリーズのスタイルは、BMWらしいワイド&ローを基調としたフォルム。そこにクロームパーツの多用することで、エレガントな装いに仕上げている。BMW伝統のショートオーバーハング、ロングホイールベースを継承しつつも、キドニーグリルや先鋭的なヘッドライトなど用いることで「最近のBMWの顔」を演出。そのため重苦しくならず、どこまでもスポーティな印象を残している。

レクサスLSのエクステリアに目を向けてみると、セダンでありながらクーペのような流麗なフォルムが美しい。それでいて、斬新なスタイリングだから不思議である。フロントにはレクサス共通アイコンのスピンドルグリル、サイドにはドアフレーム、サイドウィンドウ、ボディの段差を最大限まで小さくした設計、リアには前方と下へ延びるデザインのリヤコンビランプなどが採用されている。

独自性が感じられるLSのインテリア

レクサスLS 内装

オーナードリブンカーとしてのこだわりが一番表れやすいのがインテリア。その点、7シリーズはどこまでもドライバー中心設計。金属で加飾され高級感を備えたスイッチ類も、操作性を重視。実際に操作をして見ると、手が届きやすい位置を計算して作られていることがすぐに分かる。もちろんフラッグシップモデルに相応しい高級感を備えており、ディテールにまでこだわった、水平基調のインテリアにプラスティックな要素は全く見当たらない。

同じ高級感のあるインテリアでも、レクサスLSは少し趣が異なる。ブランドとしては遥か先輩である欧州車との差別化を図るためか、日本らしい「おもてなし」の文化をクルマに活かした作りと言われている。例えば、ドアトリムの切子調カットガラスや手作業によるハンドプリーツの内張り、琴や茶筅をイメージしたレジスターのように、匠の技法を活かして同乗者をなごませる。

 

パワートレインが豊富な7シリーズ

欧州車と日本車の考え方の違いは、エンジンラインナップにも表れている。BMWの7シリーズは4.4リッターや6.6リッターといった排気量の大きいエンジンを残しているのに対し、レクサスは大きくても3.5リッターと割り切っている。

BMW7シリーズ
・2.0リッター直列4気筒DOHCターボ
・3.0リッター直列6気筒DOHCターボ
・4.4リッターV型8気筒DOHCツインターボ
・6.6リッターV型12気筒DOHCツインターボ

レクサスLS
・3.5リッターV型6気筒DOHC
・3.5リッターV型6気筒DOHCツインターボ

3.0リッターV6エンジンは、「シルキーシックス」「ストレートシックス」と呼ばれるBMW伝統のエンジン。このクラスのクルマだと「もう少し大きなエンジンの方が良いのでは…」とも思ってしまうが、新開発のターボがそれを補って余りあるパワーを生み出してくれる。大きなエンジンであれば更なるパワーを楽しめるのは言うまでもない。

エンジンラインナップだけ見ると面白みに欠けるレクサスLSだが、改良されたハイブリッドシステムは3.5リッターでありながら5リッターなみの出力。吹け上がりといった「楽しさ」という点では今一つな点もあるものの、そのパワーという点では申し分ない。

ハイブリッド分野ではやはりレクサスLSが強い

レクサスLS

レクサスエンジンで注目すべきは、やはりハイブリッド性能だろう。その性能の高さは、プリウスを生み出したトヨタの技術があってこそ。ただしガソリンエンジンに目を向けると、それほど燃費性能に優れている訳ではないので注意が必要だ。

7シリーズ
・全体:7.6~15.6km/L
・ガソリン:7.6~12.2km/L
・ディーゼル:15.4km/L
・ハイブリッド:15.6km/L

レクサスLS
・全体:9.5~16.4km/L
・ガソリン:9.5~10.2km/L
・ハイブリッド:14.4~16.4km/L

また日本ではエコカーというとハイブリッドが強いが、海外ではディーゼルが主流。7シリーズのディーゼルモデルはレクサスLSのハイブリッドと比較しても遜色のない数値で、エンジンの性能もかなりのものなので、敬遠せずに候補に入れてみてほしい。

BMWらしい「駆け抜ける歓び」

7シリーズの「BMWらしさ」は、オーナードリブンカーを極めるその走り。2トンを超える、大きくて重たいボディを感じさせない、軽くてしなやか、それでいてキレがあるハンドリングは流石はBMWである。また、3mを超えるBMW伝統のロングホイールベースのおかげで安定性にも優れており、ぐんぐんと伸びる加速も存分に楽しむことができる。

走り出すと聞こえてくる気持ちのいいエンジン音は、ファンには溜まらないBGMになる。

乗り心地や静寂性はレクサスLS

レクサスLS

ただ、最近はモータースポーツにも進出するなど、走りに力を入れているトヨタのレクサスLSも負けてはいない。ツインクラッチのような途切れない変速によって、なめらかなドライブフィールを味わうことができる。

また乗っていて何より驚かされるのはエンジン音で、耳で拾えないほど静かである。静粛性は段違いに高いのにアクセルを踏み込むと心地良いサウンドが聞こえる。恐らく、怖いくらいに静かすぎるので、あえて聞こえるようにしているのであろう。

安全性能はどちらも充実

クルマ産業の中でも、近年、目を見張るような進歩を遂げているのがこの安全性能の分野。ドライバーの負担を軽減し、ミスをカバーするその機能は、実際に事故予防に大きな成果を上げている。

7シリーズに搭載されている安全性能の中でも注目すべきは、半自動運転の「ドライビングアシストプラス」。車速20km以下であれば先行車に追走するので、ステアリングには手を添えるだけ。渋滞時は車の監視に注力すればいいので、ドライバーの負担は少ない。

レクサスLSも負けてはいない。こちらも半自動運転に加え、従来の安全システムに先進の予防安全技術や高度運転支援技術を追加。世界初となるアクティブ操舵回避支援や対後方歩行者へのサポートブレーキを装着している。

コストパフォーマンスはガソリン車ならレクサスLS

最後に、コストパフォーマンスに優れているのはどちらか考えてみたい。

7シリーズの新車価格
・全体:1066~2506万円
・ガソリン:1345~2506万円
・ディーゼル:1396~1611万円
・ハイブリッド:1066~1332万円

レクサスLSの新車価格
・全体:980~1680万円
・ガソリン:980~1540万円
・ハイブリッド:1120~1680万円

7シリーズのガソリンモデルは3.0Lの740iMスポーツが最安値だが、レクサスLSのガソリンモデルは3.5LのLS500。排気量を重視した場合、ガソリン車はLSの方がお買い得である。

ハイブリッドモデルは、2.0Lの740e iパフォーマンスが1066万円で、3.5LのLS500hが1120円。LSの方が排気量は大きいが、7シリーズがプラグインハイブリッドである点は注目すべきだろう。

 

BMW7シリーズ

新車なら1000万円からと高額なので幅広く検討を

レクサスLSの新車は980万円から、7シリーズの新車は1066万円からと、諸々含めると少なくとも1000万円はかかる大きな買い物。上級グレードを選べばさらに価格は高くなるが、ブランドの本気が感じられる走りが楽しめるのもまた事実。

新車を検討している人は、中古で上級グレードを買うという選択肢も視野に入れて検討してみてはどうだろうか。7シリーズは2017年にモデルチェンジをして、もうすぐ3年。初回車検のタイミングで手放す人も多いので、在庫も増えてくる。低年式の、思わぬ掘り出し物が見つかるかもしれない。

は大型セダンであることを忘れさせるような、ドライバー視点のクルマ造りがされている。使いやすさは特化していて、スイッチひとつに至るまで細かく配慮されている。レクサスLSは、とにかく快適。日本ならではのおもてなし精神で、内装の豪華さや室内の静粛性など、贅をつくす仕様が魅力的である。

7シリーズやレクサスLSが欲しくても手が出せないという方は、中古車をおすすめしたい。中古車であれば、新車より安く選択肢も多いので、上のグレードを狙うこともできる。新車と中古車の見積もりをとってみて、納得できる1台を購入してほしい。