日産アリアB6(FF)対トヨタbZ4X-EV【注目のSUVモデルを比較】

自動車ニュース / ガリバー

2022.7.16

日産アリアB6(FF)対トヨタbZ4X-EV【注目のSUVモデルを比較】

※本記事内に安全装備への言及がありますが、安全装備には作動条件や限界があります。機能を過信せず、安全運転を心がけましょう。

アリア-bZ4X

2022年発売のSUVモデルEVで注目を浴びているのが、日産アリアとトヨタbZ4Xだ。両車、ミドルサイズSUVであり、発売時期も近しいライバル車である。bZ4XはKINTOによるリース販売で通常の購入方法と異なるため、事前に両車の違いを知るようにしたい。

この記事の目次 CONTENTS
日産アリアB6(FF)の特徴
トヨタbZ4Xの特徴
電費、航続距離共にbZ4X優位
bZ4Xはリース販売のみ
両車補助金のメリット大
EVらしいデザインのアリア。EVらしさを感じないbZ4X
室内の広さと開放感、使い勝手でアリアが上回る
予防安全装備ならbZ4X。運転支援機能ならアリア
乗り心地重視のアリア。切れのあるスポーティなbZ4X
少々、不安ありのアリア。心配無用のbZ4X
快適な移動重視ならアリア。EVらしい走る楽しさならbZ4X
日産アリアB6(FF)価格・スペック
トヨタ bZ4X Z(FF)価格・スペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

日産アリアB6(FF)の特徴

アリア アリア

日産アリアB6(FF)は、2022年5月に発売された。
アリアはバッテリー容量が2種類設定されている。

  • B6(66kWh)
  • B9(91kWh)

それぞれ、後輪側にモーターを設置した4WDのe-4ORCEがある。

2022年7月現在、発売されているのはB6(FF)のみだ。他のグレードの販売はコロナ禍における半導体不足などによって大幅に遅れているが、体制が整い次第順次発売される予定だ。

アリアは、日産のEVラインアップでは最上位モデルに当たる。アリアB6(FF)の航続距離は470km(WLTCモード)、アリアB9(FF)は610km(予定)と、航続距離は十分だ。

4 WDのe-4ORCEモデルはまだ発売されていないが、既に非常に注目されている。
e-4ORCEは路面状況や走行状況に応じてタイヤのグリップを最大化し、モータートルクを自動的に前後輪に最適配分するのだ。
減速時には、前後モーターによる回生ブレーキと4輪の油圧ブレーキを組み合わせて協調制御する。フラットな車体姿勢を保ちつつ、スムースで安定したハンドリングを誇る。

トヨタbZ4Xの特徴

bZ4X bZ4X

トヨタbZ4Xは、2022年5月に登場した新型EV(電気自動車)だ。車名のbZとは「beyond Zero(ゼロを超えた価値)」として、カーボンニュートラルに貢献していく意思が込められている。

bZ4Xは、トヨタとスバルとの共同開発により誕生した。スバルブランドでは、ソルテラとして発売される。両車は外観や走りの質が若干異なり、それぞれのメーカーらしさがアピールされている。FF(前輪駆動)に加え、後輪側にモーターを設置した4WDもある。

bZ4Xに搭載される駆動用バッテリーは71.4kWhと大容量だ。航続距離も559km(FF車)と十分である。

特徴的なのは、販売方法だ。
EVはリセールバリューがかなり低い傾向にある。さらに、長期使用によるバッテリー容量の低下が不安視されている。bZ4Xではこうした顧客の不安を払拭するために、全車KINTOによる個人リース販売となった。
残念なのは、トヨタディーラーに急速充電器があまり設置されていない点だ。そのため、出先での充電は、日産ディーラーや公共の急速充電器を使うしかない。

電費、航続距離共にbZ4X優位

1.航続距離・電費比較

日産アリアの評価 4.0
トヨタbZ4Xの評価 3.0

日産アリアとトヨタbZ4Xのバッテリー容量、航続距離は以下の通りだ。(双方WLTCモード)

バッテリー容量 航続距離
アリアB6(FF) 66kWh 470km
bZ4X(FF) 71.4kWh 559km
bZ4X(4WD) 71.4kWh 540km

搭載するバッテリー容量差は、わずか5.4kWhだ。1kWhあたりの電気で走れる電費は、アリアB6が約7.1km/kWh、bZ4Xは約7.8km/kWhである。
ボディサイズはbZ4Xの方がやや大きいが、車重が同じ1,920kgであることを加味すると、bZ4Xは電費面でややリードする。

bZ4Xはバッテリー容量が少し多い。航続距離の559kmは、アリアB6と比べると89km長くなっている。大差では無いものの、EVでより安心して長距離を走りたいという顧客にとっては大きな差といえるだろう。

bZ4Xはリース販売のみ

2.価格比較

アリアの評価 2.5
bZ4Xの評価 2.0

日産アリアB6とbZ4Xの価格は以下の通りだ。

FF 4WD
アリアB6 5,390,000円 -
bZ4X 6,000,000円 6,500,000円

*bZ4Xは全車リース販売のため参考価格

  • 申込金770,000円
  • 月額利用料(1~4年目)77,990円/月(東京都補助金+CEV補助金適用の場合)

参考価格で比較した場合、アリアの価格はbZ4Xに対して少しリーズナブルといえる。大きな装備差も無い。

bZ4Xの場合、リセールバリューやリチウムイオンバッテリーの劣化リスクなども加味し、ユーザーメリットを考えた結果リースのみの販売になっている。その反面、顧客から選択肢を奪っているのも事実だ。買う側により多くの選択肢を提示して欲しく感じる。

リチウムイオンバッテリーはコストが高く、車両価格に大きな影響を与えている。車両価格に対して、リチウムイオンバッテリー1kWh当りの価格を計算すると、アリアB6が8.2万円/kWh。bZ4Xは、8.4万円/kWhとなった。この価格でもアリアのコストパフォーマンスは若干優れている。

だが、アリアもbZ4Xも、まだまだ高価だ。EV普及のために戦略的価格にチャレンジして欲しいところである。
アリアの補助金は、国と東京都の場合で152万円だ。bZ4Xは、145万円となっている。アリアであれば、実質387万円で最新のEVに乗れることになる。
だがこのクラスのハイブリッド車(FF)だと350万円以下が相場だ。普及を目指すのであれば、補助金を使うとハイブリッド車よりも安くなるくらいの価格設定を望みたいところだ。

両車補助金のメリット大

3.購入時の値引き術

アリアの評価 3.0
bZ4Xの評価 2.5

日産アリアは、予約販売がメインだ。ようやく通常発売されたグレードもB6(FF)のみである。
そのため、2022年7月時点では値引きはほぼ無い。通常販売されるB6(FF)も同様に、ディーラーオプションのサービスや、下取り車の買取価格アップ程度だろう。

下取り車の価格がアップしても、他店との比較を忘れないようにしたい。
一般的に、買取店は高値で下取りするケースが多い。買取車は、何社か見積を取り、最も高値を付けたところに売却しよう。

アリアで値引きを期待するのであれば、すべてのグレードが通常販売され、納期が安定するまで待つ必要がある。新車効果が無くなり、半導体不足が解消されていることが前提だ。こうした状態になるのがいつになるのかは不明だが、少なくとも1年以上は待つ必要があるだろう。

bZ4Xは、リース販売のため値引きはゼロだ。
4年縛りのリースだが、税金や整備や修理費、自動車保険などすべてがコミコミの定額制である。支払いが一定なので、生活費が安定するなどのメリットもある。また、5年目以降は年々リース料が安くなる。

両車、値引きはほとんど無いが、補助金のメリットが大きい。
アリアB6(FF)は国の補助金が92万円+自治体の補助金、bZ4Xは国の補助金85万円+自治体の補助金となっている。かなり補助額なので、EVを買うメリットは大きい。

補助金の予算が超過した時点で終了となる。早ければ、来年度を待たずに終了することもある上に、納期が長期化しているので、買うなら早めがよい。とくに、2022年は数多くのEVが登場しているからだ。

EVらしいデザインのアリア。EVらしさを感じないbZ4X

4.デザイン比較

アリアの評価 4.0
bZ4Xの評価 4.0

アリアの外観 アリアの外観

日産アリアのデザインは、エンジンよりコンパクトな電動パワーユニットを活かし、非常に短いボンネットになっている。EVらしいシルエットに日本の伝統美を取り入れた。

フロントグリル部分となるシールドには、日本の伝統的幾何学模様「組子」を立体的に表現した。ボディは日本的な「粋」、「整」、「間」「移ろい」といったキーワードをベースにデザインされている。

  • ノーズやショルダーのハイライト…シンプルな「粋」
  • ノーズからリヤにつなぐライン…機能美である「整」
  • リヤコンビネーションランプ…日本のミニマリズム「間」
  • ダイナミックなボディ…「移ろい」
アリアのフロントフェイス アリアのフロントフェイス

フロントフェイスは大きな顔とシールドを組み合わせ、押し出し感をアップした。さらに大きなフェイス上部に薄型LEDを組み合わせるという流行りのデザインも取り入れている。
Vモーショングリルとシーケンシャルポジションランプは一体化され、日産車らしい顔もアピールしている。

アリアのリヤエンド アリアのリヤエンド

リヤビューは最新SUVのトレンドである横一文字型コンビネーションランプだ。
アリアのデザインは個性がありながらも、多くの人に受け入れられやすいといえる。

アリアのインパネ アリアのインパネ

アリアのインテリアデザインは、「間」をキーワードとし全体的にシンプルにまとめられている。
インパネ周りは、12.3インチ大型モニターをふたつ並べ近未来感を演出した。ダッシュボートに物理的なスイッチは無く、シンプルでユニークな世界観を表現している。

アリアのメーター アリアのメーター

電源を入れると操作系のアイコンが浮かび上がり、操作時は振動するハプティクススイッチ式を採用した。シンプルながら、モダンな印象が強い。

bZ4Xの外観 bZ4Xの外観

対するトヨタ bZ4Xのデザインコンセプトは、「Hi-Tech and Emotion」だ。先進感とクルマ本来の美しさを融合させている。
全体的なシルエットはボンネットが長く、通常のガソリン車とあまり変わらない。トヨタはEV専用のプラットフォームと言うが、中型のFF車に使われるGA-Kプラットフォームをベースとして開発されているので、一般的なガソリン車のシルエットになったのだろう。ボンネットを開けると、前部には大きな空きスペースがある。

bZ4Xのフロントフェイス bZ4Xのフロントフェイス

フロントフェイスはグリルレスだ。台形のキャラクターラインで安定感を表現している。bZ4Xも流行りの薄型LEDを上部に配置したことで、睨みの効いた迫力ある顔となった。

サイドビューはアリアのような重厚感あるフォルムとは異なり、後方へ抜けるシャープなキャラクターラインによってスピード感のあるフォルムとなった。ワゴンのクロスオーバー車のようなシルエットが魅力的だ。

bZ4Xのリヤエンド bZ4Xのリヤエンド

リヤのコンビネーションランプは、アリアと同じく流行りの横一文字型だ。
アリアはシンプルにまとめているが、bZ4Xは複雑な線と面の組み合わせで独特のスポーティさを演出している。

bZ4Xのインパネ bZ4Xのインパネ
bZ4Xのメーター bZ4Xのメーター

アリアとbZ4Xは共に、好き嫌いが明確になるデザインは避け、より多くの人に好感度を与えたいのだろう。
この2車種は共通のデザイントレンドを導入しているが、全く異なるモデルに見える。アリアがSUVのような重厚感ある存在感を放っているのに対し、bZ4Xはスピード感あるスポーツモデルのようだ。どちらも方向性は異なるが、個性的で魅力的なデザインといえる。

室内の広さと開放感、使い勝手でアリアが上回る

5.室内空間と使い勝手

アリアの評価 4.5
bZ4Xの評価 3.5

日産アリアとトヨタbZ4Xのボディサイズとホイールベースは以下の通りだ。

全長×全幅×全高 ホイールベース
アリア 4,595mm×1,850mm×1,655mm 775mm
bZ4X 4,690mm×1,860mm×1,650mm 2,850mm

全幅と全高はほぼ同等だが、全長とホイールベースはアリアのほうが短い。数値からはアリアの方が室内スペースは狭く感じるが、実際は逆だ。アリアの方が広々としている。

アリアのフロントシート アリアのフロントシート
アリアのリヤシート アリアのリヤシート
アリアの荷室 アリアの荷室
bZ4Xのフロントシート bZ4Xのフロントシート
bZ4Xのリヤシート bZ4Xのリヤシート
bZ4Xの荷室 bZ4Xの荷室

こうした結果になったのは、インテリアデザインによる部分が大きい。アリアのインパネは、水平基調のシンプルな面構成だ。できるだけ無駄を無くし、広いスペースの確保や開放感を出す意図を感じる。
対するbZ4Xは、スポーツカーのように包まれるようなコックピット感が強い。インパネデザインも前方に迫ってくるような迫力がある。

また、アリアはEVのメリットであるフラットフロアを活かし、世界初の電動センターコンソールボックスを装備している。このセンターコンソールボックスは、最大150mm前後に移動させることができる。最後方にセットすれば、室内で運転席から助手席に移動することも可能だ。
さらにセンターコンソールボックスには、シフトノブやドライブモードセレクターなどの操作系が装着されている。ドライバーの体形など、好みに合わせてベストな位置に設定できる使い勝手の良さもある。

対するbZ4Xのセンターコンソールは、SUVの力強さをアピールする極太系デザインとなった。普通のガソリン車と同じようなデザインテイストだ。運転席と助手席の間に大きな空間をもつアリアと比べると、開放感は少ない。
後席のスペースも、アリアの方が足元のスペースに余裕があり広い。頭上のスペースも同様だ。
インテリア空間の作り方は、アリアがEVらしい優れたスペース効率を発揮したのに対し、bZ4Xが既存のガソリン車に似たテイストとなった。

アリアはスイッチやダイヤルタイプの操作系を極力排し、エアコンなども静電タイプだ。振動などで操作に対するフィードバックはあるものの、運転中のブラインドタッチは難しく、使い勝手面で少々物足りない。
対するbZ4Xは、エアコン関係の操作系はスイッチタイプなので使いやすい。

ナビなどは両車タッチパネル式だ。タッチパネルのモニターは、ほとんどの人が利き手では無い左手で操作する。揺れる車内では正確にタッチすることが難しく、指先を注視して操作せざるを得ない。前方監視はどうしても疎かになりがちだ。
停車中であれば、タッチ式は便利だが、走行中はダイヤル式が便利で確実だ。タッチ式とダイヤル式の両方を設定して欲しいところだ。

予防安全装備ならbZ4X。運転支援機能ならアリア

6.安全装備の比較

アリアの評価 4.0
bZ4Xの評価 4.5

日産の予防安全装備である「360°セーフティアシスト」に含まれる自動ブレーキ機能は、歩行者と自転車に対応している。
他にも以下の機能が全車に標準装備されている。

  • 後退時車両接近警報
  • 後側方衝突防止支援システム(車線変更時など後側方から接近する車両を検知し、警報や走行車線に戻る力をステアリングに発生させる)
  • アクセルとブレーキの踏み間違え防止機能
  • アラウンドビューモニター(車両に装着されたカメラ映像を俯瞰で見た映像に加工し、死角を無くす)

アラウンドビューモニターは、接近してくる人などの移動物まで検知する。うっかり接触リスクを大幅に低減できる機能なので、安心して乗れる仕様といえる。

アリアの運転支援機能「プロパイロット2.0」はbZ4Xを上回る。ナビで目的地を設定後、高速道路上を走行中にシステムを起動し、条件が整うとハンズオフが可能となる。起動条件は、前方監視し、いつでも運転できる状態であることだ。
カーブでは、まるで運転の上手い人が操縦しているような安定感を誇る。自動車線変更もスイッチひとつでスムースに行ってくれる(ステアリングに手を添えている必要がある)。

「ハンズオフは、それほど大きなメリットなのか?」と、思うかもしれない。しかし実際に10分も走行すれば、そのメリットを十分に感じることができる。ステアリングを握っている状態では、腕を支える力が働き、色々な場所にストレスがかかっている。ハンズオフしてしばらく走行すると、こうしたストレスから解放されてリラックスしながら、さらに疲労軽減もできていることを実感できる。高速道路を頻繁に使う人にとっては、大きなメリットだ。自動運転のような未来感ある移動も楽しめる。こうしたハンズオフ機能は、bZ4Xには用意されていない。

対するトヨタbZ4Xの予防安全機能である自動ブレーキは、アリアを上回る高性能を誇る。昼夜の歩行者と自転車、昼間の自動二輪車も検知可能だ。さらに、右左折時の歩行者や対向車も検知し衝突回避・被害軽減を実現した。

自動ブレーキ機能を活かした運転支援装備が「PDA(プロアクティブドライビングアシスト)」である。

  • 走行中に横断中の歩行者を発見➡自動で減速
  • 路肩にいる歩行者や自転車との距離が近い➡距離を空けるようにステアリング操作をアシスト
  • 街中での走行で、前走車との距離が縮まる➡自動減速
  • アクセルオフ状態➡停止直前まで前走車との車間距離を保ちながらスムースに減速

こうした機能は、安全面で頼りになるのと同時にドライバーの疲労軽減にも役立つ。とても優れた装備だ。運転支援機能と自動ブレーキの機能は、アリアを大きく上回る。

乗り心地重視のアリア。切れのあるスポーティなbZ4X

7.走行性能の比較

アリアの評価 3.5
bZ4Xの評価 4.0

アリアのバッテリー アリアのバッテリー

日産アリアB6のFF(前輪駆動)の出力は、218ps&300Nmだ。車重は1920kgとかなり重く、爆発的な瞬発力をもつEVではない。
だが出力は十分だ。わずかにアクセルを踏むだけで、スルスルと速度を上げていく。モータードライブのスムースな加速が味わえる。高速域も伸びのよい加速で気持ちよく走ることが可能だ。

エンジンが無いので、静粛性も高い。徹底した遮音・吸音設計が施された結果だ。リーフと比べるとその差は大きい。
静寂性が高いからこそ、速度が上がるにつれて、ロードノイズが大きめに聞こえてくるのが悩ましい。ただし、会話の邪魔になるようなことはない。

アリアの乗り心地はソフトで、低・中速域は快適だ。だが車速が速いとタイヤがドタバタし始める。路面のうねりや凸凹を吸収しきれず、ボディがやや揺すられるのだ。揺れの収束にも少し時間がかかった。低速域の乗り心地を重視したことで、高速域で少々バタついたのかもしれない。

アリアB6(FF)のハンドリングは良好だ。
フロア下に大きく重いリチウムイオンバッテリーを搭載したことで、背の高いSUVなのに重心高はかなり低い仕様となった。カーブでは、ピタッと安定した姿勢で駆け抜けることが可能だ。低重心化により得た優れた操縦安定性は、EVならではの特性だ。
サスペンションは乗り心地重視だ。クルマはそれなりに傾くため、右へ左へヒラヒラと軽快に走るようなイメージではない。より楽しい走りは、車体姿勢を最適化した4WDのe-4ORCEに期待したいところだ。

bZ4Xのバッテリー bZ4Xのバッテリー

対するトヨタbZ4Xは、アリアB6(FF)とは異なる味付けだ。
bZ4Xのサスペンション設定はアリアB6(FF)よりもやや硬めだ。20インチタイヤを履くモデルは、タイヤのゴツゴツ感も伝わってくる。
だが中・高速域になるとゴツゴツ感も消え、路面の凹凸もしっかりと吸収し、しなやかさが増す。アリアとは逆の傾向だ。

bZ4XもEVなので、同じく低重心化されている。操縦の安定性は抜群で、ハンドリングはアリアB6(FF)よりもクイックだ。やや硬めのサスペンションでグイグイと軽快に曲がり、楽しく運転できる。アリアB6(FF)よりクルマの傾きも小さく、タイトなS字カーブもヒラヒラと舞うように曲がる。回頭性も高く、ハンドリングマシンのようだ。4WDモデルは、アクセルをグッと踏むとやや後ろから押されるような感覚があり、FRに近い動きもみせた。

bZ4Xの出力は、FFが約204ps&266Nm、4WDが前後合計218ps&338Nmだ。bZ4Xの加速性能もアリア同様、フル加速時に首が痛くなるほどではないが、十分に力強い。加速感は、アリアB6(FF)と同等レベルだ。

アリアB6(FF)とbZ4Xは、目指す走りの方向性が異なる。アリアB6(FF)は、乗り心地や静粛性を重視している。bZ4Xは、SUVというカテゴリーを大きく超えるスポーティな走りとドライバーとの一体感を目指している。
どちらが正解ということはなく、買う側の好みになる。

少々、不安ありのアリア。心配無用のbZ4X

8.リセールバリュー比較

アリアの評価 3.0
bZ4Xの評価 4.0

EV(電気自動車)普及の足枷になっているのが、リセールバリューの低さだ。ガソリン車と比べるとかなり低く、買い替えるときに驚く人も多い。
低リセールバリューの要因は、EVの人気がまだ低いことや、バッテリーの劣化などへの不安が大きいことが挙げられる。
加えて、EVは多額の補助金が出る。実際に支払う車両代金は補助金を除いた金額なので、補助金相当を引いた車両価格で評価されている傾向もあるようだ。

そのため、日産アリアのリセールバリューも先行きが不透明だ。生産が正常化され、新車効果が無くなれば、リーフ並みの低リセールバリューになってしまうことも十分に予想できる。ただ、その一方で、多くのEVがデビューしEV普及が進めば、ガソリン車並みのリセールバリューになる可能性もある。

こうしたEVの低リセールバリューを警戒し、リース販売のみにしたのがトヨタbZ4Xだ。トヨタはハイブリッド車を中心とした高リセールバリュー車が多いため、比較的リーズナブルに乗換えが可能だ。高いリセールバリューを維持してきた背景があるからこそ、トヨタは圧倒的国内シェアナンバー1メーカーになっているとも言える。

それだけに、トヨタはbZ4Xのリセールバリューが低くなることだけは避けたいのだろう。リース販売は、期間が終了するとトヨタ側にクルマが返却される。再販する場合でもオークションを通らないため、トヨタ側が自由に中古車価格を決めることができる。
低リセールバリューになることを阻止できるため、強気の残価設定ができ、リース料金も引き下げることが可能になる。

顧客側から見れば、契約時の支払価格は同じなので、特に損することもないのでリスクも少ない。
トヨタにとっては初のリース専用車だ。失敗しないために、5年目以降はリース価格が年々下がる仕組みも取り入れ、リース購入のメリットをアピールしている。
またリース販売は、税金・整備費・故障修理費などがコミコミの定額制だ。突然の出費が無い定額制なので、生活費の計画も立てやすいのもポイントである。

基本的にメリットが大きいリース販売だが、やや不透明なのが姉妹車関係にあるスバル ソルテラの存在だ。ソルテラは、通常販売される。数年経てば、オークション経由でソルテラが一般の中古車店に並ぶだろう。この時、マーケットではソルテラのリセールバリューがどう評価されるかが大きなポイントだ。
現状のEVのように低リセールバリューになると、bZ4Xの評価も下がるだろう。bZ4Xの中古車価格を高値維持が難しくなると、bZ4Xの残価を下げるしかなくなる。結果、数年後にはリース料がアップする可能性があるからだ。

快適な移動重視ならアリア。EVらしい走る楽しさならbZ4X

9.まとめ・総合評価

日産アリアとトヨタbZ4Xは、ボディサイズや出力、航続距離などは近いスペックだが、キャラクターが異なる。アリアは、運動性能というより乗り心地や静粛性、室内の広さ、先進的といった部分を重視しており、快適に移動できるクルマとしての価値がある。どの領域でもバランスが取れているのがアリアで、万人受けするEVだ。日産ディーラーの急速充電器網は充実しているのも安心だ。

対して、bZ4XはSUVとは思えない軽快なハンドリング、優れ操縦安定性など、EVらしい走る楽しさを重視した。予防安全装備もクラストップレベルの実力だ。走行性能に重きを置いた仕様なので、走りを満喫したいのであればbZ4Xがベストだ。他の領域でもアリアとは大差はない。唯一の弱点を挙げるとすれば、トヨタディーラーの急速充電器網が整っていない点くらいだ。

両車のカラーは全く異なるので、実際に試乗し、どちらのクルマが自分のフィーリングに合っているか?を知ることが重要だ。しっかりと乗り比べてみる必要がある。

アリア bZ4X
総合得点(40点満点) 28.5 27.5
1.燃費 4.0 3.0
2.価格 2.5 2.0
3.購入時の値引きしやすさ 3.0 2.5
4.デザイン 4.0 4.0
5.室内空間と使い勝手 4.5 3.5
6.安全装備 4.0 4.5
7.走行性能 3.5 4.0
8.リセールバリュー 3.0 4.0

注目を集めるEVだが、懸念点はリセールバリューと急速充電器の普及だ。EVは今後の需要やインフラ整備の状況によっては十分選択肢に入ってくるだろう。ただ、数年は様子を見てみたいという方はハイブリッド車への乗り換えも視野に入れてみるのも良いだろう。

日産アリアB6(FF)価格・スペック

日産アリアB6(FF)価格

  • アリアB6(FF) 5,390,000円

日産アリアB6(FF)電費、ボディサイズなどスペック

全長×全幅×全高 4,595mm×1,850mm×1,655mm
ホイールベース 2,775mm
定員 5名
車両重量 1,920kg
タイヤサイズ 235/55R19
最小回転半径 5.4m
サスペンション(フロント/リヤ) ストラット式/マルチリンク式
モーター最高出力 160kW〈218PS〉/5,950-13,000rpm
モーター最大トルク 300N·m〈30.6kgf·m〉/0-4,392rpm
駆動用バッテリー種類 リチウムイオン電池
総電力量 66kWh
WLTCモード 航続距離 470km

トヨタ bZ4X Z(FF)価格・スペック

トヨタbZ4X価格

  • 6,000,000円(FF)
  • 6,500,000円(4WD)

*bZ4Xは、全車リース販売
申込金770,000円
月額利用料(1~4年目)77,990円/月(東京都補助金+CEV補助金適用の場合)

トヨタ bZ4X Z(FF)電費、ボディサイズなどスペック

全長×全幅×全高 4,595mm×1,850mm×1,655mm
ホイールベース 2,775mm
定員 5名
車両重量 1,920kg
タイヤサイズ 235/60R18
最小回転半径 5.6m
サスペンション(フロント/リヤ) ストラット式/ダブルウィッシュボーン式
モーター最高出力 150kW〈203.9PS〉
モーター最大トルク 266N·m<27.1kgf·m>
駆動用バッテリー種類 リチウムイオン電池
総電力量 71.4kWh
WLTCモード 航続距離 559km