車の塩害とは?対策方法やおすすめグッズを整備士が解説

車の塩害とは?対策方法やおすすめグッズを整備士が解説

車にとって錆は大敵です。特に海に近い地域や降雪地帯にお住まいの方にとって錆被害は身近で深刻な問題です。
塩害によって車にどんな影響があるのか?具体的な対応策について現役の整備士が解説します。

塩害による車への影響

塩害は車の金属部分に錆を発生させ、錆による腐食の進行を早めてしまいます。
塩害の影響のある地域と無い地域でその差は歴然です。

整備やメンテナンスに悪影響を及ぼす

錆が進行すると、まず車のメンテナンスそのものに影響が出ます。
整備に際して脱着する部品やボルトが錆によって弛まない、工具がきちんと掛からない、折損してしまうといったことが発生します。
通常のメンテナンスと比べて以下のようなことが発生します。

  • 部品の劣化が早い
  • 整備に時間がかかる
  • 追加で整備費用のかかる可能性がある(工賃および部品代)

塩害による車への影響は特に足廻りやブレーキ廻り、マフラーなどの整備に出ることが多いです。分かりやすい例をいくつか挙げます。

  • ブレーキキャリパーのピストンが錆の影響で固着してしまい、ブレーキに引きずりが発生。キャリパーを交換しなければいけない。
  • ブレーキパッド交換時に、キャリパーのスライドピンが錆で摺動不良を起こしており、脱着、錆取りや清掃に時間を要した。
  • ドライブシャフトを抜く作業の際、錆で固着してなかなか抜けずに時間を要した。

塩害によって車検に通らないパターン

錆によって金属部品やボディ(フレーム)の腐食が進むと最悪の場合、車検に通らなくなります。
先ほど具体例として出したブレーキの引きずりも車検に通らない要因になります。
塩害による錆が原因のマフラーの穴あきなども多い事例で、これも車検には通りません。
また、塩害のひどい地域だと年数の古くなった車は、車の骨格部分にあたるフレームに穴が空いてしまうこともあります。こちらもそのままでは車検に通りません。
フレームにまで車検に通らないダメージがあると、修復には多額の費用が発生するので、乗り換えを検討するオーナーがほとんどです。

車の塩害対策

車にとってデメリットしかない塩害をただただ受け入れるわけにはいきません。
車の塩害は防錆コートを施行したり、こまめに洗車をしたりと対策をすることで被害を低減させることができます。

防錆コートを実施する

車のシャシー部分に防錆コートを施工し、金属部分に塩害による塩分が直接触れないようにして保護することができます。これにより塩害を低減できます。
コート剤には手軽にできる水性タイプと、耐久性も防錆性能にも優れた油性タイプがあります。
いずれも一度施工したらそれで終わりではなく、コーティングの状態に応じて、繰り返し定期的に施工することが重要です。

とにかくマメに洗い流す

防錆コートをしていれば安心というわけではありません。
塩害対策でもっとも大切なのは、付着した塩分を洗い流すことです。
普段、塩害とは無縁の地域に住んでいても、ウィンタースポーツを楽しむために降雪地域に行くようなことがあれば、融雪剤(塩カル)による塩害を受けてしまいます。
出先から戻って来たらその都度、下廻りに付着した塩分を洗い流すかどうかでその後の状況は大きく変わってきます。
高圧洗浄機が使えればベストですが、散水ホースに付属しているノズルのジェットモードを使用して洗い流すだけでもOKです。

ガレージ保管やボディカバーを活用する

海に近い地域だと車に乗らない間であっても、常に塩害の影響を受けてしまいます。
ガレージ内に車を保管できれば、その間の塩害を防ぐことができます。
青空駐車であっても、ボディカバーをすることで何もしないよりは効果があります。
ただし、ボディカバーそのものも定期的に洗って塩分を落とすことをおすすめします。

【補足】塩害の影響は驚くほど大きい

わたし自身の経験談として、新車で油性タイプの高額なコーティングを施工した車の2年目の点検時に、下廻りの錆の酷さに驚いたことがあります。
普段は、海の近くでも降雪地帯でもないところに住んでいるオーナーですが、ウィンタースポーツが好きで、シーズン中は毎週のように雪山に通うという車の使用環境です。
コーティングをしているので安心だと、下廻りの洗浄は一切したことがなかったようです。
その結果、新車からたったの2年で融雪剤(塩カル)による塩害で車の下廻りは酷い状況になっていました。
具体的には、金属部品には目立つ錆がすでにかなり発生しており、小さいサイズのボルトは緩めると折損するリスクがあるかもしれない程度になっていました。
このように塩害は非常に短期間の間にも車の状態を悪化させてしまいます。
また、コーティングだけでは塩害対策としては不十分で、付着している塩分をマメに洗い流すことがもっとも重要であることが分かる良い例です。
普段、塩害に無縁な地域に住んでいる方も海水浴やウィンタースポーツに行った後は、下廻りの洗浄を怠らないようにしましょう。

車の塩害対策にコーティングは有効?

塩害対策にコーティングは間違いなく有効です。やっているのとやっていないのとでは、結果はまったく異なります。
塩害のおそれのあるところで車を使用する場合には、まず車両購入時にコーティングを実施し、その後1年ごとや車検ごとなど、コーティングの種類と実際の車両の状況に応じてコーティングの再施工をすることをおすすめします。
しかし、すでに事例として挙げたように塩害のある地域だと、コーティングだけでは不十分なこともあるのを理解しておきましょう。

車の塩害を気を付けたい海からの距離

一般的に塩害に気を付けたい沿岸部からの距離は以下のように定義されています。

  • 〜200m…岩礁隣接地域
  • 200〜500m重塩害地域
  • 500m〜7km塩害地域

重塩害地域までの距離はどこのエリアでも同じです。
塩害地域に指定されている距離は、エリアによって異なるので以下の表にまとめました。

 

これらはあくまで目安であり、細かい地形の違いや季節ごとの風向き等によっても影響を受ける範囲は変わってきます。
また、特に日本海側などは海水による塩害のみならず融雪剤の影響とのWパンチで塩害を受ける地域もあります。
塩害を受けやすい車の下廻りは、一般オーナーが普段目にすることのない部分で、良否判断が難しいです。
普段から多くの車を見てきている、地域の整備工場や自動車販売店のプロのスタッフのアドバイスを元に、どれくらいの塩害対策をするべきか検討するのがよいでしょう。

車の塩害対策用グッズ

  1. 車の下廻り洗浄用
  2. 下廻りの防錆用
  3. マフラーの防錆用

持ってて損なし!高圧洗浄機

下廻りについた塩分などを洗い流すのに便利なのが高圧洗浄機です。
わたし自身も愛用しています。
こちらの商品はコンパクトなので保管場所にも困らず、持ち運びしやすい点が評価ポイントです。
日常の洗車や自宅の外構掃除にも使えるので、持っていると便利な一台です。
融雪剤の撒かれている地域や海沿いの地域から帰ってきたときには、高圧洗浄機でしっかり下廻りを洗い流して塩害対策をおこないましょう。

手軽に使える防錆スプレー

塩害対策に防錆コートは不可欠です。
防錆剤には一般的にブラックタイプとクリアタイプがラインナップされています。
この商品はクリアタイプなので、アルミパーツ等(シルバーの金属パーツ)にも躊躇なく吹き付けることができます。
水性タイプなので油性より扱いやすく、価格もリーズナブルなので初めての方でも安心です。
もちろん好みによってブラックタイプも併用して使っても問題ありません。
一般的な車であれば1台につき1〜2本あれば十分です。
施工時は、安全な環境を確実に整えてからおこなうようにしましょう。
普段、塩害のある地域にお住まいでなくても防錆コートを施工していれば車の錆対策として安心なので、定期的に実施することをおすすめします。

マフラーの防錆コートには耐熱タイプを!

下廻りの防錆コートは足廻りだけではなく、マフラーにも施工するのがおすすめです。
マフラーは排気ガスで高温になるので、かならず耐熱タイプの塗料を使いましょう。
施工1台につき、スプレー缶1本あれば十分です。

整備士のまとめ

塩害のおそれがある場合には、カーライフを送るうえで愛車のためにも塩害対策は必須です。
対策をすることで、車の寿命を延ばすことができますし、日常のメンテナンスに掛かる費用が無駄にプラスになるリスクをすこしでも低減できます。
また、防錆コートを施工しているからと安心せずに、塩害のおそれがある場合にはその都度、なるべく早い段階で下廻りの洗浄をするようにしましょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。