ホンダCR-Z

<寂しさ誘うシートに入ったFinal labelロゴ。数少ないハイブリッドスポーツが年内で姿を消す・・・>

ホンダCR-Zホンダは、ハイブリッドスポーツカーであるCR-Zの生産を年内で終了すると発表した。同時に、生産終了を前に最後の特別仕様車となる「α・Final label(アルファ・ファイナルレーベル)」を設定し発売を開始した。

ホンダCR-Zは、2010年にデビュー。すでに、デビューから6年が経過しモデル末期だ。このCR-Zは、1.5L i-VTECエンジンとハイブリッドシステムのIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)を組み合わせたスポーツカーとしてデビューした。クルマ離れが叫ばれる中、若い独身男性に売れたことから話題にもなった。また、低燃費による優れた環境性と、走る楽しさを合わせ持った現在でも数少ないモデルだったこともあり、2010-2011日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。トヨタのハイブリッドシステムでは、なかなかできないホンダらしい独創的なモデルだ。また、ハイブリッド車でありながら、6MTを搭載したこともマニア受けしていた。

ホンダCR-Zは、改良や特別仕様車が設定されたが、直近の2015年には大幅なマイナーチェンジが施された。電子制御パーキングブレーキの採用や、リヤトレッドを10mmアップ、ブレーキサイズが拡大されるなど、装備や走りの質に至るまで大幅にグレードアップされた。これだけ大幅な改良が加えられたことから、あと数年はCR-Zの販売が行われると思われていたが、残念ながら年内で生産を終了することになった。

ホンダCR-ZCR-Zには、高効率のリチウムイオン電池が搭載されるなど、先進性を感じさせる部分やこだわりを感じさせる部分も多いモデルだった。走行性能部分でもこだわっていて、鍛造アルミフロントロアアームなどが採用されており、スポーツカーとしての走る楽しさを追求していた。

CR-Zが生産を終了する大きな理由は、やはり売れていないという現実だ。デビュー直後こそ3,000台/月を超えることもあったが、スポーツカーということもあり、一定のファンに売り切った後は、急速に販売台数を落としていく。1年も待たずに1,000台/月売ることができなくなり、直近では100台/月売るのも難しい状況。さらに、ホンダはミッドシップオープンカーであるS660も販売したこともあり、ホンダのスポーツカーファンの中には、古いCR-ZよりS660の方が魅力的に見えたはずだ。

また、ハイブリッドスポーツカーとしての価値も失われていた。CR-Zのハイブリッドシステムは、IMAだ。IMAは、システム的にシンプルでコストも低いものの、燃費ではトヨタのTHSIIとでは勝負にならなかった。そのため、ホンダはIMAに見切りをつけ早々に現在のスポーツハイブリッドi-DCDに移行した。CR-Zの燃費は、現在21.6㎞/L。もはや、ハイブリッド車という燃費のメリットはない。最新フィットの1.5L自然吸気エンジンでさえ、すでに21.8㎞/Lとなっているくらいだ。モーターアシストによる力強さもあるが、リチウムイオン電池を搭載することによる重量増で相殺されるため、魅力はドンドンと薄れて行ってしまったのだ。

さらに、トヨタからは86が投入され、同じホンダからは軽自動車でミッドシップのS660、マツダ ロードスターもフルモデルチェンジするなどしたこともあり、スポーツカーの選択肢が増えたことも要因だろう。デビューが最も古い現状のCR-Zでは戦闘力不足となるのも仕方のないところ。こうした要因が重なり販売台数は伸びなかった。

ホンダCR-Z今回の特別仕様車CR-Z α・Final labelは、αグレードをベースとし最後の特別仕様車ということをアピールしたモデルだ。アルミ製コンソールプレートやシートには、哀愁を誘うFinal labelのロゴが入る。その他、専用マット塗装17インチ軽量アルミホイールや、特別色として「ブリリアントスポーティブルー・メタリック」(モノトーン)を設定した。主に見た目の変更が中心。強いて走行性能に影響するという部分では、17インチホイールくらいだ。また、αではオプション設定のナビ装着用スペシャルパッケージが標準装備された。

このCR-Z α・Final labelの価格は2,800,000円。最後の特別仕様車ということや、比較的容易な仕様ということもあり、大バーゲン価格になるのかとおもいきや、ベースとなるαから10万円アップという価格設定になった。装備アップ分に対して、価格相応といった印象だ。

せめて、30km/h以下での追突防止を支援する「シティブレーキアクティブシステム」、「サイドカーテンエアバッグシステム(前席/後席対応)」と「前席用i-サイドエアバッグシステム(容量変化タイプ)」をセットにしたオプションの「あんしんパッケージ」が標準装備されていれば、この価格でも買い得感はある。最後のモデルなのだから、多少顧客への還元があってもいいだろう。

こうしたスポーツカーのファイナルバージョンは通常良く売れる。三菱のランサーエボリューションXもあっという間に完売した。ただ、今回の特別仕様車は、あまりこだわらなかったようで、最後の特別仕様車としては少々物足りない。スポーツカーの肝といえる走行性能部分には一切手が入っていないし、最後のモデルが限定車でもなくあえてコレクションしたいという価値も薄い。メーカー側も、どうせ売れないのだからと力が抜けた感がある特別仕様車だ。こうした特殊なクルマを選んでくれる顧客のために、スポーツカーらしい走りの質感アップと特別感はほしかった。

ホンダ最新のハイブリッドシステムであるスポーツハイブリッドi-DCDに乗せ換えるなど、なにかバージョンアップの方法はなかったのかなど、心残りはあるモデル。これで、国産ハイブリッドスポーツが姿を消すことになる。

■ホンダCR-Z特別仕様車 「α・Final label」価格:CVT/6MT 2,800,000円

<主な特別装備の内容>
○α特別仕様車「Final label」6MT/CVT共通
αの装備に加えて
・「CR-Z Final label」ロゴ刺しゅう入り・専用ブラックコンビシート(前席)
・プライムスムース・ドアアームレスト(ブラック)
・専用マット塗装17インチ軽量アルミホイール
・「CR-Z Final label」ロゴ入りアルミ製コンソールプレート
・ピアノブラック調ステアリングガーニッシュ
・ナビ装着用スペシャルパッケージ
・プレミアムペダル
・トノカバー
特別色として、「ブリリアントスポーティブルー・メタリック」(モノトーン)を設定