ザ・対決 日産 スカイライン クロスオーバー VS レクサス RX
プレミアムSUV編
日産 スカイライン クロスオーバー vs レクサス RX

 ひと口に、プレミアムSUVといっても、すべてが土臭くなく、ただ高級車然としていればいいというわけではない。しっかりと細かくキャラクター分けがされているのだ。かなり走りに振っているのが、日産 スカイライン クロスオーバーであり、そもそもは北米で展開するインフィニティ EXながらもスカイラインの名を冠するだけに、スポーツカーに近い走行性能をもつ。まさにSUVとのクロスオーバーというわけだ。
 そして一方の対決相手となるのが、レクサス RX。世界的に見てもプレミアムSUVの先駆け的な存在。トヨタ ハリアーからの伝統である極上のラグジュアリーが身上だ。しかもRX450hなるハイブリッドをラインナップするのも圧倒的な強みだろう。このキャラクターの違いが判定にどう影響するか、興味あるところだ!

PHOTO/森山良雄 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

日産 スカイライン クロスオーバー
日産 スカイライン クロスオーバー リヤ
走りとプレミアムにこだわった
スカイラインファミリーのSUV

 スカイライン初となるSUVモデル。それがスカイライン クロスオーバーだ。ただし、国内初登場となるだけで、北米を中心とした海外ではEXシリーズとして販売されてはいた。それを国内向けにしたのだが、デザインも含めて、スカイラインならではのコンセプトにとてもマッチしたスタイル、そして内容となっている。ラインナップは4モデルで、すべて3.7リッター+7速ATの組み合わせ。FRと4WDに分かれ、それぞれにブラウンのレザーシートと本木目が付く上級グレードのタイプPが用意される。ただ、見ての通り、スタイル優先なために車内は狭く、とくにリヤシートはシートバックも立ち気味で完全にくつろぎきれないかも。ラゲッジの容量もそこそこ。スカイラインらしい"スポーツカーのようなタイト感"と考えられればいいが、余裕を求めるユーザーには適さないだろう。
 3.7リッターのエンジンはもちろんスカイライン譲り。バルブコントロールシステムのVVELも採用しているので、ダイレクトなアクセルレスポンスと吹けはやはりスカイライン譲りだ。
 そして、この手のSUVで気になるのは足まわりの完成度。車高が高くなるし、車重もかさみがち。それでいてスポーティな味付けも要求されるだけに、開発に手間がかかるものだが、そこはすでに海外で熟成を重ねているから問題なし。限界レベルは高く、スポーツカーのように踏んでいける足をもっているのはさすがだ。重量級が多いプレミアムSUV勢のなかにあって、これは貴重なキャラクターだろう。

[エコ&燃費]
 3.7リッターのV6エンジンのみだが、評価の高いVVELを装備しており、ダイレクトな吹けと省燃費を両立。ミッションも7速ATで、燃費には有利になっているが、いかんせんSUVだけに絶対値がよくないのは仕方がないといったところだろうか。

[安全性能]
 すべてのグレードで、横滑りを防止するVDCやカーテンサイドエアバッグ、5人分の3点式シートベルト&ヘッドレストなどが標準装備されている。また車線逸脱防止系装備もセットオプションで選ぶことができる

[取材時実測燃費]
5.8km/L

[日産 スカイライン クロスオーバー価格帯]
420.0〜499.8万円

レクサス RX
レクサス RX リヤ
レクサスブランドへスイッチ
RXとしてハイブリッドも用意

 トヨタのハリアーからレクサスブランドへRXとしてスイッチ。もともと海外ではレクサスブランドで売られていたわけで、とくに違和感はない。これで名実ともに高級プレミアムSUVの仲間入りしたと言っていいだろう。
 デザインのベースとしては今までのハリアーの面影を残しつつ、ボリュームはひと回り以上アップ。とくにリアはハイデッキスタイルも取り入れて、迫力はかなりのものに。もちろん同時にプレミアム性は確実に向上している。インテリアも従来からのハリアーらしさにプラスして、レクサスらしい斬新性も兼ね備える。安心感だけでないのは、絶妙な演出だ。
 そして装備面でのトピックスがリモートタッチと呼ばれるコマンダー状のスイッチ。いわばBMWのiドライブのようなもので、機能が少ないと言ってしまえばそれまでだが、あちらよりも使い勝手はかなりいい。ナビや空調を直感的に操作することができ、その分、インパネまわりもスッキリとしたまとめがなされる。
 搭載されるエンジンは3.5リッターのみで、6速ATとの組み合わせで、味付けはパンチがあるといよりも、しっとり感が優先される。さらにRX450hとしてハイブリッドモデルも用意され、こちらもエンジンは3.5リッターでモーターを組み合わせている。パワー的には4.5リッター並みということでRX450hの名があるのだが、パワーアシストに振った感があった先代からさらに制御を緻密にしており、エコ的な味付けが前面に出ている。ちなみに2009年10月の販売実績では約91%がハイブリッド車のRX450hという大人気ぶりだ。

[エコ&燃費]
 なんと言っても、ハイブリッドが用意されているのは強み。もちろんEVモードも付いている。その結果、燃費はFF車で19.4km/Lで、4WD車でも18.8km/Lだ。さらにガソリンモデルでも4WDだけでなく燃費に優れるFFも用意する。

[安全性能]
 乗員分の3点式シートベルトやヘッドレストを標準装備しており、エアバッグも最大10個も付き、プリクラッシュセーフティシステムも選べる。多くの安全装備はオプションだが、安全性はかなり高いと言っていいだろう。


[取材時実測燃費]
7.1km/L

[レクサス RX価格帯]
460.0〜650.0万円

日産 スカイライン クロスオーバー 370GT FOUR タイプP
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4635×1800×1575mm
車両重量
1830kg
エンジンタイプ
V型6気筒DOHC
総排気量
3696cc
最高出力
330ps(243kw)/7000rpm
最大トルク
36.8kg-m(361N・m)/5200rpm
ミッション
7速AT
10・15モード燃費
9.1km/l
サスペンション(前/後)
ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格
499.8万円
レクサス RX350(AWD)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4770×1885×1690mm
車両重量
1940kg
エンジンタイプ
V型6気筒DOHC
総排気量
3456cc
最高出力
280ps(206kw)/6200rpm
最大トルク
35.5kg-m(348N・m)/4700rpm
ミッション
6速AT
10・15モード燃費
9.4km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
485.0万円
日産 スカイライン クロスオーバー 3.7リッターエンジン

スカイライン クロスオーバーに搭載されるエンジンは3.7リッターのV6のみ。スポーツカーのようなフィーリングが味わえる。

日産 スカイライン クロスオーバー 18インチホイール

全車18インチのタイヤ&アルミホイールが標準装備。段差などでややドタバタした印象があるのが残念なところだ。

レクサス RX 3.5リッターエンジン

レクサス RXは、3.5リッターのV6のみの設定。ハイブリッドの450hも同じエンジンだが、モーターのアシストもありパワフルだ。

レクサス RX 18インチホイール

18インチ仕様が基本だが、19インチもオプション(バージョンSは標準)で選択可能。しなやかさは18インチがわずかに有利だ。

日産 スカイライン クロスオーバー インテリア

タイト感の漂うスポーティなインテリア。本革などの質感も高く、プレミアムSUVらしい雰囲気も味わうことができる。

日産 スカイライン クロスオーバー シフトレバー

ミッションは、マニュアルモード付きの7速ATを搭載。変速は非常にスムーズで、力強く滑らかな加速を楽しめる。

レクサス RX インテリア

インテリアの質感の高さは申し分のないもの。スペースもゆったりとしており、とても快適な室内空間を実現している。

レクサス RX シフトレバー

ミッションは6速ATを搭載し、マニュアルモードも備えている。ハイブリッドのRX450hは電気式無段変速機となる。

日産 スカイライン クロスオーバー フロントシート

フロントシートはホールド性がよく、しっかりと体を支えてくれる。全高が低めなので頭上の空間の余裕はあまりない。

日産 スカイライン クロスオーバー リヤシート

足元や頭上のスペースには、あまり余裕がない。決して窮屈というわけではないが、ゆったりとくつろげる広さではない。

レクサス RX フロントシート

フロントシートまわりは、とてもゆったりとしており非常に快適だ。小物入れ付きのセンターコンソールは実用的だ。

レクサス RX リヤシート

頭上や足元スペースの余裕は十分で、ゆったりくつろげる。長距離ドライブでも疲れにくく、快適な移動空間だ。

日産 スカイライン クロスオーバー メーター

メーターのデザインは、スポーティな雰囲気で好感が持てるもの。インフォメーションディスプレーの表示も見やすい。

日産 スカイライン クロスオーバー ラゲッジ

全高がやや低めの設計で、レクサス RXを始めとするライバルに比べると、スペース的に若干不利なのは否めない。

レクサス RX メーター

自発光式のオプティトロンメーターは、視認性に優れるのが特徴。質感も高く、プレミアムSUVらしい雰囲気は十分だ。

レクサス RX ラゲッジ

開口部は大きめで、荷物の積み下ろしはしやすい。上級グレードは電動開閉式で、力のない女性などでも扱いやすい。

日産 スカイライン クロスオーバー ラゲッジ

リヤシートは左右分割可倒式で、荷物の量や乗車人数にあわせたアレンジが可能。使い勝手のよさは満足できるレベルだ。

日産 スカイライン クロスオーバー ラゲッジ

段差もなくフラットなフロアで、大きな荷物も積み込みやすい。アウトドア用の荷物を積んでも余裕は十分確保されている。

レクサス RX ラゲッジ

リヤシートは、ラゲッジ壁面のレバーを引くだけで簡単に収納可能。段差もないので使い勝手は非常に優れている。

レクサス RX ラゲッジ

リヤシートをすべて倒せば、かなり広いスペースが現われる。高さや奥行きも十分で、大きな荷物でも余裕は十分ある。

日産 スカイライン クロスオーバー vs レクサス RX

 日産 スカイライン クロスオーバーは、低めの全高が特徴で、スタイリッシュなデザインとハンドリングの良さが特徴だ。レクサス RXより100kg近く軽いものの、エンジンの排気量が3.7リッターもあるせいか燃費はあまり良くない。だが、その分パワフルで力強い走りは楽しめる。
 対するレクサス RXは、このクラスのSUVとしては標準的なパッケージングで、実用性も高い。内外装の質感はかなりのもので、高級感はたっぷりと味わえる。乗り心地や静粛性にも優れ、非常に快適な乗り味だ。