トヨタ86

<エアロパッケージは、買い得感あり! エアロパッケージFTは、魅力的だが高価なのが難点>

トヨタ86トヨタは、FRのスポーツクーペである86(ハチロク)に、エアロパーツを装着したカスタマイズカー GTエアロパッケージと、BBS製ホイールなどを装着したGTエアロパッケージFTを設定し、5月12日に発売する。

トヨタ86は、2012年にデビューした。トヨタとスバルの共同開発車というメーカーの壁を超えたモデルとして登場。そのため、スバルBRZとは姉妹車の関係にある。

トヨタ86には、スバルの2.0L水平対向エンジンが搭載され、200ps&205Nmというパワーとトルクを発揮。86の全長は、4,240㎜というなかなかコンパクトなボディサイズでありながら、後輪駆動(FR)というパッケージングとなっている。BRZとは、ほとんど同じクルマだが、若干デザインが異なるのと、足回りのセッティングなどが微妙に異なり、トヨタとスバルで違う走行フィーリングをもちキャラクターを変えている。スバルとトヨタで、異なるセッティングを施すことで、メーカー毎のFR車に対する考え方をアピールしている。とくに、86はリヤタイヤは良く滑るセッティングとなっている。こうしたセッティングになった理由は、1980年までさかのぼる。

まず、車名。トヨタ86という車名は、80年代に販売されていて高い人気を誇ったFRのスポーツクーペであるトヨタ カローラ レビン/スプリンター トレノの型式がAE86だったことに由来する。当時のクルマ好きがAE86という「型式」から86と呼んでいたからだ。現在は「車名」が86となった。現行86の型式はZN6。いかにもトヨタ的で、マーケティング主導の車名でもある。

トヨタ86その後、AE86は生産が中止され、レビン/トレノはFF化される。しかし、AE86はコンパクトなFRということで、中古車でも大人気となる。とくに、モータースポーツ系やドリフトを好むオーナーなどを中心に爆発的に人気モデルとなり、色々なカスタマイズやチューニングが施されたモデルが多く走っていた。

しかし、当時はカスタマイズ=暴走族(違法改造車)という認識だった。普通にクルマを楽しんでいたとしても、警察の要望もあり、ディーラーなどでは、ちょっとしたカスタマイズでも入庫お断り、とされていたほどだ。とくに、その傾向はトヨタ系ディーラーが厳しく、AE86などではホイールを替えているだけでも整備してくれないなどの対応が取られていたくらいだ。

当時は、AE86のカスタマイズには徹底して反対していたトヨタだが、時代の変化には敏感に反応し、ビジネスになると判断した結果、大きく方向転換をする。なんと、徹底してAE86のカスタマイズした顧客を排除していたはずが、トヨタ86が登場したときのアナウンスでは「AE86は、お客様に育ててもらった」とされていた。

とくに、当時は漫画「イニシャルD」の影響もあり、ドリフトが人気。そこで、当然86もそうした味付けが施され、リヤタイヤが良く滑るセッティングになったようだ。それに対して疑問を抱いていたスバルは、BRZをなるべく滑りにくいセッティングに変更していたほどだ。

そんな経緯はともかく、トヨタは86のカスタマイズファンのために、多額の資金を注ぎこむ。TRDやモデリスタなどトヨタ系のカスタマイズブランドだけでなく、多くのカスタマイズ&チューニングメーカーに車両を提供するなどし力でブームを作ろうとした。そうしたマネーパワーにより、多くのパーツが登場し、顧客は自分好みの86に仕上げるための土台が作られた。動機はともかく、クルマを楽しんでもらうベースをシッカリと築くというやり方は今まで無かっただけに高く評価できる。

ビジネス臭の強いトヨタ86といえるものの、20年以上無かったコンパクトなFRクーペが復活したことは、クルマ好きにとって歓迎すべきこと。そんな仕掛けもあり、2012年のデビュー直後から86は人気モデルとなる。ただし、価格が高価。そのため、顧客の多くは40歳代以上の男性。若年層へのリーチは、トヨタ86をもってしてもできず、業界全体の悩みでもある。ただ、そろそろ中古車も多く流通し始め、価格が下がってくれば若年層でも86が購入できるようになってくる。そういう意味では、これからが86を育てる大事な次期ともいえる。

トヨタ86そんなタイミングで登場したのが、トヨタ86 GTエアロパッケージ、GTエアロパッケージFT。このカスタマイズ車は、GTをベースに、フロント・リヤのバンパースポイラー、リヤ大型スポイラー、サイドマッドガード、フロアアンダーカバーといった専用のエアロパーツを装備する。より高い空力性能のを目指した本格派エアロパーツだ。いかにもエアロモデルという感じで、他のグレードとは明確に違う。

さらに、外観を主にカスタマイズしたGTエアロパッケージに対して、GTエアロパッケージFTは、足回りのチューニングもプラスしているのが特徴だ。ホイールは、軽量のBBS製鍛造18インチに専用のブリヂストンPOTENZA S001タイヤ(フロント215/40R18、リヤ225/40R18)が組み合わせている。インチアップしたホイールと高性能タイヤの組み合わせは、メカニカルグリップを向上させる。しかし、高くなったメカニカルグリップを生かすためには、サスペンションやブレーキのパフォーマンスも向上させなくてはならない。そこで、ブレーキ関連ではスポーツブレーキパッド(ハイμパッド)、SACHS(ザックス)ショックアブソーバーを装備。増大したメカニカルグリップを生かす仕様となっている。

価格はベースとなっているGTのMTに対して、GTエアロパッケージが23万円高の3,135,200円。GTエアロパッケージFTは685,000円高の3,590,200円となった。

GTをベースに、自分で好みのエアロパーツを選び装着することを考えると、23万円では上質なものは揃えることは難しい。そうなると、GTエアロパッケージはややお買い得感がある。それに対して、GTエアロパッケージFTは、455,000円が足回り関連の価格になる。恐らく一番高価なのがBBS製の18インチ鍛造ホイール。普通に18インチのBBS+タイヤセットを購入したら45万円くらいに達してしまう。そう考えると、安いとは言えないものの、プラスされたパーツ類を含めて考えるとややお買い得な印象になる。

しかし、単純にお買い得だから買い! とは考えにくい。GTエアロパッケージFTの価格は約360万円。この価格になると、86を圧倒するパワーで308psを誇るAWDターボのスバルWRX STIが約379万円となっていて、ターゲットに入ってくるのだ。やや方向性の違う2台とはいえ、これだけ価格帯が近くなると単純に速さというし点であれば、WRX STIが上回るだけに微妙な選択となる。

■トヨタ 86GTエアロパッケージ価格

・GT“エアロパッケージ” 6速マニュアル 3,135,200円/6-Speed SPDS(6 Super ECT) 3,217,673円
・GT“エアロパッケージFT” 6速マニュアル 3,590,200円/6-Speed SPDS(6 Super ECT) 3,672,673円