メルセデス・ベンツは、CセグメントのコンパクトカーであるAクラスをフルモデルチェンジし発売を開始した。Aクラスは、これで4代目となる。

この記事の目次 CONTENTS
4代目となったメルセデス・ベンツAクラス
メルセデス・ベンツらしくない? スッキリとしたデザインになった新型Aクラス
斬新で先進的なインパネデザイン
新1.4Lターボエンジンだけでは物足りない
予防安全装備は高額オプション!安全性能を売りにするメルセデス・ベンツらしからぬ設定
「ハイ・メルセデス」音声でクルマの機能を操作するMBUXとは?
今は待ち!?メルセデス・ベンツAクラスの選び方
メルセデス・ベンツ Aクラス価格とスペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

4代目となったメルセデス・ベンツAクラス

先代となる3代目メルセデス・ベンツAクラスは、非常に話題となった。2012年にデビューし、任天堂のゲームキャラクターであるマリオをCMに起用。これにより、多くの若年層にリーチできた。その結果、翌2013年Aクラスの販売台数は12,440台で、輸入車全体で4位となる。なんと、メルセデス・ベンツの基幹車種であるCクラスを上回ったのだ。

その後、AクラスをベースとしたコンパクトセダンであるCLAやSUVのGLAなどが続々投入されている。

メルセデス・ベンツらしくない? スッキリとしたデザインになった新型Aクラス

新型メルセデス・ベンツAクラスのボディサイズは、やや大きくなった。先代Aクラス比で、全長で+119㎜、全幅+16㎜、全高-12㎜となった。新型Aクラスのボディサイズは、全長4,419×全幅1,796×全高1,423mmだ。

完成度が高く、多くの人に好まれるデザインに

新型Aクラスのエクステリアデザインは、随分と雰囲気が変わった。先代Aクラスは、いかにもメルセデス・ベンツらしい押し出し感の強いコッテリとしたフェイスが印象的だった。しかし、新型Aクラスは打って変わって、かなりスッキリとしたデザインとなった。

このデザインは、メルセデス・ベンツのデザイン思想「Sensual Purity(官能的純粋性)」をベースとし、さらに一歩進めたものになっている。シンプルな面と線で構成されていて、全体的にかなりスッキリとした飽きのこないスタイルになった。ある意味、従来のAクラスのように、押し出し感の強さや迫力を好むユーザーにとっては、物足りなさを感じるかもしれない。デザインテイスト的には、フォルクスワーゲン ゴルフ的で、かなり完成度が高く、多くの人に好まれるデザインといえるだろう。

ボディ改良で安定感増加、より低燃費化に

新型Aクラスは、全幅がよりワイドになった。その影響で、リヤビューは、かなり安定感が増している。さらに、よりワイド感を強調する横長の2 分割リヤコンビネーションランプが設置された。このコンビネーションランプは、奥行き感がある造形で高級感と先進さをアピールしている。

また、ややボディが大きくなっているが、空気抵抗係数であるCd値 0.25セグメントトップクラスのエアロダイナミクスを誇る。空気抵抗を少なくすることで、より低燃費化している。

斬新で先進的なインパネデザイン

比較的保守的な外観デザインとなった新型Aクラスだが、インパネデザインはかなり先進的だ。ダッシュボードのデザインは、インストゥルメントクラスター上方のカウルを廃止し、反対側のフロントドアまで、一直線でワイド感あるデザインになった。より広さや開放感を感じる。

また、このクラスでは珍しい大型で横長のスクリーンディスプレイを2つ用意。ひとつはメーター類として機能し、もう一つは色々な装備のコントローラー的役割を果たす。

怪しい輝きを放つエアアウトレット

そして、エアアウトレットは、タービン形状のデザインが採用され、ややギラギラとした派手目の演出となった。オプション設定のアンビエントライトは全 64 色と、先代モデルの 5 倍に拡大。エアアウトレットなども設定色に合わせて、怪しい輝きを放つ。

新1.4Lターボエンジンだけでは物足りない

メルセデス・ベンツAクラスには、新開発の1.4Lターボエンジンのみが用意された。先代の1.6Lターボエンジンから、さらにダウンサイジングが進んだ。排気量は小さくなったが、先代1.6Lターボ比で、出力は +14PSとよりパワフルになっている。このエンジンの出力は136ps&200Nmとなった。出力以外では、ノイズの低減に力を入れたエンジンだという。

導入初期ということもあり、用意されたエンジンは、この1.4Lターボのみ。いずれ、よりパワフルなエンジンが追加されると予想できるが、割り切り過ぎた印象がある。

せめてマイルドハイブリッドくらいの装備は欲しい

また、ハイブリッド車が主流の日本において、旧態依然なガソリンエンジンでは燃費面で不利となり、エコカー減税などのメリットを顧客に提示できない。せめて、Cクラスに搭載されたマイルドハイブリッドの48VのBSGくらいは装備してほしいところだ。

予防安全装備は高額オプション!安全性能を売りにするメルセデス・ベンツらしからぬ設定

新型Aクラスは、先代Aクラスから大きく進化した部分が予防安全装備。なんと、歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備であるインテリジェントドライブは、Sクラスと同等となったのだ。フラッグシップと同等の安全性能をコンパクトカーのAクラスに惜しみなく採用するところは、さすがメルセデス・ベンツといえる。

このインテリジェントドライブには、何かと話題になっているドライバーの異常を検知して自動停止する「アクティブエマージェンシーストップアシスト」も搭載している。この機能は、ドライバーが走行中に気を失うなどの非常時には、自動的に車線を維持。緩やかに減速・停止するというものだ。とくに、高齢ドライバーには、大きな安心となる装備だ。

オプション価格は240,000円とやや高価な設定

しかし、残念なことに世界トップレベルの安全性能をもつインテリジェントドライブは、今のところ全車オプション設定。安全をアピールするプレミアブランドであるメルセデス・ベンツ車なのだから、全車標準装備化が当然だろう。

日本では、軽自動車でさえほぼ歩行者検知式自動ブレーキが標準装備されている。300万円を超える高額車でオプションというのは、メルセデス・ベンツの安全イメージを損なうことにもなりかねない。しかも、オプション価格は240,000円とやや高価な設定だ。

「ハイ・メルセデス」音声でクルマの機能を操作するMBUXとは?

新型Aクラスで注目されている装備が新開発の対話型インフォテインメントシステム MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)だ。

自然言語認識機能で従来より使いやすく

このMBUXは、自然対話式音声認識機能を備えたボイスコントロールなどが設定されている。このボイスコントロールは「ハイ、メルセデス」をキーワードとして起動。グーグルアシスタントのような使い方に近い。車内で使用する目的地入力、電話通話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、気象情報に加え、クライメートコントロール、各種ヒーター、照明など多様な便利機能に対応する。

従来のボイスコントロールは、ほぼ命令語が決まっていた。その通りに発話しないと機能しないケースがほとんど。しかし、 MBUX の音声認識機能は、自然言語認識機能を搭載。例えば、エアコンの温度を下げたいときには、「温度 24 度」という従来のような明確な命令だけではなく、「暑い」と言えば理解し温度を下げる操作をしてくれる。

前方不注意での事故が軽減されるメリットも

こうしたボイスコントロールができるMBUXだが、メリットは利便性だけではない。ドライバーは、各種コントロールスイッチの操作から解放されるということは、より運転に集中できるようになる。スイッチ操作で、前方監視がおろそかになり事故、といったリスクが軽減されるメリットもあるのだ。

今は待ち!?メルセデス・ベンツAクラスの選び方

新型メルセデス・ベンツAクラスのグレード選びは、エンジンが1.4Lターボしかなく、グレードも2つと非常にシンプルな設定なので簡単だ。設定グレードは、エントリーグレードのA180と上級グレードのA180スタイルの2グレード。選択肢が少ないので、もう少しグレードやエンジンの設定が増えてからが買い時といえる。よほど急いで買わなければいけない理由がなければ、しばらく様子見がよい。

お勧めは充実装備のA180スタイル

すぐにでも買わなくてはならないのであれば、やはりA180スタイルがお勧め。A180の価格は3,220,000円と、なかなか魅力的な価格だが、パワーシートやキーレスゴーも無い。ある程度納得いく装備となると、充実装備のA180スタイルになる。価格は3,620,000円となる。
ただ、非常に重要なオプションであるレーダーセーフティパッケージが240,000円。ナビが180,000円。この2つのオプションを装備するとは外せない装備。このオプションを追加するとA180スタイルの価格は4,040,000円と400万円オーバーになる。

狙い目はデビュー1年後の登録済み未使用車

メルセデス・ベンツは、多くの自社登録車を生み出している。恐らくAクラスもデビューから1年くらい経過すると、年末に多くの自社登録車が生まれてくるだろう。自社登録車とは、メーカーやディーラーの都合で買い手がいないのに自社名義で登録した車両だ。こうした自社登録車は、中古車扱いになるので登録済み未使用車として、主にディーラー系中古車店に並ぶ。ほぼ新車コンディションだが、一度登録していれば中古車扱いになるため、車両価格は大幅に値引きされて売られる。色や装備は限られるが、こうした登録済み未使用車を積極的に狙ってみるのもいいだろう。

メルセデス・ベンツ Aクラス価格とスペック

メルセデス・ベンツ Aクラス価格

グレード 価格
A 180 3,220,000円
A 180 Style 3,620,000円

メルセデス・ベンツ Aクラス スタイルスペック(欧州仕様車参考値)

全長×全幅×全高 4,419×1,796×1,423mm
ホイールベース 2,729mm
エンジン型式 M282
最高出力 136ps(100kW)/5500rpm
最大トルク 200N・m(20.4kg・m)/1460rpm
種類 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1332cc
ミッション 7速AT(7速DCT)
サスペンション形式(前:後) マクファーソン・ストラット式:トーションビーム式
タイヤサイズ(前:後) 205:60R16