冷却水の補充、交換時期の目安は?減りや漏れが生じる理由も整備士が解説

冷却水は車にとって必要不可欠な油脂類のひとつです。冷却水は類義語が多かったり、長寿命化によって交換機会が少なかったりするため、詳しく知らない人も多いはずです。
この記事では交換時期やその役割、冷却水の扱い方について現役の整備士が解説します。

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冷却水はクーラント液、ラジエーター液と同じ意味

車の冷却水(赤色)

冷却水はさまざまな呼び方をしますが、いずれも役割は同様です。

  • 冷却水
  • エンジン冷却水
  • クーラント
  • エンジンクーラント
  • ロングライフクーラント
  • ラジエター液(ラジエーター液)
  • LLC(えるえるしー)

ほかにも類義語で、メーカーによって異なる名称を使っていることがあります。

冷却水の役割

冷却水には主にエンジンを冷やす役割があります。
また、車のヒーター(暖房)は温かくなった冷却水を室内に取り込み、風を当てることで温風が出る仕組みになっています。
ハイブリッド車や電気自動車のシステム(モーター)を冷やす役割もあります。
ほかにも例えば、オートマフルードを冷やすためのオイルクーラーや、ターボ車の吸入空気を冷やすためのインタークーラーに、冷却水を使用した水冷式が使われることもあります。
冷却水はどんな車にとっても必要不可欠なものです。
また、水ではなく冷却水が使われる理由は、水だと高温時に気泡が発生してエア噛みを起こしたり、長期間使用すると冷却システム内に錆・腐食が発生するためです。
さらに氷点下以下になったときに、冷却水が循環できるように凍結しないことも重要な役割のひとつです。
そのため、冷却水には防錆効果や消泡効果、防蝕性、不凍性があります。

冷却水の交換時期、補充時期の目安

冷却水は消耗品です。交換時期と補充する目安を解説します。

基本的に車検ごとの交換推奨だが、最近の冷却水は長寿命化

冷却水は車検ごと(2年)の交換を推奨しています。ただし、いまの国産車は長寿命タイプが一般的です。車の平均所有年数が約7年ですが、新車で購入すればその間に交換することがない程度に長寿命化されています。国産の主要乗用車メーカーの、新車で使用されているLLCの交換目安時期についてまとめました。

  • トヨタ…7年または16万㎞
  • 日産…7年または16万㎞
  • ホンダ…11年または20万㎞
  • マツダ…9年または18万㎞
  • スバル…11年または22万㎞

補充時期の目安

冷却水は漏れ等がなく適量入っている場合、補充しなければいけないほど減ることは、基本的にありません。
多くの人は、車検を含めた定期的に必要な整備・メンテナンスを整備工場に依頼しているはずですが、その時にプロの整備士にチェックしてもらうだけで十分です。
それでも気になる場合は、半年ごとにチェックして補充が必要か判断します。

冷却水は自然に減るが、極端な減りには注意

冷却水のシステムは完全に密閉されているわけではありません。
よって、わずかですが自然蒸発する分で減ることがあります。
冷却水の入った樹脂タンクの目盛で量の確認をしますが、完全にエンジンが冷えた状態で、目盛のLOWやMINの下限値よりも少ない状態になっていると、極端に量が減ってきているかもしれません。
冷却水の漏れが発生している可能性もあるので一度、整備工場で点検してもらうことをおすすめします。

冷却水の漏れが生じる理由と確認方法

冷却水の漏れが、車の使い方に起因することはほとんどありません。
また、ユーザー自身が車の違和感に気付けるように、色や匂いを使って漏れの発見を促します。

冷却水の漏れは部品の劣化や不具合が原因

冷却水の漏れが生じる理由は、各部品の劣化や不具合によることが大半です。
冷却システムにはゴム部品や樹脂部品が使われており、経年劣化で硬化してヒビ割れたりすることがあります。
また、金属部品が使われている場所も、年数が経つと錆が原因で穴が空いたり、部品の継ぎ目から滲み出てきたりすることもあります。

甘いにおいと着色された水で漏れを確認

冷却水は甘い独特の匂いがします。
車の近くから普段はしないような甘い匂いが漂っていると、冷却水が漏れている可能性があります。
エアコンを外気導入で使用していると、車内でも匂うことがあります。
また、ボンネットを開けるとより一層、匂いの確認がしやすいです。
また、冷却水には緑や赤、青といった着色がされており、水とは違って蒸発しづらいです。
車の下に、上記のような色がついた水溜りができていたり、エンジンルーム内で飛び散った跡があると、冷却水漏れの可能性が高いです。

冷却水の補充のやり方

冷却水の量は、サブタンクや冷却水タンクと呼ばれる主に樹脂製のタンクに「FULL-LOW」「MAX-MIN」といったマークがあるので、これを基準に補充が必要かどうかを判断します。

【前提】セルフでの冷却水交換はおすすめしない

冷却水の交換には専門の知識や道具が必要です。
正しく交換できなかった場合、エア噛みによるオーバーヒートを引き起こす可能性があります。
また、冷却水は産業廃棄物にあたるので、家庭の排水溝や道路に流してしまうことは絶対にダメです。
これらの理由から、セルフでの冷却水交換はおすすめしません。
一方で、必要に応じてサブタンクに少量の補充をする程度であればセルフでも構いません。
しかし、使用している冷却水によっては水での補充は性能低下のおそれがあるため、専用品以外はNGとしていることがあります。
補充するにしても、整備工場に相談するなどして、正しい知識を持った上で実施するようにしましょう。

冷却水補充の手順

  1. 冷却水を用意する(応急の場合は水でも可)
  2. 補充するサブタンク/冷却水タンクの位置を確認
  3. エンジン(冷却水)が冷えている状態にあることを確認
  4. 「FULL-LOW」「MAX-MIN」の間に収まるように補充

エンジン(冷却水)が冷えているときに作業するのは、冷えているときと温まっているときでは、目視で確認できる量が増減するためです。
また、タンクにはラジエターキャップ一体型とタンクのみのタイプがあります。
一体型の場合、温まっているときに補充のためにラジエターキャップを取り外すと、熱くなった冷却水が噴き出す危険性があるため、補充は必ず冷えてから行います。
タンクのみのタイプの場合、タンクのキャップではなく、間違ってラジエターキャップを開けると、同様に噴き出したり冷えていても冷却水がこぼれ出る可能性が高いので、注意しましょう。

冷却水補充に関するよくある質問

冷却水を補充するときによくある質問にお答えします。

冷却水を入れすぎるとどうなる?

冷却水に限ったことではありませんが、車の油脂類は適量がベストです。
少ない・足りないことは当然ながらダメですが、逆に入れすぎもよくありません。
冷却水を入れすぎると、温まったときにタンクから溢れ出る可能性があります。
これは、水は水温が上がると膨張する性質を持っているためです。

冷却水に水道水を入れるのはいいの?

冷却水に水道水を入れるのは、応急的な場合に限ります。
冷却水が漏れてしまい、その後どうしても自走で帰宅する、整備工場に持ち込む…といった一時的な場合です。
水道水では、すぐに冷却水通路内に錆が発生してしまったり、氷点下以下になると凍結して冷却水が循環しなくなってしまう問題が発生します。
また、冷却水の種類によっては、サブタンク/冷却水タンクの量を微調整する程度の補充であれば、そこまで冷却水の濃度に影響が出ないので、水道水でも可能なものがあります。

冷却水のメンテナンスは信頼できる整備工場に任せよう

冷却水のメンテナンスは大切なことですが、よほどのことがない限りは、信頼できる整備工場に任せておくのがよいです。
これまでに、車のオーナーさんが間違えてエンジンオイルの注入口から水を補充してしまったり、ウォッシャー液のタンクに補充するなどでトラブルに繋がった例を、わたし自身が経験してきたからです。
自分自身でチェックするときは、車のトラブルや火傷、ケガに繋がらないように慎重に行うことが大切です。
車の取扱説明書を熟読したり、整備工場のスタッフから教えてもらって、確実で正しい手順でおこなうようにしましょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。