スバル レヴォーグ新旧比較レビュー!最新SGPを得て、劇的進化

スバル レヴォーグの新旧比較レビュー。
2014年にほぼ日本専用のワゴンモデルとして登場し、走行性能やアイサイトなど、クラス平均以上のレベルをキープする初代レヴォーグ。
そしてその初代を、予防安全装備のアイサイトや運動性能など、ほぼすべての面で大きく凌駕して登場した2代目レヴォーグ。
今回は初代と2代目を、内装・外装、安全装備面で比較評価する。

この記事の目次 CONTENTS
スバル レヴォーグの歴史・概要
コンセプト&外装デザイン
予防安全装備
内装
走り、メカニズム
おすすめは初代?それとも、2代目?
新車値引き交渉のポイント
スバル レヴォーグの価格・スペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

スバル レヴォーグの歴史・概要

初代レヴォーグは、2014年に登場したワゴンモデルだ。
今では非常に希少な存在のワゴンモデルだが、1980年代後半から2000年代後半にかけては大人気だった。
多くのメーカーがワゴンモデルを設定しており、その人気の中心となっていたのがスバル レガシィツーリングワゴンだ。

しかし、このレガシィツーリングワゴンは、5代目モデルから販売が好調な北米マーケットの意向を重視し、ボディサイズがどんどん拡大していった。
そして、4代目以前のレガシィツーリングワゴンユーザーが乗り換えるワゴンモデルがない状態がしばらく続いてしまった。
その結果、多くのレガシィツーリングワゴンユーザーがスバルから離れていった。

これに危機感を持っていたスバルは、日本でも使いやすいサイズである、初代レヴォーグを開発。
多くの自動車メーカーが、グローバルモデルと共通化していく流れの中で、初代レヴォーグはほぼ日本専用モデルとして登場した。
これは、従来日本国内でスバルを支えてきたレガシィツーリングワゴン顧客を長年に渡り放置してしまったことへのしょく罪ともいえる。

初代レヴォーグ

2016年には、スバルのモータースポーツなどを担う「STI(スバルテクニカインターナショナル)」の名を冠したスポーツグレード「STI Sport」を投入。
スバルファンのハートを掴み、人気グレードとなった。

そして2代目レヴォーグは、2020年10月にデビュー。
2代目は、SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用し、運動性能は劇的に進化した。
また、スバルのコア安全技術であるアイサイトも大幅に機能向上。
360°センシングを実現し、50㎞/h以下なら、ハンズオフで車線維持しながら先行車に追従走行できるようになった。

2代目レヴォーグ

コンセプト&外装デザイン

優れた走行性能を予感させる2代目。流麗なツアラー的なシルエットの初代

初代レヴォーグは、顧客の期待を超え「レヴォーグというクルマを所有する悦び」を提供することを目指した。
デザインだけでなくパッケージング、走行性能、環境性能、安全性能といったあらゆる領域でその価値を高めている。

初代のデザインは、一見、2代目と比べるとやや地味目に見えるが、流麗なルーフラインや張りのある力強いフェンダーデザインなど、なかなか存在感がある。
しかも、2代目が登場してもあまり古く見えないのも好印象だ。
スポーティグレードのSTIスポーツでは、エアロパーツなどが装備され、よりスタイリッシュに見える。

初代の外装
初代のフロントフェイス

対する2代目は、新デザインコンセプト「BOLDER」を採用。
スバル車で初めて採用されたデザインコンセプトだ。
「BOLDER」とは、それぞれの車種が持つ個性をより大胆に際立たせるという意味。
2代目では、「意のままにコントロールする愉しさ」や「先進性」が表現されている。

2代目のデザインは、全体的にエッジの効いたスポーティなフォルムに仕上げられていて、優れた走行性能を予感させる。

2代目の外装

とくに、フロント周りが特徴的だ。

2代目のフロントフェイス

スバル独自のヘキサゴングリルを中心として、薄型のヘッドランプを組み合わせ、かなり立体的な造形となっている。
押出し感や迫力あるフェイスデザインだ。
初代と比べると、ひとクラス以上、上のクオリティを感じる。

予防安全装備

大幅進化した予防安全装備アイサイトを搭載した2代目

初代レヴォーグには、ステレオカメラを使った予防安全装備「アイサイト」が用意されていた。このアイサイトはバージョン3だ。
2代目レヴォーグを除けば最新世代ともいえる予防安全装備。
現在でも一定レベルのスペックを誇るこの予防安全装備には、歩行者検知式自動ブレーキや誤発進抑制機能、全車速追従式クルーズコントロールなどが含まれる。
ただし、初期モデルの一部には、アイサイトが設定されていないグレードがあるので、中古車を購入する場合は注意が必要だ。
後期モデルでは、標準装備化されている。

一方、2代目のアイサイトは、機能を飛躍的に向上させている。
広角化した新開発のステレオカメラに加えて、前後4つのレーダーを組み合わせることで360度センシングを実現。
ソフトウェアの性能向上や、電動ブレーキブースターの採用などにより、高性能化されている。

2代目に追加された機能のひとつに、前側方プリクラッシュブレーキがある。
これは、見通しの悪い交差点や店舗の駐車場などから出庫する際に、前側方レーダーによって前側方から接近する車両を検知する機能。
衝突の危険があるとシステムが判断した場合、警報音やアイサイトアシストモニターなどで注意を喚起する。
もし回避操作がない場合は、自動ブレーキが作動し、出会い頭の衝突回避をサポートする。
さらに、右折時の車両や歩行者も検知。
衝突の可能性がある場合、自動ブレーキを作動させる機能など、比較的多い事故形態に対応している。
これにより、より安全性の高い車となった。

また、オプション設定ではあるが、さらなる運転支援機能として自動運転時代の到来を感じさせるアイサイトXも用意。
これは、高速道路などでの渋滞時、50㎞/h以下であればステアリングから手を放しても車線維持しながら前走車に追従走行する「渋滞時ハンズオフアシスト」、高速走行時(約70km/h~約120km/h)に、ドライバーが方向指示器を操作し、システムが安全を確認するとステアリングを制御して自動で車線変更する「アクティブレーンチェンジアシスト」などの機能を持つ。
さらに、ドライバーが居眠りしたり、よそ見をしたりしている場合には警告し、ドライバーが反応しない場合には緊急事態が発生したと判断して徐々に減速・停止し、ハザードランプやホーンで周囲に知らせる「ドライバー異常時対応システム」も用意されている。

予防安全装備を初代と2代目で比較した場合、当然のことながら2代目が圧倒する。
これは、仕方のないことだ。
安全性能を重視するのであれば、2代目となる。
ただ、初代も最新とはいえないものの、現在でも十分に通用する平均的な安全性能をもっている。

内装

タッチパネル式の11.6インチセンターインフォメーションディスプレイを採用した2代目

初代のインテリアはオーソドックスなデザインで、ピアノブラックを使い高級感を出している。
ステアリングホイールは、スポーティなDシェイプタイプ。
センターコンソールには、マルチインフォメーションディスプレイが装備されている。
極端に古さを感じることはないが、さすがに2代目と比べると古さを感じる。

初代のインテリア

対する2代目は、センターコンソールにタッチパネル式の11.6インチセンターインフォメーションディスプレイを採用。
視認性を大幅に向上させるとともに、先進性をアピールしている。
ただし、タッチパネルなので、揺れる走行中は使いにくい。

2代目のインテリア

さらに、アイサイトX装着車には、こちらも先進的な12.3インチフル液晶メーターが装備されている。
これは、必要な情報を選択できるのが特徴。
また、ナビをメーター内に表示できるので、視線移動が少なく、より安全運転が可能となっている。

もはや設計の古い初代では、2代目を上回る部分は見当たらない。
ただし、こうした先進装備に興味がないのであれば、初代のインパネ周りもシンプルでよい。

走り、メカニズム

すべての面で初代を上回る2代目だが、パワフルさでは初

初代レヴォーグのパワーユニットは、1.6Lターボと2.0Lターボの2タイプが用意されていた。1.6Lターボは170ps&250Nmで、燃費は16.0㎞/L(JC08モード)。
2.0Lターボは300ps&400Nmと大パワーを誇り、燃費は13.2㎞/L(JC08モード)となっている。

対して、2代目レヴォーグは新開発の1.8Lターボのみの設定で、出力は177ps&300Nm。
燃費は16.5㎞/L(JC08モード)となっている。
初代の1.6Lターボと比べると、排気量を増やして出力をアップしながら、低燃費化している。
1.6Lターボとの比較ならば、1.8Lターボは、かなり優れたエンジンといえる。
総合バランスを求めるのであれば、2代目の1.8Lターボがベストだ。

初代のエンジン
2代目のエンジン

ただ、より刺激的でパワフルなエンジンを求めるユーザーにとっては、1.8Lターボは少し物足りない。
やはり、300psを誇る2.0Lターボが欲しくなる。
そうなると初代の2.0Lターボという選択になる。
エンジン出力にこだわるのなら、初代という選択肢も悪くない。

ただ、出力面以外は、すべて2代目が初代を上回る。

2代目は、プラットフォーム(車台)を刷新。
SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)が採用された。
これにより低重心・高剛性化が図られ、操縦安定性は格段に向上。
とくに、STI系のグレードに装備されているZF製電子制御ダンパーが、非常によい仕上がりを見せている。
電子制御により、ダンパーの減衰力を走行状況により自在に変更、優れた乗り心地とスポーツドライビングを両立する。
ドライブモードは、スポーツ+、スポーツ、ノーマル、コンフォートの4モード設定。
自分の好みの設定にすることが可能だ。
なかでもスポーツ+モードは、スバル車で最も走りに徹したWRXと同等レベルという高い減衰力を発生。
一般的に減衰力を高くすると、操縦安定性は向上するが乗り心地は悪化するのだが、高剛性ボディの恩恵もあり、サスペンションがしなやかに動く。
ロール(クルマの傾き)をしっかりと抑えながら足を動かすので、乗り心地が損なわれていないのも美点だ。

また、スポーツモード系ではAWDのセッティングにおいて、ややリヤの駆動を増やしている。
カーブでの立ち上がりなど、FR(後輪駆動)車のようにアクセルをグイグイ踏みながら曲がれるセッティングになっているのだ。
ステアリング操作に対して鋭いレスポンスを誇るハンドリング性能と相まって、初代とは比べ物にならないほど、異次元の走りを披露する。

一方、初代はやや硬めの乗り心地だ。

このように、2代目は、初代を大幅に凌駕する走行性能を誇る。
走行性能も、やはり2代目の圧勝だ。

初代の運転席
2代目の運転席

ただ、2代目は、仕上がりが良すぎるというのも事実。
この仕上がりはクラストップレベルだ。
初代も、クラス平均点以上の走行性能をもっている。
2代目と比べなければ、初代にもあまり不満はない。

おすすめは初代?それとも、2代目?

総合力なら圧倒的に2代目。パワフルさと価格なら初代

予防安全装備のアイサイトや運動性能など、ほぼすべての面で2代目レヴォーグは初代を大きく凌駕している。
2代目は、プラットフォームやパワーユニットなど、多くの部分が新開発されているので当然の結果である。

2代目レヴォーグ

しかし、初代もこのクラスのモデルとしては、まだまだ高い戦闘力をもっている。
初代のアイサイトや走行性能などは、このクラスの平均以上のレベルをキープ。
まだまだ、見劣りすることはない。
また、エンジン出力というごく一部においては、初代の2.0Lターボが2代目を圧倒する。
単純な速さでは、初代の2.0Lターボが勝つだろう。

初代レヴォーグ

初代は旧型となったことから、今後、中古車価格も下落傾向になることが予想でき、お買い得感が出てくるのも魅力のひとつだ。
現在は、2代目が出た直後なので、まだ価格が下がり始めた程度。
しかし、2代目の下取りに入った初代が中古車マーケットに多く出回るようになれば、お買い得感は出てくるだろう。

現在(2020年11月)の中古車相場は、2017年の大幅改良前後で価格が大きく異なる。
大幅改良前の2016年式では、150~240万円といったところ。
ところが、大幅改良後の2017年式になると、220~310万円程度が相場となっている。
300万円前後の価格を付けているのは、主に2.0STIスポーツ系。
このモデルのリセールバリューは、高値を維持している状態だ。
初代のおすすめグレードもこのモデルになるが、現在はやや高値を維持しているので、2.0STIスポーツをターゲットにしているのであれば、しばらく様子を見るとよい。

逆に、2014年式になると、中古車らしいお買い得感が出てきている。
中古車相場は110~190万円位。
1.6GTアイサイト系なら、150万円以上で程度のよいグレードが選べるようになっている。
2.0GTアイサイト系で程度のよい車両となると、180万円台以上からといったイメージになる。

新車値引き交渉のポイント

納期が長期化の様相。しばらく雀の涙程度の値引きか?

レヴォーグは、人気モデルということもあり、デビュー直後は顧客が殺到しているようだ。
そのため、しばらくの間は値引きゼロベースの商談となることは確実。

ただ、コロナ禍であり、いつ収束するか未だ見通しが立たない状態なので、メーカーやディーラーは1台でも多く受注したい状態になっている。

また、レヴォーグは人気モデルなのだが、一部のスバルファンに支えられている。
そのため、一定数のスバルファンにクルマが行き渡れば、徐々に販売台数は下落傾向になることが予想されている。

こうしたこともあり、デビュー直後であっても完全にゼロというわけではなく、10万円以下程度と少ないものの、値引きが提示される可能性もある。
ただし、何もしないと値引きゼロになるので、まずはしっかりと競合させる必要がある。
競合させるのは、同じクラスのライバル車だ。

レヴォーグの場合、問題は直接的なライバル車がない状態であること。
そのため、同等程度の価格となるSUVやセダン、輸入車と競合させるのが効果的だ。
国産SUVではトヨタRAV4、国産セダンならホンダ インサイト、輸入車ならフォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアントなどがよいだろう。

こうした競合車の見積りを先に取ってから、スバルディーラーに行き、商談をしたい。
あくまでも、レヴォーグは通りすがりに見に来たといったトークで商談を始めよう。
営業マンには、ライバル車の見積りを持っていることをしっかりと伝えることが重要だ。
「クルマを買う気満々」のホット客であることをアピールしよう。

すると当然、ライバル車に負けないようにと、営業マンはレヴォーグのセールスポイントをアピールしてくる。
これに対しては、都度、大げさにリアクションするとよい。
営業マンに、「ヴォーグを買ってもらえるかも?」と、思わせることが重要だ。
その後は、「レヴォーグは魅力的だが、最終的には予算優先」といった方向性を伝え、値引きをしっかりと要求しよう。
「期待通りの値引きが得られれば、すぐに注文したい」と意思表示するとよい。
営業マンは「すぐ」「今」という言葉に弱いからだ。

スバル レヴォーグの価格・スペック

  • GT:3,102,000円
  • GT EX:3,487,000円
  • GT-H:3,322,000円
  • GT-H EX:3,707,000円
  • STI Sport:3,707,000円
  • STI Sport EX:4,092,000円
代表グレード レヴォーグSTI Sport
ボディサイズ 全長4,755×全幅1,795×全高1,500mm
ホイールベース 2,670mm
最小回転半径 5.5m
車両重量 1,580㎏
エンジン種類 CB18型 水平対向4気筒DOHCターボ
排気量 1,795㏄
最高出力 177ps(130kW)/5,200~5,600rpm
最大トルク 300Nm/1,600~3,600rpm
燃費 13.6㎞/L(WLTCモード)
トランスミッション リニアトロニック(CVT)
駆動方式 AWD(4WD)
サスペンション 前:ストラット 後:ダブルウィッシュボーン