2代目トヨタ アクア、4代目ホンダ フィット車種比較

2021年7月にフルモデルチェンジし、2代目となったトヨタ アクア。約10年振りのフルモデルチェンジということもあり、大幅に進化した。アクアのハイブリッドシステムは、同じクラスのヤリスと基本的に同じだ。しかし、ハイブリッドシステムの要となる駆動用バッテリーが異なる。アクアには新開発の「バイポーラ型ニッケル水素電池」が世界初採用された 。
そんなアクアの強力なライバル関係にあるのが、ホンダ フィットだ。フィットも2020年2月にフルモデルチェンジしたばかりのモデルだ。
アクアとフィットは、目指す方向性が似ているモデル。今回は、日々使うコンパクトカーとしての実用性を重視した2台を徹底比較する。

この記事の目次 CONTENTS
トヨタ アクアの特徴
ホンダ フィット(e:HEV)の特徴
1.燃費比較
2.価格比較
3.購入時の値引き術
4.デザイン比較
5.室内空間と使い勝手
6.安全装備の比較
7.走行性能の比較
8.リセールバリュー比較
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

トヨタ アクアの特徴

2代目トヨタ アクアは、約10年振りのフルモデルチェンジということもあり、ほぼすべてが刷新された。
注目ポイントは、車両の運動性能を司るプラットフォーム(車台)と、ハイブリッドシステムの要となるバッテリーだ。

2代目トヨタアクア全体像 2代目トヨタ アクア

2代目トヨタ アクアのプラットフォームは、ヤリスと同じGA-Bが採用された 。GA-Bプラットフォームは、低重心・軽量がウリだ。運動性能や乗り心地は、クラストップレベルのものとなっている。
しかも、ヤリス用プラットフォームを単純に採用しているのではない。アクアの目指す実用性に合わせてホイールベースを伸ばし、主に後席スペースを広くしている。これにより、日本の道路環境に合わせたコンパクトなボディサイズのまま、座席・荷室空間を拡大して利便性を向上させた。
ハイブリッドシステムも基本的にはヤリスと同じだが、駆動用バッテリーが新開発された。 このバッテリーは「バイポーラ型ニッケル水素電池」と呼ばれ、世界初搭載 である。初代アクアのニッケル水素電池と比べ、出力が約2倍となり低速からの加速がスムーズになった。駆動用バッテリーの大幅進化により、アクアはモーターのみで走れる速度領域が大幅に広がった。燃費は従来比で約2割向上 され、世界トップレベルの燃費を実現している。

ホンダ フィット(e:HEV)の特徴

2020年2月にフルモデルチェンジし4代目となったホンダ フィット。プラットフォーム(車台)は3代目フィットのキャリーオーバーだが、デザインやハイブリッドシステムは刷新された。

4代目ホンダフィット全体像 4代目ホンダ フィット

とくに4代目ホンダ フィットの乗り味やデザインの方向性は、3代目フィットとは全く異なる。3代目フィットの販売不振を受けて、大きくイメージチェンジしたのだ。
まず、乗り味。3代目フィットはやや硬めでスポーティな走りだったが、4代目フィットでは、ゆったりとした乗り心地に変更されている。 3代目フィットは燃費 にこだわったコンセプトだったが、4代目フィットでは、「心地よさ」にこだわった結果だ。
3代目フィットの外観デザインは、エッジの効いたシャープなものだった。しかし、4代目フィットでは、柔らかな面構成で優しいデザインに変更されている。
メカニズム面では、1モーター式のi-DCDから2モーター式のe:HEVに変更された。燃費性能を大幅に伸ばしている。

1.燃費比較

アクアの評価は 4.5
フィットの評価は 3.5

アクアの燃費は以下の通り
・アクア(1.5Lハイブリッド) 33.6~35.8㎞/L(FF、WLTCモード)

ホンダ フィット(e:HEV)の燃費は以下の通り
・フィット(1.5Lハイブリッド) 27.2~29.4㎞/L(FF、WLTCモード)

車重が重いフィットは、燃費でアクアに大差を付けられた

トヨタ アクアとホンダ フィットの燃費を比較すると、20%弱の燃費差が付いた。
トヨタ アクアとホンダ フィットは、ハイブリッドシステムの要である駆動用バッテリーが異なっている。 アクアは新開発の「バイポーラ型ニッケル水素電池」が搭載され、フィットはリチウムイオン電池が搭載されている。また、ハイブリッドシステムも、アクアのTHSⅡとフィットのe:HEVとでは仕組みが大きく異なる。
ただ、こうした大きな燃費差となったのは、駆動用バッテリーやハイブリッドシステムの差というよりも、車重が大きな影響を与えている。
燃費差の主要因はアクアとフィットの車重差にある。アクアの車重は、1,080~1,130㎏。これに対して、フィットは1,180~1,200㎏。フィットの方が70~100㎏も車重が重いことが分かる。
フィットがこうした車重になっているのは、3代目フィットのプラットフォームをキャリーオーバーして使用していることだ。大幅改良したとはいえ、やや設計の古いフィットのプラットフォームとアクアの最新のプラットフォームGA-Bとでは、軽量化という面では大きな差になっている。

2.価格比較

アクアの評価は 3.0
フィットの評価は 3.0

価格は、ほぼ互角。自分が欲しい装備の有無で選びたい

アクアとフィットの価格を比較すると同一価格帯であり、まさにライバル関係にあることがよく分かる。
トヨタ アクアの価格は、最廉価のBグレードで1,980,000円。最上級グレードのZの価格は、2,400,000円だ。
ホンダ フィットの価格は、エントリーグレードのベーシックで1,997,600円。最上級グレードのリュクスの価格は2,426,600円だ。

最上級グレードでアクアとフィットを比較する。アクアに標準装備されており、フィットに装備されていない主な装備はディスプレイオーディオ(ホンダコネクトディスプレイ)、AC100V・1500Wアクセサリーコンセントなど。

フィットに標準装備されており、アクアに装備されていない主な装備は、16インチアルミホイール、VGR、シートヒーター、本革シート、ワイヤレス充電器、オートブレーキホールドなど。
アクアとフィットは、それぞれ微妙に装備が異なっていて、一長一短といった印象だ。価格的には、ややフィットの方が安価な印象を受ける。

ナビオプションを考慮したアクアとフィットの価格比較では、アクアの方に安価な印象を受ける。
アクアの場合、ディスプレイオーディオが標準装備されている。スマートフォンのナビを使うのであれば、オプションのナビキットを必要としない。

フィットの場合、モニターそのものが無いのでオプションのホンダコネクトディスプレイを選択する。もしくはディーラーオプションのナビを選ばなくてはならない。

アクアとフィットそれぞれに装備してほしいアイテムがある。
フィットにも装備してほしいアイテムとしてAC100V・1500Wアクセサリーコンセントが挙げられる。AC100V・1500Wアクセサリーコンセントは、災害による停電時に車が発電機となり1500Wまでの家電製品に給電できる。

アクアで装備してほしいアイテムとして、電動パーキングブレーキがあげられる。アクアは、軽自動車でも標準装備化されてきている電動パーキングブレーキも装備されておらず、未だ足踏み式パーキングブレーキが採用されている。信号などでの停止時に、ブレーキを踏み続ける必要がないオートブレーキホールドが用意されていない。

車選びのポイントは、価格が安いか高いかだけでなく自分が欲しい装備の有無も考慮して選ぶとよい。

3.購入時の値引き術

アクアの評価は 2.5
フィットの評価は 3.5

ライバル車との価格比較に加え、納期を駆け引きに使って大幅値引きを引き出したい

2021年9月現在、 半導体不足や部品供給先であるアジア圏のコロナ蔓延も重なり、すべての自動車メーカーで予定した通りの生産ができていない。トヨタ アクアとホンダ フィットもバックオーダーを抱え、いつ納車できるか分からない状態が続いている。

新車の値引き交渉は、ライバル車の見積りを取り、競合させることが基本だ。アクアとフィットであれば、日産ノートやヤリスの見積りを取るとよい。ただ、納期が長くなっているので、なかなか値引き交渉に乗ってこないパターンも考えられる。値引きの競合をさせるだけでなく、納期も交渉材料にして商談するとよい。

アクアを購入する場合の値引き交渉の例を挙げる。ポイントは「ライバル車との納期比較」「ナビキットの納期」の2点だ。
アクアの納期が3ヶ月、ディーラーオプションのナビキットの納期は、さらに数ヶ月かかるとする。アクアは新型車なので、値引きはゼロベース。そこで、「ライバル車のフィットの納期の方が短い」と駆け引きに使ってみるとよい。営業マンが「納期は長いが、待ってくれませんか?」と言ってきた場合、「長く待つ分、もう少し値引きしてくれないか?」と交渉してみよう。
更なる値引き対応をしてくれる可能性が高くなる場合がある。

例えば、ナビキットの納期が長い場合、「さらに値引きしてくれたら、ナビキット無しで一旦納車でもよい」と伝えるのもよい。営業マンとお店は、クルマを登録して初めて実績となるからだ。ナビキットは、ディーラーオプションなので、後からでも装着可能だ。アクアのディスプレイオーディオは、スマートフォンのナビが使えるので、それほど困ることもない。

ディーラーがアクアの値引き交渉に応じてくれない場合、競合させていた中の車種で最も値引きしてくれたクルマを買えばよい。どうしてもアクアを購入したい場合は、経営が異なる他のトヨタディーラーで再び商談をしよう。

フィットが本命の場合も、ライバル車と競合させることが基本だ。
「本当はアクアが欲しいけど納期が長くて・・・」と話してみよう。営業マンが「フィットの納期はアクアより短いので、買ってくれませんか?」と、来ればチャンスだ。「値引き次第では、フィットに決めてもよい」とすれば、更なる値引きが期待できる。

新車の値引き交渉だけでなく、下取り車の価格も大切だ。買取店への査定も考慮してより良い新車購入をしよう。
新車を大幅値引きした場合、下取り車の価格を下げることも十分に考えられる。新車の値引き額想定が出たら、下取り車ありと無しの見積りをもらうこと。そのうえで、買取店へ行き査定してもらうとよい。

2店舗くらいで査定してもらえば、下取り車の相場価格帯が分かる。そのうえで、最も高い価格を付けたところに売却すればよい。

4.デザイン比較

アクアの評価は 4.0
フィットの評価は 4.0

外観は力強さがあるアクア。インテリアは視界のよいフィット

2代目トヨタ アクアは「Harmo-tech」(知性・感性を刺激する、人に寄り添う先進)をコンセプトとし、上質・シンプル・クラスレスなデザインを目指して開発された。
アクの強いデザインではないので、幅の広い層に高く評価されるだろう。初代アクアの面影も残しながら、塊感があり面の張りがあるデザインとなり力強さが大幅に増した。また、ややリヤフェンダーを張り出させたデザインとし、ワイド感と安定感が表現されている。筋肉質で躍動感のあるシルエットで存在感のあるデザインは、なかなか秀逸だ。

2代目トヨタ アクア フロントフェイス トヨタ アクア フロントフェイス

4代目ホンダ フィットは、機能と心地よさを無駄のない美しさで包み込む、「用の美」に通じる新たなスモールカーの創造をコンセプトに開発された。
フィットの外観デザインは、塊そのものの造形美とぬくもりを感じさせる表情である。一緒にいたくなる安心感と親近感が表現されている。
全体的にスッキリ感のあるシルエットで、フロントフェイスはクリっとした優しいまなざしのヘッドライトで親近感がある。リヤビューは、ドッシリとした安定感のあるデザインだ。

4代目ホンダ フィット フロントフェイス ホンダ フィット フロントフェイス

外観デザインは、アクアとフィットを比較するとほぼ互角といった印象である。フィットはホンダ独自のセンタータンクレイアウトが採用された。そのため、やや腰高感があるデザインだ。

インテリアを比較すると、視界の良さを重視しながら、斬新さを感じさせるフィットのインテリアデザインが上回る。両車共に、ソフトパッドを積極的に使うなど、質感はほぼ互角といったところだ。

トヨタ アクアのインテリアは、10.5インチ大型ディスプレイオーディオ機能部分を集約している。トヨタは、シンプルさを表現したとするが、意外なほどゴチャゴチャしたように見える。しかも助手席側にあるアッパーボックスには、フローティング風のデザインが採用されている。なかなかキレイなデザインで個性を感じさせる。ただ、ダッシュボードからドアパネルへと流れるラインに段差があり、インテリアに包まれる一体感に欠けているような印象がある。

2代目トヨタ アクア インテリア トヨタ アクア インテリア

フィットのインテリアは、視界の良さがもたらす心地よさと安心感を目指し開発された。斬新なデザインと機能が、上手く融合されている。
Aピラーを極細化された。ダッシュボードは水平に切り取ったようなデザインとされている。、機能面としてメーターはバイザーレスメーターが採用された。

4代目ホンダ フィット インテリア ホンダ フィット インテリア

5.室内空間と使い勝手

アクアの評価は 3.5
フィットの評価は 4.0

クラストップレベルの室内空間と使い勝手を誇るフィット

 

アクアとフィットの室内空間を比較すると、フィットの方が勝る印象だ。
トヨタ アクアは、ヤリスと共通の最新GA-Bプラットフォーム(車台)が採用されている。ただ、アクアではGA-Bプラットフォームのホイールベースをヤリス比で+50mm伸ばし2,600mmとされている。その結果、後席の空間は初代アクアやヤリスと比べると少し広い。

2代目トヨタ アクア 後部座席 トヨタ アクア 後部座席

ホンダ フィットは、先代フィットのプラットフォームを改良して使用されている。開発が新しいアクアの方が、室内スペースに優れているはずだが、後席スペースなど、室内空間はフィットが上回っている。この理由は、プラットフォームのコンセプトが異なるからだ。

フィットのプラットフォームは、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトが採用されており、室内スペースを最大化することを目的に開発されている。

一方、アクアのGA-Bプラットフォームのコンセプトは、運動性能をアップさせるための低重心化と軽量化だ。軽量化は低燃費化にも貢献する。こうした開発コンセプトが異なるため、フィットのプラットフォームは先代モデルのものを使用していても、室内空間が広いのだ。

4代目ホンダ フィット 後部座席 ホンダ フィット 後部座席

また、荷室の実用面ではアクア比べフィットが勝る印象だ。荷室容量の比較をすると、アクアが278Lに対して、フィットは427Lと大きな差だ。

また、フィットのシートアレンジは後席を跳ね上げ、背の高い荷物と立てて積載できるチップアップシートが装備されている。加えて後席が一旦、沈み込みフラットな荷室となるダイブダウン機能もある。

2代目アクア、4代目フィット 荷室比較 荷室比較。左:トヨタ アクア、右:ホンダ フィット

アクアとフィットの小回り性能をホイールの最小回転半径から比較する。小回り性能は、ほぼ互角といったところだ。
最小回転半径はコンパクトカーには重要な小回り性能の指標だ。
アクアは、15インチホイール装着車がメインだ。フィットは、16インチホイール車がメインである。

アクアが15インチホイール装着車で最小回転半径は5.2mだ。16インチアルミホイール装着車では、5.3mだ。
フィットは、15インチホイール装着車で最小回転半径は4.9mで、16インチホイール装着車では5.2m(クロスターのみ5.0m)だ。

アクアとフィットどちらも、Bセグメントのコンパクトカーとしては物足りない最小回転半径の数値だ。このクラスなら、5.0mを切りたいところだ。ひとクラス上のフォルクスワーゲン ゴルフは、5.1mとアクアやフィットより小回りが利く。また、同じクラスのライバル車である日産ノートは、15インチホイール装着車がメインで、最小回転半径は4.9mと小さい。

コネクティッド系でアクアとフィットを比較する。
アクアのディスプレイサイズは10.5インチもしくは7インチ。フィットは、9インチだ。7インチだと少々小さく感じるかもしれない。
どちらもタッチスクリーンだが、大多数の人が利き手の逆である左手を使い操作するため、センタコンソールなどに、ダイヤル式などブライド操作が可能な操作系がもうひとつ欲しい。

2代目トヨタ アクア、4代目ホンダ フィットインパネデザイン比較 インパネデザイン比較。左:トヨタ アクア、右:ホンダ フィット

アクアで高く評価したいのが、AC100V・1500Wアクセサリーコンセントの全車標準装備化だ。

災害などの停電時、キャンプや車中泊時に使える便利機能だ。同じハイブリッド車ながら、フィットには似たような機能が用意されていない。

AC100V・1500Wアクセサリーコンセントは、アクアが発電機となり家電製品に電力を供給する装備だ。。ガソリンが無くなるまで電力供給が可能だ。スマートフォンの充電はもちろん、テレビや冷蔵庫、レンジ、ポット、照明などが使えるようになる。

6.安全装備の比較

アクアの評価は 4.5
フィットの評価は 3.5

国内トップレベルの予防安全性能をもつアクア

アクアとフィットの予防安全性能について比較をする。
交差点内での衝突回避性能ではアクアが優れた性能を持っているが、それぞれローテクなのに標準装備化されていないものがある。

・アクア予防安全装備 例

標準装備 自動(被害軽減)ブレーキ
標準装備 全車速追従式クルーズコントロール
標準装備 車線維持機能のレーントレーシングアシスト
標準装備 オートマチックハイビーム
標準装備 ロードサインアシスト
オプション設定 ブラインドスポットモニター

トヨタ アクアに装備されている予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」は、コンパクトカーの枠を超え、国産車の中でもトップレベルの性能をもつ。

重要な自動ブレーキ関連では、昼夜の歩行者と昼間の自転車に対応している。さらに、右左折時の歩行者、右折時の対向車にも対応し衝突回避・被害軽減してくれる。交差点内での事故は、非常に多いだけに、事故リスク軽減に大きなメリットとなる。こうした機能がある国産車まだ少ない。その他、全車速追従式クルーズコントロールや車線維持機能のレーントレーシングアシスト、オートマチックハイビーム、ロードサインアシストが標準装備だ。
ただ、安全装備のオプション設定が多く、機能追加で金額がかさばる懸念がある。

アクアではオプション設定で、他社車種で標準装備されている一例をあげる。ブラインドスポットモニターだ。後側方車両接近警報であるブラインドスポットモニターは、車線変更時など日々頼りになる機能だ。ローテクなので、マツダ デミオには標準装備化されている。

しかし、アクアではオプション設定だ。アクセルとブレーキの踏み間違え防止機能をもつパーキングサポートブレーキとセットでオプション設定となっている。
アクアのブラインドスポットモニターは高機能化されている。トヨタコンパクトカー初採用になる停車時警報機能がプラスされた。停車時警報機能は、停車時に後方を確認せずにドアを開けようとしたときに、側方を走行する自転車やバイクなどとの接触を避ける機能だ。インジケーターの点滅や警報音で注意喚起をする。

フィットの予防安全性能パッケージである「ホンダセンシング」の自動ブレーキは、歩行者と自転車には対応しているものの、アクアのような交差点内での衝突回避機能はない。その他の機能においては、同等レベルにある。ただ、後側方車両接近警報や後退時車両接近警報などの機能は設定されていない。ローテクな機能なのに、残念なポイントだ。

7.走行性能の比較

アクアの評価は 4.5
フィットの評価は 4.0

両車乗り心地重視仕様だが、運動性能はアクアが上回る

トヨタ アクアとホンダ フィットの走行性能は、「乗り心地重視であること」「静粛性の高さ」は似ている。

・アクサとフィットの走行性能

  アクア フィット
乗り心地
静粛性
操作性、スポーティさ
フロントタイヤの接地感

まず、乗り心地重視については両車共に、サスペンションがよく動き、路面の凹凸の衝撃を見事に吸収する。コンパクトなクルマながら、大きな凹凸も苦にしない快適さを誇る。とくに、アクアの最上級グレードであるZにはフロントショックアブソーバーにスウィングバルブが採用されている。わずかな凹凸やボディの動きに対して、最適な減衰力を発生し、より快適な乗り心地になっている。

次に、静粛性の高さは、EV走行しているときに感じられる。非常に高いレベルの静粛性で、高級車に乗っている気分になる。また、速度が上がりエンジンが始動している時も、エンジンの存在感はあまりなく優れた静粛性を維持する。こうした傾向は、アクアとフィット共に同じなのだが、僅かだがアクアが勝っている印象だ。

アクアとフィットでは大きな違いを感じるときは、カーブでステアリングを切った瞬間だ。
フィットは、カーブでそれなりにクルマが傾く。
アクアは、フラットな姿勢を維持したままカーブを抜けていく。この差は、やはりプラットフォームのコンセプトが異なることが要因と考えられる。

フィットは、居住性を重視したセンタータンクレイアウトのため、フロア高がやや高く重心も高くなる。
一方アクアのGA-Bプラットフォームは、とにかく低重心で軽量、前後重量バランスもよい。こうした設計のため、乗り心地重視のサスペンションセッティングながら、かなりフラットな姿勢を維持できる。操縦安定性やスポーティさという面では、やはりアクアが上回る。
ただ、アクアはカーブなどでのステアリングインフォメーションが少ない。フロントタイヤの接地感などが、あまり伝わってこない。この部分は、フィットの方がやや上だ。

力強さと言う点では、アクサとフィットはほぼ互角だ。
アクアは、かなりモーターの存在感が強くなった。アクセルをグッと踏み込むと、イッキにモーターのトルクで車体をグイっと押し出す。
フィットは、あえてモーターのトルク感を消した仕様。自然でスムースな加速感を目指した。

8.リセールバリュー比較

アクアの評価は 3.5
フィットの評価は 3.0

高値が期待できるアクア。今後の人気次第なフィット

リセールバリューが低いと言われると、完成度の低いクルマであるとイメージするかもしれないが、そうではない。中古車は、需要と供給の関係で価格が決まる。
2代目アクアと4代目フィットのリセールバリューを予想してみた。2代目アクアは高値が期待でき、4代目フィットは今後の人気次第だろう。

初代アクアのリセールバリューの経緯と2代目アクアのリセールバリューの予想を解説する。
初代トヨタ アクアは、大ヒットモデルで何度も月間登録車新車販売台数ナンバー1に輝いた。しかも、約10年も販売されている。一般的に新車で売れたモデルは、中古車でも人気が高くリセールバリューも高くなる。ところが、アクアはあまりに売れた上に、約10年も販売されたことで、中古車流通量が極めて多いモデルとなった。そのため、中古車での需要より供給台数が多くなり、人気モデルながら一般的なリセールバリューとなった経緯がある。

2代目アクアは、同じセグメントにヤリスがあるため、初代アクアほどの販売台数にはならないと予想できる。そのため、中古車流通量も適正になるだろう。中古車流通量も適正になれば、トヨタ車はリセールバリューが高い傾向にあることや、アクアの人気が高いこともあり2代目アクアのリセールバリューは、初代アクアを超える高値が期待できる。
高いリセールバリューが期待できるアクアで、さらにプラス査定となりそうなグレードは、やはり最上級グレードのZ。
プラス査定が期待できるオプションは、パノラミックビューモニター、トヨタチームメイト、純正ナビキット、合成皮革パッケージなどだ。

3代目フィットのリセールバリューの経緯と4代目フィットのリセールバリューの予想を解説する。
3代目フィットハイブリッドは、販売が低迷したこともあり、リセールバリューは平均的で初代アクア並みだった。そのため、4代目フィットのリセールバリューは、今後の人気次第といったところ。今のところ、半導体不足などで販売台数は不調。この状況が長く続くと3代目アクア並み、もしくはそれ以下になる可能性も高い。

フィットで高いリセールバリューが期待できるグレードは、最上級グレードのリュクス。スポーツグレードのモデューロX、SUVテイストのクロスターだろう。プラス査定が期待できるオプションは、ホンダコネクトディスプレイとなる。

 

中古車を買う場合、完成度が高く、リセールバリューが低い車を選ぶことは、賢いクルマ選びだ。
完成度の低いクルマであっても、リセールバリューが高くなることもあるのだ。逆に、完成度の高いクルマなのに、あまり人気がないため、リセールバリューが低くなることもよくあることだ。
完成度が高いクルマなのに人気が無く、リセールバリューが低ければ、中古車価格も低くなる。こうしたクルマは中古車らしい買い得感がある。

9.まとめ・総合評価

総合力のアクア、使い勝手の良さが光るフィット

総合力という面では、アクアはフィットを上回る。
アクアは予防安全性能、燃費、使い勝手、走行性能など、ほぼすべての面で高い完成度を誇っている。クラストップレベルと言えるほどだ。とくに、予防安全性能や燃費、走行性能はアクアがフィットより一枚上手となる部分だ。総合力が高いので、誰にでもオススメできるモデルである。

また、ハイブリッド車は発電できるというメリットを生かし、AC100V・1500Wのアクセサリーコンセントが全車標準装備されているのも高評価ポイントだ。災害による停電時などでは、クルマが発電機になり多くの家電製品に電力を供給できると言う点で、クルマは単なる移動のための道具だけではない、新たな価値を提案している。

室内の広さや使い勝手が重要ならば、フィットを選択するのがよい。フィットが勝っているのは室内や荷室の広さ、後席のシートアレンジといった使い勝手部分だ。

では「私なら何を選択するか」というと、アクアを選ぶ。室内の広さは魅力だが、安全にはかえられない。交差点内での衝突リスクも軽減してくれるアクアのトヨタセーフティセンスは秀逸だ。

グレードは、最も乗り心地重視の仕様になっている最上級グレードのZを選択する。予防安全性能は重要なので、ブラインドスポットモニター+パーキングブレーキサポートとパノラミックビューモニターをオプション選択。豪華装備では、運転席パワーシートとシートヒーター、合成皮革シートなどがセットになった合成皮革パッケージも選択する。

  アクア フィット
総合得点(40点) 30.0点 28.5点
1.燃費 4.5点 3.5点
2.価格 3.0点 3.0点
3.購入時の値引き術 2.5点 3.5点
4.デザイン 4.0点 4.0点
5.室内空間と使い勝手 3.5点 4.0点
6.安全整備 4.5点 3.5点
7.走行性能 4.5点 4.0点
8.リセールバリュー 3.5点 3.0点