レクサスGS F

<日常からサーキットまで! を実現した使い勝手の良さが魅力のスポーツセダン>

レクサスGSFレクサスは、高級セダンであるGSのマイナーチェンジに合わせ、同時にスポーツセダンであるGS Fを新設定し発売を開始した。ハイパフォーマンスモデルであるFシリーズのテーマは、「日常からサーキットまで」。このセダン1台で、フレキシブルにクルマが楽しめるように開発されている。

レクサスGS Fは、久しぶりのセダンのハイパフォーマンスモデルでもある。今までは、ひとクラス下のサイズであるIS Fがあったが、ISのフルモデルチェンジに伴い生産中止になり約1年半以上が経過した。そのFの系譜は、クーペのRC Fに受け継がれていたからだ。

本来ならば、ハイパフォーマンスモデルはクーペのRC Fに任せておけばいいのだが、レクサスがこうしたセダンにFモデルを投入するには訳がある。日本マーケットでは、メルセデス・ベンツ のAMGや、BMWのMなどハイパフォーマンスモデルがよく売れている。走りを楽しむというよりは「一番高いグレードが欲しい」という顧客のニーズも強い。GSはレクサスの中でも売れていないモデルのひとつ。その理由が、クラウンとの差別化が今ひとつであるからだ。基本的な骨格、パワーユニットを共用しているため差別化しにくい。そのため、クラウンに対して約200万円高い理由が顧客に提示できていない。しかし、GS Fなら話は別。V8 5.0Lというユニークなパワーユニットが使えるので、クラウンとの差別化は容易だ。

レクサスGSFGS Fを投入することで、クラウンとの差別化ができ、さらに一番高いグレードを要求する顧客にも対応が可能。その結果、より利益率の高いクルマが売れる。GS Fは、単に走りを楽しむ顧客向けという存在ではないのだ。実際、GSは非常に高価なため、法人名義の登録となる場合が多い。法人名義とは、会社の経費でクルマを買っているということになる。多くが中小オーナー企業の場合が多く、法人名義とはいえオーナーの私用車としても使われている。ただ、法人名義で買う場合、税務上、スポーツカーなどは税務署などから認められないケースが多くなるのだ。そのため、クーペのRC Fではなく、セダンのGS Fがラインアップ上必要になるのだ。また、FシリーズがISではなく、GSになったのもこうした法人名義で買う顧客のニーズを考えてのことだ。

新型レクサスGS Fのボディサイズは、全長4,915×全幅1,855×全高1,440㎜。ベース車のGSよりも、ボディサイズが全長で35mm、全幅が15mm大きくなり、全高は15㎜ほど低くなっている。よりワイド&ローなフォルムが際立ち、ハイパフォーマンスセダンらしいスタイリッシュな雰囲気になった。

レクサスGSF外観デザインは、基本部分は同じだが細部に渡り走行性能を引き上げるための空力を意識したデザインになっている。フロントバンパーサイドをフィン形状とすることで、走行安定性の確保とともにワイドかつ低重心なスタンスを強調。リヤビューは、“F”を象徴する台形配置の4連エキゾーストディフューザーを配置。サイドビューは、低く構えたフェンダー上面、大きく張り出したフェンダーフレアによって、V8ユニットを搭載したハイパフォーマンスモデルであることを主張する。また、エアダクトやサイドアウトレット類は、演出ではなくすべて機能を追求したものだ。

インテリアデザインも基本はGSと同じ。メーターがGSとは異なり、エコ、ノーマル、スポーツS、スポーツS+と4パターンに変化。走行パターンに合わせた最適な情報を表示する。

シートは、スポーティながらラグジュアリー感のあるものとなっている。本革シートをベースとして、ブラックだけでなく鮮やかなオレンジやレッド、ホワイトなどが選択できる。このシート、なかなか出来が良い。フロントシートは表皮一体発泡成型によるハイバックスポーツシートを採用。全体的に大型でラグジュアリー感が強いのだが、サーキットなどで高いGがかかってもしっかり体を支えてくれる。サイドのサポートの最小限で、街乗りでもタイトな感じはなく、リラックスできるのが特徴。だてにコンセプトを日常からサーキットまでとしているだけのことはある。

レクサスGS Fに搭載されるエンジンは、2UR-GSE型V8 5.0L自然吸気エンジン。477ps/7,100rpm、530N・m /4,800~5,600rpmというパワーとトルクを誇る。このパワーユニットは、組み立て後に一基ずつエンジン回転させバランスを調整する。これは、自然吸気エンジンならではのリニア感やレスポンスの良さを、さらに高次元へと引き上げるためだ。

レクサスGSFメルセデス・ベンツやBMWでは、すでにハイパフォーマンスモデルにも環境性能を重視したダウンサイジングターボエンジンを搭載。環境面では、大排気量の自然吸気エンジンは姿を消しつつある。ターボエンジンは、それなりの魅力があるが、やはりターボラグはあり、自然吸気エンジンに比べるとレスポンスで劣る部分がある。フィーリングという面では、こうした大排気量の自然吸気エンジンはとても気持ちがよい。しかし、環境性能面ではダウンサイジングターボエンジンに劣り、今後姿を消していく状況だ。それでも、レクサスはこの5.0Lエンジンに巡航域などの低負荷領域ではアトキンソンサイクル化し、できる限りの低燃費化を施している。その結果、燃費は8.2㎞/L。組み合わされるミッションは8速ATとなっている。

サーキット走行では、ボディの堅牢さがモノを言う。そのため、レーザー溶接、スポット打点の増し打ちに加え、高剛性ガラス接着剤、レーザースクリューウェルディングなどレクサス最新のボディ技術が導入された。さらに、フロントブレース、リヤボディブレースの剛性向上、ボディとの締結構造の追加などを実施。GSをはるかに超える強固なボディとサスペンション剛性により、サーキットでもステアリング操作に忠実な動きをみせる。このボディ、かなりの実力で高Gがかかるコーナーでも、修正舵をあてることなくオンザレール感覚で走り抜けることができた。

もちろん、超高速でサーキットを走るために空力特性も磨きこまれている。GS Fには、フラットな整流面をもつエンジンアンダーカバーを採用。リヤフロアアンダーカバーによる床下切り上げ角の最適化など、床下の整流を追求し、優れた空力性能を実現。さらに、各アンダーカバーにエアロスタビライジングフィンを設け、空気の流れを積極的に利用しているのだ。超高速走行を意識した結果、サーキットだけでなく高速道路でも優れた直進安定性を披露。高速道路での直進安定性の高さは、疲労軽減にも役立ちロングツーリングにも役立つ。

また、サーキットでは短い時間に減速することが求められる。GS Fには、フロントにアルミ対向6ピストン、リヤはアルミ対向4ピストンモノブロックキャリパーが採用されている。また、GS F専用オレンジブレーキキャリパー(フロント・リヤ)がオプション設定。粗目のめBBS製鍛造ホイールの間から見えるオレンジ色のキャリパーは、並みのセダンでは無いことを明確にアピールする。

そして、サーキット走行で非常に効果があったのが駆動力制御システムTVD。走行状態に応じて後輪左右の駆動力を最適に電子制御。TVDにはスタンダード、スラローム、サーキットの3モードが設定されていて、走行状況に合わせ選択できる。この機能は、速く走ることだけでなく、一般の曲がりくねった峠道でも効果を発揮。クルマの回頭性が良くなるので、全長が4,900㎜を超える大きなボディをもつGS Fが、クルリクルリと自然に向きを変えてくれる。こうした感覚は、まるでひとクラス小さいIS Fに乗っているようでもある。

さて、レクサスGS Fの選び方。GS Fは、1グレードで価格は11,000,000円。そのため、購入時にはオプションの選択で頭を悩ますことになる。まず、安全装備面では歩行者検知式の自動ブレーキ関連装備レクサス セーフティシステム+が標準装備になった。ただ、困ったことに、1千万円オーバーのクルマなのに、後側方の隣接する車線を検知し、接触の可能性がある場合、警報を発するブラインドスポットモニターがオプション。これは、便利で安全性を高める機能なので絶対に装備したほうが良い。そして、まさかのクリアランスソナー&バックソナー、パワートランクリッドもオプション。これらの装備は、高級セダンとしてはもはや当たり前の装備なのでこちらも装備したほうがよいだろう。

■レクサスGS F価格:11,000,000円