メルセデス・ベンツ Aクラス vs フォルクスワーゲン ゴルフ徹底比較

激戦区のCセグに属するコンパクトカー2台を価格、安全装備、乗り心地などから徹底比較した。安全装備を重視するならAクラス、購入価格を重視するならゴルフを選ぶとよいだろう。

この記事の目次 CONTENTS
激戦区のなかでも人気を誇る2台
1.価格
2.燃費
3.デザイン
4.室内空間と使い勝手
5.走行性能
6.安全装備
7.リセールバリュー
8.購入時の値引き術
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

激戦区のなかでも人気を誇る2台

メルセデス・ベンツAクラスとフォルクスワーゲン ゴルフは、Cセグメントに属するコンパクトカーだ。
欧州などで超激戦区と呼ばれるカテゴリーで、ライバルにはBMW 1シリーズ、ミニ、アウディA3、プジョー308などがある。

4代目となるAクラスは、そんな激戦カテゴリーへ2018年10月に登場した。
クラスを超えた安全装備に10.25インチの高精細ワイドスクリーン、AIを駆使した対話型インフォテインメントシステムMBUX(メルセデス・ベンツユーザーエクスペリエンス)などを採用し注目を集めている。

そして、世界中のメーカーがベンチマークにしているのが、フォルクスワーゲン ゴルフだ。
7世代目となるゴルフは、2013年4月発表された。
プラットフォームには、MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)」を採用し、コストを下げながら、優れた操縦安定性や安全性能を得た。
その完成度は圧倒的で、輸入車初の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

今回は、最先端技術を駆使したAクラスと、未だ高い完成度を誇るゴルフを比較した。

メルセデス・ベンツAクラスの特徴

4代目となったAクラスは、キープコンセプトながら、最先端の技術を多く取り入れている。
オプションだが、安全装備に歩行者検知式自動ブレーキなどを含む先進予防安全装備「レーダーセーフティパッケージ」を用意した。
最上級セダンのSクラスに搭載されているものとほぼ同じ機能を持っている。

また、AIを使った対話型インフォテインメントシステムMBUX(メルセデス・ベンツユーザーエクスペリエンス)を採用した。
「ハイ・メルセデス」でシステムが起動し、エアコン温度の調整などさまざまな操作を会話で行うことができる。
また、2019年3月には、国内Aクラスには初めての2.0Lのクリーンディーゼルエンジンを追加した。

フォルクスワーゲン ゴルフの特徴

7代目ゴルフには、新開発されたMQBプラットフォームを採用している。
この新プラットフォームにより、走行性能や安全性能は大幅に向上した。
搭載エンジンは、低燃費性能にこだわった1.4Lと1.2LのダウンサイジングターボであるTSIをメインに、PHEVのゴルフGTEやEVであるeゴルフも用意されている。
そのほかにもスポーツモデルとなるGTIなどもあり、バリエーション豊富だ。

1.価格

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は3点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は3.5点

Aクラスはディーゼル車がお買い得

Aクラスの価格は、3,220,000円からとなった。
エントリーグレードのA180は価格訴求用のモデルで、装備がかなり貧弱なことから、実際の売れ筋グレードになるのはA180スタイルだ。
A180スタイルの価格は、3,690,000円となる。

しかし、このグレードも予防安全装備であるレーダーセーフティパッケージが装着されていないので、これをオプションで装着すると約25万円プラス、ナビを付けるとさらに約18万円プラスとなる。
Aクラスの価格は約412万円からとなってしまうのだ。さすが、メルセデス・ベンツはお高い。

また、ディーゼル車のA200dの価格は3,990,000円で、A180スタイルより30万円高額になっている。
ただ、購入時には減税・免税のメリットがあるため、少しだけお買い得だ。
また、A200dはPHEVのゴルフGTE(4,690,000円)と比べても安価なため、Aクラスを購入検討する際はA200dをベースに考えるといいだろう。

ゴルフにはお買い得な特別仕様車を設定

ゴルフの価格は、2,539,000円からとなっている。
こちらも装備は質素なので、コンフォートラインの2,799,000円からと考えた方がよい。

価格はAクラスより大幅に安い。
また、ゴルフはすでにモデル末期に入っていることもあり、お買い得な特別仕様車が投入されている。
1.4Lターボを積むハイライン テックエディションの価格は3,529,000円だ。
デジタルメーターやナビ機能である純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”などが標準装備され、お買い得な特別仕様車だ。
予防安全装備の性能差はあるものの、価格も約60万円の差がある。
PHEVのゴルフGTEはお買い得な特別仕様車の設定もないため、割高感がある。

2.燃費

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は4点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は4点

ディーゼルが用意されたAクラス

Aクラスは、2つのパワーユニットを用意している。

ガソリンの1.4Lターボの燃費は15.0㎞/L(WLTCモード)で、2.0Lディーゼルターボの燃費は非公表だが、20.0㎞/L前後になるだろう。
ディーゼルの燃料は軽油なので、ハイオクガソリンを使用するガソリン車に比べ、価格は30円/L前後も安い。
ハイブリッド車並みの燃料費を期待できる。

高値だが、ゴルフにはPHEVを用意

ゴルフには1.2Lと1.4Lのターボエンジンが用意されている。
1.2Lの燃費は19.1㎞/L(JC08モード)、1.4Lが18.1㎞/Lだ。

1.2Lの燃費は良いものの、ハイオクガソリンを使用するため燃料費は割高になる。

計測方法が異なるため、Aクラスとゴルフの燃費は単純比較できないが、1.4Lターボ同士の燃費値はほとんど同じだろう。

また、ゴルフにはディーゼル車の設定が無い。
Aクラスのディーゼル車に対抗できるのは、PHEVのゴルフGTEだ。
GTEは満充電なら45㎞EVで走行でき、電力を使い切るとハイブリッド車となって、19.9㎞/L(JC08モード)という燃費値になる。

3.デザイン

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は4点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は3.5点

Aクラスは迫力より上品さをアピール

メルセデス・ベンツAクラスのデザインは、先代モデルと比べると、随分スッキリした。

フロントフェイスは上級モデルのCLS風で、豊かな面の張りで存在感をアピールしている。
ボディは小さくても、高級感があるデザインだ。

インテリア(内装)は、水平基調のデザインを採用し広さを強調した。
高精細のワイドスクリーンコックピットを採用することで、視認性はもちろん近未来感も表現している。

また、CLSでも使われていたタービンを連想させるエアアウトレットを装備。

スッキリとした外装とは逆に、インテリアはややギラギラ感のある空間に仕上げられている。

ゴルフは歴史を感じさせる高い完成度を誇る

ゴルフの外装は、歴代のイメージを残しつつ無駄を排したシンプルな面と線でまとめられている。
デザインの賞味期限も長く、モデル末期ながら古臭さを感じさせない。

インテリアも同様に、オーソドックスなデザインだ。
斬新さが少ない分、安心感のある空間にまとめられている。

一部のグレードには、先進性を感じさせるフルデジタルメーターを装備し、先進感もアピールしている。

ただ、ナビなどのモニター位置が比較的低く、視認性はいまひとつだ。

4.室内空間と使い勝手

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は4.5点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は3点

AクラスはAIを活用、会話で操作可能

Aクラスのボディサイズは、全長4420×全幅1800×全高1420mm、ホイールベースは2730mmで、全高以外のサイズはゴルフを上回っている。

そのため、室内空間は広く余裕がある。
また、荷室容量もクラストップレベルの370Lを確保し、リヤシートも4:2:4の分割可倒式で使い勝手も良い。

そして、注目はAIを活用し会話で車両操作が可能な対話型インフォテインメントシステムMBUX(メルセデス・ベンツユーザーエクスペリエンス)だ。
「ハイ・メルセデス」という発話でシステムが起動し、エアコン操作など、多くの操作を会話で行える。
たとえば、「暑い」と発話すればエアコンの温度を下げてくれるなど、曖昧な言葉でも操作が可能だ。
AIなので、使い込むうちにドライバーの意思をより的確に判断できるようになる。

ゴルフは小さなボディながら実用性が高い

ゴルフのボディサイズは、全長4265×全幅1800×全高1480mm、ホイールベースは2635mmと、Aクラスと比べると少々小さい。

そのため、室内空間はややAクラスが勝るといった印象だ。
しかし、この小さなサイズで荷室容量は380Lを確保しており、ボディサイズは小さくても、荷室はAクラスよりわずかだが広く実用性は高い。

ゴルフには、9.2インチのモニターが装備されているが、やや低い位置に設置されているため視認性はいまひとつだ。
また、タッチパネルのみの操作なので、揺れる車内で小さなアイコンを触る作業は難しく、上手く操作できない。
ジェスチャーコントロールも用意されているものの、やはり扱いにくい。

5.走行性能

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は4点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は4.5点

際立つディーゼルの乗り心地

Aクラスの走行性能は、ガソリン車とディーゼル車でやや異なる。
ガソリン車は、微小の凸凹を上手く吸収しきれず、常時ゴトゴトとした乗り心地だ。
直進安定性も今ひとつで、少しフラフラする印象がある。

対してディーゼル車は、車重が重くなったことも影響してか、直進安定性や乗り心地に不満はない。
なかなか上質な乗り心地と静粛性を披露した。

また、ディーゼルの最大トルクは320Nm、1.4Lターボの最大トルクは200Nmでこの差は歴然だ。
ディーゼル車はアクセルをグッと踏み込めば、かなり豪快な加速をしながらあっという間に速度を上げていく。クルージングも余裕たっぷりだ。

すべてが高次元にまとめられたゴルフ

ゴルフの設計は古いものの、毎年のようにアップデートが加えられていることもあり、色あせることのない優れた走りを実現している。
ハンドリング性能はまさに絶品で、ステアリング操作に対して的確に動く。

さらに、ステアリングホイールから伝わる路面やタイヤのインフォメーションも分かりやすく、クルマと一体になって走っている気持ちになる。

ゴルフには1.2Lと1.4Lの設定になっているが、走行性能では1.4Lが若干上回る。
1.4Lのリヤサスは、より高性能な4リンクを使うが、1.2Lはトレーリングアームとなる。
1.2Lの方がゴトゴトとした揺れがやや大きくなる。

6.安全装備

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は4点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は3点

Aクラスの安全装備は世界トップレベル

Aクラスには、フラッグシップセダンであるSクラスとほぼ同じレーダーセーフティパッケージが用意されている。
この予防安全装備には歩行者検知式自動ブレーキを始め、車線を維持しながら全車速で先行車に追従する機能や、高速道路で後方に接近車がいない場合ウインカーを点灯させ、ステアリング操作をアシストして車線変更できる機能なども付いている。

これらはメルセデス・ベンツAクラスの大きな魅力なひとつだが、なんと全車オプション設定だ。
今時、日本では軽自動車でも歩行者検知式自動ブレーキなどが標準装備化されてきている。
つまり、オプション設定でレーダーセーフティパッケージを選ばないと、軽自動車にも劣る予防安全性能のクルマということになる。

メルセデス・ベンツというプレミアブランドが安全装備をオプション設定するというのは顧客志向ではないし、こうした行いは最終的に、メルセデス・ベンツのブランド力を落とす要因にもなるだろう。

なんとか及第点のゴルフ

ゴルフには歩行者検知式自動ブレーキなど、一定の安全装備は標準装備化されている。
どのグレードを買っても一定の安全性能を持っている。
設計が古いこともあるが、Aクラスのレーダーセーフティパッケージと比べると、一昔前の機能や性能といった印象だ。
また、エントリーグレードのトレンドラインは、全車速追従式クルーズコントロールやレーンキープアシストなどの運転支援機能がオプション設定となっている。

7.リセールバリュー

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は3.5点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は3点

Aクラスは未使用車の出現がカギ

Aクラスで高めのリセールバリューが期待できる装備はレーダーセーフティパッケージ、ナビ、AMGライン装着車で、ブラック系のボディカラーが期待できそうだ。

まだ発売したばかりの新車なのでなんとも言えないが、先代と同等のリセールバリューになるだろう。
ただ、ディーゼル車は徐々に人気が高まっており、高値傾向になると予想できる。

ただし、2019年度はそれほど問題ないと思われるが、2020年度以降はやや相場が下がりそうだ。

メルセデス・ベンツは、多くの未使用車を送り出している。
未使用車とは、メーカーやディーラーの都合で、買い手がいない車両を自社名義で登録してしまったクルマだ。
一度登録すると中古車扱いになるため、新車価格から値下げをして販売しなくてはならない。

2019年度は新車効果で未使用車はあまり出ないと予想できるが、2020年度以降に一定数は流通し始めるだろう。
未使用車が流出することによって、高年式車の中古車価格は下落していく。
これが全体のリセールバリューを引き下げる元凶になるのだ。
年式が古くなれば、中古車価格は安定してくるが、3年落ち程度だとそれほど高いリセールバリューは期待できないかもしれない。

高くはないが安定しているゴルフ

ゴルフでリセールバリューがプラスに働く装備は、ナビとデジタルメーターだ。
ボディカラーは白、黒、シルバー系が高めになるだろう。

ゴルフは人気のコンパクトカーということもあり、輸入車のなかで中古車流通量が多い。
そのため、ゴルフのリセールバリューは平均的だ。
なかなか安定しているので、突如リセールバリューが下がる心配は少ない。

ただし、PHEVのゴルフGTEとEVのeゴルフには注意が必要だ。
EVやPHEV系はリセールバリューが恐ろしく低く、短期の乗り換えには向いていない。
しかし、リセールバリューが低いということは、中古車価格も安いということ。
クルマそのものは抜群に良いので、中古車で購入するのであれば狙い目だ。

8.購入時の値引き術

メルセデス・ベンツ Aクラスの評価は3.5点
フォルクスワーゲン ゴルフの評価は4.5点

Aクラスは未使用車に注目!

Aクラスは登場したばかりの新型車なのだが、A180は比較的値引きをして販売しているようだ。
同じCセグメントのゴルフやA3、1シリーズなどと競合させれば、一定の値引きが引き出せる。

また、メルセデス・ベンツの決算に合わせて12月末頃に未使用車として登録し、年明けに中古車店の店頭に並ぶ。
気に入ったグレードや色があれば、こうした車両を狙うというのもありだ。

ゴルフの値引きに期待大!

ゴルフはすでにモデル末期状態ということもあり、装備を大幅に向上させ、価格アップを抑えた特別仕様車を長期間に渡り販売し続けている。
こうした状況のため、値引きも期待できる。
もちろん、Aクラスや1シリーズ、A3などと競合させることが前提だ。

輸入車は在庫商売だ。
まずは、在庫に無いような仕様を選んで確認してもらおう。
在庫が無いと長い場合2~3か月待つこともよくあるが、営業マンは早く売りたいので在庫車を勧めてくる。そのときがチャンス。
「在庫車で妥協するので、値引きをしてくれないか?」と交渉するといいだろう。

9.まとめ・総合評価

メルセデス・ベンツ Aクラスの合計評価は30.5点/40点
フォルクスワーゲン ゴルフの合計評価は29.0点/40点

安全装備重視ならAクラス。コストパフォーマンスならゴルフ

オプションでレーダーセーフティパッケージを装着することを前提として、より高い安全性を重視するのであれば、メルセデス・ベンツAクラスを選択したい。
レーダーセーフティパッケージの機能は、業界トップレベルの実力だ。

また、購入時の価格より、日々のガソリン代が気になるというのであれば、ディーゼルを用意しているAクラスとなる。
ディーゼルは、ハイオクガソリンを使用するガソリン車に対して30円/L前後も安い軽油を使用する。
そのため、燃料費ではハイブリッド車並みで、ガソリンスタンドに行く手間も減る。

また、先進性の高いデジタルメーターやAIを駆使した対話型インフォテインメントシステムMBUXなどの新しい機能が好きな人にも向いている。
荷室や室内スペースも広く、完成度が高いので多くの人に勧められるクルマだ。

フォルクスワーゲン ゴルフの基本的な装備は合格点といえるが、先進性や機能のレベルはさすがにAクラスのレーダーセーフティパッケージにはかなわない。
AクラスのMBUXのような装備はなく、ナビ操作も古さを感じる。
これらや安全装備は、新型の8代目ゴルフに期待するしかない。

だからと言って、ゴルフがダメということはない。
走行性能面でAクラス以上のものがあり、走っていて楽しい。
これは、FF(前輪駆動)車をメインとしているフォルクスワーゲンならではのものだ。

さらに、価格もAクラスと比べれば安い。
全体のコストパフォーマンスという面では、Aクラスを上回る。
また、PHEVのゴルフGTEは、中古車になると激安だ。クルマは抜群によいので、ゴルフGTEの中古車という選択もありだ。