GLCより、ワイド&ローなスタイリッシュなフォルムになったGLCクーペ


メルセデス・ベンツは、SUVであるGLCをベースとし、クーペのデザインをプラスしたクロスオーバー車である新型メルセデス・ベンツGLCクーペの発売を開始した。
GLCクーペのベースとなるGLCは、2016年2月に発売されたSUVだ。GLCは、GLKの後継となる車種でもある。このGLCよりメルセデス・ベンツは、SUVのクラスをより分かりやすく分類するようになった。まず、SUVシリーズをGLとし、その後に続くアルファベットをA、C、E、Sとして、サイズをセダン系と同じにしたのだ。このことから、今回の新型GLCクーペは、セダンで例えるとCクラスサイズのSUVということになる。

新型GLCクーペは、ベースのGLCと比較すると、やや大きくなっている。
GLCクーペのボディサイズは、全長4,735×全幅×1,930×全高1,605mm。GLCに対して全長が+65㎜、全幅が40㎜、全高は-40mmとなっている。全高を除くと、ひと回り大きくなった印象だ。GLCでも日本の狭い道では、やや扱いにくい感じがあったが、GLCの全幅は1,930㎜さらにワイドになっているので、国内ではやや使いにくいサイズのSUVといえるだろう。
また、全高は-40㎜とし、ワイドになった全幅も含めると、ワイド&ローを強調したよりスタイリッシュなフォルムになっている。

美しいルーフ、リヤまわりのデザイン


メルセデス・ベンツGLCクーペ

新型GLCクーペの美点は、やはりデザイン。とくに、サイドビューが特徴だ。
真横から見たシルエットで特にルーフラインに注目したい。滑らかな曲線をもつルーフラインは、後端に向けて柔らかにドロップしていく。
ショルダーラインから上部だけ見ていると、まさにクーペと思えるシルエットをもつ。なかなか美しいデザインだ。

こうしたクーペとのクロスオーバー車は、世界的に一定の人気を得ている。
BMWからは、X4やX6、ポルシェにはマカンなどがあり高い人気を誇っている。国産車では、トヨタC-HRがこうしたデザインテイストを生かし非常によく売れている。
フロントフェイスのデザインは、メルセデスクーペのトレードマークとなっている垂直に切り立ったダイヤモンドフロントグリルが採用。シングルルーバーにスリーポインテッドスターを一体化することで、メルセデス・ベンツのスポーツモデルのイメージをもつ。こうしたスポーツ系デザインに本来なら不釣り合いなSUVらしいワイルドなアンダーガードが違和感なく加えられている。

メルセデス・ベンツGLCクーペ

そして、リヤデザインは、エグゾーストエンドを一体化したパワフルなデザインが採用されている。スポーティな印象を高めながら、ディフューザー形状のアンダーガードを装備し、SUVらしいワイルドさを見事に融合させている。
インテリアデザインは、CクラスやGLCとほぼ同じ。カッチリとしたメルセデス・ベンツらしい上質な質感が魅力だ。GLCクーペは、全高を下げたことの弊害で、ややヘッドクリアランスが少なめ。広々とした室内とはいいにくい。とくに、リヤシートのヘッドクリアランスは少なく、リヤシートの背もたれに体を預けやや上部を見ると頭がルーフに当りそうな感じがする。大柄の人には、厳しい空間と言えるので、後席にゲストを乗せることが多い人は、必ずチェックしておくといいだろう。


豊富な5タイプのパワーユニットを用意。燃費値は良好


メルセデス・ベンツGLCクーペ

GLCクーペに搭載されたエンジンは5タイプと豊富。2.0Lターボが2タイプ、2.2Lクリーンディーゼルが1タイプ、2.0Lターボ+モーターのPHEVが1タイプ、3.0L V6ターボが1タイプとなっている。2.0Lターボは、GLC200クーペが184PS&300N・m。GLC 250 4MATICクーペは、211PS&350N・mとなっている。
2.2LクリーンディーゼルのGLC 220 d 4MATICは170PS&400N・mを発揮。メルセデスAMG GLC 43 4MATICクーペには、パワフルな367PS&520N・mを発揮するMercedes-AMGが専用に開発した高出力の3.0L V6ツインターボが搭載された。
PHEVとなるGLC 350 e 4MATICクーペには、211PS&350N・mの2.0L直4ターボエンジンに、116PS&340N・mの高出力モーターを組み合わせシステム全体で320PS&560N・mというパワフルさを誇る。
燃費は2.0LターボのGLC200クーペが13.5㎞/Lもしくは13.6㎞/L。GLC 250 4MATICクーペが13.4㎞/L。クリーンディーゼルのGLC 220 d 4MATICが16.2㎞/L。AMG GLC 43 4MATICクーペが10.3㎞/Lとなっている。総じて良好な燃費値といえる。

走行状況に応じて車高をコントロールするエアサスモデル


GLC 250 4MATICクーペ スポーツ、GLC 250 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)とGLC 350 e 4MATICクーペ スポーツには、AIR BODY CONTROLサスペンションが設定された。AIR BODY CONTROLは車速や走行条件に応じて、ダンピング特性や車高を自動的に調整する電子制御式エアサスペンション。
路面状況、運転状況、乗車人数や積載状況に応じて、減衰力を常に最適に保つ。また、高速走行時には車高が自動的に下がり、ハンドリング性能、空力特性および燃費を向上させる。
荒れた路面などでは、最低地上高を180㎜から15mm高めラフロードなどでの走破性を向上。
乗車人数などによる車体姿勢の変化を補正するセルフレべリング機能により、安定したハンドリング特性を実現した。

GLCシリーズの最低地上高は180㎜となっていて、SUVとしてはやや少ない最低地上高になっている。
エアサスモデルは、+15㎜最低地上高をアップできるとはいえ、それでも195㎜。BMW X4でも205㎜ある。基本的には、オンロード主体のSUVという印象が強い。  


世界トップレベルの安全性能をもつレーダーセーフティパッケージを標準装備化し高い安全性能を誇る!


メルセデス・ベンツGLCクーペ
GLCクーペには、世界トップレベルの安全性能をもつ「レーダーセーフティパッケージ」が標準装備化されている。
レーダーセーフティパッケージは、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備などを含んでいる。この機能が優れているのは、360度全方位で高い安全性能を誇っているところだ。
クルマの周囲ほぼ360°をカバーする複合的なセンサーシステムは、フロントウインドウ内側のステレオマルチパーパスカメラを装備。

レーダーセンサーは、フロントおよびリアバンパーに内蔵された25GHzの短距離レーダー計4個、ラジエーターグリル奥の77GHzの中・長距離レーダー1個、リアバンパー中央の25GHzマルチモードレーダー1個の合計6個が搭載されている。
こうしたセンサーやカメラから得た膨大なデータをコントロールユニットが一瞬にして処理。
リスクを顕在化した場合、速やかにドライバーに警告。ドライバーが警告に対して回避操作などをしない場合、システムが自動で事故を回避もしくは被害軽減してくれる。
こうした安全装備が標準装備化されたことは、顧客にとって非常に心強い。クルマは、扱い方を誤れば死傷事故に直結する。試乗事故を起こす可能性が高い商品を製造し販売しているメーカーは、こうしたリスクを回避する技術があるのなら、積極的に採用する義務がある。しかし、未だ多くの自動車メーカーは、こうした安全装備を標準装備化せずにオプション装備化する傾向がある。価格が高くなると売れないというのが、その理由だ。
しかし、死亡事故を起こす商品を売りながら、安全性能の低い商品をメインで売り、より安全なものが欲しければプラスでお金を出せ! と、顧客に要求するのはあまりに矛盾している。より安全な商品をマーケットに送り出す責任がメーカーにはある。

最近では、こうした先進技術も安価になってきており、死傷事故をできる限り回避できるようになった。メルセデス・ベンツのように、オプション装備とせず、標準装備化することでメーカー自らの死傷者事故を減らすという姿勢を示しているのは高く評価できる。

ラゲッジスペースは、クーペ化によりやや狭くなった


スタイルを重視したクーペボディなので、室内空間はやや狭い。後席のヘッドクリアランスだけでなく、デメリットは、ラゲッジスペースにも出ている。GLCではも余裕あるラゲッジスペースとはいえないが、550Lあったラゲッジスペースが500Lへ減少。多くの荷物を積んで、4人乗車でレジャーを楽しむというタイプのモデルではないだろう。それでも、GLCクーペだけが狭いという訳ではなく、ライバル車となるBMW X4も同等のスペースになっている。

GLCクーペの選び方。激速PHEVも魅力的だが高価過ぎ! 価格とのバランスの良いクリーンディーゼル車がお勧め!


メルセデス・ベンツGLCクーペ

GLCクーペは、まずFR(後輪駆動)か4MATIC (4WD)かという選択になる。最近では、SUVでも2輪駆動モデルの比率が高くなるモデルが多い。価格も安価で、燃費も良いというのが理由だ。
しかし、GLCクーペのFRモデルは、2.0LターボのGLC200クーペしかない。他のエンジンには、FRの設定は無く、全車4WDのみになってしまう。
ガソリン車の人気は衰え、日本でもクリーンディーゼル社が人気になっていることを踏まえれば、クリーンディーゼル車にもFRモデルがあってもいいだろう。こうなると、お勧めのFRグレードは無い。
今後、よりCO2低減が求められるようになると、今選ぶグレードでも単純なガソリン車は選びにくい。輸入車でもクリーンディーゼル車が人気を得ていることから、リセールバリューを考えても、ガソリン車という選択はリスクが高い。
こうなると、PHEVのGLC 350 e 4MATIC クーペが魅力的に見えてくるのだが、価格は9,030,000円とかなり高価。いくら安価な電力を使いEV走行ができるとはいえ、近距離で毎日クルマを使うような人にしかメリットが無い。

とくに、このPHEVモデルのハイブリッド燃費はガソリン車と大差が無いため、ロングドライブではガソリン車並みの燃費となり、ますますメリットが無くなる。やたらと速いモデルであるというくらいだ。
こうなると、誰にでも勧められるのがクリーンディーゼル車だ。ハイオクガソリン仕様のガソリン車に比べ、クリーンディーゼル車に使う軽油は30円/L前後も安いので、非常に経済的で燃費も良い。それでいて、最大トルクは400Nmもあり、大きく重いSUVとの相性も良く、力強くスポーティな走りも可能だ。また、最近の輸入車は、クリーンディーゼル車の人気が高い。今後、中古車マーケットでもクリーンディーゼル車の人気は高くなることが予想できるので、リセールバリューを考えてもクリーンディーゼル車がお勧めといえる。


メルセデス・ベンツGLCクーペ価格


・GLC 200 クーペ 6,270,000円
・GLC 200 クーペ スポーツ 6,670,000円
・GLC 220 d 4MATIC クーペスポーツ 7,130,000円
・GLC 220 d 4MATIC クーペスポーツ(本革仕様) 7,750,000円
・GLC 250 4MATIC クーペスポーツ (本革仕様) 7,990,000円
・GLC 350 e 4MATIC クーペスポーツ 9,030,000円
・メルセデスAMG GLC 43 4MATIC クーペ 9,100,000円

執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。


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