強敵セレナのフルモデルチェンジ前に、一足早く魅力的な特別仕様車を投入! ヴォクシー ZS“煌Ⅱ”、ノア Si“W×B”登場!


トヨタ ノア&ヴォクシートヨタは、人気の5ナンバーミニバンであるノアとヴォクシーに、特別仕様車を設定し発売を開始した。

トヨタ ノア&ヴォクシーは、2014年1月にフルモデルチェンジし3年目を迎えたモデルだ。80系と呼ばれるこのモデルから、ようやくハイブリッド車が登場した。ノア&ヴォクシーは、大きく重いクルマということもあり、プリウスα用の1.8Lのハイブリッドシステム流用されている。ハイブリッド化されたことで、燃費性能は向上。ノア&ヴォクシーハイブリッドは、ガソリン車の16.0㎞/L燃費に対して、23.8㎞/Lという低燃費性能を実現している。この低燃費性能は、クラストップとなっている。

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80系のノア&ヴォクシーは、5ナンバーサイズミニバンである。そのため、全幅はエアロモデルを除き1,695㎜となっている。しかし、全幅が5ナンバーサイズということもあり、日本の狭い道でも使いやすいというのも人気の理由だ。ただ、マーケットは、限られた全幅の中でも室内スペースの広さを求めている。そのため、プラットフォームを新開発した。全長を従来モデルから100mm延長。ホイールベースも+25mmの2,850㎜とし、室内高は1,400㎜と+60mmとクラストップレベルの高さと室内空間を確保したのだ。

全幅は細くても、全高が高くないと売れないのが、こうしたミニバンを買うユーザー独特の傾向。物理的には、全高を低くし低重心化することで、クルマはより安定して走れるようになる。また、空気抵抗も減るので燃費性も向上する。クルマとしての基本性能を考えると、全高は低く抑えたい。しかし、顧客ニーズは、より大きく見えるクルマに乗りたい。上から見下ろせる優越感をもちたい、といった要望が強いのだ。

トヨタ ノア&ヴォクシーある意味、クルマとしての絶対的な性能と顧客ニーズが真逆になっている。その昔、日産はクルマとしての性能を重視し、低床フロアで全高を低くしたエルグランドを発売。これが、見事なまでに売れなくなり、背の高さを強調するアルファード&ヴェルファイアに大敗した経緯がある。
トヨタは、日産の失敗を熟知しており、ノア&ヴォクシーでは全高はそれほど低くせずに、低床フロアにもこだわった。フロア高は-60mmとなり、乗り降りのしやすさと、低重心化によりクルマの走行安定性を高めている。

ミニバンに求められる広い空間を確保


より広い空間をもった室内は、広大な空間を生かしたラグジュアリー志向を強めている。3列目シートを格納すると、従来モデルより2列目シートが+300mm後方へスライドする。計810mmというスライド幅をもち、2列目シートはまさにファーストクラスともいえる広々とした空間が楽しめる。5ナンバーミニバンとはいえ、この贅沢な空間がミニバンを買う理由のひとつでもあるのだ。

ノア&ヴォクシーの安全装備


ミニバンに求められるニーズをシッカリと拾い上げ、顧客の求めるミニバンとしたのがノア&ヴォクシーだ。しかし、安全装備だけは物足りない状況だ。デビュー当時のノア&ヴォクシーには、自動ブレーキ関連の安全装備は用意されていなかった。モデル途中で、自動ブレーキであるトヨタ セーフティセンスCが一部を除き標準装備化された。しかし、このトヨタ セーフティセンスCは、なんと歩行者検知式ではない。大きく重いミニバンのようなモデルこそ、歩行者と接触事故を起こした場合、死亡事故になりやすい傾向にあるだけに、非常に物足りない状況。ノア&ヴォクシーは、300万円前後の高級車だ。それなのに、安全装備はコンパクトカーなどに用意されているトヨタ セーフティセンスCというのは残念な部分だ。

トヨタ ノア&ヴォクシーさらに、その他の安全装備も貧弱だ。ミニバンは多くの乗員を乗せるクルマ。ファミリー層にとって、小さな子供を乗せるケースが多いクルマで、それがウリのひとつでもある。当然、家族を守りたいというニーズは高い。しかし、サイド&カーテンエアバッグはオプションという状況。全幅の細いミニバンなので、側突や横転の危険性も高い。大切な乗員の安全を確保するためには、必ず選択したいオプションだ。

ノア&ヴォクシーのデザイン


今回投入されたノア&ヴォクシーの特別仕様車は、それぞれのクルマの個性に合わせた仕様になっているのが特長だ。ノアは Si“W×B”。ヴォクシーはZS“煌Ⅱ”という名の特別仕様車となった。特別仕様車ノアSi“W×B”は、「Si」グレードをベースとし、内装は専用内装色(ブラック×ブラック)を特別設定。天井やピラーなどのインテリアをブラックで統一するとともに、センタークラスターパネルなどにピアノブラック塗装を施し、質感を向上させている。さらに、ファブリックと合成皮革を組み合わせたシート表皮にアクセントカラーとしてホワイトのステッチを施した専用シートを採用。黒をベースに白のワンポイントをあしらった。ホワイト&ブラックの意味もあり“W×B”という名前にもなっている。カローラフィールダーなどにも設定されていた特別仕様車名でもある。

また、エクステリアは、フロントフードモールやフロントバンパーロアモールにスモークメッキ加飾を施し、迫力ある高級感をアピール。装備面では、ワンタッチスイッチ付デュアルパワースライドドアを特別装備。さらに、クルーズコントロールを装備するなど機能を充実させている。全体的に高級感をアピールする仕様だ。

トヨタノア&ヴォクシー特別仕様車ヴォクシーZS“煌Ⅱ”は、「ZS」グレードをベースとした。エクステリアは、フロントグリルモールに高輝度シルバー塗装を施すなど、きらびやかでクールな印象を際立たせた。インテリアは、センタークラスターパネルなどにピアノブラック塗装を施し質感を向上。

ノア&ヴォクシーの装備


装備系では、ワンタッチスイッチ付デュアルパワースライドドアやスーパーUVカットグリーンガラスを特別装備。夜間運転の視野拡大に寄与すると共に、夜間に個性を主張するLEDフロントフォグランプを採用した。迫力重視系であるヴォクシーに、さらにギラギラとした雰囲気を増し個性をアピールする。

さて、価格はヴォクシーZS“煌Ⅱ”ハイブリッドが3,321,000円。ベース車に対して約9万円のアップ。特別仕様分や装備向上分を考えると、わずかだがお買い得感がある。お買い得感の特別仕様車は、トヨタでは珍しい。特に、こうした人気車種では滅多にないことだ。ノアのSi“W×B”も同様の買い得感がある。

さらに、妙なのは特別仕様車の投入タイミング。本来ならば、6~7月は自動車販売業界の繁忙期に合わせて特別仕様車を投入する。タイミングとしては、5月末か6月頭がよくあるパターンだ。それは、繁忙期に特別仕様車で販売台数増を狙うためだ。しかし、今回の特別仕様車が投入されたのは7月6日。これは、かなり遅い。発表日に買いに行っても、7月登録は微妙なタイミングだ。これでは、販売台数増に結び付きにくいのだ。

こうしたタイミングに特別仕様車を投入したのには、きっと理由がある。これは、恐らく新型日産セレナ対策だろう。新型セレナは、8月下旬に発売予定。このタイミングに合わせ、新型セレナの登場待ちをしている顧客を奪い取りたいという作戦なのかもしれない。新型セレナが登場後も、魅力的な特別仕様車があることで、新型セレナに流れそうな顧客を引き留める狙いもあるだろう。わずかでも新型セレナに流れるかもしれない5ナンバーミニバン購入層を少しでも先取りしたい考えかもしれない。

日産も負けてはいない。特別仕様車の発表直後である7月中旬に新型セレナを公開。ノア&ヴォクシーにはない歩行者検知式の自動ブレーキも備える技術であるプロパイロットを公開した。メディアには、事前試乗までさせて、ノア&ヴォクシーとの違いをアピールする。

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このクラスのミニバンは、ほぼ国内専用車。日本メーカーが、日本人のために生み出したクルマだ。グローバルモデルのように、A国で負けてもBやC国で勝てればいいという訳にはいかない。日本でしか売られていないので、負けられない戦いなのだ。すでに、発売前にノア&ヴォクシー対セレナの販売戦争が始まった。販売台数面では、やや蚊帳の外感があるホンダ ステップワゴンが今後どんな攻めの販売戦略をみせるかも注目だ。2016年度後半は、5ナンバーミニバン販売戦争がさらに激化する!

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トヨタ ヴォクシー特別仕様車 ZS“煌Ⅱ”、ノア特別仕様車 Si“W×B” 価格


ノア&ヴォクシーの価格は以下の通り。

ヴォクシー特別仕様車ZS“煌Ⅱ” 2.0Lガソリン車

・2WD 8人乗り 2,800,440円 7人乗り 2,830,680円
・4WD 8人乗り 2,994,840円 7人乗り 3,025,080円

ヴォクシー特別仕様車ZS“煌Ⅱ”ハイブリッド車

・2WD 7人乗り 3,321,000円

ノア特別仕様車 Si“W×B” 2.0Lガソリン車

・2WD 8人乗り 2,800,440円 7人乗り2,830,680円
・4WD 8人乗り 2,994,840円 7人乗り2,994,840円

ノア特別仕様車 Si“W×B”ハイブリッド車

・2WD 7人乗り 3,321,000円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。