この記事の目次 CONTENTS
BMWの主力3シリーズの異端児
美しさと実用性を兼ね備えたエクステリア
好みで選べるパワーユニット
車と一体になったようなハンドリング
基本を確実に抑えた安全システム

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

BMWの主力3シリーズの異端児

BMWの中核を担いながら、スポーティセダンとして世界中のメーカーからベンチマークにされている3シリーズ。その中で、もっともニッチな存在と言えるのが「3シリーズグランツーリスモ(以下GT)」である。それまでなかった全く新しいコンセプトを持ったモデルとして、日本では2013年から販売されている。

3シリーズ以上5シリーズ未満のボディサイズ

3シリーズGTは、Dセグメントの3シリーズに属していながら、全長で200mm、ホイールベース110mm、全高は80mm拡大され、セダンやツーリングと比較すると一回り大きい。5シリーズのホイールベースと比較すると、その差は55mmしかなく、長さで言えば、3シリーズのセダンやツーリングよりも、5シリーズに近いのである。

なぜセダンやツーリングと共通のプラットフォームを使用しないのかと言えば、もともと中国市場で5シリーズGTの売れ行きが好調だったことが理由として挙げられる。日本と比べ物にならないほど国土の広い中国では、小さめよりも大きめな車が好まれる傾向があり、車内も広く、見た目でも存在感のあるサイズになったと言える。

美しさと実用性を兼ね備えたエクステリア

見ればすぐわかるように、3シリーズGTはクーペのように流麗なボディラインでありながら、開口部の大きなハッチバックを持っており、一般的にこのようなボディ形状を「ファストバック」と呼ぶ。誰が見てもBMWとわかるキドニーグリルや、フロントからリヤまで繋がるキャラクターラインを持ち、3シリーズのスポーツセダンらしさはしっかりと残している。

3シリーズでありながらとにかく広い

ファストバックスタイルであることの一番の利点は、後席を立てた状態では520L、さらに40:20:40の後席を倒すことで、最大1600Lにもなる大容量のラゲッジスペース。クーペボディのように傾斜しているリヤゲートのせいで、高さはそれほどないものの、容量ではステーションワゴンのツーリングよりも大きいというから驚きである。

そして、全長とホイールベースが延ばされたことで、後席のレッグスペースは、セダンやツーリングに比べて70mm拡大。全高が80mm高くなったことで、頭上のスペースも広くなり、乗り込んだ時の印象は、いい意味で3シリーズっぽくないと感じるほど。5シリーズでは大きすぎるが、3シリーズでは手狭と感じているユーザーにはちょうど良いサイズ感だろう。

好みで選べるパワーユニット

2016年のマイナーチェンジを機に、BMW伝統の6気筒エンジンがカタログから姿を消し、選べるエンジンは、2リッター直4ガソリンターボエンジン(184ps/27.5kgm)と、2017年5月に投入された、2リッターターボディーゼルエンジン(190ps/40.8kgm)の2種類となった。

BMWは、もともと優れたエンジンメーカーであるため、どっちエンジンを選んだとしても間違いはないが、直列6気筒が無いのは少々寂しいというユーザーは、新車ではなく中古車を選択することになる。

余裕を持った走りを求めるならディーゼル

300psを超える6気筒モデルが無いのはいささか残念ではある。しかし、GT(グランツーリスモ)という名が与えられたこの車のキャラクターを考えれば、絶対的なパワーよりも、長距離の移動でも、疲れを感じさせない余裕が優先されるべきとも言える。その点で言えば1,750rpmという低い回転域から最大トルクを発生するディーゼルが、もっとも似合うエンジンと言えるだろう。

車と一体になったようなハンドリング

BMWの魅力を語る際、シャープで素直なハンドリングの良さが取りざたされることが多い。3シリーズGTも当然素晴らしく素直な身のこなしであり、これも50:50の前後重量配分だからこそ成せるのだと納得できる。

BMWに共通して言えるのは、自分を中心に車が動き、向きを変えてくれるような感覚があり、3シリーズベースの比較的コンパクトなボディと相まって実に気持ち良くドライブすることができる。

標準3シリーズとの違い

何度かお話しているように、3シリーズGTは、標準の3シリーズと比べてホイールベースが110mmも長い。この差は当然ハンドリングにも現れており、長くなった分だけゆったりとした動きとなる。それは決して重ダルイ感じではなく、どちらかと言えば1ランク車格が上がったような、余裕を持った身のこなしと言った方がしっくりくるだろう。

基本を確実に抑えた安全システム

今の時代、売れる車の条件で外してはならないのが安全運転支援に関連するシステムであることは間違いない、。3シリーズGTにも、レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)や、前車接近警告機能、衝突回避・被害軽減ブレーキなどが装備され、衝突回避・被害軽減ブレーキは歩行者に対しても反応してくれるというから頼もしい。

日々の買い物から長旅まで

GT(グランツーリスモ)というからには、この車本来の使用目的は、長旅に必要な荷物を積むこと。そして、3シリーズGTのゲッジスペースは、かなり使い勝手を考えて設計されていることが良く分かる。可倒式のリヤシートはもちろんのこと、2本のアルミ製レールと2つのフックを備え、さまざまな大きさの荷物を安心して積むことが可能だ。

<見出し>3シリーズGT価格グレード情報
・320iグランツーリスモLuxury 645万円
・320iグランツーリスモM Sport 654万円
・320dグランツーリスモLuxury 669万円
・320dグランツーリスモM Sport 678万円
・320d xDriveグランツーリスモLuxury 700万円
・320d xDriveグランツーリスモM Sport 709万円

現行モデルの3シリーズGTを中古車で購入する場合には、2016年を境に搭載されるエンジンのラインナップが変わっている。そのため、BMW伝統のストレート6に乗りたい場合は、必然的に2016年9月までの中古車を探すことになる。発売から4年目を迎える3シリーズGTは、中古車になることで選択肢が大きく広がったとも言え、是非自分に合った1台を見つけてもらいたい。

BMW3シリーズ_外観