BMWは電気自動車(EV)であるi3を初のマイナーチェンジを施し発売した。最新i3の航続距離は最大511㎞となっている。

この記事の目次 CONTENTS
車重が重要なキーを握るEV開発
BMW i3 はワンペダルドライブの先駆者
外観のデザイン変更が中心のマイナーチェンジ
BMW i3の選び方はエクステンダーの有無から
装備面で最上級グレードのSUITEがおすすめ
リセールバリューが低い中古のEV
BMW i3価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

車重が重要なキーを握るEV開発

BMW i3は2014年に登場。i3は単なる電気自動車としてではなく、BMWの未来を占うモデルとしての役割ももっていた。その一つが、ボディの軽量化のため用いたにカーボンボディだ。
電気自動車は、航続距離の短さがデメリットとされている。航続距離を伸ばすこと自体は、搭載されるバッテリー容量を増やせば簡単に解決できる。しかし、それでは車重が重くなり、電費も悪化し効率が悪い。さらに、高価なバッテリーを大量に搭載すれば、価格もドンドンと高価になり、一般の顧客が買えるような価格にはならない。
容量の大きなバッテリーを搭載しながら、車両重量を軽くし効率を上げること。これがEV開発において重要なキーである。

BMWの答えはカーボンボディだった

BMWの回答は、カーボンボディを採用することで、大きく重いバッテリーのデメリットを解消することだった。

カーボンボディとアルミを組み合わせることで、i3の車重を1,260㎏に抑えることに成功した。搭載されたリチウムイオン電池の容量は21.8kWh。先代日産リーフの24kWhとほぼ同等。リーフの上級グレードは、1,460㎏という車重だったので、i3は200㎏も軽量だった。

このカーボンボディの軽量化技術はi3で終わることなく、他のBMW車にも徐々に採用されており、未来のBMW車において重要な軽量化技術の基盤にもなった。

BMW i3 はワンペダルドライブの先駆者

シリーズハイブリッド方式を採用し、爆発的なヒットとなった日産ノートe-POWER。このモデルには、回生ブレーキを使って発進から停止までアクセルペダルひとつでできるe-Pedalが話題になり、売れている要素のひとつとなっている。
日産のe-Pedalと同じ機能をすでにi3は、2014年にワンペダルドライブとして提唱していた。

最新i3の航続距離は最大511㎞

そしてi3の魅力は純粋な電気自動車だけでなく、発電用の647㏄のガソリンエンジンを搭載したレンジエクステンダーが用意されていたことだ。バッテリーの電力が無くなると、エンジンが発電し電力を供給。EV仕様では約180kmだった航続距離を約300㎞まで伸ばすことができる。重いエンジンが搭載されたことで、車重はやや重くなり効率は落ちるものの、いざというときにガソリンが使えるという使い勝手の良さが魅力となっている。

最新のi3には、2016年の改良で33kWhという大容量バッテリーが搭載された。EVモデルの航続距離を従来モデルから約70%アップさせ390kmへと伸ばしている。さらに、レンジエクステンダー付きモデルは、511㎞という航続距離を誇る。

外観のデザイン変更が中心のマイナーチェンジ

2016年に33kWhの大容量バッテリーを搭載し航続距離を390㎞に伸ばしていることもあり、今回のマイナーチェンジは主に外観デザインの変更となった。

フロントフェイスは、横長のLEDターンインジケーターを装備。バンパーデザインは、よりワイドでワイドなタイプになり、より迫力のある顔になっている。また、LEDヘッドライトを全モデルに標準装備した。

さらに印象的なデザインに

リヤデザインもフロントフェイス同様なワイドな印象を与える新デザインのバンパーとなった。リヤゲートには、一直線に引かれたマットクローム加飾が加わった。i3は、元々個性的なデザインだったが、さらにアクの強いデザインとなり、一度見たら忘れないくらい印象的だ。

BMW i3の選び方はエクステンダーの有無から

BMW i3の選び方は、まずエクステンダー付きかピュアEVかという選択になる。ピュアEVでも、すでに航続距離は390㎞となっている。都市部での充電インフラは、かなり整備されているので、ピュアEVでもそれほど困ることはない。

航続距離に不安ならエクステンダー付きモデルを

どうしても航続距離に不安を感じたり、充電インフラが整備されていない場所への移動が多いというのであれば、やはりエクステンダー付きモデルがよい。エクステンダー付きなら、搭載されたエンジンがガソリンを使い発電するので、航続距離が121㎞伸びる。充電環境が整っていない場所などで、いざという時に頼りになる。ただし、エンジンが搭載されていることもあり、価格は約50万円高価になる。また、車重も重くなるので電費は悪くなる。

装備面で最上級グレードのSUITEがおすすめ

BMW i3のグレードは、「ATELIER(アトリエ)」、モダンでナチュラルな「LODGE(ロッジ)」、上質かつ高級感あふれる「SUITE(スイート)」と3つが設定されている。

まず、エントリーグレードのATELIERは外して考えたい。このグレードは、追従式のクルーズコントロールや自動ブレーキなどがオプション設定となっていて、先進性の高いEVとして、また安全性能面でも物足りない仕様だ。こうした安全装備はオプション設定で設定されているので装備できる。しかし、オプション装着すると中間グレードのLODGEとほぼ同等の価格になる。こうなると、あえてATELIERを選ぶ理由が見当たらない。

満足度はオプション設定で変化する

ただ、このLODGEがベストな選択かというと少々微妙。なんと、シートヒーターがオプション設定。EVは暖房の効き目が弱いので、冬場はシートヒーターは必需品。LODGEを選ぶ場合、シートヒーターやサンプロテクションガラスなどがセットになったオプションを選択がベストだ。

こうしたオプションを装着すると、当然価格がアップする。そうなると、結果として最上級グレードのSUITEと同等の価格帯になってしまう。内装のカラーなど若干好みによる差が出てくるかもしれないが、i3のおすすめグレードは結局最上級グレードであるSUITEになる。

リセールバリューが低い中古のEV

中古車のEVに対して、マーケットの反応は鈍い。そのため、EVのリセールバリューは極めて低くなっている。こうした傾向を踏まえると、新車を買って短期で乗り換えるような使い方では損をするだろう。乗り潰すことが前提となる。

その分、中古車はかなりお買い得

リセールバリューが低いのは、i3も例外ではない。しかしこれは、中古車価格が安いことを意味するため、中古車でi3を買おうと思っている人にはむしろ朗報だ。

1年落ちの2017年式で、すでに中古車価格は350~400万円になっている。ざっくり新車価格の60%程度まで落ちているのだ。これだけの高年式車が、ここまで価格を下げているのは珍しく、程度の良い中古車が低価格で手に入る。新車価格は、600万円以上のモデルなのだから、非常に魅力的だ。

i3のように最新テクノロジーを満載したモデルが、この価格帯になっているのであれば、積極的にEVという選択肢も悪くない。

BMW i3価格

・BMW i3 Atelier 5,380,000円
・BMW i3 Lodge 5,800,000円
・BMW i3 Suite 5,950,000円
・BMW i3 Atelierレンジ・エクステンダー装備車 5,870,000円
・BMW i3 Lodgeレンジ・エクステンダー装備車 6,290,000円
・BMW i3 Suiteレンジ・エクステンダー装備車 6,440,000円