事故修理費用の大小におおきく関わってくるフレーム修理は、歪んでしまった車の骨格を修正することです。
パッと見の事故の具合だけではフレーム修理が必要かどうかの判断は難しく、オーナーが思っていた以上の高額修理になるパターンも多いです。
「実際に修理となったときに費用はどのくらい掛かるのか?」「車検は大丈夫?」「買い替えた方が良いのか?」といった実際に事故修理となったときに抱く疑問を、現役整備士が解説していきます。
買い替え前に愛車の買取相場を確認する
- 車のフレーム歪みは車検に通らない
- 車のフレームが歪むと生じる症状
- 車のフレームが歪む原因
- 車のフレーム修理費用の目安
- 車のフレーム修理は「修復歴あり」になる
- 車のフレーム修理と買い替えはどちらがよい?
- 整備士のまとめ
車のフレーム歪みは車検に通らない
フレームの歪みは車検には通りません。車の骨格が歪んでしまっている状態では、安全かつ正確な走行ができないおそれがあるためです。
フレームに歪みが生じた結果、アライメントが車検規定範囲内から大きく逸脱しているなど、その他の部分でも車検に通らない要因となることもあります。
車のフレームが歪むと生じる症状
車の骨格であるフレームが歪むと、さまざまな機能に悪影響を及ぼします。
また、事故直後は大丈夫でも時間の経過と共に症状が酷くなるケースもあります。
【フレームの歪みによる症状例】
- ドアの開閉がしにくい、半ドアになりやすい
- 車が真っ直ぐ走らない
- ハンドルセンターがズレている
- 左右でステアリングの操舵力に差がある
- タイヤが偏摩耗する
- 板金修理をしてもボディパネルのチリが合わない
- 正確なアライメントが出ない
- 走行中に異音がする
- 走行中に異常な振動が発生する
このように走行面、機能面、見た目の問題と車のあらゆる健康状態に影響を及ぼすフレームの歪みは、車検を通して車に乗り続けるのであれば必須の修理と言えます。
車のフレームが歪む原因
車のフレームか歪んでしまう主な原因は事故によるものです。
バンパーを交換するだけで直りそうに見える大きな事故ではなくても、実はフレームの損傷・歪みが発生していることも多く、素人には判断が難しいです。
また、脱輪やタイヤ(ホイール)を縁石にぶつけるなど、一見事故に見えないようなパターンでもフレームに歪みが出ることがあります。
基本的に、普通に乗っていて経年劣化で歪んでしまう…というようなことはありません。
ただし一部、塩害の酷い地域で塩害対策をせずに車に乗り続けだ場合、錆でフレームに穴が空いてしまうことがあります。それによりフレーム強度が極端に落ちた場合には、無事故であってもフレームが歪む可能性はゼロではありません。
車のフレーム修理費用の目安
車のフレーム修理費用の目安は10万円程度〜100万円以上です。
フレーム修理を伴う事故修理のトータルでの修理費用の目安は30万円〜数百万円です。
フレームの歪みといっても、軽度なものから走行自体が困難なレベルまで様々です。
損傷が大きいほど、それに比例して修理には時間とお金がかかります。
フレーム修正には、高額な専用の機械が必要です。
当然、専門的な知識やスキルも伴うので修理費用は一般的な車の故障修理などと比較すると、高くなる傾向にあります。(事故を経験したことがある人にとっては、任意保険の車両保険特約付帯の重要さが分かります)
また、フレーム修理のみを実施することは基本的にはなく、その他の板金塗装も同時に実施することも修理費用が高くなる要因のひとつです。
修理期間は短いものだと1週間程度、長いものだと1ヶ月以上となることもあります。
車のフレーム修理は「修復歴あり」になる
車のフレーム修理は修復歴になります。フレームに歪みが生じてもきちんも修理すれば、問題なく車を使用することはできますが、「修復歴あり」に変わりはありません。
デメリットは、買取・下取り査定金額が下がることです。
ちなみに査定時に故意に修復歴を隠すと、ペナルティを受けるリスクがあります。
査定士もプロなのでウソはどこかのタイミングでかならず見抜かれます。誤魔化そうとすることは絶対にしないでください。
また、「事故車=修復歴あり」と勘違いされがちですが、修復歴のある車とは車のフレームを交換したり、修理・補修したものを指すので注意しましょう。
車のフレーム修理と買い替えはどちらがよい?
修理と買い替えの判断は、車種や年式によるというのが答えです。
例として、全損判定に近いフレーム修正を含む修理金額になる場合(保険修理だけでは賄えない場合)や、過走行・低年式車であれば乗り換える方が良いパターンがほとんどです。
一方で、以下のような場合は修理した方が良いパターンです。
- 保険修理範囲で賄える修理金額の場合
- 10万円〜数十万円以内の軽度なフレーム修正修理の場合
- 希少な車の場合(例:平成のスポーツカーなど)
- 自動車ローンが残っている場合
ここで紹介した修理と買い替えの判断基準はあくまで目安なので、車種に応じて何がもっとも最適解であるかは、信頼している車屋さんとしっかり相談して決断することをおすすめします。
整備士のまとめ
フレーム修正を伴う修理は高額です。
また、その必要の有無を見た目だけで素人が判断することは困難です。
フレームの歪み発生は修復歴になることも含めて、デメリットが多いことも理解しておく必要があります。
様々なパターンに対応できるように、任意保険に加入して車両保険を付帯しておくことや、何かあったときに相談できる車屋さんを見つけて付き合いを続けておくことが大切です。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。