「車の塗装をDIYでやってみたい!」そんな方に向けてやり方と手順を解説します。
ただし、車の塗装は思ってる以上に重労働です。
- 根気と時間が必要
- 下準備が超重要
- 簡単な作業ではない
上記を理解したうえで車の塗装にチャレンジしましょう。
DIYではスプレー缶での塗装やハケ塗り・ローラー塗装がメジャーです。
- 車の塗装DIYの準備。塗料と場所を決めよう
- 車を塗装するための道具
- 車塗装のやり方と手順
- 車の全塗装は自分で出来る?DIYでの注意点
- 部分塗装でDIY出来そうな範囲と注意点
- 車の塗装を劣化しにくくする方法。おすすめ商品
- まとめ
車の塗装DIYの準備。塗料と場所を決めよう
まずは塗装する前に、作業可能な場所があるのか?どんな色にどんな塗料を使って塗装するのかをリサーチし、準備しておく必要があります。
車の塗料の決め方
車は基本的に屋外で使用するので、ボディの塗装は紫外線や風雨の影響を直接受けます。
そういったダメージに対して、耐久性のある塗料を選ぶ必要があります。
そのため、塗料を選ぶときは車のボディに使用可能な塗料を選びます。油性と水性は問いません。
また、スプレー塗装なのかハケ塗り・ローラー塗装するかで、使用する塗料の種類も変わってきます。
どの方法で塗装するのか、はじめの段階で決めておきましょう。
ちなみに住宅などの外壁用塗料を代用する方法もありますが、厚塗りすると塗装剥がれを起こしやすいことがあります。(塗装屋さん談)
塗装する場所
車の塗装は繊細な作業です。
プロの塗装屋さんは専用のブース内で、温度や湿度も管理しながら、埃やゴミが入らないように細心の注意を払って塗装します。当然、DIYでそこまでの環境を用意することは難しいです。
塗装可能なレンタルピットを運営している工場もあるので、そのような塗装に集中できる屋内を選ぶことがベストです。
一方で、格安の遊び車や足車を気軽に塗ってみたいというオーナーさんもいらっしゃるでしょう。
自宅の駐車場や庭のような屋外で十分なスペースがあれば、できないことはありません。
ただし、近隣へ十分な配慮を持つことが必須です。
「風向きなどで、塗料の臭いの影響はないか?」「細かい塗装の粒子が飛んでしまわないか?」といった問題をクリアできた上で、仕上がりに対して細かいことを気にしないオーナーさんであれば、屋外も選択肢のひとつです。
車を塗装するための道具
車を塗装していくには、下準備→塗装→仕上げの流れのなかで、それぞれに必要な道具があります。
(共通)必要な道具を紹介
- マスキングテープ
ゴムモールなど塗料が付着してはいけない場所を、目隠し・保護するために使う(養生) - 新聞紙
ガラスなど、大きい面積の塗料が付着してはいけない場所を目隠し・保護するために使う(養生) - マスカーテープ
ビニールとマスキングテープが一体になっており、広範囲を養生するのにあれば便利なもの - シリコンオフ
ボディに付着している油脂を除去するために使う
【商品例】
- プラサフ
プライマー(素材と塗料の密着性を良くしたり、錆止めの役割)とサフェーサー(細かい傷や凹凸を埋め、塗装面を均一にならす役割)が一体になったもの
【商品例】
- 耐水ペーパー
塗装に入る前にボディを研いで、表面をならすために使う。クリア塗装後の仕上げのときにも使う。数字が大きくなるほど、目の細かいペーパーになる(#400〜#600→#800〜#1500→#2000) - ぼかし剤
塗装をきれいに仕上げるために使う。カラー塗装の前後に使うことで、塗料のザラザラ感を抑える効果がある。メタリックやパール色を塗るときに使用する
【商品例】
- コンパウンド
最後の仕上げとして、塗装の表面をきれいに整えるために使用する - 脚立
脚立でなくても良いが、ルーフや高いところを塗るときにあると便利
スプレー塗装の場合に必要な道具
- カラースプレー
ボディカラーのベース用のスプレーです - クリアスプレー
カラー塗装の上から塗る透明なスプレーです。カラー塗装を保護したり艶を出す役割があります
【商品例】
ハケ塗り・ローラー塗装の場合に必要な道具
- ハケ(刷毛)
ボディの細かい部分を塗るのに使う - ローラー
ボディの大まかな部分を塗るのに使う - ローラーハンドル
ローラーを使用するために必要不可欠です - バケツ
塗料を入れるために使う
車塗装のやり方と手順
車を塗装するときの大まかな手順とやり方を解説します。
良質な仕上がりのためには、丁寧な下地処理が大切です。
また塗装時の注意点は後半で解説します。
スプレー塗装のやり方と手順
- 洗車をする
車についた汚れをきれいに落とします。
いつもより丁寧に洗車をしましょう。
- シリコンオフで脱脂
細かいところも含めてボディ全体の油分を取り除きます。油分が残っていると塗料の乗りが悪くなります。 - 養生する
塗料が付いてはいけない部分を養生します。
マスキングテープ、新聞紙やマスカーテープを使って隙間ができないように気を付けて、確実に実施します。 - 耐水ペーパーで足付け
プラサフのボディへの密着を良くするために「#400〜#600」の目の粗めの耐水ペーパーを使って、足付けをする。 - プラサフで下地をつくる
カラー塗装の乗りをよくするために、プラサフを吹きます。
元の塗装が見えなくなるまで、薄く塗り重ねます。(3回程度〜) - 耐水ペーパーで表面をならす
「#800〜#1500」の耐水ペーパーでサフェーサーの表面をならして、塗装面を平たにする。 - ぼかし剤を塗る
カラー塗装の仕上がりをきれいにするために、ぼかし剤を薄く吹き付ける。 - カラー塗装する
カラー塗料を薄く均一に重ね塗りします。
基本的には3回程度で終わらせるようにします。
- 必要に応じてペーパーがけをする
カラー塗装が乾いたら「#2000」程度の目の細かい耐水ペーパーで、塗装面を整えます。
塗装の状態に応じてやってもやらなくても良いです。 - クリア塗装をする
クリア塗料を薄く均一に重ね塗りします。
3〜4回の塗装で仕上げます。 - 塗装面を整える(磨き)
クリア塗装後、最後の仕上げとして目の細かい「#2000」程度の耐水ペーパーで表面を整えます。
最終的には、目の細かい仕上げ用のコンパウンドで磨きます。
ハケ塗り・ローラー塗装の場合
最近のアウトドアブームで注目されているハケ塗り・ローラー塗装は、手軽に塗装できることから、ハードルの低い塗装方法です。
基本的にはマットな質感が魅力の塗装方法です。
ぼかし剤やクリア塗装、仕上げの磨き工程は省略しても問題ありません。
車の全塗装は自分で出来る?DIYでの注意点
DIY塗装は、当然ながらプロの塗装屋さんのクオリティとは比べものにはなりません。
しかし、自分自身でも車の全塗装はできます。
DIYで塗装する際、どういった点に注意すれば良いか解説します。
場所と飛び散る塗料に注意
作業場所が屋内の場合は、換気のよいところにします。
塗料にはシンナーが含まれているためです。
また、屋外の場合は近隣の住民の方などに十分に配慮しなければいけません。
特に知らぬ間に塗料が飛び散り、他人の敷地内の物に付着してしまうと、思わぬトラブルにも繋がります。
事前に作業する旨を伝えておきましょう。
ブルーシートなどを使って厳重に養生しておくことが大切です。
天気・天候に注意
屋外で塗装する場合は当然ながら、雨が降らないことが大前提かつ、風の強さにも注意する必要があります。
特にスプレー塗装する場合は、風が強いと塗装にムラができやすいです。
また、夏の暑い日は塗装が乾くのが早すぎて困ることがあったり、逆に真冬だと塗装がなかなか乾ききらずに時間が掛かってしまうかもしれません。
風雨の心配がなく、なおかつ春秋のような過ごしやすい季節に作業するのがベストです。
下地処理が重要
質の良い塗装のためには、下地処理が重要です。
カラー塗装をしたい気持ちが早まりますが、その気持ちをグッと抑えて、時間をかけて丁寧に塗装のための下地を作ります。
特にスプレー塗装では下地処理の状態次第で、素人でも明らかに分かるほど仕上がりには差がでます。
ぼかし剤を使うときの注意点
カラー塗装前にぼかし剤を使う場合は、ぼかし剤塗装後の乾ききらないうちに、カラー塗装をおこなうことが大切です。
完全に乾いてしまった後にカラー塗装をすると、塗料のブツブツ感やザラっと感を緩和するぼかし剤の効果が得られないからです。
カラー塗装はパネルごとにおこなう
ぼかし塗装もカラー塗装も、1パネルごとに塗装することをおすすめします。
ボディ全体を一気に塗っていくと、次の重ね塗りが必要な時間までに塗り終えることができなかったり、塗装ムラができる可能性があるためです。
1パネルごとが必須ではありませんが、上記のことを念頭においたうえで、いくつかのブロックに分けて塗っていくほうが、体力的にも気持ち的にも楽なはずです。
ちなみに、重ね塗りはおおむね15分ほどの間隔を空けるのが目安とされていますが、塗料の種類や外気温・湿度によって変わってきます。
部分塗装でDIY出来そうな範囲と注意点
全塗装とまではいかなくとも、ハードルを下げて部分塗装にチャレンジしてみたいという方もいるでしょう。
部分塗装で出来そうな範囲
初心者が部分塗装する範囲でおすすめなのは1枚のパネルごとです。
他のパネルと平面で面しているところだと、元の塗装と一目で比較ができてしまうので、塗ったところとそうでないところとの質感の差が目立ちやすいです。
また、バンパーのような凹凸があるパーツは、塗装にムラができやすく、難易度が上がります。
そういった影響を受けづらい、ドアミラーカバーやルーフなどから始めてみるのがおすすめです。
部分塗装する時の注意点
塗装の手順とそれに関する注意点は、全塗装するときと変わりはありません。
素人による塗装は、元のオリジナルの塗装との質感の違いが明らかに出てしまうので、その点を理解しておく必要があります。
また、塗らない部分に塗料が飛び散らないように、確実に養生をおこないます。
車の塗装を劣化しにくくする方法。おすすめ商品
塗装の劣化を予防する方法がいくつかあります。
それらの方法を実践しているだけでも、塗装の劣化スピードは大きく異なります。
特に屋外駐車のオーナーさん向けに解説します。
カーポートを設置する
カーポートを設置するだけでも、塗装の劣化を大きく予防できます。
わたし自身も自宅に設置していますが、かなり効果を感じています。
雨を凌げるだけではなく、UVカット効果のあるものであれば、塗装にとって大敵である紫外線からボディを守ることもできます。
ボディカバーをかける
カーポートを設置できない屋外駐車の場合は、ボディカバーを使ってボディ・塗装を守る方法があります。
雨風の日に装着したり外す手間は大変ですが、有効な手段のひとつです。
わたし自身も月極の屋外駐車だったときに、愛車にボディカバーをかけていました。
ボディコーティングをする
ボディコーティングの役割は、ボディ・塗装の状態を守ることです。
特にガラスコーティングのような高価なコーティングであれば、効果の持続性も見込めます。
日頃から、コーティングのメンテナンスやこまめな洗車を欠かさないことも大切です。
日頃のメンテナンスで取り入れやすいカー用品
塗装の劣化からボディを守るためのカー用品を、最後にいくつか紹介します。
UV吸収剤配合のコーティング剤
塗装の大敵である紫外線からボディを守ることは大切です。
セルフでできるボディコーティング剤の中には「UV吸収剤」が配合されたものがあります。
日頃の洗車のついでに、サッと手軽にできるものであれば、持続的に使いやすいのでおすすめです。
ねんどクリーナーで鉄粉取り
車は使用過程において、ボディに鉄粉が付着しザラつきが出てきます。
放置していると、鉄粉が原因で塗装・ボディの表面を傷めてしまい、塗装の劣化につながります。
手でボディを撫でてみて、ボディ表面にザラつきを感じるようであれば、洗車のときに「ねんどクリーナー」を使用して、鉄粉を除去することで塗装の劣化を予防します。
虫の死骸や糞の付着を放置しない
車に付着した虫の死骸や糞を放置していると、それらから出てくる油脂や体液に含まれる成分によって塗装を傷めてしまいます。
長く放置しているとシミができることもあります。
すこしでも早いタイミングで、付着物を除去するようにしましょう。
洗車が難しければ、クリーナー等を使用して該当の箇所だけ対処しても構いません。
まとめ
車のDIY全塗装は決して簡単なものではありませんが、手間暇かけてチャレンジし、完成したときの達成感は格別なものがあるでしょう。
当然、プロのような仕上がりには程遠いかもしれませんが、自分だけのオリジナルの一台ができあがる楽しみもあります。
ハケ塗り・ローラー塗装であれば、全体の工程を通してもスプレー塗装よりハードルが低く、ムラが出たときの対応もしやすいのでおすすめです。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。