プジョー308GTI

<想像を超えたパワフルさとしなやかさを併せ持つハイパフォーマンスモデル。しかし、左ハンドル&6MTのみという設定は・・・>

プジョー308GTIプジョーは、基幹車種であるコンパクトカーの308をベースとしたハイパフォーマンスモデル「308 GTi by PEUGEOT SPORT(プジョースポール)」を追加し発売を開始した。

ベースとなるプジョー308は、2014年に日本へ導入された。直3 1.2Lターボを搭載し、16.1㎞/Lという低燃費を実現。プジョー特有のしなやかなフットワークをもつ。ただし、全幅が1,805㎜と国内に多い立体駐車場の制限1,800㎜を微妙に超えているなど、都市部に多い立体駐車場を使う顧客が車庫証明が取れないなど、コンパクトカーなのに顧客をある程度選別してしまう。また、ラインアップには、5ドアHBのホイールベースを伸ばしたワゴンモデルも用意されている。

308GTに搭載されたエンジンは、1.6L直4ターボエンジン。250psと270psと出力により2タイプに分けられている。最大トルクは2タイプと330Nmと同じだ。

208GTiにも同様な1.6Lターボエンジンが搭載されていて、出力は208ps&300Nmとなっている。同様のエンジンでパワー少なく、車重も軽ければ燃費がよいという結果になるのが普通だ。車重1,200㎏で208psの208GTiの燃費は15.6㎞/L。それに対して、308GTi 270プジョースポ―ルは、1,320㎏と208GTiに対して120㎏も重くパワーも62psもアップしているのに、燃費は208GTiを上回る15.9㎞/Lを達成している。

プジョー308GTIそんな1.6Lターボエンジンは、ツインスクロールターボや、耐高熱スチールエキゾーストマニホールドの採用により、常にユニットを高温状態に保つことで吸気効率を最大化し、高効率、高出力を実現。新型鍛造ピストンヘッドは、F-1エンジンに採用されているアルミ素材が使用されている。

特別なエンジンを搭載した308GTI。ボディも軽量ということもあり、欧州仕様値で270が4.46kg/ps、250が4.82kg/psというパワーウェイトレシオを実現。この数値は、これまでのプジョー量販車の中で最もスポーティかつパワフルな仕様となっている。

組み合わされたミッションは6MT。困ったことに、左ハンドルのみの設定となっている。この6MTは、ローギアードセッティング(最終減速比)とされ、より俊敏でダイレクトな加速を得ることができる。Cセグメントに属する308GTIで、左ハンドル&MTという組み合わせは、かなりマニアックな仕様となっている。この組み合わせは、よくルノーが限定車を中心に設定し、ルノーファン中心に売る方式。対して、プジョーはしっかりと国内マーケット向けに右ハンドル仕様でATという組み合わせを中心にしてきた。より多くの顧客に売りたいというのであれば、プジョー式が正解だ。左ハンドルのMTのみで、限られたマニアックな顧客相手の商売となり販売台数面では期待できない。そうした視点からは、日本マーケットでの販売は苦労しそうだ。ライバルとなるフォルクスワーゲン ゴルフGTIをみても、販売の中心は右ハンドルのAT(DSG)だ。

308GTIの足回りは、専用サスペンションが装備。その他では、250と270で、意外と相違点が多い。トルセン LSDは270専用。駆動輪左右の回転差を制御して、グリップのあるタイヤへパワーを確実に路面に伝える。大径フロントブレーキディスク、PEUGEOT SPORT 4ピストンブレーキキャリパーも270専用。また、タイヤ&ホイールも違う。250は225/40ZR18に対して、270は235/35ZR19へ1インチアップされている。さらに、シートも270と250では異なり、270はバケットシート、250はスポーツシートが装備されいる。

プジョー308GTI試乗すると250と270の違いは明らか。とくに、サーキットや峠道などでは、その差が明確になる。とくに、トルセンLSDが無いと、FF特有のアンダーステアに悩まされる傾向になる。ブレーキも制動力そのものだけでなく、フェード性も高く安心して長い下り坂も攻め続けられる。あまりスポーツ走行をしないというのであれば、250で十分。ただ、スポーツ走行をしないのなら、普通の308の方が安定感や乗り心地面でも安心できることを考えると、250は270と比べるとやや中途半端に感じてしまう。

外観は、レッドロゴ&ライオンエンブレムつき専用フロントグリル&バンパー、ブラックドアミラー、フロント&サイドスカート、リアアンダーガーニッシュ&デュアルエキゾーストエンド、GTi バッジ(フロントフェンダー&テールゲート)が308GTi専用装備となっている。

さて、プジョー308GTiの価格。250が385万円、270が436万円となっている。価格差は51万円。トルセンLSDや19インチホイール、バケットシートなど、装備差と走りの違いを考えても、価格差はやや高めの印象。しかし、乗り比べるとGTIのようなハイパフォーマンスモデルを購入するのであれば、よりキャラクターが明確な270を選びたいところだ。

そして、308GTIのライバルは、やはりフォルクスワーゲン ゴルフGTIとなる。ゴルフGTIは2.0Lターボを搭載し、220ps&350Nmで燃費は16.0㎞/L(MT車)となっている。250は250ps&330Nmで、燃費は15.5㎞/L。270は270ps&330Nmで、燃費は15.9㎞/Lとなっているので、250に対して、ゴルフGTIはパワーで負けるもののトルクと燃費値が上回り、270に対してはトルクで上回り燃費は同等といったところ。大きな差は無い。価格面では、ゴルフGTIが389万円(MT)で、250より高価で270より安い価格となっている。プジョーの価格戦略はなかなか絶妙だ。

ゴルフGTIは、やや高回転域が苦しくなる印象で、レヴリミット前にシフトアップしたほうが速い印象が強かった。強大なトルクでクルマを引っ張る。対して308GTiは、高回転域まで気持ちよく回る。パワーで勝負といった印象が強い。こうしたフィーリングが全く異なる。ハンドリング性能では、ストロークのあるサスペンションを生かした308GTIに対して、ゴルフGTIはFF車であることを感じさせない見事なハンドリング性能をもつ。ドライビングポジションは、ややクルマにもぐり込むように座り低めのポジションとなるゴルフGTIに対して、308GTIはやや高めのドライビングポジションになる。こちらも好みが分かれるポイントでもある。このあたりは、シッカリと乗り比べて選びたい。

■プジョー308 GTi by PEUGEOT SPORT(プジョースポール)価格
・308 GTi 250 by PEUGEOT SPORT 左 / 5 ドア ハッチバック 6MT 3,850,000 円
・308 GTi 270 by PEUGEOT SPORT 左 / 5 ドア ハッチバック 6MT 4,360,000 円