この記事の目次 CONTENTS
「究極のエコカー」ミライ、東京モーターショーで2代目が世界初公開!
水素時代を切り開く役目を担ったクルマがミライ
FFからFRへ「走りも楽しい究極のエコカー」へ
燃費はまずまず。発電機としても使えるミライ
超激安! 世界最先端技術の塊、ミライの中古車価格は200万円台!

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

世界初の量産水素を燃料として走るFCV(Fuel Cell Vehicle)であるトヨタ MIRAI(ミライ)。
日本の最先端技術が凝縮された究極のエコカーであるにもかかわらず、中古車価格は200万円台と激安だ。
この記事では、まさに「良いクルマが安価」という言葉がぴったりのミライの魅力に迫る。

「究極のエコカー」ミライ、東京モーターショーで2代目が世界初公開!

東京ビッグサイトで2019年10月24日~11月4日まで開催される東京モーターショー。
この東京モーターショーでは、世界初の量産FCV(Fuel Cell Vehicle)である、トヨタ ミライがフルモデルチェンジし世界初公開される。

FCVとは、水素を燃料として走るクルマのこと。排出されるのは水のみだ。
水素と酸素の化学反応から取り出した電気を使い、モーターで走行する。
ガソリン車のような排ガスを出さないことから、究極のエコカーと言われている。
このFCVを世界で初めて量産化したのがトヨタ ミライだ。

水素時代を切り開く役目を担ったクルマがミライ

このトヨタ ミライ、単に究極のエコカーとしての役割を担っているだけではない。
水素は日本の新たなエネルギー源としても、注目されている。

現状、日本のエネルギーは石油に依存しており、ほとんどが輸入に頼っている。
そのため、戦争やなんらかの理由で海上が封鎖され石油の輸入が困難になると、日本のエネルギーはあっという間に枯渇する。
当然、経済がまわらなくなるだけでなく、まともな生活すらできなくなる。

そこで、注目されているのが水素だ。
水素は多くのものから取り出すことができる。
余剰電力や再生可能エネルギーで生まれた電力を水と反応させ、水素として備蓄できる。
しかも、容易に運搬も可能。
クリーンで、環境負荷をかけないことも魅力だ。

日本としては、水素を電力とする仕組みを海外に売り出したいという狙いもあり、東京モーターショーや2020年に行われるオリンピック、パラリンピックでミライのようなFCVや、水素社会を海外にアピールする。

そんな国策ともなっているFCVを世界に先駆けて量産したのがトヨタだ。
トヨタ ミライは、まさに日本の最先端技術が凝縮されたクルマといえる。

しかも、デビュー時の価格は約720万円。
輸入車メーカーの多くは、普通のEVが未だ1,000万円を超えていることからも、いかにミライの価格がリーズナブルなのか理解できると思う。
しかも、購入時には約200万円以上の補助金が投入され、実質500万円前後で購入できた。

FFからFRへ「走りも楽しい究極のエコカー」へ

そんな初代ミライがフルモデルチェンジし2代目となる。
初代ミライで不評だったデザインは一新され、ボディサイズはひと回り大きくなり、とてもスタイリッシュになった。

また、初代ミライは「究極のエコカー」というイメージが強すぎて、多くの一般ユーザーからは「走りのつまらないクルマ」というレッテルが貼られてしまっていた。
しかしこれは、事実と異なっており、ミライはFF(前輪駆動)ながら低重心で運動性能も高い。
また、モーター出力は154ps&335Nmで、最大トルクは、V6 3.5L並みと力強い。

そこで、トヨタは2代目ミライを大幅にイメージチェンジした。
評判の悪かったデザインを一新。
プラットフォームは、クラウンやレクサスLSなどに使われているGA-Lをベースに開発した。

さらにFFからFR(後輪駆動)へ変更。
モーター出力などは不明だが「走りの楽しい究極のエコカー」へと変貌を遂げている。

気になる航続距離は、FCシステムも一新するなどして初代ミライ比約30%アップとなるという。
約30%アップというと850㎞程度だ。

燃費はまずまず。発電機としても使えるミライ

さて、そんな「究極のエコカー」として話題となった初代トヨタ ミライ。
初代ミライは、高級感をアピールするため4人乗りだ。
スタイルはかなり個性的。
腰高な印象が高く、好き嫌いが分かれるデザインだ。

さて、気になるのは水素の価格と電費ということになる。
水素の価格はおおよそ1,100円。初代ミライは、約5㎏もの水素を搭載できる。
満タンで約5,500円といったところだ。
以前、高速道路でクルージングしたときの電費は114.3km/kgだった。
約1,100円で114㎞走れる計算になる。

レギュラーガソリンを140円/L計算で、燃費20.0㎞/Lのクルマなら114㎞走るとなると、燃料費は約800円となる。
ハイブリッド車などと比べると、やや燃料費は高めだ。
ただ、今後、国は水素の価格を3分の1程度まで下げるとされているため、こうなるとハイブリッドを上回る燃料経済性になると思われる。

また、電気を使いモーターで走る初代ミライ。
電気を作れるというのは、大きな魅力でもある。

最近頻繁に起きる自然災害で、長期間にわたり停電が続くことも珍しくなくなった。
こんなときに、役に立つのが初代ミライに装備されている100V 1500Wのコンセントだ。
スマートフォンの充電はもちろん、家電などが使え、エアコンの電源にもなる。
災害時にはちょっとした発電機になり、便利だ。

またあまり現実的ではないのだが、別売りのパワームーバーと呼ばれる給電器を使えば4,500Wもの電力を給電可能。
水素が満タンであれば、数日間もの間、一般的な家庭で使う電力を供給できる。

超激安! 世界最先端技術の塊、ミライの中古車価格は200万円台!

そんな初代ミライだが、中古車で激安であると話題だ。
中古車の流通量そのものは、非常に少ないものの、中古車価格は破格。

まず、初代ミライの新車価格は約720万円。補助金を引くと、約500万円だ。
中古車価格は、2015年式で200万円前半といったところ。
4年落ちで新車価格の30%程度、補助金を引いた金額だと、40%程度という価格にまで落ちている。

世界最先端のFCVなのに、この価格は激安といえる。
200万円台で水素を燃料として走るクルマが手に入るのだ。
しかも、ミライの中古車は走行距離が少なく程度のよいものが多い。
まさに、中古車ならではの「良いクルマが安価」というモデルだ。
これから始まる水素時代を切り開いたミライというクルマを、安価に楽しむことができる。

非常に魅力的な中古車である初代ミライだが、誰にでもおすすめできるクルマではない。
燃料となる水素が、そう簡単に手に入らないからだ。
水素スタンドが非常に少ないだけでなく、営業時間も短い場合が多い。
そのため購入に向いているのは、首都圏周辺や地方では水素スタンド近辺に住んでいる人に限られる。
水素スタンドが近くにあるのであれば、初代トヨタ ミライは積極的に選びたい中古車だ。