ウォーターポンプは、車に使われている冷却水を循環させるためのポンプです。
冷却水を循環させなければ、熱くなってしまった冷却水をラジエターで冷やすことができないので、ウォーターポンプの働きは非常に重要で、必要不可欠な部品です。
従来のエンジン車だけでなく、EV車にも使用されているウォーターポンプの故障事例や交換の目安時期、費用について現役の整備士が解説します。
ウォーターポンプとは?
まずはウォーターポンプの役割や仕組みと、故障するとどうなるのか解説します。
ウォーターポンプの役割
ウォーターポンプの役割は非常にシンプルで、エンジン(EV車の場合はバッテリー)を中心とした通路内に満たされている冷却水を循環させることです。
熱くなった冷却水はラジエターを通って一度冷やされ、またエンジンやバッテリー等を冷やすために循環されます。
ウォーターポンプは従来、タイミングベルトやドライブベルトによるベルト駆動が一般的です。
タイミングベルトやドライブベルトは、エンジンによって駆動されています。
しかし、走行中にエンジンが停止していることもあるハイブリッド車や、そもそもエンジンのないEV車が出てきたことで、電動ウォーターポンプを採用する車も増えてきました。
ウォーターポンプが故障するとどうなる?
ウォーターポンプが故障すると以下のような不具合が発生します。
- 異音の発生
- 冷却水漏れ
- オーバーヒート
いずれも車にとって、大きなダメージとなる恐れがあるので、すこしでも上記の症状が疑われる場合は、早急に整備工場での診断や修理を依頼することをおすすめします。
異音といったウォーターポンプの故障の前兆
ウォーターポンプの故障の前兆を掴むことは難しく、何かしらの症状が確認されたときにはすでに故障・不具合が発生している状態です。異音がする、水漏れが発生する。しまいにはオーバーヒートが発生するといった不具合が考えられます。
異音がする
ウォーターポンプは、ベルト駆動の場合はプーリーの回転に合わせて、電動の場合はモーターによって、内部のインペラ(羽根)が回されます。
プーリー及びインペラの回転軸には、スムーズに回転するためにベアリングが取り付けられています。
このベアリングの劣化や損傷によって、異音が発生することがあります。
酷いものになると軸にガタが発生して、インペラやプーリーの損傷にまでつながる恐れがあります。
その結果、プーリーの損傷や軸ブレによってベルトが外れたり、インペラの損傷した破片が冷却水経路に循環して、ほかの部品を傷めたりするような二次被害が発生することも考えられます。
異音は以下のような種類があります。
- キュルキュル
- シュルシュル
- ギャー
- ウィーン
- ウォーン
- キーン
- カラカラ
- ガラガラ
水漏れ
冷却水漏れは車検に通らないので注意しましょう。
水漏れは、駐車場の下に緑または赤、青といった着色された冷却水の漏れ跡がないか?
または、エンジンルーム内の冷却水タンク(サブタンク)の量が減っていないかを確認することで、その前兆を掴むことができます。
水漏れ自体はさまざまな場所が原因として考えられますが、ウォーターポンプから冷却水が漏れている場合、オーバーヒートにつながる恐れがあるので早急に修理が必要です。
ウォーターポンプがエンジンに直接取り付けられている場合は、シール性能の低下やシール不良が考えられます。
この場合、ウォーターポンプの種類に応じて、液体シーラーの再施工やゴムパッキンの交換、それらが不可能な場合はウォーターポンプ本体の交換で対処します。
また、にベアリングの劣化・損傷や、回転軸のブレによって、軸部分から冷却水が漏れ出てくることもあります。
オーバーヒート
異音、水漏れを放置していると結果的にオーバーヒートに繋がる可能性があります。
オーバーヒートはエンジンにダメージを与えてしまう恐れがあります。
最悪の場合、エンジンの載せ替えといった高額修理になるかもしれません。
ウォーターポンプからの異音・水漏れはオーバーヒートの前兆と捉え、すこしでも違和感を覚えた場合は、整備工場に診断・修理を依頼するようにしましょう。
ウォーターポンプの交換時期の目安
ウォーターポンプは走行距離10万kmを目安に交換することをおすすめします。
タイミングベルトの車は、ウォーターポンプの交換にタイミングベルトの脱着を伴うことがほとんどなので、タイミングベルトとの同時交換が一般的です。(結果的に予防整備となることが多い)
しかし、すでに市場の新型車の多くはタイミングチェーンが採用されており、ウォーターポンプはドライブベルトまたは、電動によって駆動されています。
基本的にはウォーターポンプ単体の脱着ができるので、実際には不具合が発生してからの交換となることが多いです。
<関連記事>タイミングベルトの交換費用や時期の目安は?チェーンとの見分け方も解説
ウォーターポンプの交換費用の目安
ウォーターポンプの交換費用は1.5万円~15万円です。金額に幅があるのは以下のように装備内容によって違いがあるからです。
- タイミングベルトの脱着を伴う車両の場合…5〜15万円(付随部品含む)
- ドライブベルトで駆動するウォーターポンプの場合…1.5万円〜4万円
- 電動ウォーターポンプの場合…3万円〜10万円
タイミングベルト車両の場合は、工賃が高くなる傾向にあります。電動ウォーターポンプの場合は、部品代が高くなる傾向にあります。
ドライブベルトで駆動するタイプのウォーターポンプの交換が、相対的に安く済む傾向です。また、輸入車やリヤエンジンの車など特殊な場合は、目安の費用より高くなることがあります。
ウォーターポンプの異音や水漏れ跡といった異変に対処しよう
ウォーターポンプの故障の前兆を掴むことは難しいです。
ただし、オーバーヒートのようなより酷い状態になる前に対処することは可能です。
その前兆として、ウォーターポンプからの異音や車の下にできた水漏れの跡などに、早い段階で気付くことが大切です。
少しでも違和感を感じたときは、すぐに整備工場で診てもらうようにしましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。