この記事の目次 CONTENTS
パワーステアリングは電動式と油圧式と電動油圧式の3種類
パワーステアリングの警告灯が点く原因と対策
パワーステアリングフルード(オイル)の交換が大切
パワーステアリングの故障の原因
パワーステアリングに関する整備士の見解

ライター紹介

2級整備士

ヒロ 現役整備士 氏

国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。 整備士ヒロのtwitter

パワステ(パワーステアリング)には、日頃のメンテナンスが必要なものと必要でないものがあります。主に油圧式のパワステが、メンテナンスの必要なタイプです。パワステのメンテナンスに関することを中心に、分かりやすく解説します。

パワーステアリングは電動式と油圧式と電動油圧式の3種類

パワステと一概に言っても仕組みや特徴が異なる、主に3つのタイプに分けられます。
警告灯が点く原因やパワーステアリングフルードの交換目安を把握するためにも押さえておきたい知識ですので事前知識として説明します。

電動式の特徴

現代の乗用車でもっともポピュラーなタイプが電動式(EPS)です。
モーターがパワーアシストしてくれます。
筆者が扱う輸入車、以前在籍していた国産車メーカーのいずれも、現行車は軽自動車から高価格帯の車まですべて電動式です。
電動式は基本的にメンテナンスの必要がありません。
また、電動式のタイプによっては生産コストが低減でき、パワステの機構として省スペースというメリットがあります。

モーターの制御により操舵力の特性を幅広く設定できるからこそ、近年安全装備として多くの車に採用が進んでいる「車線逸脱防止機能(レーンキープアシスト)」で、ハンドルアシスト介入することが容易にできるようになりました。

油圧式の特徴

ひと昔前まで主流だったのが油圧式です。
オイルの圧力を利用してハンドル操作をアシストします。
パワステベルトを介してエンジンのクランクの回転により、油圧ポンプ(パワステポンプ)を駆動して油圧を発生させています。
油圧ポンプはエンジンの補機類にあたります。
歴史があるシステムなのでシンプルかつ信頼性は高いです。
しかし、オイルを使用しているという点でメンテナンスが必要であったり、経年劣化によるオイル漏れの発生・油圧ポンプの寿命といったリスクがあります。
利点は自然なフィーリングです。

電動油圧式の特徴

油圧式のポンプがエンジン駆動のものではなく、電動ポンプとなったものが「電動油圧式」です。
エンジンにより駆動されるポンプと比較して、燃費性能に優れる電動ポンプを使いつつ、油圧式ならではの自然なパワステフィールを活かしたタイプです。
デメリットは、オイル漏れと電気的な不具合の両方のリスクがあります。

パワーステアリングの警告灯が点く原因と対策

パワステの警告灯が点くのは、電気を使って制御している「電動式」「油圧電動式」のパワステです。
警告灯が点くとそのまま走行して良いのか不安ですよね。そんな時の原因と対処法を解説します。

パワステの警告灯が点く原因

警告灯が点くのは、パワステのシステムに何かしらの異常が発生し、コンピュータがそれを検知したときです。
一時的なものもあれば、異常が継続している場合もあります。
また、パワステ操作に違和感を感じることもあれば、まったく普段と変わりないこともあります。
警告灯点灯だけでは、考えられる原因は多岐にわたります。
専用の診断機を使った診断が必要不可欠です。

警告灯が点いたときの対処法

警告灯が点いたら、すみやかに速度を落として路肩や他車の通行の邪魔にならない場所に車を停車させます。
退避をする理由はパワステシステムの異常により、パワステのアシストが効かなくなる可能性があり、非常に危険だからです。
アシストが効かないとハンドルが非常に重たくなるので、普段どおりの操作ができなくなります。大人の男性であっても、操作が困難です。

安全に停車できたら、かかりつけの整備工場に連絡しましょう。
また必要に応じて、保険会社やJAFのロードサービスに連絡します。
まずは、冷静に整備工場のスタッフの指示に従うようにするのがベストです。

パワーステアリングフルード(オイル)の交換が大切

メンテナンスが必要となる「油圧式」「電動油圧式」は、パワステフルードの定期的な交換が推奨されています。
パワステフルードとは一体どういうものかを解説します。

パワーステアリングフルードの役割

油圧式パワステに使われるオイルが、パワステフルードです。(パワステオイルとも呼ばれます)
ポンプの作動によりパワステフルードに掛かる油圧力が、ハンドル操作をアシストする力を生み出します。
ちなみに、車に使われる油脂類のなかで、フルードと呼ばれるものは、潤滑が目的のオイルとは違い、作動油を指す言葉です。

パワーステアリングフルードの交換目安

パワーステアリングフルードの目安となる交換時期は4〜5万kmごとです。
パワステフルードに関しては、定期的な交換を推奨する意見と、交換の必要はないという意見に二分されます。
たしかに、一般的に作動油(フルード)は、エンジンオイルなどの潤滑油(オイル)と比較して、交換スパンは長い傾向にあります。また、パワステフルードが規定量さえ入っていればパワステの作動に問題はありません。

しかし、どんな油脂類でも経年劣化はあります。
何年も使ったパワステフルードの品質は、新品には敵いません。
使用過程で発生した微細な摩耗粉や、フルードの劣化は、理論上では大なり小なり、ガスケット類やパワステポンプを傷める原因にもなります。
結果、不具合につながらなかったとしても、愛車のメンテンナスを考えると、予防の観点から定期的な交換をおすすめします。
敏感なオーナーさんであれば、交換の前後でアシストのフィーリングが変わったことに気付くでしょう。

オイル漏れについて

油圧式のパワステは、以下の箇所からオイル漏れが発生する可能性があります。

  • ギヤボックス本体
  • パワステホース・パイプ
  • パワステポンプ

オイル漏れで規定量以下になったまま放置していると、システム内にエア噛みなどが発生して油圧がかかりきらず、適切なアシスト力が得られなくなります。
また、パワステポンプが焼きつく原因にもなります。
オイルが滴下するような漏れの場合は車検に通りません。
油圧式パワステでオイル漏れの発生が確認された場合は、後々のトラブルにつながる前に、すみやかに修理することをおすすめします。

パワーステアリングの故障の原因

パワステの故障に至る原因は電気式であれば、センサーやコントロールユニットの不良といった電気的な不具合が多いです。
油圧式の故障というとオイル漏れが多く、その原因は各所の経年劣化であることが多いです。
パワステの故障に関する原因・症状・修理費用について解説した記事があるので、必要とされる方はご覧ください。

パワーステアリングに関する整備士の見解

パワーステアリングと一言でいっても、様々なタイプがあり、定期的なメンテナンスの要否も変わってきます。
メンテナンスが必要な油圧式の場合も、気にしすぎる必要はなく、整備工場での点検・車検を通して「提案があればフルード交換を実施する」程度でよいでしょう。
ただ、ハンドル操作に違和感を感じたり、オイル漏れの発生、または警告灯が点いた場合は、安全運行な関わる部分になるので、すみやかに整備工場で点検してもらうようにしましょう。