エコカー減税は基本的に新車購入時の税負担の軽減が対象だ。そのため、年式の古い中古車はもちろんのこと、当該年に登録されたばかりの登録済未使用車*であっても、エコカー減税の対象にならない。ただし、一部対象になる場合があるため本文で解説しよう。

*初度登録された車両で、かつ使用または運行に供されていない中古車

この記事の目次 CONTENTS
古いクルマに乗り続けてはいけない?! エコカー減税が中古車には適用されない理由
エコカー減税=ハイブリッドカーではない。 ガソリン車から次世代自動車へ
エコカー減税対象車とガソリン車、 トータルではどっちがお得?
中古車を買うなら クリーンディーゼル車と電気自動車が狙い目
次世代自動車の弱点
ガソリン車の中古車が安く買えるチャンス到来か

ライター紹介

自動車評論家

松下 宏 氏

中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。 誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。

古いクルマに乗り続けてはいけない?! エコカー減税が中古車には適用されない理由

中古車はエコカー減税の対象になるかどうか。これについて、環境性能の高いクルマは2回目の車検時にも自動車重量税が減免されることになっているから、3年目(初回車検は新車時のもの)の車検前に手放されたエコカー減税対象車を買えば、自動車重量税の減免が受けられることになる。

新車を売る方が経済上のメリットが大きいという考え方

古いクルマを大事にして長く乗ることは、資源の節約などの観点からエコにつながるといえなくもないのだが、残念ながら日本の政府にはそうした発想はない。
クルマの燃費は年々向上しているので、古いクルマは基本的に燃費性能や車種によっては排気ガス性能も劣るため、そうしたクルマを排気ガスがクリーンで燃費の良い新しいクルマと入れ替えた方が良いというのが発想の根本にあるからだ。

また、前述のようにリーマン・ショックを受けた景気浮揚策という側面もあるため、新車が売れて自動車メーカーや新車ディーラーが儲かり、経済が好循環に入ることを期待している側面もある。そのため、多くの中古車ユーザーはエコカー減税の恩恵を受けることはできない。

エコカー減税=ハイブリッドカーではない。 ガソリン車から次世代自動車へ

エコカー減税では、次世代自動車と呼ばれるような、一段と高い環境性能を持つクルマが特に優遇されている。電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル乗用車などがそれで、自動車取得税や自動車重量税は非課税(免税)になり、自動車税のグリーン化でも75%の低減が受けられる。
普通のハイブリッド車は、今ではあまりにも一般化してきたため特別扱いではなくなり、ガソリン車と同じ扱いになっている。単にハイブリッド車というだけで優遇される時代は終わり、排気ガス性能と燃費性能に優れていないとエコカー減税が適用されなくなったのだ。
まあ、ハイブリッド車は基本的に燃費が良いので、ほとんどのハイブリッド車がエコカー減税の適用が受けられるのだが、車種によってはさほど燃費が良くないため、小幅な減税しか受けられないものもある。

エコカー減税対象車とガソリン車、 トータルではどっちがお得?

次世代自動車と呼ばれるようなクルマは、エコカー減税が受けられるだけではなく、燃費性能に優れるものが多いが、それぞれの車種ごとに理由があって新車価格が高い。エコカー減税(免税)によって税負担が減ったところで、ガソリン車やハイブリッド車に比べたらトータルの負担額は大きくなる。

普通のハイブリッド車は、今ではあまりにも一般化してきたため特別扱いではなくなり、ガソリン車と同じ扱いになっている。
環境性能車を普及させようというインセンティブ政策ではあるが、経済合理性を考えたら、まだまだガソリン車やハイブリッド車を選んだほうが有利であるのが実情だ。エコカー減税が対象の車を狙うなら安全性能が高いクルマを選ぼう。
2016年度にはエコカー減税適用車が80%くらいにまで達していたので、普通のクルマ選びでエコカー減税適用車を選ぶのが当然という状況になっていた。
こうした傾向は、2017年以降も続くと考えていい。ただし、これまで紹介してきたように、エコカー減税の適用基準が厳しくなることから、適用車種が半分くらいに減るものと見込まれている。エコカー減税がどれだけ適用されるかをしっかり確認した上で買うことが必要になる。
自動車メーカー各社のホームページには、エコカー減税対象車の一覧などが掲載されているので参考にしてほしい。

中古車を買うなら クリーンディーゼル車と電気自動車が狙い目

エコカー減税は、基本的に新車に適用されるものであるため、エコカー減税が中古車市場に大きな影響を与えることはないだろう。強いていえば、登録済未使用車*を選ぼうとしたユーザーが、エコカー減税の受けられる新車を選ぶといったケースはあるかも知れないが、それも限定的なものと考えたら良い。エコカー減税の基準が厳しくなるのに対応し、自動車メーカー各社は燃費の良いクルマ作りをこれからも進めていくだろうから、そうしたクルマが選択の対象になっていくだろう。

燃費の良いクルマが中古車市場に出回るようになるまでには、一定のタイムラグがあるため、中古車ですぐに燃費の良いクルマを欲しいと思っても難しい。電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、クリーンディーゼル乗用車などの次世代自動車も、新車では一定の人気を集めるだろうが、中古車でこれらを積極的に選ぼうというユーザーは少ないだろう。

次世代自動車の弱点

電気自動車は自宅に充電設備を設けられる人でないと実質的に買えないし、航続距離の不安と充電の手間が引き続き課題となる。プラグインハイブリッド車も充電設備が必要という点では同様で、ユーザーを選ぶクルマである。燃料電池車は、まだ高くて話にならない。
比較的リアリティがあるのは、クリーンディーゼル乗用車だが、振動や騒音などのデメリットがあることが見過ごされがちだ。マツダや海外メーカーが数年前から積極的にクリーンディーゼル車を導入しており、そろそろ中古車の流通量も増えてきているので狙い目だ。

もちろんどのタイプの次世代自動車も価格が高いので、中古車になったときには値落ち幅が大きくなって買い得感が出る(リーフが良い例だ)だろうが、それを理由に買うユーザーが少ないから安くなっているということでもある。そうしたクルマをあえて選べば、買い得感のあるクルマ選びができる。次世代自動車も急には普及しない。だからこそ’次世代’自動車なのだ。

ガソリン車の中古車が安く買えるチャンス到来か

エコカーが追求される時代は続くだろうが、それが急速に次世代自動車の時代へとは進まない。今後も引き続き、新車でも中古車でもハイブリッド車を中心としたエコカーが人気を得るだろう。
こうしたハイブリッド車などの低燃費車がより好まれていくことは確実。これからドンドンとハイブリッド車やクリーンディーゼル車などの燃費のよい中古車が増えてくれば、燃費の悪いガソリン車の人気は下がりリセールバリュー※も低くなり、中古車価格が下がることは予想できる。

※リセールバリューとは、新車で購入した車が3年後にどの位の価値が残っているかを指標化したもので、リセール(再び売る)時の価値(バリュー)を残価率で示しています。

価格は中古車の魅力のひとつ。同じクルマで同じ年式で同程度のグレードのガソリン車とハイブリッド車がある場合、新車価格はガソリン車の方が安く、リセールバリューもガソリン車が安くなれば、中古車になった時の買い得感はガソリン車にあるだろう。燃費の良さによる燃料費で、価格差を埋めることはなかなか難しいので、経済性面ではガソリン車が優れる。また、再び使うというリユースの面から見れば、中古のガソリン車というのもエコである。