日産スカイライン ハイブリッド vsスカイライン400R徹底対決!スカイラインの人気グレード

日産 スカイライン ハイブリッドとスカイライン400Rを徹底比較。
燃費性能、価格、デザイン、車内空間、安全装備、走行性能などさまざまな角度から調査した。
スカイライン ハイブリッドの魅力は、自動運転時代を予感させるプロパイロット2.0が搭載されたこと。
スカイライン400Rの魅力は、ある意味古典的だが、走りの楽しさを感じさせてくれる高出力ターボとFR(後輪駆動)の組み合わせだ。

※自動運転の機能を過信せず、責任を持って安全運転を心がけましょう。

この記事の目次 CONTENTS
スカイライン ハイブリッドの特徴
スカイライン400Rの特徴
1.燃費比較
2.価格比較
3.購入時の値引き術
4.デザイン比較
5.室内空間と使い勝手
6.安全装備の比較
7.走行性能の比較
8.リセールバリュー比較
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

V37型と呼ばれる13代目日産スカイラインは、2014年2月に登場した。
日本では「スカイライン」と呼ばれているが、北米の高級車ブランドである「インフィニティQ50」と共通化されている。
そうした背景もあり、V37型スカイラインからグリルやステアリングなどにインフィニティエンブレムが入れられたままとなった。

当時、国内では国産セダンモデルの不振が続いており、スカイラインも販売は低迷していた。
さらに、ハイブリッド車が大人気という状況だった。
そのため、デビュー直後のスカイラインはV6 3.5Lエンジン+モーターのハイブリッド車である350GTのみの設定となった。

その後、やや遅れてメルセデス・ベンツ製2.0L直4ターボエンジンを搭載した200GT-tを投入。
走り好きのスカイラインファンを取り込みたい意図があったが、211ps&350Nmと少々地味なエンジンスペックだったことから、あまり話題にならなかった。

そんなスカイライン ハイブリッドは、2019年7月にマイナーチェンジ。
このマイナーチェンジで、高速道路上の同一車線でのハンズオフを可能としたプロパイロット2.0が搭載された。
車線変更もスイッチひとつで、ほぼ自動で行う運転支援機能も装備。
この高い技術力が評価され、2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー イノベーション部門賞を受賞している。

スカイライン ハイブリッド

このような自動運転時代を予感させるプロパイロット2.0とは対照的なグレードとして、日産製V6 3.0Lターボを搭載したスカイライン400Rが投入された。
このスカイライン400Rは、なんと405psという大出力を発揮。スカイライン史上、最もパワフルなモデルとなった。

このスカイライン400Rは、大ヒット。
発売直後の販売比率では、スカイライン400Rが全体の約36%を占めた。
自動運転をイメージさせるプロパイロット2.0を搭載するスカイライン ハイブリッドは、全体の37%を占め、最高出力が304馬力のターボモデルは約27%となった。

スカイライン400R

今回は、スカイラインを二分する人気グレード、ハイブリッドと400Rを徹底比較する。

スカイライン ハイブリッドの特徴

自動運転時代の到来を感じさせる先進技術プロパイロット2.0

スカイライン ハイブリッド

スカイライン ハイブリッドには、高速道路同一車線内でハンズオフできるプロパイロット2.0が搭載されている。
この技術を支えるのは、周囲の車両、白線、道路標識などを検知するセンサー類だ。
カメラが7個、レーダーが5個、音波ソナーが12個。
これらに、3D高精度地図データが加わり、車両の位置を正確に測定する。
左右方向では、5cmの精度で走行ができる。
この非常に安心感のある制御により、キッチリと車線中央を走る。
ドライバーを不安にさせるような動きはない。

そして、前方に遅いクルマがいる場合には、クルマから車線変更の提案がある。
ステアリング右側に設置された承認ボタンを押し、スエアリングに手を添えると、システムが自動でウインカーを点滅。
後方を確認したあと自動で車線変更する。走行車線に戻る場合も同様の手順となる。

長時間に渡り、ハンズオフ状態で走行していると、非常に疲労軽減に役立っていることに気が付く。
カーブでの安定感や車線変更も、まるで運転が上手なドライバー並みで、とても自然。
運転が下手なドライバーが運転しているより安全・安心で、運転中のストレスまで軽減される。

スカイライン400Rの特徴

スカイライン史上最強! 405psを誇る3.0L V6ターボエンジン

スカイライン400R

スカイライン400Rは、専用チューニングされたVR30DDTT型と呼ばれる3.0L V6ツインターボエンジンを搭載する。
このエンジンは、405ps&475Nmという大出力。歴代スカイラインの中で最強だ。

最近ではダウンサイジングされ、低回転から最大トルクを発生するモデルが多い。
こうしたエンジンは、低速トルクはあるものの、高回転域では伸びが無く、スポーティな印象に欠ける。ただその分、燃費に優れる。

しかし、このVR30DDTT型の最高出力発生回転数は6,400回転と高めだ。
高回転域でパンチのあるフィーリングは、懐かしく気持ちいい。良くも悪くも古典的なエンジンだ。

このパワフルなエンジンを搭載していることもあり、ブレーキも強化。
4輪アルミレッドキャリパー対向ピストンブレーキを装着している。

1.燃費比較

スカイライン ハイブリッドの評価は4点
スカイライン400Rの評価は3.5点

意外と燃費がよい400R

スカイライン ハイブリッドの燃費は、14.4㎞/L(JC08モード)となった。
このクラスのハイブリッド車としは、平均的といえる数値だ。対する400Rの燃費は、10.0㎞/L(WLTCモード)。

計測モードが異なるので、単純比較はできないが、WLTCはJC08モードより数割悪くなる傾向がある。
そう考えると、400Rの10.0㎞/Lという燃費は意外と優秀といえる。

さらに、400Rはアイドリングストップ機能が無い。
アイドリングストップ機能がプラスされるだけでも、燃費値は格段と向上する。
アイドリングストップ機能が無いので、市街地などではハイブリッドと比べると大きな差になるが、ハイウェイなどでの巡行性能などはハイブリッドに近い数値になるかもしれない。

2.価格比較

スカイライン ハイブリッドの評価は3.5点
スカイライン400Rの評価は4点

安くはないがコストパフォーマンスに優れるスカイライン400R

スカイライン ハイブリッドの最上級グレードのGT Type SPは6,160,000円。
400Rの価格は5,625,400円。価格差は約53万円だ。

装備面では、残念ながら400Rにはプロパイロット2.0が装備されていない。
さらに、歩行者検知式自動ブレーキもなし。

逆に、ハイブリッドには、インテリジェント ダイナミックサスペンション(電子制御ショックアブソーバー)、4輪アルミレッドキャリパー対向ピストンブレーキが装備されていない。

プロパイロット2.0の価格をどう判断するかがポイントになるが、あれほどの機能なら十分に53万円分の価値はあるだろう。
そう考えると、両車の価格は同等レベルといえそうだ。

ただ400Rに関しては、日本車で400psを超えるモデルは、レクサス車の一部スポーツモデルに限られる。
そのほとんどが1千万円越え。
1ps当りの車両価格という点では、400Rのコストパフォーマンスは圧倒的だ。

3.購入時の値引き術

スカイライン ハイブリッドの評価は3.5点
スカイライン400Rの評価は3点

スカイライン ハイブリッド、400Rともマイナーチェンジ直後のため値引きは厳しい

日産スカイラインは、2019年7月にマイナーチェンジした。
このマイナーチェンジで、プロパイロット2.0や400Rが投入されている。
まだマイナーチェンジしたばかりなので、策なしに商談すれば値引きは少々厳しい状況だ。

重要なのは、必ず競合させること。
まず、先にライバル車となるクラウンの見積りを取っておくことが重要だ。
スカイライン ハイブリッド、400R共にクラウンハイブリッドのRSアドバンスなどのスポーティグレードと競合させたい。
先にクラウンの見積りを取ることで、日産の営業マンに本命はクラウンと思わせることが重要だ。
マイナーチェンジしたばかりとはいえ、スカイラインは飛ぶように売れるモデルでは無いので、しっかりと競合させれば値引き交渉もやりやすくなる。

ただ、400Rはかなりユニークなモデル。
純粋に400psオーバーのセダン同士で競合させることが難しい。
クラウンハイブリッドで値引き交渉が厳しいと感じたら、価格が近い中古のレクサスGSFと競合させるのもよい。
また、輸入車ではメルセデス・ベンツのAMG C43などと競合させるのもいいだろう。
それでも値引きが厳しいようなら、現金値引きだけでなく、用品サービスなどに切り替えてみよう。

4.デザイン比較

スカイライン ハイブリッドの評価は3点
スカイライン400Rの評価は3.5点

外観デザイン差は微少

外観デザインはほとんど同じだ。
異なる部分は、ホイールデザインや4輪アルミレッドキャリパー対向ピストンブレーキ、エンブレムなどだ。

スカイライン ハイブリッドの外観
スカイライン400Rの外観

内装も基本的な部分に大きな差は無い。
ただ、ダイヤキルティング/レッドステッチが入った本革スポーツシートや、レッドステッチが入ったステアリングなどがひと目で400Rと感じさせる部分でもある。
ただ、ブラック&レッドという色使いは、もはやスポーツモデルの定番的ともいえるもの。
外観デザインも含め、400Rはもう少し特別なモデルであることを主張したいところだ。

スカイライン ハイブリッドの内装
スカイライン400Rの内装

5.室内空間と使い勝手

スカイライン ハイブリッドの評価は2.5点
スカイライン400Rの評価は3点

トランクスペースに大きな差あり

スカイライン ハイブリッドのトランク容量は、385L(社内測定値)とやや小さい。
これは、ハイブリッド用のバッテリーを搭載していることが要因だ。
多くの荷物を積みたい人には、あまりおすすめできない。
しかし、日産よると9インチのゴルフバッグ4本が積載可能だという。
対するスカイライン400Rのトランク容量は、510Lと十分なスペースを確保している。

スカイライン ハイブリッドの荷室
スカイライン400Rの荷室

室内スペースは、両車ともに同じ。
前席の室内スペースは、大きめのゆったりとしたシートということもありリラックスできる。
リヤシートは、足元スペースなどややタイトな印象だ。

スカイライン ハイブリッドの室内
スカイライン400Rの室内

両車共にアクティブノイズコントロール、 アクティブ・サウンド・コントロールを装備。
エンジンからの不快なこもり音に対して、逆位相となる音(制御音)をオーディオスピーカーから出力し、音圧レベルを低減。静粛性を高めている。

さらに、アクティブ・サウンド・コントロールは、エンジン回転数やドライブモード等に応じて、車内で聞こえるエンジンサウンドの音質を高める機能。
スポーツモード時には、よりスポーティなエンジンサウンドが楽しめる。

スカイライン ハイブリッドの運転席
スカイライン400Rの運転席

6.安全装備の比較

スカイライン ハイブリッドの評価は4点
スカイライン400Rの評価は3点

歩行者検知ができない自動ブレーキとなったスカイライン400R

スカイライン ハイブリッドには、高速道路同一車線内でハンズオフできる機能をもつプロパイロット2.0が装備されている。
多くのセンサーが装備されていることもあり、歩行者検知式自動ブレーキや踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱防止支援など高いレベルの安全装備が標準装備化されているので安心だ。

しかし、スカイライン400Rは、少々物足りない仕様となっている。
まず、何と言っても歩行者検知式自動ブレーキが装備されていないのは、今時の高級車として相応しいものではない。ここは、早急な改善が求められる。

ただ歩行者検知式自動ブレーキを除けば、スカイライン ハイブリッドと同様に、踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱防止支援など十分なレベルの安全装備が標準装備化されている。

7.走行性能の比較

スカイライン ハイブリッドの評価は3.5点
スカイライン400Rの評価は4点

スムーズ&パワフルなハイブリッド。豪快だが意外と紳士的な400R

スカイライン ハイブリッドのシステム出力は、364psとかなりパワフルだ。
アクセルを踏むと、まず瞬時モーターがクルマを押し出し、やや遅れてエンジンパワーがプラスされる。

スカイライン ハイブリッドのエンジン

モーターは瞬時に最大トルクを発生するため、非常にアクセルレスポンスに優れた走りが可能だ。
気持ちの良い走りが楽しめる。しかも、高級車らしくスムーズで静粛性にも優れている。

また、世界初のDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)を装備している。
これは、ステアリングの動きを電気信号に置き換え、ステアリングアングルアクチュエーターを作動させてタイヤを操舵する機能。
ステアリングレスポンスの良さが感じられるだけでなく、わだちなどの路面状況においてもステアリングが取られることが少なく、非常に優れた直進安定性を誇る。
ロングドライブでも疲労が少ない。

スカイライン ハイブリッドの乗り心地は、スポーツセダンらしく全体的にやや硬め。
カーブなどで、クルマが大きく傾くことも少なく、気持ちよく走り抜けていくことができる。

対してスカイライン400Rは、405ps&475Nmを誇るV6 3.0Lツインターボエンジンを搭載している。

スカイライン400Rのエンジン

とにかくパワフルで、アクセルをグッと踏み込むと、強烈な加速Gでシートバックに体を押し付けられる。
またターボエンジンながら、高回転型なのも特徴。
レヴリミットまでパワーやトルクの落ち込みがなく、気持ちよく吹き上がるエンジン特性をもつ。
これだけパワフルなパワーユニットながら、非常によくしつけられていて、クルマが暴れるようなことはなく、とても紳士的。
大人のスポーツセダン的に仕上がっている。

乗り心地は硬めだが、むしろハイブリッドよりしなやか。
これは、シーンに応じてクルマの挙動を瞬時に最適化するインテリジェント ダイナミックサスペンション(電子制御ショックアブソーバー)の効果といえる。
荒れた路面や小さな起伏のある不整路面では、車体の上下動を抑えてフラットな車体姿勢をキープ、快適な乗り心地を確保する。
もちろん、スポーツモードをスポーツにすれば、エンジンやトランスミッション、ステアリング、サスペンションの協調制御を行ない、400Rのポテンシャルを思う存分引き出してスポーツドライビングが楽しめる。

ただ、スカイライン400Rのプラットフォームは設計が古く、やや重心高が高め。
少し車高を落とし、重心高を下げるなどの工夫も欲しかった。

8.リセールバリュー比較

スカイライン ハイブリッドの評価は3点
スカイライン400Rの評価は4点

高いリセールバリューが期待できるスカイライン400R

スカイライン ハイブリッドのリセールバリューは、セダンの人気が低いためやや低い。
ただ、部分自動運転ともいえる「プロパイロット2.0」が装備されたことにより、「プロパイロット2.0」が装備されたモデルは、リセールバリューの上昇が期待できる。
とくに、最上級グレードのタイプSPは高値傾向。オプションのボーズサウンドシステムやサンルーフはプラス査定になるだろう。

そして、高値が期待できるのがスカイライン400R。
同様のモデルが無いため予測となるが、ハイブリッド車より高値になるだろう。
このクラスの国産セダンでは最速といえるレベルのターボ車で、コストパフォーマンスにも優れていることもあり、カスタマイズのベース車としての人気を得られれば、高めのリセールバリューになる可能性が高い。

ただ、400Rとはいえ、不人気カテゴリーであるセダンモデルなので、非常に高いリセールバリューとまではいかないだろう。
こちらも、ボーズサウンドシステムやサンルーフはプラス査定だ。

9.まとめ・総合評価

スカイライン ハイブリッドの総合点は27点/40点
スカイライン400Rの総合点は28点/40点

近未来を感じるハイブリッド、古典的だが楽しい400R

スカイライン ハイブリッドの「プロパイロット2.0」は、これから訪れる自動運転時代を感じさせる機能。
しかも、疲労軽減や安全面でも大きなメリットがある。
それでいて、ハイブリッドなので燃費や静粛性は良好。
さらにアクセルを踏み込めば、スムーズで速いスポーツセダンへ大変身する。
スカイライン ハイブリッドは、多くの人が満足できるフレキシブルさが魅力でもある。

スカイライン400Rには「プロパイロット2.0」のような未来感はなく、ある意味古典的。
高出力ターボとFR(後輪駆動)の組み合わせは、走ることの楽しさが凝縮されている。
スポーツセダンでありながら、乗り心地もしなやかさがあり、高級セダンとしても十分なレベルにある。
セダンとしての実用性を維持しながらも、走り楽しさを忘れたくない人にピッタリな1台といえる。