この記事の目次 CONTENTS
失敗例1 やっぱりミニバンは便利だった・・・
失敗例2 日々使うクルマとしては、燃費が悪かった・・・
失敗例3 オフローダー系SUVはカッコ良く悪路走破性に優れるものの日常の使い勝手が・・・
イメージ先行での購入はNG

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

空前のSUVブームにより、新型SUVも急速に増えている。
SUVはルックスやスペースの広さから、女性にも人気だ。悪路走破性も高く、アウトドア好きにも良い。オールマイティなクルマともいえる。
ただし全ての人にSUVが合うわけではない。そこで今回はSUVの購入失敗例をまとめた。失敗した人は、どうクルマを選ぶべきだったのか併せてレポートする。

失敗例1 やっぱりミニバンは便利だった・・・

お年寄りや小さな子どもがいる場合

典型的な失敗例が、お年寄りや小さな子どもがいる家庭が流行りに乗ってSUVを買ったパターンだ。
SUVは悪路を走ることを想定しているため、最低地上高が高めに作られている。フロア高が高いと、一般的な大人であればそれほど苦にならないだろう。だが足を高く上げにくいお年寄りや小さな子どもでは、乗り降りがしにくい。ミニバンは低床フロアタイプが多く、さらにお年寄りや小さな子どもが掴んで乗り降りしやすくなるグリップなどもあるモデルも多い。

SUVはヒンジ式ドアが一般的だ。狭い場所でドアを全開にしても、お年寄りや小さな子どもにとっては乗り降りしにくい。左右に他車が停まっていれば尚更だ。
ミニバンのスライドドアなら、狭い場所での乗り降りも容易である。

大人数で乗車することが多い場合

SUVには3列シートをもつモデルもある。多人数乗車も可能だ。「ならば流行りのSUV」という選択をして失敗した例も多い。3列目シートのスペースの狭さが理由だ。
輸入車の大型SUVには十分なスペースがある。しかし、国産SUVの3列目シートのスペースは、かなりタイトだ。足元のスペースや頭上のスペースが無く、窮屈な姿勢で乗ることになる。短距離移動用、もしくは小さな子ども用と割り切る必要があるだろう。
スペースは、ミニバンと比べると大きな差となる。3列目シートの使用頻度が高い場合は、SUVではなくミニバンを迷わず選ぶべきだろう。

 

荷物を大量に積む頻度が高い場合

SUVの積載性は、それなりに高いレベルにある。だが大量の荷物を積むことが多い場合、SUVを買って失敗した例もある。

しかし、収納力をミニバンと比べると差は歴然だ。
ミニバンの場合、3列目シートを格納すると、広大なスペースが出現する。荷室の後端部分には、下方に大きく掘ったスペースがある。これにより、ゴルフバックやチャイルドシートなど、ある程度の高さがある荷物も立てて収納できる。収納面は、圧倒的にミニバンが有利だ。荷物をたくさん積むケースが多いのであれば、流行りに流されずミニバンという選択肢もある。

「ミニバンでは悪路を走れないのでは?」と考える人もいるだろう。

三菱デリカD:5

三菱デリカD:5というモデルは、悪路走破性に優れた唯一無二のミニバンだ。こうしたモデルを選択すれば、大量の荷物を積みながらの悪路走行も可能になる。

失敗例2 日々使うクルマとしては、燃費が悪かった・・・

通勤などで日々クルマを使うものの、短距離移動が多い人が失敗だと感じた例が「燃費の悪さ」だ。

SUVは、背が高く車体も大きくなるため、車重が重い。車重の重さは、燃費悪化に直接影響する。

トヨタ ヤリスクロス

例えば、人気コンパクトカーであるヤリスハイブリッドと、ヤリスをベースとしSUV化したヤリスクロスハイブリッドの燃費(FF,WLTCモード)と、車重は以下の通りだ。
燃費差は、5.2~7.6km/Lで車重差は100~110kgとなった。

  燃費 車重
ヤリスハイブリッド 35.4~36.0km/L 1,050~1,090kg
ヤリスクロスハイブリッド 27.8~30.8km/L 1,160~1,190kg

この燃費差をどう感じるかは、人それぞれだ。
日々使うクルマであれば、燃費は重要である。昨今のガソリン高騰高止まり状態では、日々の生活に影響を与えるのは必至といえる。

 

日々使うクルマなら、コストパフォーマンスに優れる中古のセダンとEVがお勧め

悪路を走る機会が少ないのであれば、コンパクトカーやセダンでも十分ではないだろうか。

とくに注目したいのがセダンとEVだ。
新車で買う場合、あまりメリットが無い。しかし、セダンとEVは人気が低迷しているためリセールバリューが低く、一部を除き中古車は激安傾向にある。同じクラスのSUVと比べれば、乗り心地や燃費もよい。
中古車価格が安価なので、コストパフォーマンスにも優れている。日々使うのであれば、中古車のセダンやEVがお勧めだ。

 

スカイラインハイブリッド

具体的には、セダンなら日産スカイラインハイブリッドやマツダ アテンザディーゼル(マツダ6)、輸入車ではBMW3シリーズディーゼルなどが良いだろう。EVでは、日産リーフやBMW i3がお勧めだ。

【補足】PHEVならSUVでも毎日使うメリットあり

毎日のように短距離移動を繰り返す人には、SUVは向いていない傾向にある。ただし例外として、三菱アウトランダーPHEVなどのPHEVモデルは除く。PHEVは、短距離ならば充電された電力を使いEV走行する。そのため、ほとんどガソリンを使うことがない。
また充電は家庭用のコンセントなどで行う。電気代も高くなっているとはいえ、ガソリンと比べればまだまだ安価だ。こうしたPHEVのSUVなら、毎日のように使うクルマとしてのメリットは十分にある。

失敗例3 オフローダー系SUVはカッコ良く悪路走破性に優れるものの日常の使い勝手が・・・

オフローダー系SUVはとにかく大きく迫力があり、さらに悪路走破性も抜群だ。アウトドア志向だけでなく、最近ではライフスタイル系ユーザーからも絶大な人気を誇る。

しかし、見た目の印象でオフローダー系SUVを選ぶと失敗するケースがある。特にライフスタイル系で、イメージで選ぶタイプの人は注意が必要だ。

オフローダー系SUVには、主に以下のモデルのラダーフレームが採用されている。

  • トヨタ ランドクルーザー
  • プラド
  • メルセデス・ベンツGクラス
  • ジープラングラー
  • スズキ ジムニー

こうしたモデルは、とにかく悪路を走るために開発されたモデルだ。そのタフネスさやワイルドなスタイルにつられて買ってしまうと、思わぬ失敗が待っている。

乗り心地や静粛性がイマイチ

オフローダーは、ラダーフレームと呼ばれる構造をもつ。はしご状のフレームの上にボディが乗っており、構造はシンプルで生産や修理も容易だ。しかも、強靭さも得られる。オフローダーにとって重要な要件を満たしているため、ラダーフレームが採用されているのだ。

その反面、一般的なSUVに採用されるモノコックボディに対して、乗り心地や静粛性に劣り、車重が重いため燃費も悪くなる。悪路での走破性に特化しているため、高速道路では、直進安定性やカーブでの安定感も物足りない。一般的なSUVと比べると、まったく別物といえる。

オフローダーは悪路特化型なので、オンロードではマイナス面が目立ちやすい。それでも、デザインが好みなのであれば問題ないが、こうしたオンロードでの物足りなさゆえに失敗したと感じる人も少なくない。
快適性を重視するのであれば、モノコックボディをもつ一般的なSUVを選ぶべきだろう。

 

狭い道が苦手

ジムニー

オフローダーのボディサイズは、スズキ ジムニーを除き、かなり大きい。
悪路走破性を高めるため、最低地上高は高く、大径タイヤを履く。そのため、最小回転半径が大きく小回りが苦手な傾向にある。
例えばメルセデス・ベンツGクラスの最小回転半径は6.3mと非常に大きく、狭い道や狭い駐車場が多い日本では少々持て余す。

イメージ先行での購入はNG

オフローダーをイメージだけで買うと、オンロードでは不満に思えることが思ったより出てくるだろう。逆に、悪路走行の頻度が高い人にとっては、とても頼りになるモデルでもある。

オフローダーは、普段使うシーンにより、満足度は大きく異なる。イメージ先行ではなく、自分が普段使う場面や重要視する性能などを明確にしてから、しっかりと試乗してみることが大切だ。

・車選びは用途を明確にして購入しよう

今回はSUVの購入を失敗した場合についてレポートをした。SUVは人気のボディタイプで購入数も多い分、失敗したと感じる購入例も少なくない。ただし、近年はSUVの要素を取り入れたクロスオーバーモデルも増えてきている。そのため事前にさまざまな車種を調べてみるとより良い車購入が出来るだろう。購入検討前に利用用途を改めて振り返り、優先順位を決めることが大切だ。