低燃費車の税負担を軽減するエコカー減税が2年間延長されることが決定した。平成29年度のエコカー減税は、現在の減税基準をより厳しいものとし、平成30年度にはさらに厳しい基準となる。今やエコカー減税は、自動車選びにおいて非常に重要な要素のひとつになっている。スポーツカーなど、一部特殊なクルマ以外はエコカー減税対象になっていないと売れないほど。そんな自動車購入に重要な影響を及ぼす、新エコカー減税を自動車評論家の松下 宏がレポートする。

この記事の目次 CONTENTS
エコカー減税とは
2017年5月からは新しい税制がスタート
その他のエコカー関連減免税制
新エコカー減税を開始した3つの理由
1.国際社会の一員として、CO2発生量の削減目標を実現するため
2.減税対象車が増えすぎたことによる自動車税の減収
3.消費税10%の増税施策が延期になったことによる財源確保のため

ライター紹介

自動車評論家

松下 宏 氏

中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。 誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。

エコカー減税とは

新車購入時の税負担を軽減することにより、環境性能に優れたクルマの買い替えを促進することを目的に導入された制度である。中古車は基本的に対象外だが、自動車重量税の減免はクルマによって受けることができる。

エコカー減税がスタートしたのは2009年。排気ガスがクリーンで燃費にも優れるような環境性能の高い自動車をエコカーと定義し、エコカーを購入するときにかかる自動車取得税や、購入時と車検時にかかる自動車重量税を減免して優遇する制度だ。

2017年5月からは新しい税制がスタート

日本は国際社会の一員として、国連気候変動枠組条約(COP)に対応してC02の発生を低減するためにクルマの燃費を向上させる必要があった。エコカー減税のインセンティブによって燃費や排ガス性能の悪いクルマから環境性能に優れたクルマの買い替えを促進する目的から、経済産業省が主導して導入されたものだ。導入の前年である2008年にリーマン・ショックが発生し、これによって日本経済・国内消費が低迷していたこともあり、日本の基幹産業である自動車産業を支えて経済の発展を図る意味合いもあった。
当初は3年間の期間限定で導入されたものだが、その後も少しずつ中身を変更しながら継続され、2017年3月末登録分をもって終了。そして2017年5月からは新しい税制がスタートする。

その他のエコカー関連減免税制

■自動車税のグリーン化
エコカー減税がスタートしたのは2009年。排気ガスがクリーンで燃費にも優れるような環境性能の高い自動車をエコカーと定義し、エコカーを購入するときにかかる自動車取得税や、購入時と車検時にかかる自動車重量税を減免して優遇する制度だ。

■エコカー補助金
リーマン・ショック後に数年間実施された制度。エコカー補助金対象の新車を購入すると補助金が交付されるというもの。現在はガソリン車は廃止され、電気自動車、プラグインハイブリッド車、クリーンディーゼル車と燃料電池車が対象となっている。

新エコカー減税を開始した3つの理由

2017年度以降に新たなエコカー減税が継続されることになった主な理由は3つ。

1.国際社会の一員として、CO2発生量の削減目標を実現するため

前述のC0P21で、2020年以降のC02発生量削減の目標が盛り込まれたが、これに対して日本は2030年度の段階で、26.0%減とする目標を2013年度に提出した。あるいはドイツでは2030年までに、ガソリン車の販売を禁止するなどのC02削減策が考えられている。
こうした環境重視の世界に向けて、国産メーカーがグローバルで高い競争力を得られるようにエコカー減税を継続してCO2排出量の少ないクルマを推奨することがエコカー減税継続の目的だ。

2.減税対象車が増えすぎたことによる自動車税の減収

エコカー減税のインセンティブによるまでもなく、自動車の燃費は年々向上が図られてきた。これによって、2016年の段階では販売されるクルマの大半(8割程度)がエコカー減税の適用車種になるような状況が生まれた。今ではエコカー減税の適用車種が多くなりすぎたため、税収の減収幅が大きくなってしまったのだ。
そこで、環境性能(燃費性能)の基準を厳しくし、より高い燃費目標を達成したクルマに減税を適用する形で新しいエコカー減税が実施されることになった。とはいえ、エコカー減税対象車を中心に顧客が選択することに変わりはなく、自動車メーカーも積極的にエコカー減税の対象になるように燃費向上を図るのだから、税収が増えるかどうかに関しては疑問が残る。
ただ、こうした政策があるからこそ、自動車メーカーがよりCO2の排出量が少ないクルマを積極的に開発し環境負荷を低減し、結果的にグローバルでも日本メーカーがCO2排出量でも高い競争力を得ることにもつながるのも事実である。

3.消費税10%の増税施策が延期になったことによる財源確保のため

安倍内閣がマニフェストに盛り込まれていた消費税増税10%が、予定では2017年4月から施行されるはずだったが、これが2019年10月に延期されることとなった。これにより、本来見込めたはずの税収をどこかで確保しなければならなくなり、その一環としてエコカー減税の対象範囲を厳しくすることで財源を確保する狙いがあった。