ドライブシャフトはエンジンの動力をタイヤに伝えるために、ほとんどの乗用車で必ず使われている重要な部品のひとつです。
ドライブシャフト交換時期や費用、異音やグリス漏れといいた不具合について整備士が解説します。ドライブシャフトは関連パーツがいくつかあるので各パーツに大別して解説します。
- ドライブシャフト、ドライブシャフトブーツについて
- ドライブシャフトブーツの交換時期の目安
- ドライブシャフトの交換時期の目安
- ドライブシャフトブーツの交換費用の目安
- ドライブシャフトの交換費用の目安
- ドライブシャフトの異音といった不具合の例
- ドライブシャフトブーツのグリス漏れといった不具合の例
- まとめ
ドライブシャフト、ドライブシャフトブーツについて
まずはドライブシャフトと、ドライブシャフトブーツについてくわしく解説します。
ドライブシャフトとは
ドライブシャフトは、エンジンの動力を回転運動として、駆動輪(タイヤ)に伝える車の構造の一部を担っている部品です。
鋼鉄製のシャフトの両端がジョイントになっており、インナー側はミッションケースまたはデファレンシャルに接続されています。(入力側)
アウター側はタイヤが取り付けてある、ナックル(ハブ)に接続さています。(出力側)
ハンドルを切ったり、走行中におけるドライブシャフトの角度の変化に応じて、インナー側のジョイント部分は、伸縮方向と曲げ方向に柔軟に動くようになっています。
一方でアウター側は曲げ方向に柔軟に動くようになっています。
また、ジョイント部分には専用のグリスが封入されています。
これによりジョイント部分が保護され、なおかつ円滑に摺動するようになっています。
ドライブシャフトブーツとは
ドライブシャフトジョイントを保護する部品です。ドライブシャフト両端のジョイント部を、保護・潤滑する目的でグリスを封入しておくために、ジョイント部分は伸縮や曲がりに対応できる柔軟性のあるゴム製のブーツで覆われています。
ドライブシャフトブーツの交換時期の目安
ドライブシャフトブーツの交換時期の目安は走行距離で10万km、年数で10年です。ただし、使用環境によっては早まる可能性があります。また、ゴム製品なので走行距離に応じた劣化だけでなく、経年劣化も考えられるので交換タイミングは千差万別であることを留意しましょう。
例えば、車種によってはローダウンすることで、ドライブシャフトブーツの早期劣化に繋がることもあります。
一方で、10年10万kmを超えて車を所有している間に、一度も交換せずに済むことも十分にありえます。
また、ドライブシャフトブーツが破れると保安基準不適合となり車検に通らないので、ブーツの交換は必須です。点検の結果ひび割れがあり近々破れそうなことが想定される場合には、破れていなくても交換の提案をされることもあります。
ドライブシャフトの交換時期の目安
ドライブシャフトは定期的に交換の必要がある部品ではないので、不具合が発生したときに交換します。よって、基本的に交換することはありませんが、異音等が原因で交換に至るケースがあります。
ドライブシャフトの異音に関しては、後ほど解説します。
ドライブシャフトブーツの交換費用の目安
ドライブシャフトブーツの交換費用の目安はアウターブーツで1箇所あたり2万円〜3.5万円、インナーブーツで1箇所あたり1.5万円〜3万円です。
ドライブシャフトブーツを交換するとき、基本的にはドライブシャフトを車両から取り外す必要があります。サビで固着していたりして、なかなか外れない・抜けずに想定外の時間が掛かることもある作業です。作業によっては付随する部品の交換が発生します。
アウターブーツ交換費用の目安
アウターブーツは、タイヤに近い側のジョイント部分のブーツです。
交換するときは、インナー側のジョイントを分解してアクセスする必要があるので、インナーブーツ側のみ交換する時よりも、費用が高額になります。(ごく一部の車種でアウター側のみ分解できるものもあります)
交換費用の目安は1箇所あたり2万円〜3.5万円です。
一方で分割式ドライブシャフトブーツと呼ばれるものを使用して、ドライブシャフトの脱着を省いて交換することも可能です。
この場合は1万円以下で交換できることもありますが、整備工場によっては、分割式タイプの使用を推奨していないところもあります。
インナーブーツ交換費用の目安
インナーブーツは、トランスミッションまたはデファレンシャル側のジョイント部分のブーツです。交換の費用目安は1箇所あたり1.5万円〜3万円です。一部、分割式ドライブシャフトブーツが使用できるケースもあり、その場合は1万円〜1.5万円程度の費用になります。
しかし、アウター側は分割式で対応できる工場でも、インナー側は対応ができない(推奨しない)、またはそもそも部品設定がないことも多いので注意しましょう。
付随する交換部品によって金額が異なる
ドライブシャフトの脱着が必要になった場合、作業に付随して交換しなければいけない部品が出てくるケースがあります。
以下はその主な例です。
- トランスミッションオイル(ミッションオイルATF、CVTF)
- デファレンシャルオイル
- デフサイドシール
- ハブナット
なぜ、交換の必要があるのかそれぞれ解説します。
オイルの抜き取りを伴うことが多い
ドライブシャフトもしくはブーツ交換のときに、ミッションケースまたはデフケースに挿入されているドライブシャフトを直接抜く場合と、途中で分割できる構造で、挿入されている部分はケース側に残る場合があります。
直接ドライブシャフトを抜く場合、そこからケース内のオイルが抜け出てくることがあります。
車種ごとの違いや整備工場の判断により、以下のパターンがあります。
- オイルを交換する
- オイルを補充する
- オイルを再使用する
一般的には、オイル交換を同時に実施するケースがほとんどです。理由は、ATFやCVTFだとオイル補充で規定量に合わせるのが困難であったり、オイルを抜かずに作業すると、少しずつオイルが漏れ出てくる状態が好ましくなかったりするからです。
デフサイドシールの交換
FF車やFFベースの4WD、MR車などの場合はミッションケース、FR車やFRベースの4WDの場合には、フロント/リヤデファレンシャルケース側のドライブシャフトの挿入箇所に取り付けられているオイルシールのことを、デフサイドシールと呼びます。
オイルがケース外に漏れ出てこないようにシールしている重要な部品です。
ドライブシャフトの抜き挿しによって、シール性能が低下する可能性があるので、該当箇所の整備時には同時に交換することが推奨されています。
ハブロックナット
ハブロックナットはドライブシャフトを、ナックル(ハブ)に固定するために使用するナットです。緩み防止のためナットの頭はカシメてあります。
ドライブシャフト周辺の整備に伴ってナットを外すときはカシメを起こす必要があり、基本的に再使用不可部品です。
ドライブシャフトの交換費用の目安
ドライブシャフトの交換費用の目安はリビルト部品で3万円〜、新品で4.5万円〜です。
いずれも片側のみの交換費用です。
ドライブシャフトにはリビルト部品と呼ばれる、中古部品をメンテナンスした部品が使える場合があります。
リビルト部品のドライブシャフトの価格は1.5万円〜で新品部品より安いので、整備費用を抑えたい場合には、リビルト部品での交換対応が可能か、整備工場に相談してみてもよいでしょう。
新品のドライブシャフトの値段の目安は3万円〜8万円です。
車種や左右で長さが異なるなどの理由で、部品代には幅があります。
高級車やサイズの大きい車、希少車や年式の古い車は費用が高額になる傾向にあります。
ドライブシャフトの異音といった不具合の例
ドライバーが体感できるドライブシャフトの不具合例として挙げられるのが異音です。
ブーツの破れを放置していると、ジョイント部に雨水が侵入したりグリス切れが発生します。すると、接続部分のボールジョイントの摺動不良やガタが発生し、走行中の周期的な異音につながります。
異音の種類
異音の種類は、以下のようなものです。
- コクコク
- カックンカックン
- カラカラ
- カタカタ
- ウォンウォン
- ゴリゴリ
いずれの音も不定期ではなく、タイヤの回転(速度)に応じて周期的に聞こえることがほとんどです。
異音発生のシチュエーション
異音が発生する走行状況は、以下のとおりです。
いずれかのみの場合もあれば、複数当てはまる場合もあります。
- ハンドルを切って走っているとき(交差点など)
- 加速時
- 減速時
- 低中速時のみ
実は異音は常に発生していても、スピードが出てドライブシャフトの回転が速くなることで音に気付きづらくなっているかもしれません。
よくある異音発生のシチュエーションは、交差点などでハンドルを切って曲がるときです。
ドライブシャフトブーツのグリス漏れといった不具合の例
ドライブシャフトで発生する不具合のほとんどが、ドライブシャフトのジョイント部に封入されているグリス漏れです。
グリスが漏れている場合、足廻りやホイールの裏側に漏れたグリスが飛び散っていることがあります。
その場合、車に詳しくない人でもよく見ると違和感に気付くこともあります。
また、グリスはブーツが破れたときだけ漏れ出てくるものではありません。
ブーツバンドの交換で修理が終わることもある
グリスは、ドライブシャフトとブーツの隙間から漏れ出てくる可能性もあります。
ドライブシャフトにブーツを確実に固定するために、ブーツの両端には締め付けるタイプのバンドが装着されています。
このバンドの締め付ける力が弱くなると、シャフトとブーツの隙間からグリスが滲んで漏れ出してくることがあります。
この場合、清掃を実施したうえでバンドの交換をすることで、漏れが解消することがあります。
その場合の費用目安は5,000円〜/1箇所です。
状態によっては、ブーツの交換が必要となるケースもあります。
ブーツが破れてなくてもグリス漏れの放置はNG
ブーツが破れていない場合、グリスが多少漏れていても車検に通ることもあります。
しかし、内部に封入されているグリスが減っていることは、車にとってはよろしくありません。清掃だけで長年放置していると、グリス切れを起こしてジョイントへの負荷が大きくなってしまい、ドライブシャフトを交換しなければいけない可能性も出てきます。
まとめ
ドライブシャフトの整備が必要となるのは、走行距離が伸びたり年数が経過した車であることが多く、ほとんどの場合で異音の発生やグリス漏れなどの不具合が発生したときです。
それ以前に予防整備をする必要はありませんが、不具合が発生したときは車検に通らないケースもあるので、なるべく早く修理・整備をするようにしましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。