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一枚の名車絵 第14回 BMW2002tii


BMWといえば基本的には3、5、7シリーズの各サルーンがラインナップの基本でした。しかし、ビッグラグジュアリークーペの6シリーズや8シリーズに加え、現在では1シリーズ、2シリーズも登場。3シリーズの2ドアも4シリーズに名称を変更しました。そのほかにもSUVのXシリーズなどが存在し、以前よりもバリエーションが大きく広がっています。


◆質実剛健スポーツサルーンの原点


なかでもBMWを代表するのが、コンパクト・スポーツサルーンである3シリーズです。初代E21型は1975年に登場、現在のF30型で6代目となりました。ボディサイズや排気量の拡大はあるにせよ、基本とする「スポーツサルーン」というイメージは一貫しています。その3シリーズの前身が、ここでご紹介する2002シリーズです。

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BMWは世界でも有数の自動車メーカーとして認識されていますが、戦前はどちらかというと量産車の生産よりは高価格の高級車を製造していました。いっぽうでイセッタなどの超小型車も生産し、両極端なラインナップを持っていました。

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現在のような実用的なセダンを作り始めたのは1960年代。1961年に登場した“ノイエ・クラッセ”と呼ばれたBMW1500がその原型と言えます。スポーティで品質が高いサルーン、というBMWの印象は、ここで形作られたと言っても過言ではありません。


◆BMWの地位を築いた名車


copyright_izuru_endo_2016_09_bmw2002tii_1280_823(クリックで拡大)そのノイエ・クラッセの発展版であるBMW1600、1800、2000よりも下のクラスを狙い1966年には1600-2がデビューしています。「-2」とは2ドアを意味していました。1968年には排気量を2000用の2リットルエンジンを押し込んだ高性能版2002を追加。2002はコンパクトなボディに強力な2リットルを積んだことで高い性能を誇り、大人気となりました。なお、1971年には1600-2は2002や同時期に追加された1802と合わせ、1602に改称しています。

BMWはその後さらに、2002の圧縮比を高めソレックスのツインキャブで武装して高性能化した「2002ti」を登場させます。パワーはノーマルの2002に比べ20psアップの120psとなり、トランスミッションも4速MT以外に5速も用意されていました。そしてさらに1971年には、クーゲルフィッシャーのメカニカルフューエルインジェクション(燃料噴射)を備えた「2002tii」がデビュー。排気量はそのままで、130psまで強化されたことで、最高時速は190km/hに達しました。

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また、1969年、航空機では常識的だったターボチャージャーをクルマに活用(BMWは元来航空機エンジンメーカーだった)、レースで活躍した2002TIKの市販版といえる「2002ターボ」が登場。KKK製ターボとシェーファー製メカニカル・インジェクションは170psものパワーを与えています

2002シリーズは好評のまま、1975年に初代3シリーズが姿を現すまで製造され、BMWの一時期を築きました。いまなお名車として語り継がれ、日本にも多くのファンを持っています。このクルマの存在なくして、いまのBMWの隆盛は無かったかもしれません。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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