この記事の目次 CONTENTS
SUV販売台数ナンバー1を再び目指す、重要なマイナーチェンジ
外観デザインの変更はわずか
コネクティッドサービスを強化
進化しなかった安全装備
スポーツモデル「GR SPORT」を新設定
トヨタC-HR価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

SUV販売台数ナンバー1を再び目指す、重要なマイナーチェンジ

トヨタは、人気コンパクトSUVであるC-HRをマイナーチェンジし、発売を開始した。
今回のマイナーチェンジでは、デザインや装備の向上の他に、新グレードとなるスポーツモデル「GR SPORT」を設定した。

改良は人気を取り戻すために必要だった

トヨタC-HRのデビューは、SUVマーケットに鮮烈なインパクトを与えた。

デビューは、2016年12月。発売直後から、ユニークなデザインが注目され、一気に人気モデルとなった。
2017年度の登録車新車販売台数ランキングでは、4位に入るほどだ。この年には、SUV新車販売台数ナンバー1に輝いた。

ところが、そのユニークなデザインは、好き嫌いが明確に分かれるタイプのもので、一定数のファン層に納車が終わると、徐々に販売台数を落としていく。

2018年度には、大きく順位が下落し13位に終わる。
そして、マイナーチェンジ直前となった2019年度上期では18位に沈んでいる。

徐々に新車効果が薄れ、そろそろテコ入れが必要という時期が、デビューから3年後経ったタイミングというのは、トヨタにとって想定内といえるものだろう。

しかし、C-HRが属するCセグメントSUVは、ライバル車の新型CX-30が投入されるなど、競争が激化してきている。
王者C-HRとはいえ、生半可なマイナーチェンジでは、SUV販売台数ナンバー1という座を奪還するのは容易ではない。

今回のマイナーチェンジは、C-HRにとってモデル末期に向けての力試しともいえるものだ。

外観デザインの変更はわずか

とても重要なマイナーチェンジだが、大きなデザインの変更はなく、従来のデザインをベースにリファインした程度となった。
一般の人にとっては、どこが変わったか分からないくらいだ。

デザインの変更点は、エアインテークを左右に広げ、ワイドスタンスを強調した。
G、G-T、S“GR SPORT”、S-T“GR SPORT”のヘッドライトは、上部に長く伸びるLEDクリアランスランプをデイライトとターンランプのダブルファンクションとすることで、存在感をアピール。
リヤコンビネーションランプには、車両内側から外側に流れるように点灯する流行りのシーケンシャルターンランプを採用している。

ボディカラーは新色を含めて全16色(“GR SPORT”は11色)と豊富だ。
インテリアカラーは、オーキッドブラウンを新設定し、選択肢を増やしている。

個性的なデザインだと瞬間的に注目を集めることもあるが、飽きられやすいという側面をもつ。
C-HRのデザインが飽きられてきたかどうかは不明だが、モデル末期に向けて、ここはもっと大幅なデザインが必要だったようにも感じる。

コネクティッドサービスを強化

トヨタは、急速にコネクティッドサービスを強化している。
その流れを受け、C-HRもスマートフォンとの連携を可能にしたディスプレイオーディオ(DA)や車載通信機DCMを全車に標準装備した。

この機能は、SmartDeviceLinkに対応するTCスマホナビや、音楽・ラジオアプリなどをDA上に表示して操作を可能としている。

さらに、LINEカーナビでは音声認識で目的地設定やLINEのメッセージ送受信したり、音楽再生なども可能となった。
スマートフォンなどを操作しながら運転する「ながら運転」の罰則が強化されたことを考えると、こうした音声による操作は便利だ。

また、Apple CarPlayやAndroid Autoなど、日常利用している地図アプリや音楽アプリなどをディスプレイで操作・利用できる。(TVとセットオプションで、契約時にT-Connect契約が必要となる)

進化しなかった安全装備

予防安全機能は若干進化したものの、少々物足りない状況だ。

アクセルとブレーキの踏み間違いリスクを軽減するテリジェントクリアランスソナー(パーキングサポートブレーキ)や、駐車場での後退時に左右後方から接近する車両を検知し、衝突の可能性がある場合にブレーキを制御するリヤクロストラフィックオートブレーキ(パーキングサポートブレーキ[後方接近車両])、車両を俯瞰から見たような映像をディスプレイに表示するパノラミックビューモニターなど、安全機能をオプション選択可能とした。

ただ、もうこうした機能はベーシックな技術で、標準装備化すべき装備だ。

また、残念なのは歩行者検知式自動ブレーキだ。
C-HRの歩行者検知式自動ブレーキは、昼間の歩行者のみに対応する。

しかし、同じプラットフォームを使うカローラ系では、昼夜の歩行者と自転車にも対応する最新世代だ。

予防安全装備は重要な装備である。
本来ならば、C-HRもカローラ系と同じく夜間の歩行者と昼間の自転車に対応した自動ブレーキにバージョンアップすべきだろう。

スポーツモデル「GR SPORT」を新設定

安全装備は物足りない状態だが、販売台数増が狙えるスポーツモデルの開発には積極的だ。

C-HRには、トヨタのレーシングチームであるGAZOO Racing(ガズー・レーシング)の頭文字を使った市販車のスポーツチューンモデルとして、GR(ジーアール)ブランド「GR SPORT」が新設定された。

CH-R GR SPORTでは、専用のエアロパーツなどが装備され、標準車と差別化。
同時に、Bi-Beam LEDヘッドランプ(GR専用ダークスモークエクステンション)+LEDクリアランスランプ+LEDターンランプ+LEDデイライトを採用した。

内装もGR SPORT専用装備が数多く投入されている。

本革巻き小径3本スポークステアリングホイール(シルバーステッチ+GRエンブレム+スポーク部:ダークシルバー塗装)を始めとし、
・センターコンソールアッパー加飾(ピアノブラック)
・パワーウインドゥスイッチベース加飾(ブラック+ピアノブラック)
・専用スポーティシート(GRエンブレム付き+シルバーダブルステッチ付き)/シート表皮(メイン部:パーフォレーション付きブランノーブ/ サイド部:合成皮革)
・アルミペダル

などがGR SPORT用となった。

内外装だけでなく、走りの質も向上させている。
ベース車のボディ剛性をより高水準なものにするため、フロア下にフロアセンターブレースを追加。
専用に設定された19インチタイヤの性能を最大限に引き出すため、サスペンションはGR専用のチューニングを徹底した。

数多くの専用パーツを装備したC-HR GR SPORTは、ベース車のSグレードに対して約28万円の価格アップとリーズナブルなのも魅力のひとつだ。

こうしたスポーツモデルは、日本では人気が高くよく売れている。
GR SPORTの登場は、タイミング的にやや遅い気もするが、着実に販売台数増が狙えるモデルといえるだろう。

トヨタC-HR価格

■1.2Lターボ車

  • S-T 6速マニュアル(iMT) 2WD:2,367,000円/Super CVT-i:2,400,000円、4WD:2,598,000円
  • G-T 6速マニュアル(iMT) 2WD:2,632,000円/Super CVT-i:2,665,000円、4WD:2,863,000円
  • ・S-T“GR SPORT” 6速マニュアル(iMT) 2WD:2,732,000円

■1.8Lハイブリッド車

  • S:2,730,000円
  • G:2,995,000円
  • S“GR SPORT”:3,095,000円