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「みんなの街のはたらくくるま」第7回 日産 クルー タクシー


わたしたちの生活を支えている「はたらくくるま」にスポットを当ててイラストとともにご紹介するこのコーナー。第7回は、すでに日本の風景の一部でもあり、ごくふつうの公共交通機関の一員であり、利用したことがない方はいないと思われるはたらくくるま、「タクシー」をお送りいたします。


◆かつては各社に存在したタクシー向け車両


日本におけるタクシーの歴史は古く、1912(明治45)年まで遡ることが出来ます。タクシーの運行が法人格でないと出来なくなったのは1938(昭和13)年のことでした。その後戦時中になって膨大な数だったタクシー業者を統合して再編した結果、現在の大手タクシー会社が形成されています。そして2002年には規制緩和の一環としてタクシー業に参入する際のハードルが免許制から許可制になったことで下がり、一気にタクシーに新規参入した事業者が増えて現在に至っています。

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タクシーに使用されるクルマは、基本的には箱形のセダンが好まれます。トヨタではクラウン、日産ではセドリックがその代表でした。近年トヨタ・プリウスや日産NV200などによってそのイメージは大きく変わってきましたが、それでも現在、タクシーの大部分は完全な3ボックス型のトヨタ・コンフォートか、それのロングホイールベース版クラウン・コンフォート、さらにそれの上位版クラウン・セダンなどが多く使われています。

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タクシーには料金区分が4つあり、小型車、中型車、大型車、特定大型車に別れていますが、地域によって区分の仕方がまちまちだったりするので注意が必要です。参考までに小型車とは全長が4.6m以下、定員が5人乗りで、初乗り運賃なども中型車以降とは異なっていて、トヨタではコンフォート、古くはコロナなどがそこにカテゴライズされます。日産はこの小型車区分用にクルーを、中型車以上用にセドリックをラインナップしていました。


◆こだわりの後輪駆動も後継は現れず・・・


copyright_izuru_endo_2016_09_citroen_crew_1280_797(クリックで拡大)日産 クルーは、ライバルのコンフォート同様にはじめからタクシーとしての使用ありきで開発されたクルマで、1993年に登場しました。その頃すでにセダンも流麗なスタイルのクルマが出ていた中、クルーはカドこそ取れていたものの基本的にはハコ型セダンで、それによって広い室内とトランクルームを確保しています。また、足回りもコンサバティブなFR(後輪駆動)で、保守的と云われたタクシー市場での声にも対応していました。

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クルーは2009年まで製造されましたが、正式には後継者は登場しておらず、日産のタクシー用小型車はその命脈を絶ちました。また、タクシーの代名詞だったセドリック(営業車)もすでに生産は終わりNV200が後任となったことで、残念ながら日産からはセダン型のタクシー専用車が消滅してしまっています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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