2021年7月、二代目スバル BRZがデビューした。初代はトヨタと共同開発され、改良を重ねるにつれスバルらしさが光るスポーツカーとなった。9年ぶりのフルモデルチェンジを経て、ボディ剛性の大幅な向上に成功し、走行性能が格段に進化している。今回は初代と二代目を徹底比較する。
- この記事の目次 CONTENTS
- スバルBRZの歴史・概要
- コンセプト&エクステリアデザイン
- インテリア&安全装備
- 走り、メカニズム
- おすすめは2代目BRZ? それとも初代BRZ?
- 新車値引き交渉のポイント
- スバルBRZ価格・スペック
スバルBRZの歴史・概要
スポーツカーの灯は消さない! 9年振りのフルモデルチェンジ
初代スバルBRZはZC06型とも呼ばれ、2012年にスバルとトヨタで共同開発されたクルマだ。
共同開発となった理由は、コストだ。スポーツカーの人気は低い傾向にある。とくに、より多くの人が楽しめる安価なスポーツカーは利益が出にくく、多くの自動車メーカーが投入を見送っていた。
そんな中、マイノリティなジャンルとはいえ、FRスポーツカーの灯を消してはならいという想いから、トヨタとスバルの共同開発が行われた。共同開発することで、お互いの開発コストは抑えつつ、それぞれのブランドで販売できるので、多少なりにも販売台数の上乗せが期待できるからだ。
こうしてスバルブランドではBRZ、トヨタブランドでは86(2代目はGR86)として販売された。
ハード面では、スバルの技術が多く使われたため、スバルが生産も担った。
BRZという車名の由来は、以下の頭文字を組み合わせたものだ。
- 「BOXERエンジン」のB
- 「Rear Wheel Drive」のR
- 「究極」のZ
スバル車の特長である水平対向エンジンを搭載したスポーツ車への想いを込めたという。
デビュー直後の初代BRZと86は、少しセッティングが異なる。
86はドリフトを意識し過ぎたため、とにかくリヤタイヤがズルズル滑る仕様だ。対するBRZは、リヤのスタビリティを少し高めながら安定性を重視したことで、滑り出しのスライドコントロールを実現した。
搭載されたエンジンは、FA20型と呼ばれる水平対向4気筒2.0Lだ。出力は、6MT車で200ps&205Nmだった。
その後、初代BRZは幾度となく改良が施され熟成されていった。スバルは、STIというレース部分を担う子会社がチューニングを施したモデルを投入した。2015年には限定300台で投入された「BRZ tS」を、2017年には初代BRZの最上級モデルとなる「STI Sport」を発売している。86とは異なる「スバルらしさ」を感じさせてくれる貴重なモデルとなった。
2代目スバルBRZは、2021年7月に9年振りのフルモデルチェンジを実施した。初代は約9年間という長期間販売されたモデルだったが、プラットフォーム(車台)はキャリーオーバーになっていた。そのためフルモデルチェンジには、またしてもコストという大きな壁があった。
しかし、スバルはSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の知見を活かし、ボディ剛性の大幅な向上に成功し、抜群のハンドリングと操縦安定性を得た。
搭載エンジンは、排気量が400cc増え2.4Lとなった。排気量が増えたことで、より乗りやすくなると同時に、初代BRZを大幅に超える速さも手に入れている。2021年10月現在はデビュー直後なので、よりスバル車らしさを表現するであろうSTIモデルは、まだ投入されていない。
コンセプト&エクステリアデザイン
体幹が強くなったような力強さをもった2代目BRZ
初代スバルBRZのデザインは、低重心でスポーツカーらしさがあった。力強いリヤフェンダーの膨らみで、FR(後輪駆動)車らしさもアピールしている。また、何度か改良が加えられたことで、後期モデルは古さを感じさせない。スバルは、「走りの愉しさ」を直感させるデザインを目指したという。
対する2代目BRZでは、ひと目見ただけで高い走行性能を予感させる、躍動感を持ったスポーツカーらしいデザインに仕上がった。
全体的に重厚感があり、大人っぽく落ち着いた雰囲気があるスタイリングだ。中高年ドライバーでも違和感なく乗れるデザインになっている。
その上で、ボディ全体の面の張りが強くなっている。強い体幹のような内面の力強さを感じさせる。1クラス上のモデルになったような高級感も兼ね備えている。
そして、あえてエモーショナルなキャラクターラインは抑えているのも特徴だ。飽きのこないデザインとなっている。
エクステリアデザインを比較すると、2代目BRZが完全に勝っている。初代BRZと2代目BRZを比べると、初代BRZは線の細さを感じる。2代目BRZのもつ力強さや存在感は、スポーツカーらしいオーラをもある。
インテリア&安全装備
AT車の差は歴然! 2代目は待望のアイサイトが標準装備化
初代、2代目スバルBRZ共に、インパネは水平基調だ。ダッシュボードはフラットなデザインで視界がスッキリし、ドライビングのしやすさを提供している。2代目BRZの方が、よりスッキリとしたシンプルさが際立っている。
運転中の視界にこだわったのはよいのだが、初代・2代目BRZ共に、モニターがセンターコンソール中央付近にある。モニター類は、視線移動が少ない方がよいので、エアコンの吹き出し口を移動してでも、もう少し高い位置にあった方が見やすかった。
2代目BRZでは、デジタルスピードメーターと7インチTFTカラー液晶のメーターになり、先進感がアップした。情報量も増え、ドライバーが必要とする表示の変更が可能となっている。しかし、メーターの表示文字が小さく、瞬時に判別するのが難しいのが残念だ。これなら、むしろ初代BRZのアナログメーターの方が見やすい。
インテリアの質感も2代目BRZは若干アップした。それでも、上質というレベルにはあと一歩だ。2代目BRZの外観デザインは高級感が出て大人のスポーツカーらしくなった。しかしレッドステッチを多用しているため、インテリアは少し子供っぽさを感じさせる。このした手法は、初代BRZと同じであまり進化がない。
初代BRZには、歩行者検知式自動ブレーキなどの予防安全装備は用意されていない。
2代目BRZのAT車には、歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備パッケージ「アイサイト」が装備された。しかし、最新のアイサイトではないので、機能や性能はレヴォーグと比べる大幅に物足りないものとなっている。
また、残念ながらMT車にはアイサイトは装備されていない。公道を走る以上、スポーツカーだからといって予防安全装備を装着しなくてはいいという理由はない。マツダ ロードスターは、MT&AT問わず早くから昼夜対応の歩行者検知式自動ブレーキを標準装備している。2代目BRZも早急に最新のアイサイト装備に期待したい。
走り、メカニズム
走行性能は2代目BRZの圧勝
2代目スバルBRZの走行性能は、初代BRZから大幅に進化した。大きな進化ポイントは2つある。
1つ目は、キャリーオーバーながら、熟成されたプラットフォームだ。スバル独自の最新プラットフォームであるSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の開発で得たノウハウを転用した。インナーフレーム構造や構造用接着剤などの採用により、ボディ剛性を大幅に向上させている。初代BRZ比で、横曲げ剛性を約60%、ねじり剛性を約50%と、もはや別物状態ともいえる改良を施した。ボディ剛性のアップは、ハンドリングや乗り心地、操縦安定性など走行性能に大きな影響を与えた。
ルーフ、フード、フロントフェンダーの素材には軽量なアルミを採用した。高い場所にある部品の軽量化は、車体の低重心化に大きく貢献し、運動性能がさらに向上した。
プラットフォームの改良と低重心化によって、2代目BRZの操縦安定性は非常に高くなった。初代BRZではすぐに音を上げるようなカーブでも、しっかりとタイヤが路面をつかんでいる。旋回スピードは、初代BRZとは比べ物にならいくらい速く安定感がある。
さらに、タイヤサイズが215/40R18の「ミシュラン パイロットスポーツ4」を履くモデルは、ややタイヤを引っ張り気味にしてセットされ、横剛性を高めた。
この組み合わせは絶品だ。タイヤの滑り出しはとても穏やかで、ドライバーに不安感を与えることなくゆっくりと滑り出す。そのまま豪快にアクセルを踏んで、派手にドリフトしてみても楽しい。アクセルを微妙にコントロールして、タイムを削るような走りもよい。ドライバー次第で、走りを楽しめる幅が広くなっている。
2代目BRZを買うなら、18インチホイールを装備したSグレードがおすすめだ。それでいて、乗り心地も初代BRZにはないしなやかさを得ていて、なかなか快適だ。
走行性能の大きな進化、2つ目はFA24型となった2.4L水平対向エンジンだ。初代BRZのボアアップ版のように見えるが、ほぼ新設計に近いほど手が加えられている。エンジン単体でも軽量化され、運動性能に貢献した。
出力は、235ps&250Nmだ。初代BRZ比で、28ps&38Nmアップしている。高回転域まで気持ちよく回り、パンチもある。
トルクの増強は乗りやすさにつながっている。初代BRZなら2速で走るコーナーでも、2代目BRZなら3速でもOKなのだ。トヨタGR86のデータでは、0-100km/h加速は初代が7.4秒なのに対し、2代目は6.3秒と1秒以上短くなっている。2代目BRZもほぼ同じと予想できる。
初代BRZユーザーには残念だが、走行性能面を比べると、2代目BRZとあまりに大きな差になっている。
おすすめは2代目BRZ? それとも初代BRZ?
ほぼすべての面で初代に勝る2代目BRZ
9年振りのフルモデルチェンジを経たため、その進化幅は大きい。運動性能に関しては、初代BRZが2代目BRZを超えているところはなく、まるで違うクルマになっている。強いて言うのなら、走行中の2代目BRZのデジタルスピードメーターと7インチTFTカラー液晶は、文字が小さく少々見にくいくらいだ。この部分に関しては、瞬時に分かるアナログメーターの方がよい。基本的におすすめなのは2代目BRZとなる。
本来なら、安価な中古車BRZを買って、自分好みのカスタマイズをするというのもおすすめしたいところだ。ところが、初代BRZのリセールバリューはかなり高い。
中古車初代BRZでおすすめしたいのは、2016年7月以降の大幅改良モデルだ。2017年式の中古車相場は、230~300万円だ。Sグレードが新車で約300万円、GTグレードが約330万円だったので、Sグレードでも最安値で約23%しか価格が下がっていない。GTの高価格帯の中古車になると、約10%しか安くなっていないのだ。こうなると、やはり新車を選んだ方がよい。
中古車の初代BRZは、まだ様子を見ていたほうがよい。というのも、2代目BRZがデビューしたのは、2021年7月末なので、下取りに入った初代BRZがまだ中古車マーケットに流通していない。需要より供給量が増えてくると、中古車価格は下がる傾向がある。下取りなどに入った初代BRZが、中古車マーケットにもっと多く出回るようになると、少し価格が下がってくると思われる。初代BRZの中古車はしばらく待ってから購入するのが賢い買い方といえる。
新車値引き交渉のポイント
値引きゼロは覚悟!?
2代目スバルBRZは、登場したばかりの新型車だ。しかも、趣味性が高いモデルなので、普通に商談すれば値引きはゼロベースとなる。状況によって、お付き合い程度で5万円前後の値引きは出るかもしれない。
もちろん、何もしなければ値引きはない。少なくとも、ライバル関係にあるトヨタGR86と競合させるといいだろう。先にGR86の見積りを取り、スバルの店舗に向かうと効果的だ。あくまで、本命はGR86のように装って商談すれば、値引き額がアップする可能性がある。
ただ、どちらも大きな値引き額になる可能性は低いので、値引き交渉が進まなくなったら、ディーラーオプションのサービスや値引きに切り替えるといいだろう。
競合させる相手はGR86だけでなく、マツダ ロードスターや中古車の日産フェアレディZなどでもよい。なるべく、同じ価格帯にして、安い方をよいという姿勢で商談するといい。
スバルBRZ価格・スペック
スバルBRZ 価格
6MT | 6AT | |
---|---|---|
R | 3,080,000円 | 3,245,000円 |
S | 3,267,000円 | 3,432,000円 |
スバルBRZ スペック
スバルBRZ代表グレード | BRZ S |
---|---|
全長×全幅×全高 | 4265mm×1775mm×1310mm |
ホイールベース | 2575mm |
トレッド[前/後] | 1520mm/1550mm |
車両重量 | 1270kg(6MT)/1290kg(6AT) |
エンジン | FA24型 2.4L 水平対向4気筒 |
総排気量 | 2387cc |
最高出力 | 173kW(235PS)/7000rpm |
最大トルク | 250 N・m(25.5 kgf・m)/3700 rpm |
燃費(WLTCモード) | 11.9km/L(6MT)/11.7km/L(6AT) |
トランスミッション | 6MT/6AT |
駆動方式 | RWD(後輪駆動) |
サスペンション形式[前/後] | ストラット/ダブルウィッシュボーン |
タイヤサイズ | 215/40R18 |
関連ページ
BRZのカタログ情報
- 現行モデル
- 令和3年8月(2021年8月)〜現在
- 新車時価格
- 308.0万円〜381.7万円
BRZの在庫が現在36件あります
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