この記事の目次 CONTENTS
生まれ変わった2代目
サイズ感とデザインに課題があった先代
スペーシアカスタムの進化!
より広く、便利になったインテリア
細かい部分の使い勝手を向上
安全装備面が格段に進化
サイドエアバッグ嫌いのスズキが、なぜ標準装備化?
全車マイルドハイブリッドを搭載!
スズキ スペーシアの選び方
スズキ スペーシア価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

生まれ変わった2代目

スズキは、背高の軽自動車であるスペーシアをフルモデルチェンジした。フルモデルチェンジにより、スペーシアは2代目となった。

初代スペーシアは、スーパーハイト系と呼ばれるセグメントに属する。このクラスのライバルは、軽自動車販売台数ナンバー1で圧倒的な人気を誇るホンダ N-BOX。そのN-BOXを僅差で追うのがダイハツ タントだ。

実力はあるも売れなかった先代

しかし、ライバルに対して初代スペーシアの販売台数は大敗を喫している。2016年度販売台数ナンバー1となったN-BOXの販売台数は、なんと192,368台。タントはやや離され148,727台となった。そして、初代スペーシアは92,711台に終わっている。残念ながらスペーシアは、N-BOXの半分も売れていない。

この結果は、スペーシアの実力が大きく劣っていたわけではない。逆にスペーシアは、クラストップレベルの実力をもつ。スペーシアの最終モデルの燃費は、マイルドハイブリッド機能を搭載し、クラストップの32.0㎞/Lを達成。

この燃費値は、タントやN-BOXを圧倒していた。しかも、スズキの軽量化技術により、ライバルより100㎏前後車重が軽いのだ。車重が軽いため、ライバルに対して、より力強い走りを披露。燃費と動的性能は、クラストップといえるほどの完成度だったのだ。

サイズ感とデザインに課題があった先代

初代スペーシアは、クラストップレベルの実力を持ちながら、なぜ売れなかったのか?  それは、メカニズムではない部分にあった。

売れな買った理由は、まず全高がライバルより低く小さく見えた。このクラスの顧客ニーズは、とにかく大きく見えること。初代スペーシアは、ライバルに対して、全高がやや低かった。

そして、デザインでもマーケットニーズとは異なるものとなっていた。とくに、スペーシアカスタムが不評だった。これも、悲しいことに悪いデザインという訳でななかった。むしろ、上品なデザインであったことが売れない理由となってしまっていた。

顧客のニーズ把握が必要だった

カスタム系を好む顧客は、デザイン性というよりも、とにかく迫力と威圧感、大きく見える顔、目立つことが重要視する。上品なデザインでは、こうしたニーズに合わなかったのだ。

ライバル車は、そうしたポイントを熟知。デザイン性というより、マーケットニーズを取り入れた。新型N-BOXなどは、さらにライバル車より目立つために、LEDだけでなく、流れるように光るシーケンシャルウインカーを装備。シーケンシャルウインカーは、主に高級車向けの装備だったものを軽自動車に採用するほどだ。

2代目スペーシアを開発する上で、初代スペーシアの反省点をいかに克服するかが、重要な課題だったのだ。

スペーシアカスタムの進化!

2代目スペーシアは、初代スペーシアの弱点を克服。全高を1,785㎜とし、初代スペーシアに対して50㎜高くした。N-BOXと比べると-5㎜と微妙に低い程度だ。これで、小さく見える、と言われた部分を改善。

デザインも売れるデザインにとした。空気抵抗が増え、燃費値が落ちる傾向になるのだが、フロントフェイスを大きした。空気抵抗は増える傾向にあるものの、クルマ全体にボリューム感が出て、安定感のあるフォルムになっている。

迫力あるデザインに

標準車は、こうした大きく四角い顔でも、角を丸くすることで女性にも好かれるような優しいデザインとしている。小さな軽自動車らしい、可愛らしいデザインだ。

そして、大敗を喫してしまったカスタムのデザインは、大きくなった顔を生かし、大型のグリルを顔いっぱいに広げ迫力あるデザインとした。デザイン的に優れているかどうかは別として、迫力がありよくも悪く目立つデザインだ。大きな顔と鋭い眼光のLEDヘッドライトも装備された。

結果的に、こうした迫力系デザインは、各社似たようなテイストになる。スペーシアらしさという点では、少々微妙だが、販売台数を増やすためには仕方のない選択といえる。

より広く、便利になったインテリア

新型スペーシアのインパネは、広さを強調できる水平基調のデザインを採用。助手席側は、やや前方に張り出したデザインとすることで、テーブルのように使える。さらに、上部に開閉でき収納スペースとしても使え、その下には、通常のグローブボックスも用意。収納スペースは豊富だ。

広大な室内空間を実現!

そして、クルマの基本骨格部分となるプラットフォームも一新され「HEARTECT(ハーテクト)」が採用された。ホイールベースを2,460mmと先代スペーシアに対して+35mm伸ばしている。その結果、先代スペーシアよりも広い室内空間を得た。だが、ライバルN-BOXのホイールベースは2,520㎜を超えることはできていない。ホイールベースが短い分、スペーシアの最小回転半径は4.4mとN-BOXより0.1m小回りが効く。

室内スペースは、前席の左右乗員間距離を30mm、ショルダールームを25mm拡大、後席はヘッドクリアランスを45mm拡大。より広大な空間を作り上げた。

細かい部分の使い勝手を向上

新型スペーシアは、細かい部分の使い勝手も向上させていて完成度を高めている。まず、リヤステップ地上高を345mmと低く設定。スライドドア開口幅を20mm広げて600mmに、開口高を20mm高くして1,250mmとした。より低く幅広いスライドドアにすることで、子供やお年寄りが楽に乗降できるようになった。

シートアレンジ面では、N-BOXほどの多彩な設定は無く、ワンタッチダブルフォールディング式リヤシートの採用程度といったところだ。

室内には様々な工夫が

また、このクラスの軽自動車は、高い室内高を生かし、リヤシートに自転車などを積載するケースが多い。そのため、リヤシートを格納した際のラゲッジ面の段差を抑えよりフラットとした。リヤシートを両席格納すると27インチ自転車を搭載可能となっている。

また、バックドア下段のトリムに溝を設けた。これは、自転車のタイヤを溝に沿わせることで自転車積載しやすくするためのガイドを設置している。

安全装備面が格段に進化

新型スペーシアの安全装備面は、格段に進化した。まず、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備が、カタログ上は全車標準装備化された。今まで安全装備に対して積極的ではなかったスズキにしては、大きな進歩だ。

ところが、こうした標準装備化を台無しにしているのだ、先進予防安全装備のレスオプション。カタログ前面にレスオプションがあることを強烈にアピール。これでは、なんのために標準装備化したのか意味が無くなっている。一旦標準装備化された優れた先進予防安全装備を外すためのレスオプション設定は、メーカーの安全に対する意識の低さを感じさせる。

一歩進んだ先進予防安全装備は選択可能

クルマは扱い方を誤ると人を殺すことがある。スペーシアでは、約6万円でこうしたリスクを下げる先進予防安全装備が装備されている。人を殺すことがある製品を売っている自動車メーカーは、自らこうした安全装備を標準装備化して交通事故を減らす努力をする責任がある。

サイドエアバッグ嫌いのスズキが、なぜ標準装備化?

新型スペーシアの先進予防安全装備には、後退時の衝突被害軽減ブレーキを軽自動車で初採用された。車両後方にある障害物を検知し、自動でブレーキが作動する。同時に、後方誤発進抑制機能、リヤパーキングセンサーも搭載している。

単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」や、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能と、ヘッドランプのハイビーム/ロービームを自動で切り替えるハイビームアシストも搭載した。高速道路などの逆走防止などに役立つ「標識認識機能」は、スズキ車初採用。
 
また運転が苦手な人や高齢者に嬉しい、周囲を立体的に360°確認できる3Dビューを軽自動車で初採用。後退時など、モニターだけを注視してしまって周囲の確認しないドライバーが多い。だが「左右確認サポート機能」も搭載されているので、自車の前方および後方で左右から人や物が自車に近づいてくることが分かり安全性はさらに高まる。

フロントシートサイドエアバッグが全車に標準装備

新型スペーシアには、フロントシートサイドエアバッグが全車に標準装備された。

スズキは、サイドエアバッグが嫌いなメーカー。多くのモデルでオプション設定さえされていない状態だった。そんなスズキがスペーシアにサイドエアバッグを標準装備化したのには訳がある。

それは、2018年6月から改正される新保安基準であるポール側面衝突時の乗員保護に関する部分だ。この新保安基準は、サイドポール衝突などとも呼ばれ、側面を電柱などに衝突させたときに、乗員の安全を確保するもの新保安基準。狭い部分にエネルギーが集中するため、死亡事故になりやすい。

この衝突安全基準は、サイドエアバッグ無しでクリアすることは難しいとされる。今回、新型スペーシアは、新保安基準に合わせて前倒しして装着するしかなかったのだろう。それでも、前倒しで装備したことは評価できるし、このクラスで現在サイドエアバッグまで標準装備化しているのはスペーシアだけだ。

全車マイルドハイブリッドを搭載!

新型スペーシアに搭載されたエンジンは2タイプ。52ps&60Nmを誇る自然吸気直3 DOHCと64ps&98Nmの直3 DOHCターボの2タイプだ。標準車は自然吸気のみ、スペーシアカスタムには自然吸気エンジンとターボエンジンが用意された。すべてのエンジンがマイルドハイブリッド仕様になっている。

このマイルドハイブリッド機能は、ワゴンRのものと基本的に同じ。モーターによるクリープ走行と、幅広い速度域でモーターがエンジンをアシストすることで低燃費化している。

静かで低振動も魅力のひとつ

減速して車速が約10km/h以下になり、アクセルもブレーキも踏んでいない時や、アイドリングストップ後の停車からの発進時に、最長10秒間のモーターによるクリープ走行が可能。クリープを積極的に使ったストップ&ゴーを使えば、実燃費を向上させることができる。

新型スペーシアの燃費は、最も高い数値のグレードで30.0㎞/L。先代モデルの32.0㎞/Lから、若干燃費が落ちている。これは、主に装備が向上した分、車重が重くなっていることや、顔を大きくしたことによる空気抵抗などがが要因だろう。燃費値が下がったとはいえ、N-BOXの27.0㎞/Lを大きく上回っている。

またマイルドハイブリッド機能を搭載していることから、アイドリングストップからの再始動時に、エンジンがキュルキュルと大きくなることが無く、静かで低振動なのも魅力のひとつだ。

スズキ スペーシアの選び方

スペーシアを選ぶ上では、まず標準車かカスタムかという選択になる。価格は20万円以上カスタムの方が高価になるので、予算重視というのであれば標準車がお勧めだ。ただ、ターボ車が欲しいとなると、カスタムの最上級グレードしか選べない。カスタムのリセールバリューは、標準車に対してやや高めになっている。

標準車は、XとGの2グレード構成。お勧めはX。Gには、パワースライドドアが装備されていない。両側スライドドアが魅力のクルマなので、やはりパワースライドドアは外せない装備だろう。その他、細かい装備差もあり、満足度を考えるとXだ。価格差は約13万円となっている。

ライバル車に比較しリーズナブル&コストパフォーマンスが高い

カスタムもXSとGSの2グレード。価格差は約11万円。どちらも基本的な装備はしっかりしているので、予算重視ならGSでもいいだろう。ただ、高価な軽自動車であることを考えると、より充実した装備のXSがお勧めだ。
 
4WDは、やや高価なので降雪地域以外の人はFFでも十分だろう。ターボ車は、積極的に高速道路などを使いレジャーなどに使うような人にある。市街地走行で近場での使い方なら、自然吸気エンジンで十分だ。

スペーシアの価格は、ライバル車に対してリーズナブル。コストパフォーマンスに優れているのも特徴だ。

スズキ スペーシア価格

■スズキ スペーシア価格
・HYBRID G 2WD 1,333,800円/4WD 1,454,760円
・HYBRID X 2WD 1,468,800円/4WD 1,589,760円

■スズキ スペーシアカスタム価格
・HYBRID GS 2WD 1,576,800円/4WD 1,697,760円
・HYBRID XS 2WD 1,690,200円/4WD 1,811,160円
・HYBRID XSターボ 2WD 1,787,400円/4WD 1,908,360円