ルノーは、CセグメントのコンパクトSUVである新型カジャーの発売を開始した。カジャーは、日産のCMF-C/Dアーキテクチャを使って開発されたSUV。それでいて。デザインはルノー独自のもので、SUVの中でもより都会的でスタイリッシュなものとなっている。

この記事の目次 CONTENTS
新型ルノー カジャー発売開始へ!
カジャーはコンパクトなスタイリッシュ系SUV
弟分のキャプチャーと区別が付かない?
レザーシートが標準装備された豪華な内装
使い勝手の良い荷室
残念なハイオク仕様で国内での人気は?
ルノー カジャーの選び方と価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

新型ルノー カジャー発売開始へ!

ルノーは、CセグメントのコンパクトSUVである新型カジャーの発売を開始した。

新型ルノー カジャーは、日産とのアライアンスをベースとして開発されたモデル。日産のCMF-C/Dアーキテクチャが採用されている。CMFとは、コモン・モジュール・ファミリーの略。5つの主要なコンポーネントセットをベースとし、モジュールを入れ替えることで、何百ものモデルバリエーションを実現するという。

CMFはコスト削減が期待できる

このCMFは、基本的に、外から見えないもの。そのため外板部分などを変更すれば違うクルマに見えるのが特徴でもある。主要部分を共通化さらた姉妹車のようなクルマがたくさん増やせれば、コストを大幅に削減できる。日産によると、CMFにより、購買コストを最大30%、開発コストを最大40%削減できる見込みだという。

今回、新型ルノー カジャーに採用されたCMF-C/Dは、実はエクストレイルに採用されているものと同じ。まらグローバルでは、日産「ローグ」、「キャシュカイ」など。ルノーでは「エスパス」、「タリスマン」、「メガーヌ」などにも採用されており、コストカットの努力が見える。

ただ、メーカー側は大幅なコストダウンが図られていても、我々が実際に購入するときの車両価格にはあまり反映されていないように見える。今後、コストダウンの恩恵が消費者にまで行き渉ことを期待したい。

カジャーはコンパクトなスタイリッシュ系SUV

新型カジャーのボディサイズは、全長4,455㎜×全幅1,835㎜×全高1,610㎜、ホイールベース2,645㎜となった。国内のエクストレイルと比べると、全長が-235㎜、全幅+15㎜、全高-130㎜、ホイールベース-60㎜となっていて、ひとクラス下のボディサイズだ。全体的にカジャーは、ワイドでやや低めの全高をもったスタイリッシュ系SUVといえる。

日本導入モデルはFF仕様限定

ただし、1,835㎜という全幅は、狭い道の多い日本ではやや扱いにくい。また、最小回転半径5.6mというのもCセグメント車としては大きめ。フォルクスワーゲンのティグアンは5.4m、ホイールベースが長いエクストレイルでさえ5.6mだ。

日本に導入されたカジャーは、FF(前輪駆動)のみとなった。悪路をガンガン走るというタイプではないものの、最低地上高200㎜、アプローチアングルは18°、デパーチャーアングルは28°となっていて、ラフロード程度なら難なく走れるパフォーマンスをもつ。

弟分のキャプチャーと区別が付かない?

カジャーのデザインは、ひとクラス下のキャプチャーと同じテイストでまとめられている。クルマに詳しくない人なら、どちらがカジャーか分からないくらいよく似ている。若干、カジャーの方がSUV的な泥臭さが無く都会的な印象だ。

ルノーらしいデザイン

そんなカジャーのボディラインは、曲線で描かれ筋肉を思わせる力感のあるフェンダーが特徴。左右のヘッドランプをつなぐように配されたクロームのラインは、ボディのワイド感を強調している。CセグメントのコンパクトSUVながら、ホイールは19 インチを装着。力強さをアピールする。

そして、ルノーデザインを象徴するCシェイプ LED デイタイムランプが装備されており、精悍さとひと目でルノー車であること強調。リヤランプも、フロントと共通するデザインの LED ランプを採用し統一感を出している。

レザーシートが標準装備された豪華な内装

カジャーのインテリアは、SUVっぽさの無い、洗練されたスポーティなデザインとなっている。シンプルなデザインながら、ブラック&シルバーのハイコントラストカラーでスポーティさを演出している。

上質な室内空間

質感も高い。フルレザーシート(前席シートヒーター付)、ナパレザーステアリング、ナパレザーシフトノブ、ダブルステッチを施したフロント左右ドアとセンターに配されたレザー調インナーハンドルとメータークラスターにより、上質な室内空間を創り出している。

メーターは、フルカラーTFT。表示できるカラーは、レッド、ブルー、ブラウン、グリーン、パープルの 5 色。メーターパネル中央の画面には、スピードメーター、タコメーター、オーディオ、運転支援システム(ADAS)を表示する。

使い勝手の良い荷室

カジャーの荷室容量は527L。ひとクラス上のエクストレイルが565Lなので、CセグメントのコンパクトSUVとしては、まずまずの広さをもつ。ただ、フォルクスワーゲンティグアンの615Lには、少々差をつけられたが、それでも充分な広さといっていいだろう。

リヤシートは、6:4の分割可倒式。ラゲッジ両サイドにあるハンドルを引くと、それぞれ簡単に倒すことができる。

広大なラゲッジスペースが出現!

ラゲッジには、前後 2 枚のラゲッジボードが開口部と同じ高さに設置されている。通常時ラゲッジは上下 2 分割されており、この状態でリアシートを倒すと、フルフラットのラゲッジスペースとなる。さらに、2 枚のラゲッジボードをラゲッジ床面に設置すると、ラゲッジ容量はさらに拡大する。

ラゲッジボードは、多彩な荷室アレンジが可能。例えば、リアシートを起こした状態で、2 枚のラゲッジボードのうち奥側 1 枚をラゲッジ床面に設置し、手前の 1 枚をラゲッジ中央に垂直に設置すると、ラゲッジが前後に 2 分割される。買い物袋などの転がりやすいものを収納するのに便利なスペースを作り出せる。その他、3分割モードもあり、積載する荷物に合わせ使い分けが可能だ。

残念なハイオク仕様で国内での人気は?

カジャーには、パワーユニットはH5F型の1.2L直噴ダウンサイジングターボ。キャプチャーと同じだが、ややパワーアップされ最高出力は 131ps/5,500rpmとなった。最大トルクは 205Nmと同じ。自然吸気2.0L車並みの最大トルクとなる。 ミッションは、キャプチャーより1速増えたツインクラッチの7速AT(7EDC)。

足を引っ張りそうなのが、使用燃料はハイオクガソリンだという点。ルノーに限ったことではないが、日本マーケットにおいて、こうしたコンパクトモデルでハイオク仕様というのは、なかなか選びにくい。

日本では、レギュラーガソリン仕様のハイブリッド車が人気だ。もはや、ただのガソリン車では、燃費で勝つことはできない。デザインや走りが魅力な輸入車とはいえ、ハイオク仕様のままでは、日本国内の顧客に更なるランニングコストの負担を増やすことになる。

日本メーカーのほとんどが、欧州ではハイオク仕様としていても、日本に導入するときにはレギュラーガソリン仕様に変更する。ルノーもより販売台数を増やしたいのであれば、こうした日本に合った仕様に変更して導入するべきだろう。

先進予防安全装備の充実が今後の課題

同様に、先進予防安全装備も物足りない。カジャーには、2 台のカメラ、12 個のセンサー、そしてミリ波レーダーを装備する。カメラもミリ波レーダーもあるのに、歩行者検知ができないのは残念だ。日本では、軽自動車でも歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化しているモデルがあるくらいなので、より高度な予防安全装備が求められる。

ただ、サイド&カーテンエアバッグなどは標準装備化。後側方車両検知警報、障害物を検知して警告音で知らせる、パーキングセンサー(フロント・リア・サイド)+リアカメラ、自動でステアリング操作を行い車庫入れをサポートするイージーパーキングアシストなどの日常的に使う安全装備や運転支援システムは充実している。

ルノー カジャーの選び方と価格

ルノー カジャーの選び方。カジャーのグレードは、インテンスの1グレードのみの設定。選択肢はない。レザーシートや運手席電動シート、LEDヘッドライトなど装備が充実したグレードなので満足度は高い。

長年乗るタイプの人に向くクルマ

ルノー車の全般的にリセールバリューがあまり高いとは言えない。流通量そのものが少ないので、リセールバリューの振れ幅も大きい。そのため、短期で乗り換えするタイプというよりは、乗り潰すタイプの人に向くクルマ。カジャーはまだデビューしたばかりのモデルだが、こうした傾向があることを理解しておくことが必要だ。

■ルノー カジャー価格:インテンス 3,470,000円