トヨタC-HRトヨタは、コンパクトSUVの新型「トヨタC-HR」 の発売を開始した。この新型C-HRは、デビュー前から話題になりプリウスSUVとも呼ばれていた。



30.2㎞/Lという優れた低燃費を実現したハイブリッド車。1.2Lターボも用意

そのため、搭載されたパワーユニットは、プリウスにも使われている1.8Lハイブリッドシステム。基本的にプリウスと同じものが使われており、システム出力も同じ122psとなっている。ただし、最終変速比に違いがあり、走りのフィーリングは異なる。そして、驚きなのが燃費値。車重はプリウスに対して、約70㎏重くなっているのに、、燃費値はなんと30.0㎞/Lを超え30.2㎞/Lとなった。この燃費値は、クラストップレベルの実力だ。

プリウスと若干ことなるのは、搭載するハイブリッド用バッテリーだ。プリウスには、リチウムイオン電池とニッケル水素電池の2タイプが用意されていたが、新型C-HRにはニッケル水素電池のみが採用されている。これは、販売価格を抑える目的がある。

そして、新型C-HRには、1.2Lターボのガソリン車も用意された。このエンジンは、8NR-FTS型ですでにオーリスに搭載されているものと同じだ。オーリスに搭載されたエンジンと大きく異なる部分は、使用する燃料。オーリスではハイオクガソリン仕様だったが、C-HRではレギュラー仕様に変更されている。

トヨタC-HRこの8NR-FTS型エンジンは、主に欧州用として開発された経緯があり、オーリスにはハイオクを使う欧州仕様ほぼそのままで搭載された。こうした考え方は、国内の顧客ニーズを無視した設定だった。日本ではより安いレギュラー仕様が好まれ、このクラスでハイオク仕様の国産車はほとんど売られていない。当然、ハイオク仕様の1.2Lガソリンエンジン車は、ほとんど売れない状況となっていた。ライバルメーカーであるホンダは、ステップワゴンに搭載した1.5Lダウンサイジングターボは、最初からレギュラー仕様だ。スバルのレヴォーグも1.6Lターボはレギュラーガソリン仕様だ。さすがにトヨタも、これはマズイと思ったようで、新型C-HR用にはレギュラー仕様に変更して導入した。

さすがといえるのが、トヨタの技術力。一般的にハイオク仕様のエンジンをレギュラー仕様に変更すると、パワーやトルクが落ちる傾向になる。しかし、C-HRの1.2Lターボエンジンは、燃料をレギュラー仕様に変更してもハイオク仕様と同じ116ps&185Nmという出力を確保している。ただ、この1.2Lターボの燃費は15.4㎞/L。ダウンサイジングターボとはいえ、燃費値的には、少々物足りないものとなった。

TNGA第2弾となった新型C-HR。プリウス以上に走りを徹底的に鍛えた

トヨタC-HR新型C-HRにも、プリウスに使われているTNGA (Toyota New Global Architecture) が採用されている。基本的に同じプラットフォーム(車台)なのだが、ホイールベースは新型C-HRが2,640mmでプリウスが2,700㎜なんので、まったく同じという訳ではない。新型C-HR用に適した設計が再度施されている。このTNGAをベースに、新型C-HRはレスポンス×リニアリティ×コンシステンシーの3つの特性を徹底して磨き上げた。

サスペンション形式は、プリウスと同じフロントがストラット、リヤがダブルウイッシュボーン。形式こそ同じだが、フロントとリヤともにSUV用に新開発されたものが使われている。さらに、フロントには、トヨタ車の標準的なサイズを超えた大径スタビライザーを採用。サスペンションをしなやかにストロークさせロール剛性を高めることで、SUVの高い車高がもたらす横揺れを抑制。さらに、リヤアッパーサポートの緩衝材に、高周波域での低動バネ化を実現すべくトヨタ初のウレタン材を使用された。アブソーバーの応答性や減衰力のチューニングにこだわり、荒れた路面や段差を乗り越える際も、しなやかでフラットな乗り心地を確保している。

新型C-HRは、かなり走行性能にこだわった。なんと、SUVなのにニュルブルクリンク24時間耐久レースにも参戦。C-HR Racingという車名で、総合84位でSP2Tクラス3位という好成績を残した。レースで得たデータやノウハウが市販モデルにも生かされているという。こうした走行性能へのこだわりが、燃費だけではない新型C-HRの魅力の一つともいえる。

斬新でスピード感あふれるこだわりのデザイン

トヨタC-HR新型C-HRのデザインは、かなりユニークだ。そのため、若干好き嫌いが出るデザインともいえる。しかし、このクラスには独自性の高いデザインがどうしても必要なのだ。コンパクトSUVクラスは、全世界的に人気。欧州メーカーを含め、各社、個性的なモデルが投入されている。新型C-HRは、世界戦略車でもあることから、中途半端なデザインではマーケットに評価されない。そうした背景もあり、新型C-HRもデザインにもこだわった。

新型C-HRのエクステリアデザインコンセプトは「センシュアル スピード – クロス」。たくましい足回りとスピード感あふれるボディを表現することで、大人の感性に響くスタイリングを追求している。エッジの効いた線と、張りのある丸みのある面との組み合わせで、かなりメリハリのあるスタイリングとしている。

インテリアデザインも、なかなか複雑な造形となっている。インテリアデザインコンセプトは「センシュアル – テック」。先進的で高い機能性を、遊び心をきかせた大人の色気を感じる意匠で仕上げた。かなりコッテリとしたデザインで、トヨタ車というよりレクサス系のデザインに近いといったイメージを受ける。

シートは、SUVとは思えないスポーティなものとなっている。バケットシート風のスポーティな仕様となっていて、走りへのこだわりがうかがえる。本革シートのオプションを含め、表皮は3タイプが用意されているが、全体的にややシックな印象。派手目の外観デザインに対して、シート表皮はちょっと地味目に見える。

ハイブリッド車はFFのみ。1.2Lターボは4WDのみと、ちょっと選びにくいグレード体系なのが残念

トヨタC-HR
新型C-HRの選び方。新型C-HRは、ある程度割り切れないと選びにくい。まず、ハイブリッド車はFFのみ。つまり、4WD機能が必要な積雪地域の人や、ウインタースポーツを積極的に楽しんでいるような人は、ハイブリッド車の超低燃費性能を享受することができない。必然的に1.2Lターボ車になる。

また、逆に予算重視で4WD機能は必要ないという人も選びにくい。安価な設定になっている1.2Lターボ車はすべて4WD。FFモデルがないので、価格が高め。FFのハイブリッドはさらに高いので、無用な4WD車を買うしかないという設定。販売店側も販売台数という面では、安価なFFのターボ車が欲しいところだろう。こうした微妙な設定は、モデル途中で改善される可能性もあるだろう。

新型 C-HRの安全装備


安全装備面では、全車に歩行者検知式自動ブレーキであるトヨタ セーフティセンスPが標準装備されている。さらに、サイド&カーテンエアバッグも標準装備化。トヨタ車のコンパクトカーとしては、異例なほど安全装備が充実している。「トヨタ車は、安全装備が脆弱」というイメージとは無縁のクルマだ。安全装備面では、高く評価できる。

トヨタC-HRただ、グレードでG系とS系に安全装備による差が付けられている。G系には、後側方の車両を検知・警告を発するブラインドスポットモニターやクリアランスソナー&バックソナーが標準装備化されている。また、シートが上級ファブリック(ブラック)+本革(ブラウン)シートとなるなど、高級感でやや差が付けられている。さらに、快適温熱シート(運転席・助手席)、オートワイパーが標準装備となっている。また、Bi-Beam LEDヘッドランプをオプションで装着したい場合、G系でないと装備できない。

グレード選びでは、ハイブリッド車を選んだ方がリセールバリューは期待できるだろう。日本マーケットでは、ハイブリッド車の人気が非常に高いからだ。乗り潰すつもりで買うなら問題は無いが、短期での乗り換えなら、やはりハイブリッド車が無難だ。

トヨタC-HR価格

トヨタ C-HRの価格は以下の通り。

1.2Lターボ 4WD

S-T 2,516,400円
G-T 2,775,600円

1.8Lハイブリッド 2WD

S 2,646,000円
G 2,905,200円

執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。