この記事の目次 CONTENTS
中古スライドドアSUV風クロスオーバー車とは?
三菱デリカ D:5
スズキ スペーシアギア
ホンダ フリード クロスター
三菱eKクロススペース
SUV?スライドドア?好みのクルマを選ぶならお店で相談

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

SUVは走破性のみならず、デザインも好まれ人気がある。SUVの人気を受け、他のボディタイプにSUVのテイストを盛り込み、スライドドアを持つモデルが続々登場している。
今回は人気のスライドドア付きSUV風モデルのおすすめを紹介する。是非購入の検討材料にしてほしい。

中古スライドドアSUV風クロスオーバー車とは?

空前のSUVブームは世界中で巻き起こっている。日本マーケットも、多くの新型SUVが投入され、さらに独自の進化を遂げている。スライドドアSUV風クロスオーバーモデルだ。

日本は、世界全体から見ると少々特異なマーケットだ。その典型的な例が軽自動車というカテゴリーである。

日本マーケットは、スライドドアを持つモデルの種類が豊富なことも大きな特徴だ。
スライドドアモデルは、日本でとても人気が高く販売台数も多い。欧州などでは、スライドドア車は配送用バンのイメージが強く、乗用車にはなかなか採用されず一部の車種に限定される。

このように、世界的に見ると特異なマーケットである日本において、SUVが独自の進化をしている。それが、スライドドアSUV風クロスオーバー車だ。スライドドア車にSUVのテイストや機能をプラスした、クロスオーバーモデルである。良いとこ取りなので、実用的で合理的だ。日本マーケットに合ったモデルといえる。こうしたモデルがあるのは、ほぼ日本だけだろう。
ただし、まだまだニッチなマーケットだ。そこで、ブーム先取り!? おすすめ中古スライドドアSUV風クロスオーバー車をピックアップした。

スライドドア装備のSUVはなぜないのか?

SUVはレジャーやアウトドアでの使用が想定されており、悪路走破性を求められる。そのため、ボディにも耐性が他のボディタイプよりも大切です。開口部が大きくなるスライドドアは体制維持のための設計を難しくてしまいます。よってスライドドアを付けた場合は、SUVのデザインを汲み入れたボディタイプのものが主流となっている。

三菱デリカ D:5

唯一無二! 世界的ニッチな名車!?

デリカD:5 外装

三菱デリカシリーズは、スライドドアSUV風クロスオーバー車のパイオニアともいえる。1979年にデビューしたデリカ スターワゴンから、オフローダーミニバン的なスタイルをもっていた。その後、デリカ スペースギアと続き、2007年のデリカD:5と進化した。過去も現在も唯一無二の本格派オフローダーミニバンの道を突き進む。
こうした歴史から、デリカD:5は現在のスライドドアSUV風クロスオーバー車の原点ともいえるだろう。

2019年の改良モデルはすべての面で向上

現行のデリカD:5は、2007年にデビューとかなり古いモデルだ。現在まで、幾度となく改良やマイナーチェンジが加えられてきた。2019年の大幅改良では、フルモデルチェンジに近いレベルとなり、内外装からパワーユニットまで一新されている。
この大幅マイナーチェンジ前のモデルでも、ミニバンとは思えないような悪路走破性能を誇っていた。2019年の大幅改良を経て、悪路走破性がさらに向上しただけでなく、乗り心地や静粛性、操縦安定性などすべてが向上している。迫力ある外観デザインにラグジュアリーな内装などが加わり、改良前のモデルとは、まったく別物になっている。

デリカD:5の優れたドライブモードとエンジン

今回は、スライドドアSUV風クロスオーバー車として紹介しているものの、デリカD:5だけは機能面でも突出して優れており、むしろ本格派オフローダーミニバンといえるものだ。
その悪路走破性を支えているのが、三菱独自のAWC(All Wheel Control)思想に基づいた4WDシステムである。すべてのタイヤのグリップ力を最大限に確保し、ドライバーの思い通りの「走る・曲がる・止まる」をアシストする。

デリカD:5には、3種類のドライブモードが用意された。

  1. FF(前輪駆動)…燃費優先
  2. 4WDオート…路面や走行状況において自動で最適制御
  3. 4WDロック…悪路などでの走破性を高める

最新モデルでは、最低地上高を185mm確保した。中途半端なSUVでは敵わないほどの悪路走破性を誇る。

最新モデルに搭載されたエンジンは、2.2Lディーゼルエンジンのみだ。145ps&380Nmの十分な出力を発揮し、燃費は12.6km/L(WLTCモード)とまずまずな数値となっている。
2019年のマイナーチェンジ後モデルは、非常に高い完成度を誇る。スライドドアSUV風クロスオーバー車としては、間違いなくナンバー1だ。

フロアが高いのが少々難点

ただし弱点もある。弱点と呼ぶべきなのかは微妙なのだが、悪路走破性を高めるために最低地上高185mmを確保し、フロアが高い点だ。そのため、乗り降りがしにくい。少し、よじ登るような状態での乗車になる。そのため、スライドドア車ながら、高齢者や小さな子どもの乗り降りは、少し不便に感じる。

 

デリカD:5の中古車相場とおすすめグレード

2019年の大改良後デリカD:5の中古車は、まだまだ高価だ。唯一無二のオフローダーミニバンとしての価値が高く評価され、中古車価格も高値維持となっている。
2019年式デリカD:5の最上級グレードPで、中古車相場は380~400万円程度となっている。当時の新車価格が約422万円なので、中古車価格は90~95%だ。これだけ高価だと、新車を買うのがおすすめだ。

ただし、最上級のPグレードに以下のようなオプション装備が充実していて300万円台なら、中古車としてギリギリ選んでもよいと思われるラインだ。

  • 純正ナビ
  • 後席モニター
  • 本革シート
  • 電動サイドステップ

スズキ スペーシアギア

愛着がわくアクティブスタイルが魅力

スズキ スペーシアギアは、スペーシアの派生車として2018年にデビューした。
スペーシアが属するスーパーハイト系は、高い全高をもち後方への広大なスペースが特徴だ。高さがある大きな荷物なども楽々積載できるため、スライドドアSUV風クロスオーバー車のベース車としてピッタリなモデルといえる。
スライドドアは無いものの、スズキはハスラーで軽自動車マーケットにSUVテイストを持ち込みヒットさせたメーカーだ。それゆえに、スペーシアギアはデザイン性に優れている。

スペーシアギアの外観デザインは、ベースのスペーシアとは異なる専用装備を装着している。たとえば、以下のパーツをガンメタリック色に統一した。

  • 丸型のヘッドランプ
  • フロントグリル
  • フロント/リヤバンパー
  • サイドドアガーニッシュ
  • ルーフ

フロントフェイスはクリっとした愛着が湧くデザインながら、ガンメタ色の引き締められたパーツ類が力強いSUV感をアピールしている。
さらに積載に便利なルーフレールも標準装備した。

インテリアは、スペーシアとの違いはなく、ほぼ色味の変更のみだ。ブラックを基調として、メーターやシートステッチなどにオレンジのアクセントカラーを施した。シートは撥水加工が施されている。子どもの食べこぼしや、濡れたアウトドア用品や衣服などを乗せても簡単に清掃できるので便利だ。もちろん、ラゲッジも防汚タイプが使われている。

燃費性能もクラストップレベル

エンジンは、660㏄のマイルドハイブリッドシステム付き自然吸気とターボの2タイプが搭載された。双方の出力と燃費は以下の通りだ。(どちらもFF、WLTCモード)

  出力 燃費
自然吸気エンジン 52ps&60Nm 21.2km/L
ターボ 64ps&98Nm 19.8km/L

どちらのエンジンもマイルドハイブリッドシステムのため、3.1ps&50Nmという小さなモーターがプラスされる。燃費性能は、クラストップレベルで優秀だ。

 

スペーシアギアのおすすめモデル

グレードは、XZの1グレードのみの設定となっている。
おすすめはターボモデルだ。スライドドアSUV風クロスオーバー車は、どこか遠くへ行くことが多い人が選ぶ傾向が強い。山道や高速道路などで頻繁に使うなら、背が高く車重が重いスーパーハイト系スペーシアギアの自然吸気エンジンは、少し非力だ。ターボエンジン車なら、力に余裕があるのでロングドライブもより快適だ。

普段使いなら乗りやすい

このスペーシアギアは、分かりやすいスライドドアSUV風クロスオーバー車である。使い勝手やデザイン面は、SUV風に上手くまとめられている。スライドドアも低く、小さな子どもや高齢者の乗り降りも容易だ。
ただ基本的に使い勝手面以外はSUVとしての機能はほとんどない。4WDの設定も悪路を走るタイプではないし、最低地上高も150mmしかない。SUVなルックスだが、オフロードは走れない。あくまで、平坦なキャンプ場くらいが限界だ。

スペーシアギアの中古車価格

そんなスペーシアギアの中古車は、優れたSUV的ルックスにスライドドアや広大な室内ということもあり高値維持が続いている。
2019年式スペーシアギアの中古車価格は、自然吸気エンジンのXZ(FF)で、140~170万円程度となっている。新車価格が161万円なので、新車価格の87~106%とかなり高価なままだ。こうなると、新車を買うほうがおすすめだ。
コロナ禍による半導体や部品不足により、新車の納期が長くなっていることを受け、高年式で走行距離が短い車両は、軒並み高価格化が進んでいるようだ。

ホンダ フリード クロスター

ライトなSUV感あるスタイリング

ホンダ フリードクロスター

ホンダ フリード クロスターのベースとなるフリードは、2016年にフルモデルチェンジし2代目となった。フリードは、コンパクトカーであるフィットのプラットフォーム(車台)をベースに開発された、6/7人乗りのコンパクトミニバンだ。このプラットフォームは、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトを採用している。コンパクトなボディサイズながら、非常に広い室内と荷室を持つのが特徴だ。

そんなフリードをベースとしたクロスターは、2019年のマイナーチェンジに追加された。
ファミリーカー的な親しみのあるフリードのフェイスデザインをやや変更した。フード、グリル、バンパーやロアグリルの形状変更により、少し精悍で落ち着きのあるフェイスに仕上げている。フロントバンパーのアンダーガード風デザインがSUVテイストを感じさせる。インテリアは、ウォールナット調パネルの採用で質感を向上させた。

このフリード クロスターは、ライトなスライドドアSUV風クロスオーバー車だ。ベース車とはわずかに異なるSUVテイストがプラスされた、お手軽モデルといえる。内装もほとんど変化がない。ベーシックなフリードとは、少しでも違うテイストを求める人に向く。

悪路走破性はあまりないが燃費は良好

フリード クロスターにも4WDが用意されているが、基本的にオフロードを走るものではない。あくまで滑りやすい道でのトラクション確保のための4WDだ。また、最低地上高はFF(前輪駆動)で135mmと、通常のフリードと同じである。そのため、フラットな未舗装路程度向けだ。あくまで、外観のみがSUV風であり、SUVの悪路走破性はない。

搭載エンジンは、1.5Lハイブリッドと1.5Lガソリンの2タイプだ。双方の出力と燃費は以下の通りだ。(どちらもFF、WLTCモード)

  出力 燃費
ハイブリッド 137ps(システム出力) 20.8km/L
燃費 129ps&153Nm 17.0km/L

意外と燃費がよい点は高評価だ。

クロスターのおすすめと中古車価格

クロスターは、1グレード設定で、エンジンの選択のみとなる。予算にもよるが、リセールバリューなども含めればハイブリッド車がおすすめだ。歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備「ホンダセンシング」も標準装備なので安心だ。

このフリードクロスターも2019年のマイナーチェンジなので、中古車は高値状態が続いている。2020年式フリードクロスターハイブリッド車の中古車価格は、おおよそ260万円。新車価格が約278万円なので、新車価格の約94%とかなり高価だ。これだけ高価だと、新車でも中古車でも、しばらく買わない方がよい。2022年1月現在、フリードはモデル末期でいつフルモデルチェンジしてもおかしくないからだ。フルモデルチェンジすれば、中古車価格もグッと下がってくる。中古車なら、フルモデルチェンジして、しばらく経ってからが買い時になる。

三菱eKクロススペース

ルックスは三菱の迫力系SUV的

三菱eKクロススペース

三菱eKクロススペースは、分かりやすいスライドドアSUV風クロスオーバー車で2020年にデビューした。

eKクロススペースは、日産ルークスと姉妹車関係にあるが、まったく異なるデザインになっている。eKクロススペースのフロントフェイスは、三菱SUVのデザインアイコンでもあるダイナミックシールドを採用し非常にSUV感の強いデザインとなった。

eKクロススペースのインテリアは、外観デザインとは異なりSUV感のないスポーティなものだ。インテリアはルークスとほぼ共通だが、eKクロスではSUV的な機能として撥水シートが標準装備されている。ルークスは、オプション設定だ。

燃費性能と悪路走破性は少々物足りない

搭載されているエンジンは、マイルドハイブリッドの自然吸気エンジンとターボの2タイプだ。出力と燃費は以下の通りだ。(どちらもFF、WLTCモード)

  出力 燃費
自然吸気エンジン 52ps&60Nm 20.8km/L
ターボエンジン 64ps&100Nm 18.8km/L

それぞれ、2.7ps&40Nmの小さなモーターが装着される。燃費性能は、マイルドハイブリッドなのに少々物足りない。

eKクロススペースもスライドドアSUV風クロスオーバー車なので、最低地上高は姉妹車ルークスと同じ150mmだ。オフロードを走るのに十分とは言えない。また、4WDも、とくに悪路走破性を意識したものではない。SUV的ルックスではあるが、悪路を走れるわけではない点には注意が必要だ。

おすすめグレードとオプション

eKクロススペースのおすすめグレードは、ターボモデルのTだ。スーパーハイト系は車重が重く、自然吸気エンジンだと高速道路や山道ではパワー不足気味だからだ。

装備面では、以下のオプション装着がおすすめだ。

  • 運転席側オートスライドドア
  • 全車速追従式クルーズコントロール「マイパイロット」
  • マルチアラウンドビューモニター
  • ナビ

自動ブレーキなどの予防安全装備は、全車標準装備なので安心である。

eKクロススペースの中古車価格

eKクロススペースは、2020年にデビューしたばかりの新型車だ。中古車価格は、まだ高値を維持している。2021年式eKクロススペースTの中古車価格は、約150~190万円が相場だ。新車価格が約186万円なので、81~102%程度になっている。安価な価格帯でナビやマイパイロットなどのオプションが多数付いていれば、まずまずの買い得感があり中古車でもおすすめだ。もし中古車価格が170万円を超えるなら、新車を買った方が良いだろう。

SUV?スライドドア?好みのクルマを選ぶならお店で相談

人気のSUVのテイストを盛り込んだスライドドア付きのクルマ。見た目は楽しめるものの、悪路走破性となると少々物足りないのがある傾向のようだ。また、スライドドアも利用シーンによっては使いづらく感じる場合もある。ただ燃費性能や乗り心地の良いクルマも多く、普段使いをするうえでは十分な性能がある。

「デザイン重視にするのか?」「スライドドアはホントにあった方が良いのか?」などクルマの選び方で迷った場合はお店に相談してみよう。